初恋のキミ

天野 奏

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昇降口を出て、少し歩くと、パコンッという音が聞こえてきた。
テニスの音だ。
普段は早めに帰ってしまうから、聞くのは新鮮。

見に行こうかな……。

『男子は毎年入ってくるのにね 』

男子…………。

ギュッと、スクールバッグを握った。

でも……

『三ッ橋くん知らない?テニス部の』

『おい1年……』

お礼、言わないと……なんとかして………。
でも、直接……は……ちょっと……な……。

んー……… 

「行くぞ三ッ橋ー!!」



そ、そうだ、あっちの校門から出ることにしよう。

そしたら、ちょっとだけテニス部の練習が見れる。

行けば、4つのコートのうち、右から2番目のコートで二人の男子が打ち合っていた。
左側2コートはネットが縛ってあるから、硬式かな?
じゃあ、三ッ橋先輩は、ソフトテニス部なんだ…。
ちょっと、嬉しい。
他の人達は休憩中なのか、周りで座っていたりする。
それとも、まだ放課後始まってから時間経ってないからみんな揃ってないのだろうか。

「っおらぁ!」

さっきの声がする。
その声から言って、今奥で打ったのが三ッ橋って先輩の相手。

だから………

パコンッ!

こっちで打ってる後ろ姿の人が、三ッ橋先輩……

自然と、足が止まった。

「おら!」

スゴく綺麗なフォーム。
クロスで打ってるってことは、後衛なのかな?
球が早い……。
そういえば、男子の試合なんて見たことなかったなー。

と、高めのボールが上がる。
相手が押されたんだ。
チャンスボールだ。

すると、その背中は素早く打球の下に入り……

「っらぁ!!」

嘘………。

目にも止まらぬ早さのスマッシュを決めた。

カッコいい…………!

ベースラインからスマッシュ決めに行く人初めて見た!

「わっ、ずりーぞ三ッ橋!!」
「球があめーんだよ」

ネットの近くで二人がふざけている。

あー、懐かしいな、この感じ。

「おい、あれ、安藤さんじゃね?」

ビクッ……!

「ああ!ホントだ!」
「テニス部見てんのかな?」

私は顔を合わせないように、早々と歩いていった。

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