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騎士の国ルフト陥落

悲しい嘘

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 ソルド達が部屋を出て、ルークはステラと二人きりになってしまった。もちろんルークがこの部屋に運ばれて以来ずっと二人きりではあったのだが、意識を失っていたルークはそんな事知る由もない。

 何を話せば良いか皆目見当もつかず何も言えないでいるルークと何か話せばそのまま泣き崩れてしまいそうで何も言えないでいるステラ。少しの間部屋を沈黙が支配したが、ルークが思い切って口を開いた。

「あの……色々お世話していただいたみたいでありがとうございました。ステラ様はアルテナの王女様なんですよね」

「ええ、そうですよ」

 ステラはルークに『ステラ様』と他人行儀で呼ばれたのが悲しかったが、ほんの少しでも涙を零してしまえばその涙を止める事は出来無いと、無理して笑顔を作って答えた。するとルークはこの上なく愚かな質問をステラにしてしまった。

「何故、王女様がボクなんかにこんなに良くしてくださるのです?」
 ちょっと考えればわかりそうなものではないか。正座させて思いっきり説教でもしてやりたいところだ。そんなバカな質問にステラは少し考えて答えた。

「昔、ソルドさん……あなたのお兄さんに昔助けてもらった事があるの」

 もちろん嘘だ。つきたくもない嘘にステラの胸は締め付けられるばかりだった。
本当は言いたかった。

 ――あなたは私の大切な人だから――

 でも、それは今は言えない。一国の王女の大切な人ともなればそれなりの地位にある人間であろう事は容易に考えられる。そしてそれはルークの記憶を戻すトリガーになりかねないのだ。

 ステラの心はズキズキ痛んだ。本当の事を言えない歯痒さ、ルークに王子だった記憶を取り戻して欲しく無いという気持ちと自分の事を思い出して欲しいという想いの葛藤。それらは十六歳のステラには重すぎた。だからステラは事実もほんの少しだけ仄めかせた。

「一緒に遊んだ事もあるんですよ。忘れちゃったんですね」



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