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愛を囁き合って

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 私の提案を聞いた豪さんは、ぴたりと固まってしまった。

 まだ時刻はお昼時、お風呂に入る時間でもない。屋敷では、一緒にお風呂に入るなんてことは絶対にできなかったから、試しに誘ってみようかな、くらいの軽い気持ちで言った。

「豪さん? どうしたの?」
「あ、いや。いろいろ想像してた」
「な、なにを!?」
「……秘密。よし、じゃあそうと決まれば一緒に入ろう」
「きゃっ!」

 多くのしがらみから吹っ切れた豪さんは、とても楽しそうに私を抱え上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。不安定な姿勢に、慌てて豪さんの首に腕を回してしがみつく。女の子なら誰しも憧れる状況に、心が躍った。

「わぁ……なんか、嬉しい」
「寧々が寝てる間に、何回かしたことあるけど」
「えっ、そうなの?」
「うん。ぐっすり眠ってたし、覚えてないよね」

 豪さんは笑いながら、お風呂場へと連れて行った。照明を点けると、そこはとても明るくて、これだと身体の隅々まで見えてしまう。

 私は、顔を赤くして豪さんを見上げた。豪さんは、「今、気付いたの?」とでも言いたげに、意地悪な笑みを浮かべている。

「あの、豪さん。やっぱり別々がいいなー、なんて……」
「だめ。こんな機会、貴重すぎる。明るいところで寧々が恥ずかしがるのを見たいのに」
「ああ、やっぱり! だから喜んでるんだ!」
「誘ったのは寧々の方だよ」

 逃げようともがいても、捕まってしまった。あれよあれよと服を脱がされ、髪の毛をまとめ上げられ、お風呂場に放り込まれる。豪さんも服を脱いで、まっさらのじょうたいで入ってきた。

「わ、わわ……」
「目のやりどころに困る?」

 私が頷くと、豪さんは下半身にタオルを巻いてくれた。でも、私の分はない。恥ずかしさのあまり、私は身体を隠してしゃがみ込んだ。

「寧々。大丈夫だって。幻滅することは絶対にないから」
「ほんと……?」
「うん。綺麗だよ」

 言葉は時に魔法だと思う。差し出された手を取って立ち上がると、豪さんがシャワーを出し始めた。湯船の中にもお湯を張っていく。

「湯船は後でつかるとして、洗いっこしようか」
「え?」
「寧々、ここに座って」

 椅子を出されてそこに掛けると、豪さんは私の背後に膝立ちになった。脚から順にゆっくりとシャワーをあてられ、私の身体を濡らしていく。

「熱くない?」
「うん、大丈夫……」

 それよりも、これは豪さんが私の身体を洗うということなのか。身構えていると、豪さんはボディソープを垂らしたスポンジを泡立て、私の背中を洗い始めた。自分で洗うのとは違って、力加減が優しくてくすぐったい。

「つぎ、腕」
「んっ」

 滑るように背中から肩を通って、腕を洗われた。この流れでいくと、いつかは恥ずかしい部分まで洗われてしまう。想像して、私は唾を飲み込んだ。
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