5 / 66
プロローグ
乳母は驚きました。Part1
しおりを挟む
初めまして、わたくしはクラハと申します。
リュート様の乳母で、いつも身の回りのお世話をさせていただいている者でございます。
本日はリュート様のお誕生日。
リュート様からセイラート様にお会いしたいと頼まれたときには驚きました。
セイラート様とリュート様のお体のことを考えて今まで会わせて差し上げることは出来ませんでしたが、お誕生日の直前にそのような可愛らしいお願いをされて断ることなど出来るはずがありましょうか。
わたくしはその後すぐにセイラート様のお付きの者に約束を取り付けました。
そして、本日、御髪を整えている間も嬉しそうににこにこと笑っていらっしゃるリュート様はとても微笑ましく、暖かい気持ちになったものです。
会ったことがなくとも、お兄様のことが大好きなのでしょう。
「リュート様、お誕生日おめでとうございます。本日はセイラート様にお会いしますが、セイラート様は御体が弱くていらっしゃるので、あまり騒いだりしてはいけませんよ」
リュート様は好奇心旺盛ですけれど、こちらが本当に困るようなことはしない、幼くてもとても賢いお方なので、本当は忠告など必要ないのですが、念のために忠告しておきます。
「わかった、クラハ」
……!!
リュ、リュート様が、初めて文章でお喋りに……!!
わたくしはリュート様の成長を感じて感動のあまり涙ぐみ、リュート様に慰められてしまいました。
本当に、賢く優しいお方です。
リュート様に大丈夫だと告げ、朝から使用人一丸となって心を込めて料理を作った食堂へお連れしました。
使用人一同からの誕生日の祝福に満面の笑顔でお答えになるリュート様を見て、使用人たちはあまりの可愛らしさに悶えておりました。
使用人たちのそんな様子を見て少し困惑なさるリュート様もお可愛らしかったのですが、この者たちはいつもこうなので早く慣れた方がリュート様の精神衛生上よろしいでしょう。
お席に誘導すると、リュート様はお席に座ってから周りを少し見て、わたくしたちも共に食べたいとおっしゃいました。
できれば叶えて差し上げたいのですが、使用人が主と同じ食卓につくことはできません。
そう思ったのですが、リュート様が少し考えておっしゃられた言葉に思考が停止いたしました。
「これは命令だよ、皆で食べるの!」
『……!!わ……分かりましたっ!』
……反射的に返事をしてしまいました。
どこでそのような知識を身に付けられたのでしょうか……。
まあ、リュート様が嬉しそうなので良しとします。
……『初めての命令だ!』などと言いながら狂喜乱舞しだした使用人たちには後で教育が必要でしょうが。
この屋敷の者は皆お母様がお亡くなりになってから健気に生きていらっしゃるリュート様を見守ってきましたので、二歳になられた感動は私も分かりますけれどね。
その後、リュート様は非常に嬉しそうにお食事をなさっていて、楽しんでくださっているのがよく分かり、わたくしも年甲斐もなく楽しんでしまいました。
リュート様の乳母で、いつも身の回りのお世話をさせていただいている者でございます。
本日はリュート様のお誕生日。
リュート様からセイラート様にお会いしたいと頼まれたときには驚きました。
セイラート様とリュート様のお体のことを考えて今まで会わせて差し上げることは出来ませんでしたが、お誕生日の直前にそのような可愛らしいお願いをされて断ることなど出来るはずがありましょうか。
わたくしはその後すぐにセイラート様のお付きの者に約束を取り付けました。
そして、本日、御髪を整えている間も嬉しそうににこにこと笑っていらっしゃるリュート様はとても微笑ましく、暖かい気持ちになったものです。
会ったことがなくとも、お兄様のことが大好きなのでしょう。
「リュート様、お誕生日おめでとうございます。本日はセイラート様にお会いしますが、セイラート様は御体が弱くていらっしゃるので、あまり騒いだりしてはいけませんよ」
リュート様は好奇心旺盛ですけれど、こちらが本当に困るようなことはしない、幼くてもとても賢いお方なので、本当は忠告など必要ないのですが、念のために忠告しておきます。
「わかった、クラハ」
……!!
リュ、リュート様が、初めて文章でお喋りに……!!
わたくしはリュート様の成長を感じて感動のあまり涙ぐみ、リュート様に慰められてしまいました。
本当に、賢く優しいお方です。
リュート様に大丈夫だと告げ、朝から使用人一丸となって心を込めて料理を作った食堂へお連れしました。
使用人一同からの誕生日の祝福に満面の笑顔でお答えになるリュート様を見て、使用人たちはあまりの可愛らしさに悶えておりました。
使用人たちのそんな様子を見て少し困惑なさるリュート様もお可愛らしかったのですが、この者たちはいつもこうなので早く慣れた方がリュート様の精神衛生上よろしいでしょう。
お席に誘導すると、リュート様はお席に座ってから周りを少し見て、わたくしたちも共に食べたいとおっしゃいました。
できれば叶えて差し上げたいのですが、使用人が主と同じ食卓につくことはできません。
そう思ったのですが、リュート様が少し考えておっしゃられた言葉に思考が停止いたしました。
「これは命令だよ、皆で食べるの!」
『……!!わ……分かりましたっ!』
……反射的に返事をしてしまいました。
どこでそのような知識を身に付けられたのでしょうか……。
まあ、リュート様が嬉しそうなので良しとします。
……『初めての命令だ!』などと言いながら狂喜乱舞しだした使用人たちには後で教育が必要でしょうが。
この屋敷の者は皆お母様がお亡くなりになってから健気に生きていらっしゃるリュート様を見守ってきましたので、二歳になられた感動は私も分かりますけれどね。
その後、リュート様は非常に嬉しそうにお食事をなさっていて、楽しんでくださっているのがよく分かり、わたくしも年甲斐もなく楽しんでしまいました。
0
お気に入りに追加
2,238
あなたにおすすめの小説
絶対零度の王子さま(アルファポリス版)
みきかなた
恋愛
「お前は友達なんかじゃねーよ。」
高校の卒業式、人生最大の勇気を振り絞り告白したのに、待っていたのは彼の冷たい一言でした。
ビビりでチキンな山城七海と、『絶対零度』とあだ名される藤原一佳(いちか)の、高校二年生から社会人まで、まったりのんびりジレジレのラブコメディです。
ムーンライトノベルズからの転載です。
【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲
もわゆぬ
恋愛
美しく可憐な白百合は、
強く凛々しい帝国の黒鷲に恋をする。
黒鷲を強く望んだ白百合は、運良く黒鷲と夫婦となる。
白百合(男)と黒鷲(女)の男女逆転?の恋模様。
これは、そんな二人が本当の夫婦になる迄のお話し。
※小説家になろう、ノベルアップ+様にも投稿しています。
【完結】『私に譲って?』と言っていたら、幸せになりましたわ。{『私に譲って?』…の姉が主人公です。}
まりぃべる
恋愛
『私に譲って?』
そう私は、いつも妹に言うの。だって、私は病弱なんだもの。
活発な妹を見ていると苛つくのよ。
そう言っていたら、私、いろいろあったけれど、幸せになりましたわ。
☆★
『私に譲って?』そう言うお姉様はそれで幸せなのかしら?譲って差し上げてたら、私は幸せになったので良いですけれど!の作品で出てきた姉がおもな主人公です。
作品のカラーが上の作品と全く違うので、別作品にしました。
多分これだけでも話は分かると思います。
有難い事に読者様のご要望が思いがけずありましたので、短いですが書いてみました。急いで書き上げたので、上手く書けているかどうか…。
期待は…多分裏切ってしまって申し訳ないですけれど。
全7話です。出来てますので随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる