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05 第二公子宮殿の使用人
2 護衛騎士とお散歩
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侍女達との話を終えて部屋から出たリズは、護衛騎士となったローラントと一緒に、庭の散歩へと向かった。
部屋の窓から見える庭は、生垣が迷路のようになっていたので、リズはそこが気になっていたのだ。
「あっちの、迷路みたいなお庭へ行ってみましょう」
外へ出てそう提案すると、ローラントは優しく微笑みながらうなずいた。
「庭園は足元が不安定ですので、僭越ながらエスコトートさせていただいても、よろしいでしょうか」
紳士らしく優雅な仕草で、ローラントは手を差し出す。
リズはその手を取るべきか、悩みながら見つめた。この庭よりも、格段に足場の悪い魔女の森で暮らしてきたリズに、エスコートなど正直必要ない。
魔女の森へ迎えにきたローラントならわかりそうなものだが、彼はそれでもリズをエスコートしたいらしい。
先ほどは、侍女達をしょんぼりとさせてしまったばかりなので、同じ失敗は繰り返したくないリズは、悩んだ末にローラントの手を取った。
「はい……。お願いします、ローラント様」
「俺はもう、リズ様の護衛騎士ですので、ローラントとお呼びください。侍女達同様に、敬語も結構です」
「うん。そうさせてもらうね、ローラント」
イケメンにエスコートされるという状況は、実にヒロインらしい。ヒロインに生まれはしたが、ヒロインらしくない人生を歩んできたリズとしては、気恥ずかしさがこみ上げてくる。
しかも、それを冷やかすように、相棒が背中を突いてくるのだ。
(もう……。この状況が似合わないことは、私が一番わかってるんだから……)
落ち着かないリズに引き換え、ローラントはエスコートする姿が良く似合う。魔女の森で出会った際はじっくりと見る余裕はなかったが、太陽の下で見るローラントは騎士団の制服姿が素敵な、爽やかな印象の青年だ。
アレクシスは神秘的な雰囲気があるイケメンだが、ローラントは老若男女問わず慕われそうな雰囲気がある。
思わずリズが魅入っていると、その視線に気がついたローラントがにこりと微笑んだ。
「騎士団の罰を軽くしてくださり、感謝申し上げます。リズ様」
「私のほうこそ、私が不利にならないように報告書を書いてくれて、ありがとう」
「俺にできるのは、それくらいですので。兄も感謝しておりました。直接リズ様にお会いしたかったようですが、兄は第二公子宮殿への出入りを禁止されてしまったもので」
誤解は解けたはずなのに、なぜカルステンは出入り禁止にされたのだろうか。リズは不思議に思いながら尋ねる。
「騎士団長はもう、私に危害を加える気はないのでしょう?」
「そうなのですが、公子殿下のご意向なもので……」
ローラントは言いにくそうにそう述べると、気分を変えるように「ところで」と続けた。
「殿下は随分と、リズ様を大切になさっているようですね。少なくとも、公宮から逃げ出したいというお気持ちは、消えたのではございませんか?」
「うん……。逃げずに、婚約を回避したいなぁと思って」
結局、ローラントとの逃亡計画は、リズには必要なくなった。本来なら、アレクシスの計画が失敗した際の代案として、準備を進めるべきなのかもしれないが、リズとしては常に全力で守ってくれる義兄を、信じたい気持ちが大きい。
「そうですか。俺は結構本気だったので、残念です」
心残りがあるように、ローラントはリズの手をぎゅっと握りしめる。
なぜそんなにも、逃亡計画に意欲的なのか。再びそう感じたリズは、あの夜の疑問を口にしてみた。
「ローラントはどうして、出会ったばかりの私を逃がそうという気になったの?」
「笑わないで聞いていただけますか? 実は昔から、冒険者に憧れていたもので。リズ様と旅ができたら、楽しいかと思ったのです」
恥ずかしそうにはにかむ姿が、まるで少年のよう。落ち着いた雰囲気のローラントだが、こんな一面もあったようだ。
「そうだったんだ。夢を壊しちゃったみたいで、ごめんなさい……」
「いえ。リズ様のお言葉を聞いて、新たな夢ができたところです」
「新たな夢って?」
彼に、夢を持たせるようなことなど言っただろうかと、リズは首をかしげる。
「それは、秘密にさせてください。その代わり、リズ様の婚約回避にはいつでもお手伝いさせていただきます」
「それは嬉しい、ありがとう!」
協力者は多いに越したことはない。アレクシスにも報告しなければと、リズは心を弾ませた。
部屋の窓から見える庭は、生垣が迷路のようになっていたので、リズはそこが気になっていたのだ。
「あっちの、迷路みたいなお庭へ行ってみましょう」
外へ出てそう提案すると、ローラントは優しく微笑みながらうなずいた。
「庭園は足元が不安定ですので、僭越ながらエスコトートさせていただいても、よろしいでしょうか」
紳士らしく優雅な仕草で、ローラントは手を差し出す。
リズはその手を取るべきか、悩みながら見つめた。この庭よりも、格段に足場の悪い魔女の森で暮らしてきたリズに、エスコートなど正直必要ない。
魔女の森へ迎えにきたローラントならわかりそうなものだが、彼はそれでもリズをエスコートしたいらしい。
先ほどは、侍女達をしょんぼりとさせてしまったばかりなので、同じ失敗は繰り返したくないリズは、悩んだ末にローラントの手を取った。
「はい……。お願いします、ローラント様」
「俺はもう、リズ様の護衛騎士ですので、ローラントとお呼びください。侍女達同様に、敬語も結構です」
「うん。そうさせてもらうね、ローラント」
イケメンにエスコートされるという状況は、実にヒロインらしい。ヒロインに生まれはしたが、ヒロインらしくない人生を歩んできたリズとしては、気恥ずかしさがこみ上げてくる。
しかも、それを冷やかすように、相棒が背中を突いてくるのだ。
(もう……。この状況が似合わないことは、私が一番わかってるんだから……)
落ち着かないリズに引き換え、ローラントはエスコートする姿が良く似合う。魔女の森で出会った際はじっくりと見る余裕はなかったが、太陽の下で見るローラントは騎士団の制服姿が素敵な、爽やかな印象の青年だ。
アレクシスは神秘的な雰囲気があるイケメンだが、ローラントは老若男女問わず慕われそうな雰囲気がある。
思わずリズが魅入っていると、その視線に気がついたローラントがにこりと微笑んだ。
「騎士団の罰を軽くしてくださり、感謝申し上げます。リズ様」
「私のほうこそ、私が不利にならないように報告書を書いてくれて、ありがとう」
「俺にできるのは、それくらいですので。兄も感謝しておりました。直接リズ様にお会いしたかったようですが、兄は第二公子宮殿への出入りを禁止されてしまったもので」
誤解は解けたはずなのに、なぜカルステンは出入り禁止にされたのだろうか。リズは不思議に思いながら尋ねる。
「騎士団長はもう、私に危害を加える気はないのでしょう?」
「そうなのですが、公子殿下のご意向なもので……」
ローラントは言いにくそうにそう述べると、気分を変えるように「ところで」と続けた。
「殿下は随分と、リズ様を大切になさっているようですね。少なくとも、公宮から逃げ出したいというお気持ちは、消えたのではございませんか?」
「うん……。逃げずに、婚約を回避したいなぁと思って」
結局、ローラントとの逃亡計画は、リズには必要なくなった。本来なら、アレクシスの計画が失敗した際の代案として、準備を進めるべきなのかもしれないが、リズとしては常に全力で守ってくれる義兄を、信じたい気持ちが大きい。
「そうですか。俺は結構本気だったので、残念です」
心残りがあるように、ローラントはリズの手をぎゅっと握りしめる。
なぜそんなにも、逃亡計画に意欲的なのか。再びそう感じたリズは、あの夜の疑問を口にしてみた。
「ローラントはどうして、出会ったばかりの私を逃がそうという気になったの?」
「笑わないで聞いていただけますか? 実は昔から、冒険者に憧れていたもので。リズ様と旅ができたら、楽しいかと思ったのです」
恥ずかしそうにはにかむ姿が、まるで少年のよう。落ち着いた雰囲気のローラントだが、こんな一面もあったようだ。
「そうだったんだ。夢を壊しちゃったみたいで、ごめんなさい……」
「いえ。リズ様のお言葉を聞いて、新たな夢ができたところです」
「新たな夢って?」
彼に、夢を持たせるようなことなど言っただろうかと、リズは首をかしげる。
「それは、秘密にさせてください。その代わり、リズ様の婚約回避にはいつでもお手伝いさせていただきます」
「それは嬉しい、ありがとう!」
協力者は多いに越したことはない。アレクシスにも報告しなければと、リズは心を弾ませた。
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