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ゲームセンターでの珍事
謀られた!?
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撮影が終わり、吐き出されたシールを手にした由美ちゃんは「最後にもう一回撮ろう」と言い出した。確か和彦と二回撮ってたよな、俺達とも二回撮ったから次で五回目だぜ。女の子って、本当にプリクラ好きなんだな。
もう一度四人で機械に入り、次は俺と岩橋さんが並んで立ち、その前に和彦と由美ちゃんが寄り添って屈んだ。
「もー、二人共もっと引っ付きなさいよー」
画面に映る姿を見て、またもや由美ちゃんからダメ出しが。もちろん俺にとっては嬉しいダメ出しなんだけどな。
「ごめんね、岩橋さん」
恐る恐る肩を寄せると、岩橋さんは顔を赤らめながらも口元に笑みを浮かべて頷いてくれた。どうやら拒絶はされてない様で良かった、本当に良かった。それにしても良い匂いだな。頭がクラクラしそうだ。
意識が飛んでしまいそうな俺の耳に由美ちゃんの声が届いた。
「じゃあ撮るわよ」
いかんいかん、浸ってる場合じゃ無いぞ。俺が急いでカメラの方を見てキメ顔を作った時、事件は起こった。目の前の和彦と由美ちゃんがプリクラの機械からいきなり脱出し、カーテンを閉めたのだ。
俺と岩橋さんは状況が理解出来ず、寄り添ってカメラのレンズを見たまま動けないでいた。そして次の瞬間、フラッシュが光った。その直後、由美ちゃんがカーテンを開けて入ってきたかと思うと俺と岩橋さんの姿が映し出された確認画面を見てニヤリと笑い、黙って決定ボタンを押した。
そこでやっと俺は状況を理解した。そう、俺と岩橋さんがツーショットのプリクラを撮ったのだと言う事を。
「いやー、上手くいったわね」
機械から吐き出されたプリクラを見て由美ちゃんは満足そうに微笑んだ。和彦もニヤニヤしている。って、コイツ等、嵌めやがったな……ありがとう、嬉しいぜ。しかし岩橋さんはどうなんだ? 怒ったり、泣き出したりしないだろうな。うわっ、顔が真っ赤になってるじゃないか。まあ無理も無いよな……でも、怒ってはいなさそうだ。でも、何て声をかけたら良いんだろう?
「ごめんね、岩橋さん。俺なんかと二人で撮っちゃって」
別に俺が悪い訳では無いのだが、結果的に俺とのツーショットプリクラが岩橋さんの手に渡る(もちろん俺にも)んだ。一応謝ると、岩橋さんは俯いていた顔を上げ、口元に含羞んだ笑みを浮かべながら答えてくれた。
「ううん、こっちこそ、私なんかとでごめんね」
いやいや、『私なんか』だなんてとんでもない。俺はもの凄く嬉しいですよ。コレは一生の宝物にさせてもらいます。
なんて思っていると岩橋さんの口からポツリと言葉が零れ出た。
「恥ずかしいけど嬉しいな。大事な友達とのプリクラだから」
そっか……やっぱり俺は友達でしか無いんだよな……でも『大事な』って付いてたよな、って事はとりあえず『友達以上』と考えて良いんだよな。うん、そうだ。そうに違いない!
えっ、自分に都合が良い捉え方だって? うるさいな、そんな事は俺が一番わかってるよ!
とか思いながら岩橋さんとのツーショットプリクラを見つめる俺に和彦から声がかかった。
「プリクラも撮ったし、何か飲みに行こうぜ」
和彦の提案でフードコートに移動しようとゲームセンター、いやアミューズメント施設を歩いていると、クレーンゲームの筐体が目に入った。
「あっ、アレでしょ? カズ君が取ってくれたの!」
由美ちゃんが目ざとく大きなクマのぬいぐるみが入った筐体を見つけ、声を上げた。そこからちょっと離れたところに俺が苦労して取った小っちゃなネコのチャームが入った筐体もある。岩橋さんはそれに気付いた様だ。
「加藤君が私にくれたのって、コレだよね」
うわっ、恥ずかしい! 和彦が一回で取った大きなクマのぬいぐるみは大きなガラスケースの中央に鎮座しているのに対し、俺が苦労して取った小っちゃなネコのチャームは中ぐらいのガラスケースに山積みにされていて、小学生でも簡単に取れそうで、ありがたみなど微塵も感じられない。こんなのを取るのに苦労したなんて……などと俺が自己嫌悪に陥っていると和彦がフォローするかの様に言った。
「コレって、簡単そうに見えるけど、意外と難しいんだよな」
「へえ、そうなの? 簡単そうに見えるんだけど」
不審そうな顔をする由美ちゃんに和彦は説明してあげた。
「それが店の罠だ。アームの設定とかもあってな、簡単に取れそうなヤツほど簡単に取れない様になってんだよ。俺があのクマを一回で取れたのはラッキーだったんだぜ」
和彦ぉぉぉ! その説明は、まさに俺がアレを取るのに苦労したのは当然だと言わんばかりだった。それに納得したのか、由美ちゃんは岩橋さんに笑顔で言った。
「そうなんだって。良かったね、沙織ちゃん」
由美ちゃん、何故そこで岩橋さんに振りますか? って、俺があげたからに決まってるじゃないか。まあなんにせよ、和彦のおかげで俺のメンツは保たれた訳だ。岩橋さんとのツーショットプリクラも撮れたし、今日は何て良い日なんだ!
「サンキューな」
小声で礼を言った俺に、和彦は黙ってニヤッと笑った。
もう一度四人で機械に入り、次は俺と岩橋さんが並んで立ち、その前に和彦と由美ちゃんが寄り添って屈んだ。
「もー、二人共もっと引っ付きなさいよー」
画面に映る姿を見て、またもや由美ちゃんからダメ出しが。もちろん俺にとっては嬉しいダメ出しなんだけどな。
「ごめんね、岩橋さん」
恐る恐る肩を寄せると、岩橋さんは顔を赤らめながらも口元に笑みを浮かべて頷いてくれた。どうやら拒絶はされてない様で良かった、本当に良かった。それにしても良い匂いだな。頭がクラクラしそうだ。
意識が飛んでしまいそうな俺の耳に由美ちゃんの声が届いた。
「じゃあ撮るわよ」
いかんいかん、浸ってる場合じゃ無いぞ。俺が急いでカメラの方を見てキメ顔を作った時、事件は起こった。目の前の和彦と由美ちゃんがプリクラの機械からいきなり脱出し、カーテンを閉めたのだ。
俺と岩橋さんは状況が理解出来ず、寄り添ってカメラのレンズを見たまま動けないでいた。そして次の瞬間、フラッシュが光った。その直後、由美ちゃんがカーテンを開けて入ってきたかと思うと俺と岩橋さんの姿が映し出された確認画面を見てニヤリと笑い、黙って決定ボタンを押した。
そこでやっと俺は状況を理解した。そう、俺と岩橋さんがツーショットのプリクラを撮ったのだと言う事を。
「いやー、上手くいったわね」
機械から吐き出されたプリクラを見て由美ちゃんは満足そうに微笑んだ。和彦もニヤニヤしている。って、コイツ等、嵌めやがったな……ありがとう、嬉しいぜ。しかし岩橋さんはどうなんだ? 怒ったり、泣き出したりしないだろうな。うわっ、顔が真っ赤になってるじゃないか。まあ無理も無いよな……でも、怒ってはいなさそうだ。でも、何て声をかけたら良いんだろう?
「ごめんね、岩橋さん。俺なんかと二人で撮っちゃって」
別に俺が悪い訳では無いのだが、結果的に俺とのツーショットプリクラが岩橋さんの手に渡る(もちろん俺にも)んだ。一応謝ると、岩橋さんは俯いていた顔を上げ、口元に含羞んだ笑みを浮かべながら答えてくれた。
「ううん、こっちこそ、私なんかとでごめんね」
いやいや、『私なんか』だなんてとんでもない。俺はもの凄く嬉しいですよ。コレは一生の宝物にさせてもらいます。
なんて思っていると岩橋さんの口からポツリと言葉が零れ出た。
「恥ずかしいけど嬉しいな。大事な友達とのプリクラだから」
そっか……やっぱり俺は友達でしか無いんだよな……でも『大事な』って付いてたよな、って事はとりあえず『友達以上』と考えて良いんだよな。うん、そうだ。そうに違いない!
えっ、自分に都合が良い捉え方だって? うるさいな、そんな事は俺が一番わかってるよ!
とか思いながら岩橋さんとのツーショットプリクラを見つめる俺に和彦から声がかかった。
「プリクラも撮ったし、何か飲みに行こうぜ」
和彦の提案でフードコートに移動しようとゲームセンター、いやアミューズメント施設を歩いていると、クレーンゲームの筐体が目に入った。
「あっ、アレでしょ? カズ君が取ってくれたの!」
由美ちゃんが目ざとく大きなクマのぬいぐるみが入った筐体を見つけ、声を上げた。そこからちょっと離れたところに俺が苦労して取った小っちゃなネコのチャームが入った筐体もある。岩橋さんはそれに気付いた様だ。
「加藤君が私にくれたのって、コレだよね」
うわっ、恥ずかしい! 和彦が一回で取った大きなクマのぬいぐるみは大きなガラスケースの中央に鎮座しているのに対し、俺が苦労して取った小っちゃなネコのチャームは中ぐらいのガラスケースに山積みにされていて、小学生でも簡単に取れそうで、ありがたみなど微塵も感じられない。こんなのを取るのに苦労したなんて……などと俺が自己嫌悪に陥っていると和彦がフォローするかの様に言った。
「コレって、簡単そうに見えるけど、意外と難しいんだよな」
「へえ、そうなの? 簡単そうに見えるんだけど」
不審そうな顔をする由美ちゃんに和彦は説明してあげた。
「それが店の罠だ。アームの設定とかもあってな、簡単に取れそうなヤツほど簡単に取れない様になってんだよ。俺があのクマを一回で取れたのはラッキーだったんだぜ」
和彦ぉぉぉ! その説明は、まさに俺がアレを取るのに苦労したのは当然だと言わんばかりだった。それに納得したのか、由美ちゃんは岩橋さんに笑顔で言った。
「そうなんだって。良かったね、沙織ちゃん」
由美ちゃん、何故そこで岩橋さんに振りますか? って、俺があげたからに決まってるじゃないか。まあなんにせよ、和彦のおかげで俺のメンツは保たれた訳だ。岩橋さんとのツーショットプリクラも撮れたし、今日は何て良い日なんだ!
「サンキューな」
小声で礼を言った俺に、和彦は黙ってニヤッと笑った。
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