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熱の幻想
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電話をしても繋がらないし、念のため、見舞いに来た。
家のインターホンを押したが、誰も出てくる気配がない。
まさかとは思ったが、ドアノブを回す。
鍵が開いていた。
「っ…………!」
思わず、慌てて中に入った。
「咲來!!」
部屋に入った瞬間に、玄関で倒れている咲來がいた。
一瞬、音が止まる。
「咲來!咲來!!」
慌てて首の後ろに手を回し、抱き起こす。
見たところ、傷は無い。
呼吸もしてる。
生きてる…………。
「おい!咲來!!」
「ん……………」
顔を歪ませる咲來。
無事みたいだ。
「せん…ぱい……?」
うっすらと、目を開ける。
ホッと、息をついた。
よかった………。
頭には、あのストーカーがちらついていたところだった。
見れば、横の方に宅配の小さめな荷物が置いてある。
受け取って、そのままここに寝たのか?
相手が男だと気づかなかったとかか?
それとも、ホントに熱で倒れたのか?
バッ………。
突如として、咲來が抱きついてきた。
「っ……………」
押し倒されそうになって、後ろ手をついて支える。
「咲來………?」
「……………」
動かない。
だが、ゆっくりとした呼吸が聞こえる。
寝たみたいだ。
「……………」
なんとも、人騒がせなヤツだ。
とりあえず、そのまま膝の裏に手を入れ、抱き上げる。
軽い。
寝ているくせに、体がピッタリと型にハマっている。
部屋に入ると、意外と片付いた女子らしい内装だった。
ベッドから布団が落ちている。
もしかして、ベッドから落ちたのか?
ベッドに寝かせると、少し声を上げた。
「んん……」
「気がついたか?」
赤い顔をして、また目を覚ます。
一度天井を見上げて、視線を俺に移した。
「せんぱい……」
まだボーとした口調。
寝ぼけているのか?
額に手を当てると、スゴく熱い。
「学校休んでるっていうから、見に来た。
熱は計ったのか?
薬は?」
「んー………」
頬に手を当てると、唸るような声を出して額に手を当てた。
頭痛でもするのだろうか?
この調子じゃ薬は飲んでないな。
むしろ、1日何してたかも疑問だ。
「体温計はどこだ?
あと薬とか、タオルは?」
「そこの…引き出しに………あとは……そこ…とそこ…かな?」
額に手を当てたまま、引き出しの位置を指差す。
もう敬語は使えてないが、気にしない。
体温計はベッドの上のところにあって、手を伸ばすだけで届く位置にあった。
取り出して咲來に渡す。
「熱計れ。
タオル冷やしてくる」
「……うん……」
言われた引き出しにはちゃんとタオルが入っていて、俺は1枚を取ってキッチンに向かった。
わりと使用感溢れるキッチンだが、汚くはない。
小さめの冷蔵庫を確認したが、氷は作っていないようだった。
目に入った保冷剤を取り、水を絞ったタオルに挟んだ。
コップに水を汲み、ベッドへ戻る。
ちょうどピピピと音が聞こえた。
「何度だった?」
「…39.7度」
「おい、随分高いな…」
はぁ…と、咲來が息をついた。
額にタオルを乗せる。
「ん……」
「頭冷やしとけ。
薬、飲めるか?」
「うん」
またさっき指された小さな引き出しを開くと、市販の風邪薬を見つけた。
一粒とって、水と一緒に渡す。
「ほら」
「ありがとう……」
飲み終えると、またはぁ…と息をついてベッドにもたれた。
苦しいのか。
ショーパンに半袖のルームウェアは、さすがに病人が着るものではないが…
「もう一杯飲むか?
脱水は良くない」
体を温めて、汗をかかなくては、治りが遅くなる。
たぶん、今日一日水はろくに取ってないだろうし……
と、また立ち上がろうとしたら、グッと腕を掴まれた。
「っ……」
「せんぱい………」
「………なんだ?」
吐息が熱い。
いつもよりも弱々しく、俺を呼ぶ声に、振り返る。
「熱い………」
「っ……!」
咲來は、自分のルームウェアの上着のファスナーを下げ始めていた。
俺の腕を谷間に押し付け、そこから白い肌が露になっている。
というか、こいつ………
ノーブラ………。
「咲來、服は着てろ」
「やぁ!熱い!」
「熱くても着てろ」
「無理!脱ぐ!」
「脱ぐな!」
「無理!死んじゃう!!」
「おい!ズボン下ろすな!!」
………
……………。
いつの間にか日が沈んでいる。
咲來は静かに眠っていた。
俺はといえば、腕に抱きつかれたまま仕方なく咲來の横で寝ている。
あのあと少ししたらまた倒れるように咲來は眠ったが、腕は離してはくれなかったのだ。
さっきよりもスヤスヤと眠っていて、だいぶ熱は下がったようだが…
「はぁ……」
思わず、額に手を当てる。
俺の方が、熱い。
「せんぱい……」
「ん………?」
起きたか、と思って横を見るも、腕をまた強く引き寄せるだけで、こちらを見る気配はない。
寝言か……。
あんまりこいつを見ると、理性が飛びそうだ。
なんでノーブラなんだよ。
胸押し付けやがって。
くそ………。
ケータイを見ると、もうすでに9時を過ぎている。
この調子じゃ今日は帰れないな。
とりあえず、母さんたちにはラインして…
あとで隙をみて抜けるか。
「ん……」
「っ……」
少し姿勢を変えたところで、また咲來が動く。
今度は片足を挟まれてしまった。
くそ…………俺は抱き枕か!
こっちのペースを乱されるなんて……調子狂う。
いや、それは前からか。
「んー……」
髪の毛が顔にかかっているからか、モゾモゾと動き出す。
てか、毛、口に入ってるし…
髪の毛をよかすと、月夜に照らされて透き通った肌が見えた。
長いまつ毛。
細い眉。
ほどよく膨らんだ頬。
綺麗なピンクの唇。
容姿だけで落ちるやつは、たくさんいるだろう。
それが、こいつを苦しめている原因なんだろうが……
俺はこいつが思ってるほど、優しくはない。
いつまでもそうしていればいい。
もっと苦しんで…いればいい。
何も変わらずに………。
このままでいればいいと、思っている。
さすがに、自分でもクソだな。
よゆーなんか、ない。
後になって、俺を嫌えばいい。
ただ、こいつの中に、俺という存在を残したい。
そんな身勝手な、強欲な感情で動いてるだけだ。
家のインターホンを押したが、誰も出てくる気配がない。
まさかとは思ったが、ドアノブを回す。
鍵が開いていた。
「っ…………!」
思わず、慌てて中に入った。
「咲來!!」
部屋に入った瞬間に、玄関で倒れている咲來がいた。
一瞬、音が止まる。
「咲來!咲來!!」
慌てて首の後ろに手を回し、抱き起こす。
見たところ、傷は無い。
呼吸もしてる。
生きてる…………。
「おい!咲來!!」
「ん……………」
顔を歪ませる咲來。
無事みたいだ。
「せん…ぱい……?」
うっすらと、目を開ける。
ホッと、息をついた。
よかった………。
頭には、あのストーカーがちらついていたところだった。
見れば、横の方に宅配の小さめな荷物が置いてある。
受け取って、そのままここに寝たのか?
相手が男だと気づかなかったとかか?
それとも、ホントに熱で倒れたのか?
バッ………。
突如として、咲來が抱きついてきた。
「っ……………」
押し倒されそうになって、後ろ手をついて支える。
「咲來………?」
「……………」
動かない。
だが、ゆっくりとした呼吸が聞こえる。
寝たみたいだ。
「……………」
なんとも、人騒がせなヤツだ。
とりあえず、そのまま膝の裏に手を入れ、抱き上げる。
軽い。
寝ているくせに、体がピッタリと型にハマっている。
部屋に入ると、意外と片付いた女子らしい内装だった。
ベッドから布団が落ちている。
もしかして、ベッドから落ちたのか?
ベッドに寝かせると、少し声を上げた。
「んん……」
「気がついたか?」
赤い顔をして、また目を覚ます。
一度天井を見上げて、視線を俺に移した。
「せんぱい……」
まだボーとした口調。
寝ぼけているのか?
額に手を当てると、スゴく熱い。
「学校休んでるっていうから、見に来た。
熱は計ったのか?
薬は?」
「んー………」
頬に手を当てると、唸るような声を出して額に手を当てた。
頭痛でもするのだろうか?
この調子じゃ薬は飲んでないな。
むしろ、1日何してたかも疑問だ。
「体温計はどこだ?
あと薬とか、タオルは?」
「そこの…引き出しに………あとは……そこ…とそこ…かな?」
額に手を当てたまま、引き出しの位置を指差す。
もう敬語は使えてないが、気にしない。
体温計はベッドの上のところにあって、手を伸ばすだけで届く位置にあった。
取り出して咲來に渡す。
「熱計れ。
タオル冷やしてくる」
「……うん……」
言われた引き出しにはちゃんとタオルが入っていて、俺は1枚を取ってキッチンに向かった。
わりと使用感溢れるキッチンだが、汚くはない。
小さめの冷蔵庫を確認したが、氷は作っていないようだった。
目に入った保冷剤を取り、水を絞ったタオルに挟んだ。
コップに水を汲み、ベッドへ戻る。
ちょうどピピピと音が聞こえた。
「何度だった?」
「…39.7度」
「おい、随分高いな…」
はぁ…と、咲來が息をついた。
額にタオルを乗せる。
「ん……」
「頭冷やしとけ。
薬、飲めるか?」
「うん」
またさっき指された小さな引き出しを開くと、市販の風邪薬を見つけた。
一粒とって、水と一緒に渡す。
「ほら」
「ありがとう……」
飲み終えると、またはぁ…と息をついてベッドにもたれた。
苦しいのか。
ショーパンに半袖のルームウェアは、さすがに病人が着るものではないが…
「もう一杯飲むか?
脱水は良くない」
体を温めて、汗をかかなくては、治りが遅くなる。
たぶん、今日一日水はろくに取ってないだろうし……
と、また立ち上がろうとしたら、グッと腕を掴まれた。
「っ……」
「せんぱい………」
「………なんだ?」
吐息が熱い。
いつもよりも弱々しく、俺を呼ぶ声に、振り返る。
「熱い………」
「っ……!」
咲來は、自分のルームウェアの上着のファスナーを下げ始めていた。
俺の腕を谷間に押し付け、そこから白い肌が露になっている。
というか、こいつ………
ノーブラ………。
「咲來、服は着てろ」
「やぁ!熱い!」
「熱くても着てろ」
「無理!脱ぐ!」
「脱ぐな!」
「無理!死んじゃう!!」
「おい!ズボン下ろすな!!」
………
……………。
いつの間にか日が沈んでいる。
咲來は静かに眠っていた。
俺はといえば、腕に抱きつかれたまま仕方なく咲來の横で寝ている。
あのあと少ししたらまた倒れるように咲來は眠ったが、腕は離してはくれなかったのだ。
さっきよりもスヤスヤと眠っていて、だいぶ熱は下がったようだが…
「はぁ……」
思わず、額に手を当てる。
俺の方が、熱い。
「せんぱい……」
「ん………?」
起きたか、と思って横を見るも、腕をまた強く引き寄せるだけで、こちらを見る気配はない。
寝言か……。
あんまりこいつを見ると、理性が飛びそうだ。
なんでノーブラなんだよ。
胸押し付けやがって。
くそ………。
ケータイを見ると、もうすでに9時を過ぎている。
この調子じゃ今日は帰れないな。
とりあえず、母さんたちにはラインして…
あとで隙をみて抜けるか。
「ん……」
「っ……」
少し姿勢を変えたところで、また咲來が動く。
今度は片足を挟まれてしまった。
くそ…………俺は抱き枕か!
こっちのペースを乱されるなんて……調子狂う。
いや、それは前からか。
「んー……」
髪の毛が顔にかかっているからか、モゾモゾと動き出す。
てか、毛、口に入ってるし…
髪の毛をよかすと、月夜に照らされて透き通った肌が見えた。
長いまつ毛。
細い眉。
ほどよく膨らんだ頬。
綺麗なピンクの唇。
容姿だけで落ちるやつは、たくさんいるだろう。
それが、こいつを苦しめている原因なんだろうが……
俺はこいつが思ってるほど、優しくはない。
いつまでもそうしていればいい。
もっと苦しんで…いればいい。
何も変わらずに………。
このままでいればいいと、思っている。
さすがに、自分でもクソだな。
よゆーなんか、ない。
後になって、俺を嫌えばいい。
ただ、こいつの中に、俺という存在を残したい。
そんな身勝手な、強欲な感情で動いてるだけだ。
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