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熱の幻想
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しおりを挟む「……………」
「あ、お帰りなさい!
オムライス、作ってみました!」
キッチンの小さいテーブルに、今さっき作ったオムライスを並べる。
あとコンソメスープも簡単に野菜を煮込んで作った。
「あと、体洗いたかったらお風呂も…私が先に入っちゃいましたが、嫌でなければ入ってくださいね?
あとは…………っ?」
近くに来たかと思えば、おでこにまた手が添えられる。
「まだ熱下がんないの?
ちゃんと寝てた?」
「い、いえ、熱はだいぶ下がりましたし…昨日いっぱい寝たので眠くなくて…なんか、やらなきゃかなーと………」
「あ、そう。
全然何もしなくて構わないんだけど…
鍵も開けっぱだったし」
「あ、そうでした。
すみません………やっぱり迷惑でしたか……?」
「いや?なんか、夫婦みたいだなと」
「え…………?」
自分でやっていて、全く気づいていなかった。
よくドラマとかにあるやつだ。
『お風呂にする?ごはんにする?それともワタシ?』って。
ジュッと、熱が上がる。
「ククッ…天然記念物か、お前は」
「なっ、なんですかその例えは!!」
「ま、ありがとな。
汗くせーだろうし、シャワー借りるわ」
頭をガシャガシャと撫でられて、少しムッとする。
「ど、どうぞ……」
「お前も頭乾かせよ?
プールじゃねーんだから」
「私はいつも自然乾燥なんです!」
「へぇー女子力ねぇのな」
「私に女子力なんてあるわけないじゃないですか!」
「ククッ…でもこの髪……」
髪の毛を一束掬って、先輩は自分の顔の前に持って弄ぶ。
「なんか、スッゲーそそる」
「は……はぃ……!?」
ドキッとして、顔を反らした。
また先輩が笑った。
耳元に顔が近づいてくる。
「続きはまた後でな。
ベッドで休んで待ってな」
ベッドで………
ジュッ………!
頭が沸騰する音がした。
「ハハハ……おもしれー!」
先輩が笑いながら風呂場に向かう。
「ちょっ、バカにし過ぎですよ!!」
もうっ!
なんで、こうも落ち着かないんだろう?
先輩が脱衣場に入ったことを確認して、ベッドへ移動する。
別に、そういう意味でお風呂入ったんじゃないし…
何もしようとか、そういうことじゃなくて。
ただ、部活終わってから先輩疲れてるだろうなと思って、お昼ごはん作ってみたのであって、別に深い意味は無くて……。
いつも先輩は、ソッチの方に話を持っていくけど、私は常に正常運転というか…。
でも、でももし、先輩と、ソウイウコトをすれば、この男嫌いが治るのだとしたら……。
やっぱり、ソウイウコト、しないといけないの?
先輩と………?
また顔がジュッと熱くなる。
無理無理無理!!
そんなの無理!!
ソウイウコトは、ちゃんと好きになった人じゃないと……!
先輩は………
……………
先輩は、私をどう思っているのだろうか?
私に何かしてくれるのは、私を助けてくれるのは、私のこと………?
そんなわけ、無いか。
マネージャーになって欲しいから、だよね?
だって、私が昨日服脱ごうとした時、必死に止めてくれてたもん。
下心がある人は、きっと違ったよね……。
「はぁ………」
謎のため息が出た。
私は、先輩のこと、どう思っているのだろう?
……やっぱり、私も、先輩の好意に答えようとしてるだけ。
優しくされたから、何かお返ししようと思って、でも、先輩がもっとたくさんくれるから、追い付かないだけで。
私の男嫌いが治ったら、関係も無くなって、きっと、ただの部員とマネージャーになるんだろうな………。
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