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70.悲恋
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「まぁまぁ。
無理しないでね」
「う、うん…」
煮え切れない返事をして、また目線を下ろし、ため息をついてしまいそうになるのを堪える。
自分の中で何度割り切っても、ふと何かをキッカケにマイナス思考に走ってしまうのは私の悪いところだろうか。
思えば、母の勘が鋭いとは言っても、私が直接母に悩みを打ち明けたことは無かった。
初めて学校でいじめを受けて帰った時、いつも通りにしていたはずなのに、「もしかして、苛められたの?」と確信をついて来た時は思わず泣いてしまった。
もしかしたら母は、私の隠し事にも何か気づいていることがあるかもしれない。
でも、それをあえて避けているのであれば、私が自分で口にしないといけないのではないか……。
「ホントは結婚、嫌なんじゃないの?」
「むぐっ……えっ!?」
急な発言にきゅうりの漬物を丸呑みにして、バッと顔を上げた。
母はフフッと目尻を垂らして微笑んでいる。
まさか、このタイミングで確信を突かれるなんて……!
お母さんは、どこまで気づいて……!
「だってあなた昔から言ってたものね~。
『私出来ちゃった婚なんてしないから!ちゃんと付き合って、お父さん達に認められてから結婚して、子供産む!』って。
誰かの芸能人のデキ婚報道がよっぽどショックだったのかねぇ~」
「あ、あ~……。
そんなことも言ってたかも……」
苦い思い出に、ため息を落とす。
正確にはドラマにあった展開と、その頃読んでた少女漫画の展開がほとんど同じだったからだ。
確か、1つは高校生のカップルが妊娠して、主人公の家に彼氏と一緒に挨拶するも、父親が猛反対。
それからどんどん不幸な道に進んで、最終的に親子の縁を切って子供を産む話だった。
もう一方は、報われないことが辛すぎて彼女が自殺してしまい、その過去を背負った彼氏が別な女の子と出会い、段々と元の自分を取り戻して行くも、時折チラつくその業に苦しむ話。
縁を切った方は、幸せの代償にもう二度と両親に会えないなんて偽物の幸せだと思った。
自分の産んだ子供を両親に歓迎されず、せっかくの孫を抱いてもらうこともできないなんて悲しいと。
自殺を選んだ彼女を持つ彼氏が幸せになろうとするたびに、頭を過る彼女の記憶が、あまりに辛くて苦しくて、どうしてこの2人に子供が出来てしまったんだろうと思っていた。
……まだ、よく理解してなかったからだけど。
思えば、あの時からか。
恋愛の順序を気にするようになったのは。
報われない恋なんて絶対したくない、私はもっとうまくやると。
家族を泣かせる結婚は絶対したくないと思っていた。
あの4人のように、悲しい恋だけは、したくないと。
無理しないでね」
「う、うん…」
煮え切れない返事をして、また目線を下ろし、ため息をついてしまいそうになるのを堪える。
自分の中で何度割り切っても、ふと何かをキッカケにマイナス思考に走ってしまうのは私の悪いところだろうか。
思えば、母の勘が鋭いとは言っても、私が直接母に悩みを打ち明けたことは無かった。
初めて学校でいじめを受けて帰った時、いつも通りにしていたはずなのに、「もしかして、苛められたの?」と確信をついて来た時は思わず泣いてしまった。
もしかしたら母は、私の隠し事にも何か気づいていることがあるかもしれない。
でも、それをあえて避けているのであれば、私が自分で口にしないといけないのではないか……。
「ホントは結婚、嫌なんじゃないの?」
「むぐっ……えっ!?」
急な発言にきゅうりの漬物を丸呑みにして、バッと顔を上げた。
母はフフッと目尻を垂らして微笑んでいる。
まさか、このタイミングで確信を突かれるなんて……!
お母さんは、どこまで気づいて……!
「だってあなた昔から言ってたものね~。
『私出来ちゃった婚なんてしないから!ちゃんと付き合って、お父さん達に認められてから結婚して、子供産む!』って。
誰かの芸能人のデキ婚報道がよっぽどショックだったのかねぇ~」
「あ、あ~……。
そんなことも言ってたかも……」
苦い思い出に、ため息を落とす。
正確にはドラマにあった展開と、その頃読んでた少女漫画の展開がほとんど同じだったからだ。
確か、1つは高校生のカップルが妊娠して、主人公の家に彼氏と一緒に挨拶するも、父親が猛反対。
それからどんどん不幸な道に進んで、最終的に親子の縁を切って子供を産む話だった。
もう一方は、報われないことが辛すぎて彼女が自殺してしまい、その過去を背負った彼氏が別な女の子と出会い、段々と元の自分を取り戻して行くも、時折チラつくその業に苦しむ話。
縁を切った方は、幸せの代償にもう二度と両親に会えないなんて偽物の幸せだと思った。
自分の産んだ子供を両親に歓迎されず、せっかくの孫を抱いてもらうこともできないなんて悲しいと。
自殺を選んだ彼女を持つ彼氏が幸せになろうとするたびに、頭を過る彼女の記憶が、あまりに辛くて苦しくて、どうしてこの2人に子供が出来てしまったんだろうと思っていた。
……まだ、よく理解してなかったからだけど。
思えば、あの時からか。
恋愛の順序を気にするようになったのは。
報われない恋なんて絶対したくない、私はもっとうまくやると。
家族を泣かせる結婚は絶対したくないと思っていた。
あの4人のように、悲しい恋だけは、したくないと。
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