入れ替わるようになりまして。

入れ替わりマニュアル…って、こんなの無理！！

10

「え、純ってあの男みたいな子！？」
「バスケ部の子だよね！？」
「ええー！？あれが京野先輩の彼女！？」
「寝取ったって……あれで！？」
「バカ、さすがに聞こえるよ」

ケラケラ笑いながら誰かが教室を覗いては出て行く。

……はっきり言ってウザい！！

休み時間中ずっとこの調子だ。
午後は授業が少ないとはいえ……ホントムカつく。


「純、大丈夫か？」

「別に。
何かされてるわけじゃないし」


つくづく、腹立つ。
最近怒ってばっかだ。

こんな顔の筋肉使い慣れないから顔中が痛い。


「とりあえず、俺があいつらいっぺんブチのめしてこようか？」

「やめとけよ。
騒ぎ大きくするだけだろ？」

健斗を横目であしらうと、「んー」と悩みながら頭をかいた。

「なんでそんなトーンなんだよ」

「別に？
なんか疲れただけ」

「お前さー、なんか弱味でも握られてんのか？」

ギク………。

「あんなら話せよ！
さっきの付き合ってます発言もそうだけど、なんか言わされてるとしか思えねー。
あの京野とかいうやつ気に食わねーし。
俺が一肌脱いでやっから、言ってみろよ」

「……健斗………」

机の上で腕組んで、同じぐらいの目線で向き合う。

前からだけど、結構こいつは頼れるヤツだ。
勘がいいというか、優しい。
最初は警戒心剥き出しで（極度の人見知り）印象悪いこと多いけど……
なんか、いい友達を持ったなぁ。

でも、健斗に話すっていっても、何を？

京野 亜貴と入れ替わる体質？になっちゃって、
その方が都合がいいってことで付き合う形になって？

ホントは武田先輩が好きなのに、大っ嫌いな亜貴にファーストキス奪われて。

しかもディープまでされて……


「……てか、それ、どうした？」

「え？」

「首んとこ。
赤くなってる」

自分の首を指差しながら、オレに教えてくる。

っ……ここは………！

鏡でも見ないと分からないけど、なんとなく隠すように、首に手を乗せた。


『………隠すなよ？』


っ……！！

あの声が、リピートされた。

何されたのかは分かってる。

キスマークっていうのは、カップルが、用は“俺のもの”の意味で使うわけで。

付き合ってるカップルは結構つけてたりして……。

亜貴の色っぽいドアップと、キスの感触が、蘇る。


「……何急に赤くなってんだよ」

「っ……//////！？」


え、嘘！？

オレ……今何考えてた！？


「あーもー腹立ってきた！
それ、あいつにつけられたんだろ！
やっぱいっぺん殴り込みに行くわ」

半ギレモードで健斗が立ち上がる。

「ば、バカ！！
あいつのことはほっとけばいいから落ち着けって！！」

「いやマジあいつ許せねー！
俺の純に手ェ出しやがって……！」


………ん？


「……俺の？」

「あ、いや、違っ……俺のダチって意味だ！！」

「あ、そう…とりあえず、あと少しで学校終わりだし、いいから」

「は、はい……」

なんか、健斗の言い方は気になったけど……まぁちょっと冷めたみたいだからいっか。

彼女持ちだし、嘘はないだろう。


それよりも、問題は放課後だ。

この身体で早くバスケがしたい。

もっともっと練習して、あいつが出来たこと習得して……

もっと、強くなりたい。