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プロローグ

乳母は驚きました。Part1

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初めまして、わたくしはクラハと申します。
リュート様の乳母で、いつも身の回りのお世話をさせていただいている者でございます。


本日はリュート様のお誕生日。
リュート様からセイラート様にお会いしたいと頼まれたときには驚きました。
セイラート様とリュート様のお体のことを考えて今まで会わせて差し上げることは出来ませんでしたが、お誕生日の直前にそのような可愛らしいお願いをされて断ることなど出来るはずがありましょうか。
わたくしはその後すぐにセイラート様のお付きの者に約束を取り付けました。

そして、本日、御髪を整えている間も嬉しそうににこにこと笑っていらっしゃるリュート様はとても微笑ましく、暖かい気持ちになったものです。
会ったことがなくとも、お兄様のことが大好きなのでしょう。

「リュート様、お誕生日おめでとうございます。本日はセイラート様にお会いしますが、セイラート様は御体が弱くていらっしゃるので、あまり騒いだりしてはいけませんよ」

リュート様は好奇心旺盛ですけれど、こちらが本当に困るようなことはしない、幼くてもとても賢いお方なので、本当は忠告など必要ないのですが、念のために忠告しておきます。

「わかった、クラハ」

……!!
リュ、リュート様が、初めて文章でお喋りに……!!
わたくしはリュート様の成長を感じて感動のあまり涙ぐみ、リュート様に慰められてしまいました。
本当に、賢く優しいお方です。
リュート様に大丈夫だと告げ、朝から使用人一丸となって心を込めて料理を作った食堂へお連れしました。


使用人一同からの誕生日の祝福に満面の笑顔でお答えになるリュート様を見て、使用人たちはあまりの可愛らしさに悶えておりました。
使用人たちのそんな様子を見て少し困惑なさるリュート様もお可愛らしかったのですが、この者たちはいつもこうなので早く慣れた方がリュート様の精神衛生上よろしいでしょう。

お席に誘導すると、リュート様はお席に座ってから周りを少し見て、わたくしたちも共に食べたいとおっしゃいました。
できれば叶えて差し上げたいのですが、使用人が主と同じ食卓につくことはできません。

そう思ったのですが、リュート様が少し考えておっしゃられた言葉に思考が停止いたしました。

「これは命令だよ、皆で食べるの!」

『……!!わ……分かりましたっ!』

……反射的に返事をしてしまいました。
どこでそのような知識を身に付けられたのでしょうか……。
まあ、リュート様が嬉しそうなので良しとします。
……『初めての命令だ!』などと言いながら狂喜乱舞しだした使用人たちには後で教育が必要でしょうが。
この屋敷の者は皆お母様がお亡くなりになってから健気に生きていらっしゃるリュート様を見守ってきましたので、二歳になられた感動は私も分かりますけれどね。

その後、リュート様は非常に嬉しそうにお食事をなさっていて、楽しんでくださっているのがよく分かり、わたくしも年甲斐もなく楽しんでしまいました。
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