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作戦その1「Ms.Aの張り込み」
恋愛マイスターとピンチ再び
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気づいた時にはMs.Aは東野の下敷きになっていた。
はたから見れば東野がMs.Aを押し倒している形に見えるだろう。
どうやらコートの端がロッカーにはさまっていたようで、去り際に引っぱられてロッカーが傾いてきたようだ。
運良くロッカー自体は倒れなかったがしかし、なんとも言えぬこの光景。
横になっているからか、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる彼女のボディラインがよくあらわになる。
勢い余って倒れたせいかMs.Aは気を失い、カッターシャツの裾がめくれ上がっておへそが見えてしまっている。恋愛ソムリエとして生きてきた東野にとって直接女性の腹部を見るという経験は初めてで、そのせいもあって男として理性は吹き飛んだ。
自然とMs.Aの唇に吸い込まれていく。
東野自身も忘れていたが、マスクをしたままのキスはむしろいやらしさすら感じた。
マスク越しでも分かる柔らかな唇。慌てて外したマスクには彼女の色つきリップのうっすらとしたピンク色が唇の形にくっきり残っている。
バフっ。
カバンが落ちた音が廊下の方から聞こえた。
そこには、見なれた顔が信じられないというふうにこちらに向いている。
「あっ、これは違う!」
「ご、ごめんなさいっ!」
叫ぶように発した言葉を残してその子はカバンを置いていってしまうほど慌てて走り去ってしまった。
“見られてしまった...。”
「痛っててて...。きゃあっ!」
事態は最悪だった。
気を失っていたはずのMs.Aは東野が彼女の上から立ち退く前に目を覚ましてしまったのだ。
はだけたカッターシャツの女の子のうえに被さる格好だけは変質者の男。唇に残る僅かな感触。
Ms.Aが何かを悟るまでにそう時間はかからなかった。
「ご、ごめん!」
それだけ言って、ほうけているMs.Aを残して東野はその場を離れた。
まずいまずいまずい。
Ms.Aにキスしてしまっただけでなく、その場面を人に見られた。
人から見ても状況は最悪。
東野はとりあえず、廊下に置き去りにされたカバンを担いでその持ち主の所へいそいだ。
念の為校舎内をざっと見て回ったが、このカバンの持ち主はすでに帰ってしまったようだ。
歩いても15分ほどの家まで走って帰った東野は、持ち主の元へは1度帰宅してコートとマスクを外してから向かった。
さすがにあの格好のままでは誤解を解く前にまた誤解が生まれてしまう。
持ち主の家まで約10秒。
ピーンポーン。
静かな夕暮れ時、インターホンの音が東野の周りに溶け込んでいく。
「はい、どちらさまですか??」
その子の声が聞こえる。
「楓さんいますか?」
はたから見れば東野がMs.Aを押し倒している形に見えるだろう。
どうやらコートの端がロッカーにはさまっていたようで、去り際に引っぱられてロッカーが傾いてきたようだ。
運良くロッカー自体は倒れなかったがしかし、なんとも言えぬこの光景。
横になっているからか、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる彼女のボディラインがよくあらわになる。
勢い余って倒れたせいかMs.Aは気を失い、カッターシャツの裾がめくれ上がっておへそが見えてしまっている。恋愛ソムリエとして生きてきた東野にとって直接女性の腹部を見るという経験は初めてで、そのせいもあって男として理性は吹き飛んだ。
自然とMs.Aの唇に吸い込まれていく。
東野自身も忘れていたが、マスクをしたままのキスはむしろいやらしさすら感じた。
マスク越しでも分かる柔らかな唇。慌てて外したマスクには彼女の色つきリップのうっすらとしたピンク色が唇の形にくっきり残っている。
バフっ。
カバンが落ちた音が廊下の方から聞こえた。
そこには、見なれた顔が信じられないというふうにこちらに向いている。
「あっ、これは違う!」
「ご、ごめんなさいっ!」
叫ぶように発した言葉を残してその子はカバンを置いていってしまうほど慌てて走り去ってしまった。
“見られてしまった...。”
「痛っててて...。きゃあっ!」
事態は最悪だった。
気を失っていたはずのMs.Aは東野が彼女の上から立ち退く前に目を覚ましてしまったのだ。
はだけたカッターシャツの女の子のうえに被さる格好だけは変質者の男。唇に残る僅かな感触。
Ms.Aが何かを悟るまでにそう時間はかからなかった。
「ご、ごめん!」
それだけ言って、ほうけているMs.Aを残して東野はその場を離れた。
まずいまずいまずい。
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人から見ても状況は最悪。
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念の為校舎内をざっと見て回ったが、このカバンの持ち主はすでに帰ってしまったようだ。
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さすがにあの格好のままでは誤解を解く前にまた誤解が生まれてしまう。
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ピーンポーン。
静かな夕暮れ時、インターホンの音が東野の周りに溶け込んでいく。
「はい、どちらさまですか??」
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「楓さんいますか?」
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