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1.動機は不純
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「……お見合い?」
間の抜けた返事をしたのは、西条家の長女である私・西条 結奈だった。
「そうだ。私達が選ぶのは西条家に相応しい相手だ。お前も他人の顔を気にする必要も無く、堂々と外を歩けるだろ?」
そう、窓の外を眺めながら淡々と自分の思考を押し付けるのは、私の父・西条 椿。
世間から見たら大企業の社長であり、たった一人で頂点まで上り詰め、20年に渡りトップを独占してきたとされる超大御所──らしいが、私にとってはただの分からず屋なのである。
「……私、お見合いはしたくありません」
「そうは言っても、お前の周りでは噂すら立たないではないか。
お前も二十歳を過ぎた。
お前に男の気配が無いのを喜ぶ年齢でも無いように思うがね?」
「それは単に、好みの男性に巡り合っていないだけで……」
現に、父のバックがあるからか、この歳にもなって男性とまともに会話したことはない。
大体は業務的な会話で終わり、それ以上は何もない。
そうしてこちらも心が開けぬまま、いつの間にかこの歳になってしまったのだ。
大学生になればと思っていたが、状況は変わらず。
むしろ同級生という括りも浅くなり、更に父の名が目立つようになってしまい、2年のうちに教室でもほぼ孤立しているまでに至ってしまった。
見透かされているのは、間違いない、と思う。
悔しい話だが。
「それは見合いも同じことだろう。
出会いがなければ相手も見つからん。
良い見合い相手もいるかもしれんだろ」
桜の花びらが舞うのが、父越しに見えた。
それは間違っていないのだろう。
しかしそれでも、私はお見合いが嫌だった。
「でも、お父様の選んだ相手と半強制的に結婚など、したくはありません。
私の人生の全てを、お父様に決められてしまうようで、凄く嫌です。
私はもう、子供じゃありません!」
幼稚園も小学校も、中学も、高校も。
父が選び、受験した。
父が必要なスキルだとして、幼稚園からずっとピアノと英語を学び、身体を傷つけてはならないとして運動部は禁止され、吹奏楽を始め、それ以外の時間は家庭教師をつけて勉強をした。
結果、純粋無垢なエリート扱いを受け続け、テレビなどの世間の話題から一歩外を生き続けており、友達もまともに作れなかったのである。
大学生になった初日、何度も見た、自己紹介から好きなものへ話題が切り替わり、それが何度も繰り返されて親睦が深まっていくあの様を見たとき、ハッキリと感じたのだ。
私の人生は、間違っていると。
このまま父の言う通りに生きていては、私自身の人生は歩めない。
これは父の作った人生だと。
ここでお見合いという行為まで許容してしまったら、私は一生父の人形と化してしまうと。
「反抗期といった所か。
後日、改めて見合いの予定を伝える。
見合いをしてみて、気持ちを整理するといい」
「話は以上だ」と早々に切り上げられたのを合図に、私は頭を下げて部屋を出た。
緊張のせいか、指先がふるえた。
こんなの、絶対におかしい。
これは、最初で最後の反抗期だ。
キリッと顔を上げた。
私は、父の言いなりをやめる。
お見合い結婚をする前に──子供を作ってやる!
間の抜けた返事をしたのは、西条家の長女である私・西条 結奈だった。
「そうだ。私達が選ぶのは西条家に相応しい相手だ。お前も他人の顔を気にする必要も無く、堂々と外を歩けるだろ?」
そう、窓の外を眺めながら淡々と自分の思考を押し付けるのは、私の父・西条 椿。
世間から見たら大企業の社長であり、たった一人で頂点まで上り詰め、20年に渡りトップを独占してきたとされる超大御所──らしいが、私にとってはただの分からず屋なのである。
「……私、お見合いはしたくありません」
「そうは言っても、お前の周りでは噂すら立たないではないか。
お前も二十歳を過ぎた。
お前に男の気配が無いのを喜ぶ年齢でも無いように思うがね?」
「それは単に、好みの男性に巡り合っていないだけで……」
現に、父のバックがあるからか、この歳にもなって男性とまともに会話したことはない。
大体は業務的な会話で終わり、それ以上は何もない。
そうしてこちらも心が開けぬまま、いつの間にかこの歳になってしまったのだ。
大学生になればと思っていたが、状況は変わらず。
むしろ同級生という括りも浅くなり、更に父の名が目立つようになってしまい、2年のうちに教室でもほぼ孤立しているまでに至ってしまった。
見透かされているのは、間違いない、と思う。
悔しい話だが。
「それは見合いも同じことだろう。
出会いがなければ相手も見つからん。
良い見合い相手もいるかもしれんだろ」
桜の花びらが舞うのが、父越しに見えた。
それは間違っていないのだろう。
しかしそれでも、私はお見合いが嫌だった。
「でも、お父様の選んだ相手と半強制的に結婚など、したくはありません。
私の人生の全てを、お父様に決められてしまうようで、凄く嫌です。
私はもう、子供じゃありません!」
幼稚園も小学校も、中学も、高校も。
父が選び、受験した。
父が必要なスキルだとして、幼稚園からずっとピアノと英語を学び、身体を傷つけてはならないとして運動部は禁止され、吹奏楽を始め、それ以外の時間は家庭教師をつけて勉強をした。
結果、純粋無垢なエリート扱いを受け続け、テレビなどの世間の話題から一歩外を生き続けており、友達もまともに作れなかったのである。
大学生になった初日、何度も見た、自己紹介から好きなものへ話題が切り替わり、それが何度も繰り返されて親睦が深まっていくあの様を見たとき、ハッキリと感じたのだ。
私の人生は、間違っていると。
このまま父の言う通りに生きていては、私自身の人生は歩めない。
これは父の作った人生だと。
ここでお見合いという行為まで許容してしまったら、私は一生父の人形と化してしまうと。
「反抗期といった所か。
後日、改めて見合いの予定を伝える。
見合いをしてみて、気持ちを整理するといい」
「話は以上だ」と早々に切り上げられたのを合図に、私は頭を下げて部屋を出た。
緊張のせいか、指先がふるえた。
こんなの、絶対におかしい。
これは、最初で最後の反抗期だ。
キリッと顔を上げた。
私は、父の言いなりをやめる。
お見合い結婚をする前に──子供を作ってやる!
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