日替わりの花嫁

枳 雨那

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夢か現か

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「爪痕くらい、平気」
「……あ、ごめんなさい」
「ううん。あの、それよりも……俺も触り、たい」

 火を噴きそうなほどに顔を赤くして、大牙は言った。六花はその反応になぜかきゅんとしてしまい、小声で「うん」と返事をする。この部屋の中だけが非日常の世界に感じながら、六花は次なる快感を待つ。未だ、身体の奥の疼きは、解消されていない。

「六花、れるよ?」
「あっ」

 着物をくつろげて準備を終えた鬼灯が、自身の屹立きつりつしたそれを六花の秘所に擦りつけた。六花の想像以上に太く大きなそれは、今にも弾けそうなほどに膨らんでいる。普段がどうなのかは知らないが、興奮するとそうなるということくらいは、六花も知識を持っていた。

 しかし、こんな太いものが自分の中に入るのか。すぐには信じられない。先端が蜜口に潜ったところで、鈍い痛みが六花を襲った。

「っ……たいっ」
「痛い? ごめん……もう少し、ゆっくりする」
「はいっ……ひゃっ!」

 両足に力を入れて待っていると、羽琉が六花の左耳に息を吹き込んだ。そのくすぐったさに力が抜け、反対側からは大牙が六花の胸を触り始めている。感触がいいのか、指が食い込んで形を変える様を、大牙は夢中になって観察していた。

「六花は力を抜いて。大牙は優しく触ってあげてね」
「分かった、兄さん」

 ふたりのおかげで六花の気が逸れたからか、鬼灯は少しずつ腰を進められているようだ。圧迫感があるが、先程のような痛みが減ってきた。

「……あ、きつ……」
「鬼灯、さん……だいじょうぶ、ですか?」
「ん? うん。気持ちいいよ?」

 彼も、蜜壺の狭さに痛い思いをしているのかと六花は心配したのだが、顔を快感に歪めながら、笑って見せた。羽琉のそれとは少し系統が別の、男らしい色気。六花のために、彼が初めてを守ってきたことも相まって、六花の胸が騒ぐ。

「ぅあ……なんか、急に締まっ……」

 鬼灯は額に汗を浮かべ、吐息を漏らす。彼の熱杭は既に六花の中に収まり、六花は無意識のうちに彼のそれを締めつけた。鬼灯が耐えるように動きを止めている間、六花の左右からは、羽琉と大牙の手が双丘を愛撫している。大牙は羽琉の言いつけを守って、先端を優しく引っ張ったり、指で押しつぶしてみたりと、弾力を楽しんでいた。

「あんっ、あっ、あっ、ふぅっ……ぅんっ、あっ」

 鬼灯がゆっくりと、律動を始めた。初めは小さく、それが徐々に大きなものへと変化していく。規則正しく肌を打ちつけられると、ぱちゅっぱちゅっと水音と肌のぶつかる音が混ざって聞こえてくる。

 不意に、六花はこの状況のことを、どこか他人事ひとごとのように感じた。客観的に説明すると、夫の候補となる三兄弟と、本来ひとりの相手とすべきことをしているのだ。さっきから六花の最奥を何度も突いているのが鬼灯、時折口づけをしながら左胸を愛撫しているのが羽琉、その反対側で初体験に没頭しているのが大牙。

 自分は淫乱なのではないかと、六花は思った。彼らにこれほどの恍惚こうこつを与えてもらいながら、まだ、もっとと貪欲になっているもうひとりの自分がいるのだ。それを認識した途端、鬼灯が奥をぐりぐりと刺激した。

「ん、ひゃあぁっ!」
「はっ……俺も、いきそ……」

 その言葉を合図に、羽琉が左の頂を口で愛撫し始めた。最初の絶頂の時と、同じ動きだ。それを見た大牙は、羽琉の真似をするように右の頂を舌で舐める。鬼灯の動きは激しくなり、六花を高みへと追い詰めていった。

「あっ、だめっ……きちゃ、きちゃうっ……! あっ、あぁぁぁっ!」

 いいようのない程のよろこびに腰を震えさせ、六花は三回目の絶頂を迎えた。鬼灯が薄い膜の向こうで、熱いものを吐き出しているのを感じる。それが引き抜かれ、余韻に浸りながら六花が身を震わせていると、大牙がなぜか、六花の肩口に噛みついた。

「つっ……」
「大牙! 六花が痛がってる!」
「……はっ! ごめん、六花! つい……!」

 羽琉の叱責に、大牙はすぐに口を離したが、既に赤い歯形がくっきりと肩についていた。理由のよく分からない行動だったが、六花の身体を巡る余韻の方が強く、聞き出すような力が残っていない。

 それどころか、大牙の頭にふたつ、獣の耳のような、黒い突起が現れていた。六花は、意識が朦朧もうろうとするあまり、幻影を見ているのだろうと思ったが――鬼灯にも同じような茶褐色の耳が、そして羽琉の背中には一対の黒い羽根が生えている。人間に、獣の一部分が追加されたような、そんな姿。

「ひえっ……」

 なにもかもがごちゃまぜになってしまい、六花には、これが現実かどうかの区別がつかない。香料による作用は収まりかけていたのだが、今度は六花の目の前がぐるぐると回り始める。意識を混濁させたまま、六花は気絶するように目を閉じた。
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