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第3章 少年の真意
パンとチーズ
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水の汲み替えに教会の外に出ると、今朝の売店の婦人がこちらに来るところだった。
「あら、あなたリヴの……」
「いえ、私は何でも……教会に、何か用ですか?」
思わず反論しようとして、踏み止まる。
この話題は出せば出すほど墓穴を掘る。
「ああ、子供達にコレをね」
「これ…売り物じゃないんですか?」
婦人の持つバケットの中には、お店で売っていたパンとチーズ、その他の食品まで入っていた。
「そうなんだけど、売れ残りでさ。
明日に回せるものでもないやつはこうして食べ盛りの子供達に寄付してるのさ。
ほぼ毎日だけど、これが夕飯になるみたいだね」
「夕飯……失礼なことをお聞きしますが、売り上げは?
賄えてはいるのですか?」
「フフ…心配ないよ。
あたしのはほぼ趣味みたいなもんだし、旅人や常連さんに食べてもらいたいだけだからね。
旦那の稼ぎもあるし。
まぁ、だいたいはリヴや子供達の為なんだけど。
売店だってこの街ではあの店だけだからね」
「………」
婦人は嬉しそうに笑った。
「リヴは何も言わないけど、毎日買いに来てくれてるんだよ。
子供の頃からそう」
「子供の頃から?」
「レミさん」
教会の隣の小屋からシスターが現れて、私たちのところにやって来た。
「シスターミジェリ。
はい、これが今日の分」
「わぁこんなに。
ありがとうございます」
「あと、これ、良かったらあなたも」
「え、私にですか?」
バケットで気付かなかったが、婦人は別に袋を持っていて、それをこちらに手渡した。
中を覗くと、大きめのパンが3つ入っている。
それと、チーズが2つ。
「こんなに……食べ切れません。子供達に……」
「リヴと分けてくれるかい?」
「え?」
婦人はニッコリと微笑んだ。
「リヴ、今日遠慮して全然食べなかっただろ? あの子、昔からそうなんだ。
他人優先なところがあってね? 多分、あなたが来たから子供達に配る分が減るって、思ったんじゃないかな?」
「子供達……」
リヴは、ここの子供達に慕われている。
ただ遊ぶだけの相手なのかと思っていたが、それだけじゃないんだ。
きっと、本気で、子供達を想ってるから……。
「まぁ、今日はその逆で、大量に作っちゃったんだけどね!
あなたがリヴの、って、噂聞いたから」
「……あの、その話は」
「いいんですよ、シュライカさん」
シスターがフフッと笑った。
「皆さん、気付いてますよ。
それでも、皆さん、あなたが来てくれて、嬉しいんです」
「嬉しいって……」
そうよ、と婦人が口を開く。
「リヴ、あなたに心を開いてるように見えるからね。
今までどんな女の子が来ようと見向きもしなかったリヴが……」
「それは、女のハンターが少ないからでは? 物珍しかったのでは、無いでしょうか」
シスターと婦人は顔を合わせ、同じようにフフッと笑った。
「さぁ? あの子は結構自分のことに鈍感だからねぇ。
でも、分かるのよ」
「私達、ずっとあの子を見て来てるから。
あの子はとっても愛に溢れた子よ?
神のご加護も付いているわ」
2人の笑顔が夕日に照らされて、眩しさに目を逸らした。
神の、ご加護……。
どうして、この村の人は皆、彼をそんな風に見れるのだろう?
それに、リヴが毒に侵されても、そこまで問題視している様子が無い。
シスターの手際も慣れていたし、大して気にしていなかった。
それが、いつものことなのだろうか?
何故、あんな変な男が、これほど人を惹きつけられるのだろう?
人を、この村を、大切にしている。
自己犠牲も、覚悟の上で。
私には、分からない。
ただ、胸がギュッと、熱く焼けそうだった。
「あら、あなたリヴの……」
「いえ、私は何でも……教会に、何か用ですか?」
思わず反論しようとして、踏み止まる。
この話題は出せば出すほど墓穴を掘る。
「ああ、子供達にコレをね」
「これ…売り物じゃないんですか?」
婦人の持つバケットの中には、お店で売っていたパンとチーズ、その他の食品まで入っていた。
「そうなんだけど、売れ残りでさ。
明日に回せるものでもないやつはこうして食べ盛りの子供達に寄付してるのさ。
ほぼ毎日だけど、これが夕飯になるみたいだね」
「夕飯……失礼なことをお聞きしますが、売り上げは?
賄えてはいるのですか?」
「フフ…心配ないよ。
あたしのはほぼ趣味みたいなもんだし、旅人や常連さんに食べてもらいたいだけだからね。
旦那の稼ぎもあるし。
まぁ、だいたいはリヴや子供達の為なんだけど。
売店だってこの街ではあの店だけだからね」
「………」
婦人は嬉しそうに笑った。
「リヴは何も言わないけど、毎日買いに来てくれてるんだよ。
子供の頃からそう」
「子供の頃から?」
「レミさん」
教会の隣の小屋からシスターが現れて、私たちのところにやって来た。
「シスターミジェリ。
はい、これが今日の分」
「わぁこんなに。
ありがとうございます」
「あと、これ、良かったらあなたも」
「え、私にですか?」
バケットで気付かなかったが、婦人は別に袋を持っていて、それをこちらに手渡した。
中を覗くと、大きめのパンが3つ入っている。
それと、チーズが2つ。
「こんなに……食べ切れません。子供達に……」
「リヴと分けてくれるかい?」
「え?」
婦人はニッコリと微笑んだ。
「リヴ、今日遠慮して全然食べなかっただろ? あの子、昔からそうなんだ。
他人優先なところがあってね? 多分、あなたが来たから子供達に配る分が減るって、思ったんじゃないかな?」
「子供達……」
リヴは、ここの子供達に慕われている。
ただ遊ぶだけの相手なのかと思っていたが、それだけじゃないんだ。
きっと、本気で、子供達を想ってるから……。
「まぁ、今日はその逆で、大量に作っちゃったんだけどね!
あなたがリヴの、って、噂聞いたから」
「……あの、その話は」
「いいんですよ、シュライカさん」
シスターがフフッと笑った。
「皆さん、気付いてますよ。
それでも、皆さん、あなたが来てくれて、嬉しいんです」
「嬉しいって……」
そうよ、と婦人が口を開く。
「リヴ、あなたに心を開いてるように見えるからね。
今までどんな女の子が来ようと見向きもしなかったリヴが……」
「それは、女のハンターが少ないからでは? 物珍しかったのでは、無いでしょうか」
シスターと婦人は顔を合わせ、同じようにフフッと笑った。
「さぁ? あの子は結構自分のことに鈍感だからねぇ。
でも、分かるのよ」
「私達、ずっとあの子を見て来てるから。
あの子はとっても愛に溢れた子よ?
神のご加護も付いているわ」
2人の笑顔が夕日に照らされて、眩しさに目を逸らした。
神の、ご加護……。
どうして、この村の人は皆、彼をそんな風に見れるのだろう?
それに、リヴが毒に侵されても、そこまで問題視している様子が無い。
シスターの手際も慣れていたし、大して気にしていなかった。
それが、いつものことなのだろうか?
何故、あんな変な男が、これほど人を惹きつけられるのだろう?
人を、この村を、大切にしている。
自己犠牲も、覚悟の上で。
私には、分からない。
ただ、胸がギュッと、熱く焼けそうだった。
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