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第2章 少年の決め事
ヌースの村
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身支度を済ませ、少年に連れられるまま外へ出る。
私たちがいた家から、入ってきたところの門がよく見えた。
少年は1人で住んでいるようで、他に人の気配が無かった。
あの時門番に連れられて入ってきたからには、彼も私も誰かに解毒されたと思うのだが……どこで誰に助けられたのだろう?
門の近くに応急用の解毒剤があったのか。
まぁ、あれだけメブカ草が生えていた森の近くだ。
あれにやられて帰ってくることも多いのだろう。
応急用があってもおかしくはないが……。
ここ、【ヌース】という村は農業が盛んで、主に牛乳やチーズなどがよく生産されているらしい。
野菜も自給自足で、それぞれが足りないところは補い、支え合って生きている。
しばらく歩くと小さな売店があって、そこで少年はパンとチーズを買い、私に与えた。
「腹減ってるだろ?」
「あ、ありがとう……」
近くの椅子に座らせられ、渋々、それを受け取る。
これは、歓迎、されているというのか?
本当に、よく分からない。
ふと、気になって少年を見る。
「……お前は、食べないのか?」
「俺?」
自分を指差す彼に、頷く。
私が起きてシャワーを浴びてる間、何か食べたのだろうか?
あの小屋のような家にはベッドと机と椅子ぐらいで、かまども大して使われてなさそうだったし、食料の保存も無かったように見えたが……。
「食べない。
今ので金使い切ったから」
「は!?」
それは、俗にいう金欠というのでは……。
確かに、よく考えれば服装はボロ一枚だし、衣類が閉まってあるような棚すら無かった。
もしや、質屋に出したのか?
「そんな、何故それを言わない!?
それなら私が……」
「いらない。
買わなくていいから」
「なんで……っ」
立ち上がろうとする私を、少年は隣で腕を引いて掴み止める。
「いいから、座って食べる」
力が強くて、痛い。
青い瞳はジッと私を見つめた。
「……はぁ……」
まるで母親のような説教じみた発言に、ついため息が漏れる。
何故私がこのようなことを言われなければならないのだ。
金に困っているようなダメ男に。
そして、何故従って、抵抗出来ないんだ?
この少年の時折現れる威圧感が、無意識にそうさせているように思う。
だがそれが、不服でも、ある。
「……はい」
「……何これ?」
顔を向けると威圧感に押されてしまうから、私は顔を向けずにサッと彼の前に半分にしたパンとチーズを重ねて差し出した。
「私は半分でいい。
食べなさい」
「…………」
何も言わず、彼は私の手に触れて、受け取った。
それだけなのに、ドキドキしたのは、何故だろう?
チラッと横を見ると、パンにチーズを重ねたまま、両手で端と端を持ってかじりつく彼がいた。
視線は下を向いて、特に何かを見ているようには見えなかったが…小動物のように、はたまた反抗期の子供の相手をしているような可愛げがあった。
私もつられて、正面を向いてパンを口に含む。
甘みがあって柔らかく、チーズも滑らかで、美味しい。
こんなのんびり食事をするなんて…ましてやパン。
すぐに食べて、鍛錬やら討伐やらに向かうのが常なのに……。
鳥の声、風の音、空の色、蒼い草花…目の前にあるものが、温かく感じて。
なんだか、心地良いと、思った。
私たちがいた家から、入ってきたところの門がよく見えた。
少年は1人で住んでいるようで、他に人の気配が無かった。
あの時門番に連れられて入ってきたからには、彼も私も誰かに解毒されたと思うのだが……どこで誰に助けられたのだろう?
門の近くに応急用の解毒剤があったのか。
まぁ、あれだけメブカ草が生えていた森の近くだ。
あれにやられて帰ってくることも多いのだろう。
応急用があってもおかしくはないが……。
ここ、【ヌース】という村は農業が盛んで、主に牛乳やチーズなどがよく生産されているらしい。
野菜も自給自足で、それぞれが足りないところは補い、支え合って生きている。
しばらく歩くと小さな売店があって、そこで少年はパンとチーズを買い、私に与えた。
「腹減ってるだろ?」
「あ、ありがとう……」
近くの椅子に座らせられ、渋々、それを受け取る。
これは、歓迎、されているというのか?
本当に、よく分からない。
ふと、気になって少年を見る。
「……お前は、食べないのか?」
「俺?」
自分を指差す彼に、頷く。
私が起きてシャワーを浴びてる間、何か食べたのだろうか?
あの小屋のような家にはベッドと机と椅子ぐらいで、かまども大して使われてなさそうだったし、食料の保存も無かったように見えたが……。
「食べない。
今ので金使い切ったから」
「は!?」
それは、俗にいう金欠というのでは……。
確かに、よく考えれば服装はボロ一枚だし、衣類が閉まってあるような棚すら無かった。
もしや、質屋に出したのか?
「そんな、何故それを言わない!?
それなら私が……」
「いらない。
買わなくていいから」
「なんで……っ」
立ち上がろうとする私を、少年は隣で腕を引いて掴み止める。
「いいから、座って食べる」
力が強くて、痛い。
青い瞳はジッと私を見つめた。
「……はぁ……」
まるで母親のような説教じみた発言に、ついため息が漏れる。
何故私がこのようなことを言われなければならないのだ。
金に困っているようなダメ男に。
そして、何故従って、抵抗出来ないんだ?
この少年の時折現れる威圧感が、無意識にそうさせているように思う。
だがそれが、不服でも、ある。
「……はい」
「……何これ?」
顔を向けると威圧感に押されてしまうから、私は顔を向けずにサッと彼の前に半分にしたパンとチーズを重ねて差し出した。
「私は半分でいい。
食べなさい」
「…………」
何も言わず、彼は私の手に触れて、受け取った。
それだけなのに、ドキドキしたのは、何故だろう?
チラッと横を見ると、パンにチーズを重ねたまま、両手で端と端を持ってかじりつく彼がいた。
視線は下を向いて、特に何かを見ているようには見えなかったが…小動物のように、はたまた反抗期の子供の相手をしているような可愛げがあった。
私もつられて、正面を向いてパンを口に含む。
甘みがあって柔らかく、チーズも滑らかで、美味しい。
こんなのんびり食事をするなんて…ましてやパン。
すぐに食べて、鍛錬やら討伐やらに向かうのが常なのに……。
鳥の声、風の音、空の色、蒼い草花…目の前にあるものが、温かく感じて。
なんだか、心地良いと、思った。
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