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男の子は女の子の諸事情を知る。

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………なんだこれ。


「純!飯はー?」

龍にぃの声がした。

「あー今行くー」

画面をスクロールして、目を細めた。

メールのアプリを開いたけど、大して何も残ってなかった。

でも、この1通だけ……しかもほとんど冷やかしが無くなってから来るなんて、おかしい。

メール復元アプリを試しに使ってみると、出るわ出るわ。

みんな、登録がないアドレスからのものだ。

しかも、中身がみんな、亜貴のこと……。

亜貴はなんでこれ消してたの?

オレの身体占領した1週間近くのものだった。

オレに、読んで欲しくなかった?

でも、なんで?


「なんだまたダンマリかぁ?」

「は?」

「恋の悩み?」

「えっ」

「純、結局その後どうなったの?」

「っ!?」


兄貴達が代わる代わる聞いて来る。

 
「な、なんで……!」

「あ、よかった、いつもの純だ」

「え……?」

元にぃがのんびりと顔を上げる。

「純が口数少ない時は何かある時って、なんかあった時じゃん?昔から」

「………」

「ほら、ね。
何かあった?」

元にぃが隣で顔を覗く。

そういえば兄貴達、昔っから、よくオレのこと見ててくれたな。
おばあちゃんの色々の後も、よく3人で一緒に慰めてくれたっけ。

どうせなら、聞いてみようかな……?

……ん?
でも、何聞けばいいんだろう?

「あ、あのさ……
好きだけど好きじゃないって言われるって、どういうことだと思う?」

「ブッ!それって友達の好きなんじゃねーの?」

龍にぃがムセリながらオレを見た。

!!
やっぱ、そうだよね……。

「龍にぃはあんま恋愛経験ないから参考に出来ないよ。
で、他に何があったの?」

「おい元!
てめぇ……」

「まぁまぁ。
僕も純の恋バナ聞いてみたい」

な、なんか、注目集まり過ぎて恥ずかしい……!

「こ、恋バナじゃなくってね!!
す、好きな人はいるんだけど、なんかその人の幼馴染に凄く絡まれてて……
しかも、オレの好きな人そいつにバレちゃっててさ。
邪魔ばっかされて……ホントウザくて。
でも、会わなくちゃいけなくて……
付き合ってることにされて、学校内でも有名になっちゃってて……」

入れ替わって、だというのは流石に伏せるが、ほぼ毎日あるハグの瞬間が頭に浮かんで、声が小さくなる。
 

「何?二股?」と口に出す龍にぃをシッ、と元にぃが抑えた。


「……純は、そいつのこと、どう思ってんの?」

「ウザい!話聞かない悪魔!って思ってる」

「フフ……へぇ。
純にしては珍しいよね」

「……え?」

翔にぃが思わずという感じで笑った。

「純ってさ、昔から女子の色々はめんどくさいってボヤいてたけど、男子の悪口ってあんま無かったよなぁと思って。
なんか、ちょっと意外」

た、確かに……。

そういう意味で好きになる男の子もいなかったけど、悪口言うような相手もいなかった。

みんな、男子は味方、みたいに。

「そうだね。
それに、形はどうあれ、純の頭にはその人が浮かんでるんじゃない?
良いように丸め込まれてるのかもしれないけど、嫌い嫌いも好きのうちってさ」

っ………!

言われて、初めて気づいた。

今も、恋の相談のハズなのに。

亜貴のことしか、頭になかった。

「でも、好きな先輩の前だと、オレ、敬語しか使えなくって。
今までそんな相手いなかったから…….」

「じゃあさ、自分がどう思ってんのか、確認するしかないんじゃない?」

「確認……?自分の……?」

「その、好きな先輩と話して、もっと先輩を知って、本当に好きなのかどうか、考えてみれば良いじゃん。
その幼馴染に邪魔されてるなら、フェアじゃないし。
恋愛に時間が決まってるわけじゃないんだなら、ゆっくりやればいいよ」

「邪魔してるやつがただのクソヤローなら、俺がぶっ飛ばしてやっから!
な、いいよな!?」

「龍、ケンカはしないの。
純は難しく考えないでいいから。
単純に、自分がどうしたいかでいいと思うよ?
誰と一緒にいたいとか、楽しいとか」

翔にぃがフォローする。

一緒にいたい、楽しい……か。

亜貴と一緒にいる時は、何されるか分かんなくてある意味ドキドキしてそれどころじゃない。

理央先輩とは…どうだろ?
やっぱり、落ち着かない、かも。

「あ、ありがとう兄貴。
ま、まぁオレ、こんなんだし、別に告白とか、そういうのは無いと思うから、心配しないで?
無口な時は眠いとか疲れてるとかだから……」

「何言ってんだよ。
またいつもの逃避行か?」

「え?」

「あーそうそう。昔も女の子なんだからって色々言われたらオレはバスケット選手になるからいい!とか言ってバスケに逃げてたっけ」

……そ、そうだっけ?

てか、なんか、亜貴にも似たようなこと言われたような……。

「大丈夫だよ」

翔にぃが優しく微笑んだ。

「純はもっと自信持ちな?
僕たち兄弟がついてるんだから」

みんなの温かい視線が、オレに流れてくる。

心が、キュッと温かく感じた。


「……ホント、ありがとう」


兄弟って、いいな。

そういえば、この前の1週間、誰もいない家に帰るのが、少し寂しかったっけ。

ここに帰ってくると、温かみを感じる。


……亜貴は、寂しくないんだろうか。

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