45 / 104
44.私達の関係
しおりを挟む
「……シン……」
彼の服を少し引き寄せ、視線を合わせようと顔を離すと、彼はそれを汲み取り私を見た。
「何?」
さっきと変わらないようで、どこか少し優しい声と、穏やかな瞳に、ドキッとする。
また少し前に出て、キュッと彼の服を握った。
「…キスしても、いいですか?」
「……いいよ」
彼はほんのりと目を見開いたが、早くに返事をくれた。
意を決して、自分から近づき、瞼を閉じる。
彼の唇が、私のと重なった。
長いようで短い、静かな時間が過ぎ、少し顔を離すと、彼もまた同じく瞼を開けるところで、黒真珠のような瞳が私を見つめ返した。
その漆黒の瞳に揺らぎながらも、私はまた瞼を下ろす。
このままじゃダメ。
もっと……
彼がそうするように、少しだけ唇を噛むようにゆっくりとキスをする。
チュッ……チュッ……
唇がほんの少しでも離れるたびにリップ音が自然と耳に入る。
何度か角度を変えて、大人のキスをしてみる。
もっと……
握りしめていた手のひらをようやく彼の胸元に伸ばし、そっと開いてなぞるように背中へ回した。
彼の大きな肩甲骨をゆっくり引き寄せると、それまでキスを返していた彼は大きく息を吸い姿勢を変え、キスをしたまま私の背中に回していた片腕で私をグッと引き寄せた。
その動きに思わずビクッと反応してしまったが、そのままキスが続いたことで、少しホッとした。
彼は、私の意図を汲み取ってくれている。
「ん……」
チュッ…チュ……
唇を撫でるような、噛み付くような、そんなキス。
腕枕となっていた彼の右腕が、私の後頭部をしっかりと抱いた。
髪の毛一本一本が、彼の指先に神経を集中させて、敏感に感じ取っているのがわかる。
薄く目を開くと、彼もまた私を見つめていて、その綺麗な瞳にドキッと胸が高鳴る。
「は……」
「……いいんだな?」
顔を離し、身体を起こした彼は、私を見下ろしたまま一言、そう告げた。
彼なら、分かってくれると思った。
「……今日は私、たくさん尽くしていただきました。
それに、シンは、私の彼氏だから…
シンが求めることで、お返しをしたいです。
私の身体…好きに使ってください」
シンが前に言ったように、男の人が求める事が、身体の関係なら。
私は職務を全うして、彼に返さなきゃいけない。
浅井さんにしたように。
浅井さんが私に求めたように。
シンの、彼女として。
「…分かった」
しばらくの間ののち、彼は静かに答えた。
また彼のキスが降りてくる。
これでいい。
気づかれないように唇を結び、目を瞑る。
私達の付き合いは、そういう関係だもの。
彼の服を少し引き寄せ、視線を合わせようと顔を離すと、彼はそれを汲み取り私を見た。
「何?」
さっきと変わらないようで、どこか少し優しい声と、穏やかな瞳に、ドキッとする。
また少し前に出て、キュッと彼の服を握った。
「…キスしても、いいですか?」
「……いいよ」
彼はほんのりと目を見開いたが、早くに返事をくれた。
意を決して、自分から近づき、瞼を閉じる。
彼の唇が、私のと重なった。
長いようで短い、静かな時間が過ぎ、少し顔を離すと、彼もまた同じく瞼を開けるところで、黒真珠のような瞳が私を見つめ返した。
その漆黒の瞳に揺らぎながらも、私はまた瞼を下ろす。
このままじゃダメ。
もっと……
彼がそうするように、少しだけ唇を噛むようにゆっくりとキスをする。
チュッ……チュッ……
唇がほんの少しでも離れるたびにリップ音が自然と耳に入る。
何度か角度を変えて、大人のキスをしてみる。
もっと……
握りしめていた手のひらをようやく彼の胸元に伸ばし、そっと開いてなぞるように背中へ回した。
彼の大きな肩甲骨をゆっくり引き寄せると、それまでキスを返していた彼は大きく息を吸い姿勢を変え、キスをしたまま私の背中に回していた片腕で私をグッと引き寄せた。
その動きに思わずビクッと反応してしまったが、そのままキスが続いたことで、少しホッとした。
彼は、私の意図を汲み取ってくれている。
「ん……」
チュッ…チュ……
唇を撫でるような、噛み付くような、そんなキス。
腕枕となっていた彼の右腕が、私の後頭部をしっかりと抱いた。
髪の毛一本一本が、彼の指先に神経を集中させて、敏感に感じ取っているのがわかる。
薄く目を開くと、彼もまた私を見つめていて、その綺麗な瞳にドキッと胸が高鳴る。
「は……」
「……いいんだな?」
顔を離し、身体を起こした彼は、私を見下ろしたまま一言、そう告げた。
彼なら、分かってくれると思った。
「……今日は私、たくさん尽くしていただきました。
それに、シンは、私の彼氏だから…
シンが求めることで、お返しをしたいです。
私の身体…好きに使ってください」
シンが前に言ったように、男の人が求める事が、身体の関係なら。
私は職務を全うして、彼に返さなきゃいけない。
浅井さんにしたように。
浅井さんが私に求めたように。
シンの、彼女として。
「…分かった」
しばらくの間ののち、彼は静かに答えた。
また彼のキスが降りてくる。
これでいい。
気づかれないように唇を結び、目を瞑る。
私達の付き合いは、そういう関係だもの。
10
お気に入りに追加
533
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる