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第一章:王都より領地

シャルティエのお仕事。

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バスカ王国の西側を治めているエンハイム家が治める領地──セイリウム大陸に街が4つ、村が15、他種族の集落が6つ…この度、独立が認められた一際立派な領主館がある街──暁の公都となった、アンセルムの街は今やお祭り騒ぎだ。

赤レンガの建物が多く見掛けられるこの街では連日歌えや飲めやの大騒ぎ。

 「エンハイム公爵様、万歳!」

一人が言えば

 「「「独立万歳!!」」」

と、数人が異口同音に唱和する。

カン、カン、と至るところで男達がジョッキをぶつけて昼間からビールを流し込んでいる。

広場では吟遊詩人が楽器片手に歌を歌っているし、大道芸による見事なジャグリングや、口から火を吹いたりと通りを湧かせていた。

それらの様子を若い画家がキャンパスに描きあげている…地面も赤いレンガ作りのタイルが整然と敷き詰められている。

この街は暁の公都カーマインベルクと呼ばれ、独立以前も広く知られ慕われている。

街としての規模は王都が3つは入るのではないか、と言うほどの広大さ。

区画整理され、冒険者と街中央にある複合型百貨店ベイルリークマーケットには古今東西様々な物が集まる。

ここに店を出せるようになるのが商人の間では一種のステータスになっている。

担当しているのは複数の大手商会、売り子もその商会から将来を約束された遣り手の若手が担当し、市場にはない洗練された接客技術と目利き、頭の回転、臨機応変に対応する柔軟さが求められる。

 「この街もしばらくは忙しくなりますね、オーナー」

 「うむ、そうだな。」

ピシッとしたスーツに金の髪が跳ねる。

 「我々は商売をするだけだ。…公爵様の決定に粛々と従うのみよ」
 「ふふ…そう言いながらもオーナー、笑ってますよ?」

金の髪の女性はパンツスタイルなスーツに胸元には薄紫のスカーフが品良く巻かれている。

20代前半の青年は「そうか?」と首を傾げながらも、マーケットの最上階から眼下の街並みを見下ろす。

彼の名はシメオン・ベイルリーク。24歳。
藍色の髪をオールバックに固め、黒のジャケットと深紅のシャツを中に着たジャケットと同色のズボン、黒の革靴。

キリリッ、とした眼差しの色は金の瞳。

彼はジルベルトの同級生にして、幼馴染…齢18歳の頃よりこのマーケットを任された。

わざとらしさを感じさせない硬い口調は尊敬する祖父を真似ているようだと彼を知る者は語る。

 「…ジルがそこは頑張るだろう、俺はオーナーとして、一商人として仕事をするだけだ」
 「ふふ、そうですね。」

このマーケットを任された頃から何れはベイルリーク商会そのものを引き継ぐのだ。

彼の父も祖父も未だ健在、その間にこのマーケットで荒波に揉まれろ、と父の愛情だ。

同時期に次期エンハイム公爵のジルベルトは公都の領主館で現公爵、アーデルハイド公爵直々に領地経営を今日まで任されてきた。

…そんなジルベルトもそろそろいつ代替わりしても良いぐらいにはなっているのだとか。

この国のみならずこの世界では貴族や王族は満80歳になるまでは如何なる者も早々に代わらないものだ──よっぽど横暴が過ぎる、とか理不尽に領民(王都民)を虐げている、とかでない限りは。

…そして、そんな“公都”──爵が治める──となったアンセルムの街の片隅に赤レンガが基調な街中に於いて唯一の白亜の城──というぼど大きくはないが──“エンハイム商会”の看板が立て掛けられた長方形の建物…その2階奥にシャルティエの姿はあった。

 「~~♪~~♪♪」

鼻歌混じりにパソコン──これもシャルティエが前世の記憶を頼りに領地内の錬金術師と魔術師に共同開発を持ち掛けて出来た物だ。

四角い薄型ノートPC──ノート型パーフェクトコンピューター─…これにより、決済はこの魔道具で出来るようになった。
紙が溜まらずすっきりとした執務室…会頭室は二間で構成されている。

ソファーとテーブルが置かれた応接室と商会主であり、会頭が座る会頭席と8名ほどのスタッフがパソコン画面に向かう姿はなかなか圧巻だ。

シャルティエが機嫌良さそうにしているのは、勿論長年の恋人であった朔からのプロポーズだけが原因ではない。

 「やっと、形になりましたね、シャルティエさん!」

傍らの秘書の男性がパソコンの画面を見ながら、シャルティエに呼び掛ける。

 「ええ、そうなのよ!やっと、やっと…プレイステーション4の再現が出来たのよ!憧れのあのタイトルとか!テイルズがファンタジーするゲームとか、ファイナルにファンタジーするゲームとか、株取引ゲームのド○ポンとか!もー実際に冒険者がいるこの世界では無意味って言われるとは解っていたのよ?でもね…やっぱりオタクとしてはゲームをしたい!コントローラを操作したいの!」
 「おっしゃる通りです!!ゲームと現実は違うのです!!」
 「私は」「我々は」
 「「現実の世界よりゲームの世界で魔物を狩りたい!ゲームだからこそいいのです」いいのよ!!」

秘書はゲームオタクの転生者でした…因みに某一狩り行こうぜ!の有名なゲームのファンです。

秘書と意口同音に揃えてグッと両拳を握って溢れるゲーム愛を叫ぶ。

 「「「「会頭、五月蝿い!」」」」
 「「「「職務中は静かにしてください、集中出来ません。」」」」

と、4人ずつに口を揃えて抗議された。

 「ぅ、すいませんでした…」
 「ご、ごめんなさい…っ」

その迫力に圧され、この部屋のあるじであり、公爵令嬢でもある会頭とその秘書は吃りながらも、謝罪した。

そして、再び執務室に静寂が戻る。

今度は小声でひそひそと話す、会頭──シャルティエと秘書。

 「でも、やっと…量産化に漕ぎ着けましたね、シャルティエさん」
 「ええ、例え結末が解っているゲームでも久しぶりに遊んでみたいじゃない?」
 「おっしゃる通りです。」

カタカタと文字を打ち込みながら、話を続ける。

その隣では秘書がコーヒーを人数分淹れてそれぞれのデスクの前に置いていっていた。

 「テイルズがファンタジーするゲームは3周もしたのよ?まだまだ後5周はする予定だったのに…死んでしまうもの、情けないっ!」

そう言ってシャルティエは忌々しそうにかつての自分に毒づく。
 
死因は通算8回目のテイル○・オブ・フ○ンタジアのラスボス戦──その途中でダオスよりも先に落雷によって亡くなった。

 「それが悔やまれる…っ!何で私はダオスより先に死んでるのか…っ!!」

残念な死因だ。
そして、思考も残念。
享年、18歳──若すぎる死だった。

 「なんて羨ま死─…、シャルティエさん!私などバナナ踏んでどこぞのマリオのように頭を打って死んだんですよ…!」

シャルティエの秘書の一人…人族の青年はぼそぼそとそう訴える。

互いの残念な死因をなぜか話している…プレイステーション4が漸く販売に漕ぎ着けた、この段階に。

 「…そうね、エドウィンあなたほどじゃないわね…私はその死因は嫌よ。万が一この世界で再会したら──黒歴史だわ!」

と、こちらもぼそぼそと返す。

…だって他の社員スタッフにまた怒られるから。

鬼も恐れる公爵令嬢が恐れるのは、自分の商会の社員──だったり。したりしないとか。

 「このパソコン然り、魔法鞄マジックバッグの販売然り、とても魔導技術が進みましたものですね…電化製品の魔道具化──と言えばよいのでしょうか?
錬金術師や魔術師の就職率も高いのはエンハイム領地だけですよ」
 「そうね、自然と領地に転移者や転生者が多く集まるのよね~何でかしらね?」

シャルティエが首を傾げると、シャルティエから見て右手側の一番手前に座っているスタッフ──がくるり、とこちらを向いた。

 「それは姉さんがいるからよ」
 「?」
 「違った…─姉さんが提唱し、義務付けた“転移者・転生者保護法”の徹底よ。」
 「?普通じゃない?バスカ王国事態異世界人が作ったってされた国よ?
寧ろ何であんなに横柄に出来るのか──私の方が分からないわ」

金髪に赤目のシャルティエにどことなく似た風貌の少女がすす、とシャルティエの机に近付いて声量を抑えて反論する。

 「それがと言っているのよ!」

そして、彼女──シャルティエの妹、ミュリアリア──は語る。

他の領地では転移者や転生者をこの領地ほど優遇していない、と。

冒険者ギルドに丸投げ、転移者や転生者の教育は全てギルドに押し付けて…ある程度使えると分かるとさも自分が世話をした、ように振る舞って館に連れていくのだとか。

領主の愛人か、奴隷か、小間使いか──その扱いは普通の平民と変わらない。

なので、転移者(迷い人)は兎も角転生者は成人するまでは黙っている事が多い。
そして、成人するとこの領地を目指す──のだとか。今では。
それ以前は良心的な領主の下に冒険者となって赴いて、その領主の下に仕え、各々のしたいことをする、と。 

 「…と、言われてもね~。」

曖昧に微笑んで妹の話を聞き流すシャルティエ。

 「私は趣味ゲーム人間よ?
前世で亡くなる時だってコントローラを持ってたのだから。

…それが出来る環境を作りたかったのよ…せめて、お父様やお兄様が統べるこの領地ではそんな他領地のような扱いを彼らにしたくないわ。」


金髪をポニーテールに纏めた新緑色の瞳…は、亡き母方の祖母(隣国の前王妃)に似ている。

優しげな目元や口元は完全に祖母の若い頃に瓜二つで…母が里帰りする時には良くシャルティエと共に可愛がられたものだ。
今回のシャルティエ(孫)の一方的なエリックの弾劾と婚約破棄宣言はかなり外交上にも大きく皹を入れたのだとか。
…既に何件かの事業が停止している。
隣国──魔法大国、エヴァーガーデン王国は母であるアリスティアの“もうひとつの故郷”と言えよう。

アリスティア・エンハイム公爵夫人──旧姓をアリスティア・ルナ・エヴァーガーデン──は、母方の祖母(前エヴァーガーデン王妃、ヨミエルミ)の長女だった。
当然、祖父も孫であり、取り分け自身の亡き妻に瓜二つのミュリアリアの苛立つ顔や哀しげな表情(あ、この前転移で直接ミュリアリアが報告したそうだ)を見ただけで荒ぶる阿修羅が目覚めた!とか…事ある毎に王城(エヴァーガーデンの)に読んでは逐一ミュリアリアから聞かされていた、のだとか。

…そりゃ、怒るわ。

祖父──つまりは先代王(エヴァーガーデンの)は孫贔屓で愛妻家で、子供と国民を愛する慈愛の王として知られていた。

 「この前の事は残念とは思わないわ…だって姉さんには朔兄さんがいるもの。

寧ろ、“王命”でもない限りあんな不良物件──何で姉さんが処理しなくちゃいけないの?」
 「ミュリア…あなた、言葉が崩れているわよ?」

はあ、と溜め息を吐いてミュリアリアは毒つく。

 「…私とアラン(弟)は賛成よ。朔兄さんと姉さんの結婚」
 「…反対しているのは姉上とお兄様、お父様とお母様は中立…だったわね、確か。」
 「…なぜかシャルティエさんの結婚なのに兄弟姉妹で意見が別れてるのか─…シャルティエさんも大変ですね。」

秘書の青年が苦笑混じりに言及する。

  「まったくね…まあ、それでも朔が楽しそうにしているから…良いんだけどね。」

…そう。
今、朔は──そんな姉や兄、弟妹達の試練?を順々にこなしているそう…まあ、そのほとんどが剣の模擬試合や魔法対決や、金魚すくいの数──とか、まあ、一見、何処が試練なの?って疑りたくなる試練をこなしている。

因みにエンハイム公爵家の子供達は兄・姉・弟妹含めて今のところ、8人。
朔とシャルティエの結婚を賛成しているのが、4つ下の弟、アラン、母のアリスティアと二つ下の妹、ミュリアリアと、父方の祖父母。叔父叔母…で、反対は兄のジルベルトと3つ上の姉、ベルダンディ、それから6つ下の妹ベルフラウ。母方の叔父叔母。
中立…と言うか結婚事態良く分かっていない、6歳の妹、マリアベルと3歳の双子姉妹(ヨミ(姉)&エルミーナ(妹))。
父のアーデルハイドは

「俺は別に反対しないよ…と言うか、あの子達のガス抜きに付き合ってくれ。
朔君には悪いとは思うけれど、ね。」

と苦笑混じりに朔とシャルティエの婚約を認めた。
通常の婚約と同じく半年の婚約期間を得て結婚──となる。

…まあ、実際結婚は決まったも同然だ。

父であり、現当主のアーデルハイドが認めているので。

 「まあ、私としても朔の事を家族に知って貰えて嬉しいわ…」

…家族贔屓で身内と決めた相手にはとことん甘いエンハイム家は、今日も今日とて平和…である。

 「…朔兄さんは今エヴァーガーデン、なのよね?」
 「ええ、エドガーおじ様やマリナおば様が見極め──遊んでいるわね。」
 「スマホの普及で念話が使えない人でも離れた所にいる人とも連絡が取れるものね」
 「ええ、毎日テレビ電話しているわ。」

そんな会話を交わして、ミュリアリアはまた自分の机へと戻った。

…結局話は二転三転としたが…まあいいか、と秘書が淹れたコーヒーを啜る。

…そろそろ、昼の3時──本日の業務終了時間──だ。

朝9時~昼15時で終了、この商会に働く者(社員限定)の勤労時間だ。

繁忙期は担当部署が残業をするのだ。

2階奥にあるこの執務室は全体の総括。
…大体、商会にある全部署の業務内容がこのデスクに送られてくる。
それらのチェックと企画の合否をする。
人事部と会計部はそれぞれの長は人型の魔物──シャルティエのダンジョンモンスターのサキュバスの男女──だ。

 「公平公正なスタッフって良いわね」

と、シャルティエはにんまりと微笑んだ。

どこぞの会社のように着服とか、裏口入社とか…ない。

ダンジョンマスターであるシャルティエにダンジョンモンスターは絶対服従だからだ。

ダンジョンやダンジョンモンスターを創る時はイメージと“願い”、魔力MP
が必要不可欠。

籠められた願い、魔力で主であるシャルティエの望んだ思考、嗜好…性格となる。

この商会ビル事態ダンジョンだからだ。
…この建物の中に於いて──シャルティエは勤める社員やバイトを監視できるのだ。
産業スパイ──明らかにテロリストや敵対者以外──は基本、泳がせている。
そんな極一握りの者は優秀だから、だ。
何のかんのとそれなりの部署、地位を与えている。

 「財布と人事は抑えないと、ね♪」

ピッ。

エンターを押して保存して魔道源を落として

 「はい、そこまでよ。
お疲れ様、皆!」

シャルティエのその言葉にスタッフ達がそれぞれに魔道源(電源みたいなもの)を落として固まった身体を解す。

 「はぁ~~、終わった~!」
 「お疲れ~。」
 「この後、どっか飲みに行く~?」
 「バッカ、まだ早いだろ?」
 「てか、一旦帰って寝たい」
 「…お前…さては遅くまでエロゲーしてただろう!?」
 「!?何故、それを…!?」
 「この前飲みの席で言ってたろ。」
 「…あー、そいや…言ってた……ような……??」

そんな男性スタッフの下衆な話と、女性スタッフの冷たい眼差しが男性スタッフ達に突き刺さる。

 「さいってー!!職場でそんな話しないでよね!」
 「まったくよ!」
 「そんな話は酒場でもしてたら~?」
 「わ、私は…別に…良い、と思うけど…」

…最後の一人は腐女子である。
彼女もまたシャルティエ同様腐女子であり、良く話すのはBLゲームの話。
次にBLに出来る漫画やアニメ、小説の話。
次席でBLとしか見ていない3次元──王太子とその周辺──の話、だ。
この商会にも、転生者や転移者が何人も働いているので、彼ら、彼女らはここがゲームの世界だと知っている──まあ、あくまでも世界なだけ…だが。

…王城に堂々と上がれる理由が──リアルBLを眺める為──と言う何とも腐った思考である。

 「キョウコ、分かるわ!」

グッと親指を立てる。

 「シャルさん!」

彼女もまたグッと親指を立てる。

 「「リアルBLに私、悶絶~!よ♪」ですッ!」

キョウコとシャルティエは連れ立ってカフェへと繰り出すのだった…。

今日はこの後フリー。
いつもは王城に転移して、王妃教育を受けている時間だが──もう、婚約もしていないし、同人誌のネタにも出来ない。

…王族の婚約者でも何でもない公爵令嬢が気軽に訪ねて良い場所でもないし、“王城行かない宣言”もしたので、しばらくは行けない。

…この後はカフェで萌え語りの時間だ。
自然とミュリアリアも隣にいる──のは、彼女なのだ。

 「王太子のグレン様は格好良かったわよ♪THE攻めね♡お兄様を優しく抱くの…ウフフ…(腐笑)」
 「はあ?受けだし!腹黒宰相息子のジルベルト様に鬼畜に犯されるのよ!(腐笑)」
 「わ、私は…騎士団長の息子のシヴァ様×商人でもある商爵の息子、ニコラス様のカプ推しです…♡(腐笑)」

…アイスティー片手に話す内容か?
因みにカフェの一番奥の角席だ。
大っ広に話していい内容ではない、と分かっているのだ、ちゃんと。

…この3人の他にも腐女子は一定の層、居る。

彼女または彼ら(腐男子もいるよ)は物語に生きる人種だ。

折角腐れる環境にいるのだ、腐らずに居れるまいか──いや、ない!

あらゆる発行物──漫画や小説、アニメ──時には親兄弟をもその妄想のに掛けるのだ…!

 「「「はぁ~萌えるわ~♡」」」

3人はうっとりと微笑む。
目が♡だが…ちっともまともじゃない──し・こ・う♡

この3人は少々特殊だが──世の中、魔物を狩るのが苦手、だとか、魔物が怖い…だとか思う人間もいる。
そんな彼らはシャルティエが発起人の漫画や小説を書く人間となった。
…他にもエンハイム商会で売り出した魔道テレビ──これにより、情報も娯楽もスイッチ一つで楽しめるようになった。
薄型の四角い板状の箱──は今や領地所か王都にも一般に普及されている。
勿論、隣国のエヴァーガーデンやその他諸国の一部にも。

…そんな相手を逃したバスカは今外交上の窮地に立たされている。

…まあ、グレン様が玉座に就く頃には落ち着いているとは思うが。

各街や王都にテレビ局も出来、箱の中で動く人──つまり、俳優や歌手──の台頭も同時に紹介され、各チャンネルで取り扱うものが違ってくるようになった。

目敏いもので──遣り手の商会はこのテレビを通じてCMを流したり、自社製品を宣伝に使用した。
それらを彼ら“芸能人”が紹介する──

誰もが気軽に娯楽を楽しめる為、国営の放送局が主導のチャンネルは“放送料”を取り始めた。

…魔道テレビは起動するのに魔力が必要だ。

“建前”はより良い放送の為に使う──となっているが──実態はと言うものだ。
テレビや転移アイテムの普及で物流も良くなった昨今…主要都市と王都は転移門で繋がっている。

街道を移動する際はエンハイム領地だと馬車ではなく──魔道車か魔道列車だ。
主要都市を繋ぐ転移門は重量制限がある。
一回に4人まで、80㎏×4人分──320㎏までとされている。
人族以外だと1人か2人ぐらいしか一度に転移できない。
…防犯上、そうなった。

転移先は街の中央。
警備兵や監視カメラの監視の下、一組一組確認されている。
基本その都市部の住人以外は転移門の隣で料金を支払ったり、身分証の提示をしたりする。
戦時下でない限りは2、3質問されて街中を自由に移動できるようになる。

 「ウフフ…」
 「エッヘッヘッ…」
 「ぐへへ…っ♡」

涎を垂らし、幸せそうに悦る女子3人──淀んだ気を発しながら未だトリップしていた…時刻は夜18時。
3時間経つのだが──まだ、帰らないようだ。
アイスティー一杯でこの時間…。

腐女子彼女達の会話は尽きないらしい──
…。





 
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