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悪夢の始まり

挑戦の繰り返し

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『栄司……』

『……………』

知らない声がする。

正面に、栄司がいる。

栄司の見る先には、顔の見えない女の人……。

女の人と分かるのは、ワンピースを着ているからだ。

声は、誰かに似ている気がする。

けど、誰だか、思い出せない。

『栄司は、私と一緒にいるでしょ?』

『…………』

その人は、栄司の肩に腕を回す。

栄司は、何も言わない。

ただ無気力に、その人を見つめていた。

栄司………っ!

呼び掛けようとしても、声が出ない。

動けない。

ただ、それを見ていて。

その人が笑ったのが、何となくわかった。

栄司に、顔が近づいていく。

栄司は何も抵抗せずに、彼女のキスを受けた。

まるで、“氷の華”の時の、私のように……。


***


「えいじ……」
「ごめん、起こした?」

目を開けると、栄司が布団に入るところだった。

「栄司……帰ってたの?」
「うん……さっき、来たとこ」

向き合うように、栄司は身体を寄せて、ギュッと抱き締めてくれた。
温かくて、安心する……。

「だいぶ外冷えるようになったね。
今年の冬は寒いのかも」

栄司は私の背中を撫でた。
冷えてるのは、私か。
寝てたはずなのに、体温が下がるなんて。
さっきの、夢のせいかな……。

「……どうだった?」

栄司に恐る恐る聞いてみる。
けど、栄司は額にキスをして、フッと笑った。

「……まだまだ、頑張らないとだね」
「…………」

背中を撫でる手が、首の方に登って来て、髪を掻き分けていく。

「……愛華……いい?」
「……うん」

栄司は返事を待って、唇にキスをする。

「ん……」

頭の後ろに手があって、優しく髪を撫でた。
ルームウェアのジッパーが降ろされていく。
その指の動きと、首に、鎖骨に移動していくキスに、段々と思考を持っていかれてしまう。

「愛華……」
「あ………」

切ない声で私を呼ぶ栄司に、胸がキュッと締め付けられる。
泣きそうに聞こえて、私は栄司の頭をそっと抱き締めた。

栄司と付き合って1ヶ月が過ぎた。
栄司はすでに3回ほど実家に帰って、翔子さんに話をしに行っている。
それでも、ほとんど結果は変わらない。
話した内容は教えてもらえないけど……傷付いて帰ってくる。
こうして帰ってくると、悲しそうに、縋るように私を求める。
こんな顔、させたくないのに。
翔子さんは、栄司を傷付けていることを、分かっているのだろうか?
それとも、傷付いたからこそ、栄司に同じ傷を与えたいと思うのだろうか?
私には、翔子さんの考えが分からない。

「栄司っ!激しっ……あっ!」
「ごめんっ……久々だから止まんない」
「あっ、ぁあ……っ!」

後ろから腰を支えられて、犯すように腰を振る栄司。
久々と言うのは、私が薬を止めたからだ。
それは、栄司と決めたこと。
避妊薬はあくまで薬で、毒でもあるから、身体へのリスクを栄司は凄く心配してくれた。
すぐに排卵が始まったらしく、その2週間後には生理が来た。
ただ久々の生理痛でだいぶ参ってしまっていたし、栄司もそれを気にしてか終わってもしばらく誘っては来なかった。
私から口でしてあげることはあったけど。

だから私も、久々の感覚に、興奮しているには違いない。
顔が見えないのが不安になって手を伸ばすと、栄司はその手を握った。
それだけでも、安心する。

パンパンパンパン……!

「ああっ!!」

安心して気を抜いたところをガンガン突かれて、枕の上に顔をつくように倒れた。

「愛華……ごめん」
「はっ、はっ……あぁ……」

栄司は身体を密着させて、上に重なるように腰を振る。
最初の頃と同じだと、ふと、思った。
密着するのも、バックも、嫌いじゃないけど。
栄司の顔が見えなくて、誤魔化されてしまう。

「栄司……!」
「っ………」

手を重ねて、少し横を向いて、栄司の顔を向くと、キスが降りて来た。
切なくて、目が潤んだ。
栄司を支えたい。
そばにいて……一緒に実家に行って、翔子さんや家族のこと、一緒に考えたい。
一緒に悩みたい……。

「栄司……好き……っ!」
「っ愛華……!俺も……愛してるよ愛華……っ!」
「あっ、あっあ………!!」

栄司のキスが、首の後ろから背骨を伝う。
その間に動きが早くなって、ブルッと震えたと思えば、動きが止まった。
ドク、ドクと、中で栄司が脈を打つ。
私の身体も、それをキューキューと合わせて動いてる。
本能的に、搾り出そうとしているかのようだ。

「はっ、はっ、はぁ……愛華……」
「あ……栄司……」

一度グッと押し込まれて、ゆっくり引き抜かれる。
その喪失感に、振り返って身体を起こし、栄司に抱き付いて、頭を挟むように手を置いてキスをする。
労わるように、ゆっくり、栄司がしてくれたように、優しく……。

クチュ……

「んっ!?」

キスをしているうちに、アソコに指が入ってくる。

「あっ、栄司……!!」
「ぐちょぐちょだね……」

栄司はわざとらしく音を立てながら、浅いところを擦るようにかき混ぜる。
違う……!
栄司に、してあげたいのに……!

「栄司……ダメ……っ!」
「愛華も、俺がいなくて寂しかったんじゃない?」

それは、そうだ。
栄司が実家に行くと3泊ぐらいになるし、夏休み中は他にバイトぐらいしか無かったし、大学にいても話す相手がいない。
栄司がいないと、寂しい。
ラインや電話じゃ、物足りない。

「あ……ん………!」
「愛華、まだイってないでしょ?
愛華も、気持ち良くなって」
「っ……えいじ……っ!」

クチュクチュクチュ……

音が早くなって、私は栄司の肩に顔を押しつけるようにギュッと抱き付いて、声を堪えて絶頂に達した。

「っは…は……はぁ……」

なんだか悔しくて、涙が出た。
栄司は息を整えて、目尻にキスをした。

「愛華……可愛い。
寂しい想いをさせて、ごめんね?好きだよ愛華」
「ん……栄司……」

余裕な顔をして、栄司は笑う。
いつもなら、私の気持ちをすぐ察してくれるのに。
わざとだと、分かる。
それが、悲しかった。

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