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プロローグ
乳母は驚きました。Part2
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リュート様のお祝いの宴を終え、わたくしはリュート様のお願いを叶えるべくセイラート様のお部屋へと案内します。
セイラート様にはリュート様が訪れることをお伝えしてあるはずなので、今は起きて待っていらっしゃるでしょう。
セイラート様にあまり無理をさせてしまってはいけませんので、早めに訪れたいと思います。
――――――――――――――――――――
……リュート様は、どうなさったのでしょうか。
部屋に入り、セイラート様のお顔を見た瞬間、目を見開いて固まり、次の瞬間には頭を抱えてしまわれました。
この反応を見て、セイラート様も困惑なさっています。
何度も何度も名前をお呼びしているのに全く反応を示さないリュート様に、セイラート様はどうしたらいいのかと視線をこちらに向けられました。
わたくしもリュート様のお名前を呼ぶのですが、お返事をなさいません。
このようなことは初めてで、わたくしも困惑するばかりです。
しばらくはその状態が続き、リュート様は何かを必死に考えていらっしゃるようで、わたくしたちの声は全く届いておりません。
それでも諦めず、セイラート様は何度も呼び掛け、一際大きなお声でリュート様のお名前をお呼びになったとき、初めてリュート様が反応を示されました。
反応を示されたリュート様を見て、セイラート様は少し安堵したようです。
きちんと謝った後に自分から挨拶をしたリュート様を見て、わたくしは誇らしくなりましたが、セイラート様はやはりあまり体調がよろしくないようです。
多少とはいえ心労をおかけしてしまいましたし、咳も出てしまっていますし、そろそろお暇した方がよろしいでしょうか?
……と、わたくしは考えていたのですが……。
「お兄さま、クラハ、お兄さまの胸にある黒いもやもやしたのってなんですか?」
いきなり、リュート様がセイラート様の胸の辺りを見ながらそのようなことをお尋ねになりました。
わたくしにはそのようなものは見えないのですが……。
けれど、幼いリュート様が嘘をつくとも思えませんし、わたくしがおかしいのでしょうか……。
わたくしはこのお部屋に入ってからリュート様に翻弄されっぱなしで、情けない限りです。
「黒い、もや……ですか?」
「……リュート、そんなものは僕には見えないのだけど……」
セイラート様にもリュート様のおっしゃる黒いもやがお見えにならないと分かり、少しほっといたしました。
けれどもリュート様には確かにお見えになっているご様子で、予想外の事を言われたというようなお顔になられました。
少し考え、何かを納得したように頷くと、「触りたい」とセイラート様にお願いなさっています。
……大丈夫なのでしょうか。
少々不安はあるものの、リュート様にしか見えないのではわたくしが代行することも出来ません。
それに、リュート様のおっしゃる黒いもやが、もしもセイラート様が病弱になられたことと何か関係があるのだとすれば、どうにかして差し上げたい気持ちもあるのです。
セイラート様の許可を得たリュート様をベッドに乗せると、リュート様はセイラート様の方へ這うように進んで行かれます。
手が届く位置に到着なさると、セイラート様はリュート様の頭を撫でられました。
リュート様は普段から頭を撫でられるのがお好きなので、蕩けるような表情をされていましたが、途中で目的を思い出されたのか手を外されます。
初めてのご兄弟のふれあいに、わたくしは胸が温かくなりました。
外された手を少し残念そうに見つめるセイラート様には気がつかず、リュート様はセイラート様の胸の辺りを熱心に観察した後、恐る恐る触れられました。
「うー……やっぱり嫌な感じがする……」
そうおっしゃった直後、リュート様はいきなり体を仰け反らせ、セイラート様は苦しそうに胸を抑え、荒い息を繰り返し始めました。
ベッドから転げ落ちそうになったリュート様を間一髪のところで抱き留め、床に下ろしてから、わたくしは医者を呼ぶために部屋を出ることにしました。
まだ幼いリュート様が見るには酷な現場だろうと思い、外に出ることを勧めましたが、あの様子ではお出になることはないでしょう。
ならば、一刻も早く医者を呼ばなければ。
けれど……部屋を出る直前、ちらりとセイラート様の方を見た時、一瞬セイラート様のお体全体を黒いもやが覆っているように見えました。
……あれがセイラート様が苦しまれている原因だとするならば、医者は役には立たないかもしれません。
それに、先程リュート様は「胸にある」黒いもや、とおっしゃっていたはずです。
決して「全身を覆っている」とはおっしゃいませんでした。
それが本当だったならば、非常にまずいことが起こっている気がします。
おそらくは、今回のこれはいつもの発作とは訳が違うのでしょう……。
食堂で使用人たちが先程の宴の後片付けをしているはずなので、そちらに向かって走っていきます。
予想通りそこにいた使用人たちに向かって現在のセイラート様の状態を説明して、医者の手配とお父君であるフィレンツ様への報告の手配を頼み、急いでセイラート様のお部屋へ戻ります。
戻ったわたくしは、お部屋に入った瞬間に目に飛び込んできたセイラート様のお姿に唖然としました。
あんなにも苦しんでいたセイラート様は静かに横たわり、動かなくなっていらっしゃったのです。
一瞬間に合わなかったのかと絶望しかけましたが、穏やかな寝息が聞こえてきて心底安堵いたしました。
セイラート様の無事を確認し、次にリュート様のご様子を確認しようとしたわたくしは、セイラート様の身代わりになられたかのように床に倒れ伏していらっしゃるリュート様を発見して血の気が引きました。
慌ててリュート様を抱き起こすと、リュート様のお体は熱く、息も少し荒いことに気がつきました。
この状況のショックでお熱を出されてしまったのでしょうか……。
最初はそう思ったのですが、すぐに違うことに気がつきました。
リュート様から魔力の気配をごくわずかにしか感じないのです。
おそらくは魔力を使いすぎて魔力切れを起こされたのでしょうが……何故魔力切れに?
そこまで考えて、わたくしの頭の中で穏やかに眠るセイラート様のお姿と魔力切れを起こされたリュート様のお姿が重なりました。
まさかとは思いますが、リュート様がセイラート様のお体を覆っていたもやを魔法でお払いになった……?
リュート様は魔力の扱い方さえもまだご存じないはずですが……。
いえ、それ以前にそのような魔法はわたくしも知りませんし、わたくしが見たことのある本にも載っていませんでした。
では、どうして……?
そう思いながら少し苦しそうに眠るリュート様の頭を撫でていると、全ての手配が終わったらしく、使用人たちがセイラート様のお部屋に入ってきました。
その使用人たちにセイラート様のことを任せ、わたくしはリュート様をお部屋に運ぶことにしました。
―――――――――――――――――――――
リュート様をベッドで寝かせ、一旦落ち着くと先程の疑問が再び浮かび上がってきました。
……リュート様は、あの状態のセイラート様を救うことが出来るほどの魔法をどうして使うことができたのでしょうか。
そもそも、最初から使うことができたのならばすぐに使っていらっしゃったはずです。
ということは、リュート様は最初は使うことができず、途中で急に使えるようになった……?
そのようなこと、有り得るのでしょうか。
リュート様の寝顔を見ながらもんもんと考えていると、リュート様の肩辺りに光が集まるのが見えました。
その光はだんだん形を持ち、15センチくらいの大きさの小さな人になりました。
……あれは、精霊?
基本的に人間の前に姿を現さないはずの精霊が何故リュート様の肩に……?
……ま、まさか。
「……あの、精霊様。もしかして、リュート様と契約なされたのですか……?」
何故か跡形もなく消えていたセイラート様の黒いもや、使えなかったはずの魔法を突然使えるようになったリュート様、ここにいる精霊……これらを考えると、それ以外に考えられません。
わたくしが声をお掛けすると、こちらに振り向いた精霊様が答えてくださいました。
『……クラハだね?そうだよ、よろしく。あと、僕の名前はハイル。光の精霊ハイルだ。ティカからもらった名前なんだから、間違えないでよ?』
光の精霊。
浄化や治癒、そして光に関する魔法を得意とする精霊ですね。
闇と並んであまり契約をしない精霊なのですが……どうやらリュート様はハイル様に相当気に入られた様子です。
「了解いたしました、ハイル様。……セイラート様を救ってくださったのも、ハイル様なのですね?」
『うん、そう。ティカが助けを求めてたから、力を貸したんだ』
ああ、なるほど。
リュート様の強い願いに応じ、ハイル様がリュート様の魔力を使って魔法を行使したのですね。
リュート様は初めての魔法であれだけの魔力を使う魔法を使ったと。
そうなると、リュート様のお体にかかった負担はかなり大きそうですね……。
「そうですか……。ハイル様、セイラート様を救っていただき、誠にありがとうございました。……そして、これからはリュート様のことをよろしくお願い致します」
『もちろんだよ、ティカは必ず僕が守る。でも、あれを浄化するのにかなり無理をさせてしまったから心配だ』
そう言ってリュート様に寄り添うハイル様は、リュート様にとってとても心強い味方となってくださることでしょう。
通常、魔法を使う時は周りにいる精霊に魔力を渡し、力を貸していただくのですが、特定の精霊と契約した場合はその精霊に魔力を渡すことで力を貸していただきます。
精霊は基本的に気まぐれですので、力を貸してくれないこともありますし、ほとんどそのようなことはありませんが周りに精霊がいないこともあります。
ですが、契約した精霊は力を貸してくれないことなどほとんどありません。
精霊は本当に気に入った者としか契約いたしませんからね。
……つまりは、この契約でリュート様の身の危険は格段に減ることになります。
本当に喜ばしいことです。
……本日は色々な事がございましたが、全てが良い結果に収まることになりました。
それもこれも、リュート様のお力あってのこと。
わたくしは幼いのにも関わらず賢いリュート様の事を元から誇らしく感じておりました。
けれど、本日ご兄弟をお助けするために身を削る事の出来るリュート様を見て、より深くリュート様の事を誇らしく思うようになりました。
セイラート様も、あの光の精霊であるハイル様が浄化してくださったのですから、お元気になられるでしょう。
本当に、本日は素晴らしい日です。
セイラート様にはリュート様が訪れることをお伝えしてあるはずなので、今は起きて待っていらっしゃるでしょう。
セイラート様にあまり無理をさせてしまってはいけませんので、早めに訪れたいと思います。
――――――――――――――――――――
……リュート様は、どうなさったのでしょうか。
部屋に入り、セイラート様のお顔を見た瞬間、目を見開いて固まり、次の瞬間には頭を抱えてしまわれました。
この反応を見て、セイラート様も困惑なさっています。
何度も何度も名前をお呼びしているのに全く反応を示さないリュート様に、セイラート様はどうしたらいいのかと視線をこちらに向けられました。
わたくしもリュート様のお名前を呼ぶのですが、お返事をなさいません。
このようなことは初めてで、わたくしも困惑するばかりです。
しばらくはその状態が続き、リュート様は何かを必死に考えていらっしゃるようで、わたくしたちの声は全く届いておりません。
それでも諦めず、セイラート様は何度も呼び掛け、一際大きなお声でリュート様のお名前をお呼びになったとき、初めてリュート様が反応を示されました。
反応を示されたリュート様を見て、セイラート様は少し安堵したようです。
きちんと謝った後に自分から挨拶をしたリュート様を見て、わたくしは誇らしくなりましたが、セイラート様はやはりあまり体調がよろしくないようです。
多少とはいえ心労をおかけしてしまいましたし、咳も出てしまっていますし、そろそろお暇した方がよろしいでしょうか?
……と、わたくしは考えていたのですが……。
「お兄さま、クラハ、お兄さまの胸にある黒いもやもやしたのってなんですか?」
いきなり、リュート様がセイラート様の胸の辺りを見ながらそのようなことをお尋ねになりました。
わたくしにはそのようなものは見えないのですが……。
けれど、幼いリュート様が嘘をつくとも思えませんし、わたくしがおかしいのでしょうか……。
わたくしはこのお部屋に入ってからリュート様に翻弄されっぱなしで、情けない限りです。
「黒い、もや……ですか?」
「……リュート、そんなものは僕には見えないのだけど……」
セイラート様にもリュート様のおっしゃる黒いもやがお見えにならないと分かり、少しほっといたしました。
けれどもリュート様には確かにお見えになっているご様子で、予想外の事を言われたというようなお顔になられました。
少し考え、何かを納得したように頷くと、「触りたい」とセイラート様にお願いなさっています。
……大丈夫なのでしょうか。
少々不安はあるものの、リュート様にしか見えないのではわたくしが代行することも出来ません。
それに、リュート様のおっしゃる黒いもやが、もしもセイラート様が病弱になられたことと何か関係があるのだとすれば、どうにかして差し上げたい気持ちもあるのです。
セイラート様の許可を得たリュート様をベッドに乗せると、リュート様はセイラート様の方へ這うように進んで行かれます。
手が届く位置に到着なさると、セイラート様はリュート様の頭を撫でられました。
リュート様は普段から頭を撫でられるのがお好きなので、蕩けるような表情をされていましたが、途中で目的を思い出されたのか手を外されます。
初めてのご兄弟のふれあいに、わたくしは胸が温かくなりました。
外された手を少し残念そうに見つめるセイラート様には気がつかず、リュート様はセイラート様の胸の辺りを熱心に観察した後、恐る恐る触れられました。
「うー……やっぱり嫌な感じがする……」
そうおっしゃった直後、リュート様はいきなり体を仰け反らせ、セイラート様は苦しそうに胸を抑え、荒い息を繰り返し始めました。
ベッドから転げ落ちそうになったリュート様を間一髪のところで抱き留め、床に下ろしてから、わたくしは医者を呼ぶために部屋を出ることにしました。
まだ幼いリュート様が見るには酷な現場だろうと思い、外に出ることを勧めましたが、あの様子ではお出になることはないでしょう。
ならば、一刻も早く医者を呼ばなければ。
けれど……部屋を出る直前、ちらりとセイラート様の方を見た時、一瞬セイラート様のお体全体を黒いもやが覆っているように見えました。
……あれがセイラート様が苦しまれている原因だとするならば、医者は役には立たないかもしれません。
それに、先程リュート様は「胸にある」黒いもや、とおっしゃっていたはずです。
決して「全身を覆っている」とはおっしゃいませんでした。
それが本当だったならば、非常にまずいことが起こっている気がします。
おそらくは、今回のこれはいつもの発作とは訳が違うのでしょう……。
食堂で使用人たちが先程の宴の後片付けをしているはずなので、そちらに向かって走っていきます。
予想通りそこにいた使用人たちに向かって現在のセイラート様の状態を説明して、医者の手配とお父君であるフィレンツ様への報告の手配を頼み、急いでセイラート様のお部屋へ戻ります。
戻ったわたくしは、お部屋に入った瞬間に目に飛び込んできたセイラート様のお姿に唖然としました。
あんなにも苦しんでいたセイラート様は静かに横たわり、動かなくなっていらっしゃったのです。
一瞬間に合わなかったのかと絶望しかけましたが、穏やかな寝息が聞こえてきて心底安堵いたしました。
セイラート様の無事を確認し、次にリュート様のご様子を確認しようとしたわたくしは、セイラート様の身代わりになられたかのように床に倒れ伏していらっしゃるリュート様を発見して血の気が引きました。
慌ててリュート様を抱き起こすと、リュート様のお体は熱く、息も少し荒いことに気がつきました。
この状況のショックでお熱を出されてしまったのでしょうか……。
最初はそう思ったのですが、すぐに違うことに気がつきました。
リュート様から魔力の気配をごくわずかにしか感じないのです。
おそらくは魔力を使いすぎて魔力切れを起こされたのでしょうが……何故魔力切れに?
そこまで考えて、わたくしの頭の中で穏やかに眠るセイラート様のお姿と魔力切れを起こされたリュート様のお姿が重なりました。
まさかとは思いますが、リュート様がセイラート様のお体を覆っていたもやを魔法でお払いになった……?
リュート様は魔力の扱い方さえもまだご存じないはずですが……。
いえ、それ以前にそのような魔法はわたくしも知りませんし、わたくしが見たことのある本にも載っていませんでした。
では、どうして……?
そう思いながら少し苦しそうに眠るリュート様の頭を撫でていると、全ての手配が終わったらしく、使用人たちがセイラート様のお部屋に入ってきました。
その使用人たちにセイラート様のことを任せ、わたくしはリュート様をお部屋に運ぶことにしました。
―――――――――――――――――――――
リュート様をベッドで寝かせ、一旦落ち着くと先程の疑問が再び浮かび上がってきました。
……リュート様は、あの状態のセイラート様を救うことが出来るほどの魔法をどうして使うことができたのでしょうか。
そもそも、最初から使うことができたのならばすぐに使っていらっしゃったはずです。
ということは、リュート様は最初は使うことができず、途中で急に使えるようになった……?
そのようなこと、有り得るのでしょうか。
リュート様の寝顔を見ながらもんもんと考えていると、リュート様の肩辺りに光が集まるのが見えました。
その光はだんだん形を持ち、15センチくらいの大きさの小さな人になりました。
……あれは、精霊?
基本的に人間の前に姿を現さないはずの精霊が何故リュート様の肩に……?
……ま、まさか。
「……あの、精霊様。もしかして、リュート様と契約なされたのですか……?」
何故か跡形もなく消えていたセイラート様の黒いもや、使えなかったはずの魔法を突然使えるようになったリュート様、ここにいる精霊……これらを考えると、それ以外に考えられません。
わたくしが声をお掛けすると、こちらに振り向いた精霊様が答えてくださいました。
『……クラハだね?そうだよ、よろしく。あと、僕の名前はハイル。光の精霊ハイルだ。ティカからもらった名前なんだから、間違えないでよ?』
光の精霊。
浄化や治癒、そして光に関する魔法を得意とする精霊ですね。
闇と並んであまり契約をしない精霊なのですが……どうやらリュート様はハイル様に相当気に入られた様子です。
「了解いたしました、ハイル様。……セイラート様を救ってくださったのも、ハイル様なのですね?」
『うん、そう。ティカが助けを求めてたから、力を貸したんだ』
ああ、なるほど。
リュート様の強い願いに応じ、ハイル様がリュート様の魔力を使って魔法を行使したのですね。
リュート様は初めての魔法であれだけの魔力を使う魔法を使ったと。
そうなると、リュート様のお体にかかった負担はかなり大きそうですね……。
「そうですか……。ハイル様、セイラート様を救っていただき、誠にありがとうございました。……そして、これからはリュート様のことをよろしくお願い致します」
『もちろんだよ、ティカは必ず僕が守る。でも、あれを浄化するのにかなり無理をさせてしまったから心配だ』
そう言ってリュート様に寄り添うハイル様は、リュート様にとってとても心強い味方となってくださることでしょう。
通常、魔法を使う時は周りにいる精霊に魔力を渡し、力を貸していただくのですが、特定の精霊と契約した場合はその精霊に魔力を渡すことで力を貸していただきます。
精霊は基本的に気まぐれですので、力を貸してくれないこともありますし、ほとんどそのようなことはありませんが周りに精霊がいないこともあります。
ですが、契約した精霊は力を貸してくれないことなどほとんどありません。
精霊は本当に気に入った者としか契約いたしませんからね。
……つまりは、この契約でリュート様の身の危険は格段に減ることになります。
本当に喜ばしいことです。
……本日は色々な事がございましたが、全てが良い結果に収まることになりました。
それもこれも、リュート様のお力あってのこと。
わたくしは幼いのにも関わらず賢いリュート様の事を元から誇らしく感じておりました。
けれど、本日ご兄弟をお助けするために身を削る事の出来るリュート様を見て、より深くリュート様の事を誇らしく思うようになりました。
セイラート様も、あの光の精霊であるハイル様が浄化してくださったのですから、お元気になられるでしょう。
本当に、本日は素晴らしい日です。
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