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46.私と部長が付き合ってるとか誤解だけど!

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  ふと視線を感じたと思えば、先輩と立川さんが目配せしていた。

  そして同時に立ち上がると、ニコッと笑みを浮かべた。

「ちょっとお手洗いに行って来るね♪」

  え……?  2人で?

「えー!  どっちか残ってよー」
「お化粧直しタイム♪
その間、三谷さんと親睦深めててねー!」
「え!?」

  わ、私……!?

  前を向くと、3人のキラキラした視線が私に突き刺さった。

「三谷さんファイト♪」
「いい子だからみんな仲良くしてあげてねー♪」
「「はーい♪」」

  う、嘘でしょ……!?

  2人は荷物を持ったまま、手を振って呑気に化粧室に向かって行く。

「三谷さんって、下の名前は?」
「あ、あの…り、凛です…」
「凛ちゃんかぁー!
名前も可愛いねっ!」

  ニッコリ笑うその瞳から目を逸らす。
  みんな前のめりすぎて、恐い。
 
「スーツ姿もいいけど、メガネ外したら超美人とか!?」
「ねぇ、ちょっとメガネ外してみてよ」
「見たい見たぁい♪」

「え、えっと……!」

  違和感の正体に気付いて、キュッと胸が痛んだ。
  3人の視線は、瞳が笑ってないんだ。
  部長のように感情豊かに怒ったり、笑ったりするわけじゃなくて。

  笑ってるのに、笑顔なのに、瞳の奥が、冷たいんだ……。

  ズズッと大きな音を立てて、席を立った。

「わ、私も、ちょっと、トイレに…」
「えーつまんないー」
「もっと一緒にいよーよー」

  残念そうな声がするけど、恐くて目を向けられなかった。

「一時休憩、で!
すみません……!」
「はぁーい」
「早く戻って来てねー♪」

  誰が早く戻るか!
  とにかく、先輩達に合流して、先に帰ろう。
  部長の家の場所は大体覚えたし、最悪タクシーで帰れるし。
  私はこの前に懲りて一口もお酒飲んでないから、連れ込まれるとかそういうことにはならないはずだし、大丈夫。

  合コンは私に合わなかったって、だけーー。

「当たりいた?」

  柳生先輩の声がして、ハッと顔を上げる。
  さっきの酔った声とは、明らかに違う……。

「いないですねー。
今日はハズレー」
「だよねー。
チョイスミスったなぁー」

  当たり?  ハズレ?
  一体、何のこと……?

  そう思っても、私の足はその場で止まってしまった。
  この話し方は、経験上、分かる。

「あれ、ちゃんと相手してますかねー?」
「さぁ?  まぁあのハズレの中ならどーでもいいんじゃん?
どうせ引き立て役なんだしさー」

  ドキンと、胸が痛んだ。
  そっと音を立てないように、入り口から見えないように、壁に背中を預ける。

  引き立て、役……。

「梨花さんも酷いですよねー。
絶対当て付けですよねー?」
「あたしが狙ってた男取るとかあり得ないっしょ、普通。
毎日お茶淹れたり話しかけたりして好感度上げてたのにさー」
「飲みの時盛大に断られましたしねー」

  狙ってた男って、誰?
  まさか、部長?
  でも、お昼にちゃんと訂正したはずーー。

「何であれがよくてあたしじゃダメなのか分かんないよねー。
あれも白々しいってか、顔真っ赤にしてさー」
「せめて首のキスマークぐらい隠せって感じですねー」

  キスマーク……!?
  思わず、首に手を置いた。
  昨日も吸われた、噛むポイントだと思っていた場所……?

  そ、そういえば漫画でも強く吸って内出血させて跡残すって……あれ、ずっとキスマークつけられてたの!?

「だよねー。
てか、部長がいるのに合コン来れるとかおかしくない?」
「あー黙ってるか嘘ついたかじゃないですかねー。
部長に悪いとか考えないんですよきっと。
あんな地味なくせに悪女とかないわー」

  私は……私はそんな……!

「ホントないわー。
あいつらにテキトーにお持ち帰りさせる?」
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