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〜諸悪の根源
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「お前が? 水守のところへ?」
侑斗が尋ねると、男子生徒は、教室中に響き渡るような素っ頓狂な声を上げながら、傍らに立つ侑斗を仰ぎ見た。
「俺……何かおかしなこと……言ってる?」
まん丸に見開かれた目が、明らかに『おかしい』と言っている。
入学以来、水守新太率いる不良グループの虐めの標的にされ、性的嫌がらせまで受けていると噂される侑斗が、自分を虐める張本人である水守新太の自宅の住所を教えてくれと突然言い出したのだ。男子生徒が驚くのも無理はない。
ましてや、新太は、家の事情で急遽県外へ引っ越すことになり、ゴールデンウィークが始まる来週末には転校することが決まっている。
いじめの首謀者である新太がいなくなれば、侑斗へのいじめもやがて落ち着く。
新太の転校は、侑斗にとっては、つらい日々から解放されるビッグニュースだ。それをわざわざこのタイミングで、何を好き好んで寝た子を起こすような真似をするのか、男子生徒には侑斗の考えていることが全く理解出来ないようだった。
二人のやり取りを見ていた周りの生徒も、自分を虐める相手が目の前からいなくなるというのに、喜ぶどころかむしろ困っているような様子の侑斗に、驚きと呆れの入り混じった冷ややかな視線を向けている。
そういう目で見られることにも侑斗はもう慣れている。
生徒も教師も、この学校にいる人間の殆どが、侑斗の中に虐められる原因を探している。
侑斗の中に非を作ることで、『アイツはああいう奴だから』と、侑斗が虐められることを黙認する。『だから仕方ない』と、見て見ぬふりをする自分を許し、その行為を正当化する。
しかしそれすらも侑斗は何とも思わなかった。
侑斗にとって周りの人間は景色と同じだ。
侑斗の中で、新太から受けるいじめ行為は、いつも新太と自分二人だけの問題だった。
不良たちがどんなに加勢しようと、周りがどんなに煽ろうと、その先にはいつも新太の存在があり、新太以外はその他大勢の脇役でしかなかった。
怒鳴られ、殴られ、犯されながら、侑斗は、心の中で、いつも新太に『どうして』と問い掛けていた。
今にして思えば、新太へのそのこだわりが、侑斗の気力を奮い立たせ、いじめに立ち向かう原動力にもなっていた。
おそらく最初から、自分の心は新太に囚われていた。
新太と再会したあの瞬間、ひょっとしたら中一の夏、引っ越して行く新太に、『さよなら』と言われたあの時から。
本当の気持ちに気付いた今、これまで感じた説明のつかない胸のモヤモヤや、心とはうらはらな身体の反応が侑斗の中で全て繋がった。
自分はずっと新太を追い求めていた。
このまま新太と離れるわけにはいかない。
このまま離れたら、この先もずっと新太に囚われ続けることになる。
「新太……水守くんの住所を教えて欲しい。どうしても水守くんに会わなきゃいけないから」
もう一度、侑斗は男子生徒に深々と頭を下げた。
男子生徒は、
「俺が教えたって言うなよ」
しつこく食い下がる侑斗を穢れたものでも見るような目で眺め、スマホの住所録を開いて、ほらよ、と机に置いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
昇降口を出ると、不良グループの一人が、まるで侑斗が来るのを待ち構えていたかのように侑斗の行く手を塞いだ。
「ちょっと顔貸せ」
腕を掴まれ、有無を言わさず体育館裏へと連れられる。
いつもの性欲処理だろうか。想像しただけで雄臭いペニスの臭いと独特の苦みが口の中に広がる。
酸っぱい唾液が舌の裏側から溢れ出す。気持ち悪い。慣れているはずなのに初めてされた時のような吐き気に襲われる。
無理だ。
むしろ今まで平気で咥えられたことが嘘のように、今は身体が全力で拒絶している。
もうあんなことは出来ない。
もっとも、そんなことをしている場合ではなかった。今は新太のところへ行くことが先決だ。
「離してください……」
殴られるのを覚悟で思い切り腕を振り払った。正確には、振り払おうとしたがびくともせず、ただ大きく腕を振り回しただけだった。
「なんもしねぇからそんなビビんな」
不良メンバーは、抵抗する侑斗を簡単に片手で制すると、侑斗を体育館裏のコンクリートの壁に追い詰め、腕を掴んだ手を離して一歩後ろへ下がった。
「別にお前に変なことしようってんじゃねぇ。ただお前に聞きてぇことがあるんだ」
「俺に……?」
「アイツらに何があったか知らねぇか? 昨日、アイツらと一緒だっただろ?」
「昨日……」
オウム返しする侑斗を見ながら不良が真剣な顔で頷く。
昨日、体育倉庫で犯された時の記憶が甦る。そう言えば、あの時の不良たちの姿が見えない。
「昨日から連絡が取れねぇんだ。サボりなんて珍しくもなんともねぇが、昨日の今日で揃いも揃って三人同時に連絡つかねぇとか、こんな偶然あり得るか?」
どう答えていいか解らず黙っていると、不良メンバーは、あたかも侑斗も同意見であるかのように、一方的に話しを進めた。
「アイツらが昨日お前に何したのか、だいたいの想像はついてる。新太に見つかって一悶着あったんだろ? お前、あの後、新太と一緒にいたんだよな。新太がお前とバイクで走ってくとこ見たって奴が何人もいるんだ。教えてくれよ。あの後、一体何があったんだ?」
「何がって……」
不良たちとは学校で別れたきり会っていない。新太ともホテルで別れてそれきりだった。
その後のこと聞かれても侑斗には何も答えられない。黙ったままオドオドと不良を見上げると、何も言わない侑斗に痺れを切らしたのか、不良は、侑斗から少し距離をとった位置に立っていた身体を前のめりに乗り出し、再び距離を縮めて侑斗に詰め寄った。
「別に、新太をどうこうしようってわけじゃねぇんだ。ただ、アイツらは俺の仲間だし、もし新太と何かトラブってんなら助けてやんねぇと」
顔が近い。
反射的に仰け反ると、殆ど同時に腕を掴まれゾクリと鳥肌が立った。
「新太がお前を特別な目で見てるってことは解ってんだ。お前に勝手に手ェ出されて、新太があのまま黙ってるとは思えねぇ。なんか仕返し的なもんがあったんじゃねぇのか? アイツらがどうなったか知らねぇか?」
唾を吐きかけんばかりに迫られ、思わず息を止める。
鼻息が頬に当たって気持ち悪い。拒絶反応だろう。吐き気を催すほどの嫌悪感が胸に迫り上がり、悪寒と鳥肌が全身を覆い尽くす。
もう耐えられない。
これ以上触れられたら本当に吐いてしまう。もう一秒たりともこんな所にいたくない。
「離して……」
「そんなこと言わずに……なぁ……」
「離せッ!」
自分でも信じられないような大声が口から出た。同時に、身体が無意識のうちに俊敏に動く。
俺に触れて良いのは新太だけだ。
「お前ッ!」
がむしゃらに腕をぶん回して不良を振り払い、後ろも見ずに、全速力で校門に向かって走る。
「テメェこらッ! もとはと言えばテメェのせいだろう! 逃げんじゃねぇよ!」
不良の怒鳴り声が背中に突き刺さる。
凄い剣幕だ。あんなに怒らせてしまって、次に会ったら一体何をされるか解らない。
また昨日みたいなことになったら。そう思うと身体が震えて足がもつれる。
「助けて、新太……」
ひとりでに、唇が新太の名前を呼んだ。
さんざん虐められ、辱められ、それでもたった一人誰かに助けを求めるとしたら、それは新太であると侑斗の本能が言っている。
理屈ではなく、感覚で解る。共にすごした幼い日、友達と喧嘩して仲間はずれにされた時も、母親に叱られて締め出しを食らった時も、いつも新太が庇い、助けてくれた。昔から、どんなことがあっても最後は必ず新太が助けてくれる。たとえ今の関係があの頃と違っていても、幼い頃に培った感覚は今も侑斗の中に変わらず根付いている。本質的な部分は何も変わらない。頭ではなく、侑斗の魂がそれを知っている。
「新太……新太……」
足を踏み出すごとに名前を呼びながら、侑斗は校門を抜け、駅を目指した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
最初は懐かしさ。次に、嫉妬のような苛立だたしさに襲われ、やがてやり切れない怒りに変わった。
『新太だよね? 俺、侑斗! 神澤侑斗!』
記憶の中に鮮明に残る笑顔が、そのままの輝きで真っ直ぐ新太を見る。
あまりの眩しさに目が眩む。
人懐こい笑み、期待に膨らんだ澄んだ瞳。軽快に動く唇。弾けんばかりの声色。再会の喜びを全身で伝える素直さが、楔となって新太の胸に突き刺さる。
可愛い侑斗。いつも自分の周りを犬のように纏わりついてきたあの侑斗が、何かあるとすぐに泣きつき、全力で甘えてきたあの侑斗が、突然目の前に現れ、あの頃と同じ純粋な笑顔を向ける。
いけない、と、引き込まれそうになるのを慌てて視線を逸らして逃れる。
一瞬でも懐かしく嬉しく思った自分を、新太は自分自身で戒めた。
ーーーもうあの頃とは違う。
あのまま侑斗と一緒に時を過ごしていたならば、或いは自分もあの頃のままでいられたのかも知れないとも思う。
しかし所詮は憶測だ。新太は今の状況を嫌というほど理解している。
もうあの頃には戻れない。
ようやく諦め、受け入れた。
だからこそ、新太は侑斗を迎え入れるわけにはいかなかった。
新太にとって侑斗は、自分の心を過去へと引き戻す悪しき誘因だ。
侑斗のキラキラとした目、弾んだ声色、新太をあの頃のままの新太だと信じて疑わない無邪気さが、新太の胸を掻き乱す。
これ以上、心を乱されたくはない。
侑斗が慕い、追いかけた昔の自分はもういない。それを侑斗に思い知らせてやらねばならない。
侑斗がこれ以上笑顔を向けないように。侑斗がもう二度と関わりを持ちたくないと思うように。もう顔も見たくないと思うほどに。
なぜなら、今の自分は笑顔を向けられるに値しない。それほど変わってしまった。
「まだ怒ってるのかい?」
遠くを眺める新太の瞳を、新太の、体毛の薄い腋の下に唇を這わせていた男が、ふと顔を上げて覗き見る。
ねちっこい視線が新太を現実へと引き戻す。
「何度も言うようだが、私だって本当は今のままの方が良いんだよ。なのにお前の母親がどうしても一緒に住むって聞かないから。向こうへ行ってもどうせすぐにはパート先は見つからないだろうし、狭い町だから今までみたいにホテルに行くことも出来やしない」
「あんたの頭ん中はそればっかだな」
「父親に向かって『あんた』はないだろ?」
「他人だろ」
「またそんな生意気な口を……。ともあれ、向こうへ行ったら、こうしてお前と二人で過ごす時間もあまりとれなくなる。もっとも、お前が部屋に入れてくれるなら話は別だが」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ」
「ふざけてなんかないさ。母親と一つ屋根の下で交わるのも背徳的で燃えるんじゃないか?」
「テメェ」
ぶっ殺す! 言おうとしたところを、唇を指で塞がれ、チッ、チッ、と嗜められる。
本気を出せばこんな中年男など簡単に床に沈められるものを、両手をバンザイの姿勢でヘッドボードに繋がれ、両脚を、膝を折った状態で太ももとふくらはぎを一緒に固定バンドで留められているせいでまともに反撃出来ない。
伸び盛りとはいえ、男子高校生の部屋に置くには大きすぎるセミダブルのベッドの上で、新太は、両手両足を不自由な形で拘束され、細身ながら、筋肉のよくついた引き締まった身体を男の舌や指で弄ばれていた。
腋の下に鼻先を埋めて匂いを嗅がれ、窪みを、薄い体毛ごと唇で吸われて舐め回される。
熱くヌメった舌先が、筋肉の浮いた胸を伝ってその上の乳首に辿り着く。敏感な粒を甘噛みされて強く吸い上げられると、ゾクゾクするような快感が身体の内側を走り抜け、こらえてた喘ぎ声が漏れた。
「あうッ……」
ピチャピチャとイヤらしい音を立てながら、男の舌が、新太の硬くなった乳首を弾き、くるくると回しながら包み込むように口に含む。
尖った舌先が小さな乳首を上下左右に舐め転がす。根元から先っぽから斜めから角度を変えて何度も何度もしつこく舐め倒し、唾液まみれになった乳首を唇でジュルッと音を立てて吸う。
もう片方の乳首は親指と人差し指で捻り上げ、二本の指を擦り合わせるよう揉みながら、時折り引き千切らんばかりの力で引っ張り上げる。
「んふッ!」
ビリっ、と、電気が流れるような痛みが乳首の奥に走る。
全身の皮膚がざわざわと鳥肌を立てる。下腹部がズキンと熱く疼く。
「乳首の感度はバッチリだね。本当はもっと大きくして咥えやすいようにしたいんだけど、高校だとまだプールの授業があるだろう? お前の綺麗な胸にイヤらしい形の乳首がついてたらさすがに怪しまれちゃうからねぇ」
「テメ……変なことしやがったらただじゃおかね……あひッ!」
言い終わらないうちに乳首を甘噛みされて引っ張られ、新太が背中を弓なりに逸らす。
こんなことで声を上げてしまう自分が悔しい。
しかしもう三年。
母親と共にこの男と暮らし始めた中一の夏から少しづつ蝕まれていった新太の身体は、これまでのおよそ三年という月日の中で、負けん気だけでは耐えきれないほど敏感に反応するようになってしまった。
中でも乳首は、ほんの少し触れられただけで先っぽから胸の奥へと甘い痺れが広がり、それがお腹を抜けて下腹部までもをジンと疼かせる。ペニスは触れられてもいないのに勃ち上がり、扱かれる時とは違う、じんわりと纏わり付くような快感が睾丸をじわじわと追い詰める。
身体の中心が焼けるように熱い。
「ここをこうされると、ペニスの先がゆらゆら揺れてイヤらしいんだよね。ほら、見てごらん」
クソッ、と必死で唇を噛み締めるものの、それがかえって声を細く絞り、鼻にかかった悩ましい喘ぎ声となる。
自分の声に自分で絶望する。羞恥に震える新太を、男のじっとりとした視線が舐め回す。
「相変わらず強情だねぇ。昔はもっと素直だったのに……。もっとも、これはこれで悪くないけども……」
「この、変態野郎ッ!」
敵意を剥き出しにする新太をものともせず、男は、追い詰められたネズミのように必死で牙を剥く新太を、むしろ可愛くて仕方ないというように、うっとりと目を細めて見る。
その目が、膝を折り曲げられてバンドで固定された足元へと視線を移す。
強制的に開かされた足の間で、新太の、しっかりと皮の剥けたペニスが雄々しく鎌首をもたげている。
新しい父親だと名乗るこの男と初めて一緒にお風呂に入った中一の夏休み、『これが本当の形だ』と、まだ先っぽまで被さったままの包皮を無理やり剥かれて以来、入浴のたびにペニスを弄られ、皮を剥かれた。
お陰で、新太のペニスは、高校二年にしてすでにすっかり大人の風格を漂わせ、クラスメイトの羨望の視線を集めた。
他人の手によって何度も扱かれ射精させられたペニスが、何もしなかったペニスと比べてどれほどの成長の差を見せるのかは定かではないが、新太のペニスは他の同年代と比べてサイズもカリ首の張りも申し分なく、その雄々しく育ったペニスを美味しそうに口に含みながら、男は、さも自分の性技の賜物であるかのように、『将来は、男女問わず数多の人間を夢中にさせるだろう』と得意気に笑った。
新太が望んだわけではない。しかし、通常よりも早い段階で性感を目覚めさせられた新太の身体は、他の同年代にはない色香を放ち、男の思惑通り、数多の人間を惹きつけた。
男は、凛々しく美しく成長した新太を自分の思い通りに出来ることが嬉しくて仕方ないらしく、未だに母親の目を盗んでは新太のベッドに忍び込み、こじつけの用事を作っては新太をホテルへ連れ出す。
思春期の多感な頃から身体を弄られ、毎日身体の奥が異様な熱を上げていた。
泣いて抵抗したが、母親にバラすと言われ、何も言い返せなくなった。
被害者ではなく、加害者なのだ、と言われた。
母親に隠れて密通する義父と息子。いわば母親を裏切る共犯者。
最後の一線を超えると、母親への罪悪感と自分への嫌悪感で、新太はいよいよ逃げ出せなくなった。
まさか自分の旦那と息子が肉体関係にあるとは夢にも思っていない母親は、むしろ良好な親子関係を築いていると信じて疑わない。
そんな母親に本当のことなど言えるはずもなかった。
男は、そんな新太の気持ちを逆手に取り、母親の前で、新太に自分の背中を流すよう堂々とお風呂に誘い買い物と称して新太を外へ連れ出した。
実際はホテルへ向かうとも知らず笑顔で見送る母親を、新太は、そんな目で見ないでくれと心の中で叫びながら、気付かれないよう精一杯の笑顔で手を振った。
自分の罪を隠すために、母親を傷付けないために、新太は自分を偽り男に従った。
男がそれに味をしめたのは言うまでもない。行為は次第にエスカレートし、新太は毎日のように身体を求められるようになった。
男の単身赴任が決まった時も、ホッとしたのも束の間、男は、毎月帰宅するたびに、会えない鬱憤を晴らすかのようにしつこく新太に迫った。
母親に知られないためとは言え、男の要求を全て受け入れ、言いなりになる自分を疑ったこともある。
侑斗に肉体関係を迫り、部屋に上がり込んでまで行為に及んだのも、今にして思えば、その答えを知りたいという欲求の表れだったのかも知れない。
嫌われるだけなら虐め行為だけで充分だった。
それを、侑斗の身体まで奪い、自尊心をも傷つけた。
屈辱的に犯されることで、侑斗が何を思い、どうなるのかが知りたかった。
侑斗を奥深くまで犯しながら、新太は、唇を噛んで耐える侑斗に視線を尖らせ、悲痛な叫びに耳を凝らした。
自分の答えを見つけるために、侑斗を自分と同じ位置に引き摺り下ろし、反応の中に自分の答えを探した。
しかしーーーと、新太は、ふいに頭をもたげた疑念に意識を向けた。
ーーー今は?
最初はそうだったかも知れない。でも今は。
侑斗の悶え泣く顔がふと脳裏に浮かぶ。
うっすらと上気した頬。泣き出しそうに潤んだ瞳。痛めつけてもなお、お互いを『親友』と呼び合っていた頃と同じ眼差しで見詰める侑斗を頭の中で見返しながら、新太は、その真っ直ぐな瞳に問い掛けた。
しかし、目の前の現実が新太の意識を引き戻す。
「他所ごとを考えるなんて悪い子だ」
乳首を弄っていた男の指が、美しく生え揃った陰毛の茂みの中から反り返ったペニスの先をイヤらしく撫でる。
尿道まで開発された先端が、パックリと開いた鈴口をヒクつかせながら上下に揺れる。
新太の意思に逆らうように勃起したペニスをぎゅっと握り締めると、男は、添い寝するように新太の横にぴったりと身体を横たえ、本格的にペニスを扱き始めた。
「んはッ……やッ……やめろッ……」
「やめていいの? こんなに、はち切れそうなのに?」
「んあぁ、うッ……」
羞恥心を煽るように股を極限まで開かせ、親指を濡れた鈴口に食い込ませながらぐりぐりと何度も擦り回す。
「お尻の中を触らなくても、こうやってペニスの入り口を弄られてるだけでお腹の奥が感じるようになってきたんじゃないのかい?」
男の言う通り、指先の刺激が尿道への挿入感を呼び起こす。
お尻の奥の弱い部分がキュンキュン疼く。身体の芯が熱く痺れる。
「言葉だけで感じて……可愛いね……。ブジーで可愛がってやりたいとこだが、あいにく持って来るのを忘れてね。何か代わりになるものがあればいいんだけど……」
「やッ、やめろッ!」
身体を捻って抗うものの、ヘッドボードに吊られた両手はバンザイしたまま動かず、縛られた両足は芋虫のように身体を回転させるだけ。
ただされるがままにペニスを弄られる新太を揶揄うように、男は感じやすいカリ首や裏筋に指先を立てて器用に撫で回し、時折り、内股や陰嚢にも手を伸ばす。
「冗談だよ。お前の大事なペニスに俺がそんな無体をするわけがないだろう?」
「うるせぇ……ッ……好き勝手しやがって、一体どの口が……ぁはぁッ……」
唇は、おしゃべりしている時以外、腋の下や脇腹を這い回り、若者の瑞々しい皮膚を吸ったり舐めたりを繰り返す。
快楽が嫌悪感を上回る。
男のねちっこい愛撫に、新太のペニスは限界まで勃ち上がり、先走りが、ぽたぽたとお漏らしするように先端から滴り落ちる。
「憎まれ口をきくのもそろそろ限界かな?」
「くッ……そッ……」
裏筋を指の腹でぐりぐり押しながら、敏感な鈴口に爪先を立てられると、我慢していた声が喉を突き破り、新太は、ついに女のような喘ぎ声を上げた。
「んはあぁぁぁっ!」
「相変わらず良い声で泣いてくれるねぇ。跳ねっ返りを泣かせるほど興奮するものはないよ」
「あっ、ッはぁっ……やめッ……んはぁッ」
仰け反るような痛みと気持ち良さが交互に襲い掛かる。
首を左右に振りたくって抵抗する新太をうっとりと眺めながら、男は、寄り添っていた身体をもぞもぞと動かし新太の足元に移動する。
ゾクッ、と、新太の背筋に悪寒が走る。
男が次に何をするのかは、これまでの経験から容易に想像がつく。
気配を察して腰を捻ると、新太の予想通り、男の湿った唇が逃すまいとペニスを咥え、ねっとりとした舌が亀頭を揉み潰すようにねぶり回した。
「やッ……めろッ……ぁはぁッ、はッ……」
カリ首を舌の先端で一周し、竿の部分を唇で下から上へ優しく撫で上げる。
先ほどとは違うソフトな刺激に腰が勝手に浮き上がる。
いつもの悪趣味な愛撫だ。ギリギリまで追い詰めてスッと引く。竿の次は、もっとも弱い裏筋を舌先を尖らせてチロチロと舐め、溝を伝い上がって真上から先端を咥え込む。
「ッあぁぁぁッ……」
口の中でも緩急をつけるのは忘れない。頬肉、上顎、舌、男の口の粘膜が、時に優しく時に強く新太のペニスを扱き上げる。
「ひぁッ! だッ……」
ひときわ大きな声が上がったのは、男が、カリ首に歯を立てたからだ。
しかしそれも一瞬。男はすぐに口からペニスを吐き出し、再び竿から陰嚢へと唇を這わせた。
「そろそろこっちも弄って欲しいんじゃないのかい?」
陰嚢の皮膚を細かく吸いながら、顔を少しづつ下にずらして会陰へと向かう。
普段は脚の間に閉ざされた部分を開かれる恥ずかしさ。掛かるはずのない鼻息の感触に新太の身体がブルッと震える。
男に自由にされている自分が情けなくて悔しい。さらに脚を開かれ、引き締まった尻肉をギュッと掴んで左右に開かれると、ギリギリで堪えていた悔し涙が目尻からツーっと頬を流れた。
「こんなにヒクヒクさせて……いやらしい子だ……」
尻肉を開かれたことで、新太の後孔が、無惨に引き伸ばされた状態で男の目の前に曝け出される。
ねだるようにヒクつく窄まりを満足気に眺めると、男は、それを両側から指で広げ、唇を押し当ててジュルジュルと吸い上げた。
「あっ! ぁあぁッ、なにやッ……ぁッ!」
抗う新太をものともせず、男は、後孔を限界まで広げて、細めた舌先をぐぽぐぽと捻じ込む。
快感に全身が総毛立つ。
逃れようとしたところで無駄な抵抗。縛られた身体を窮屈そうに捩ることしか出来ない新太を揶揄うように、男は、敏感な入り口周りを舌先でしつこく舐め回し、ふいに、唾液塗れの後孔からスッと顔を離した。
またしてもギリギリのところでお預けを食わされる。
しかし同時に、冷たい感触がお尻の谷間を伝い、新太はビクッと腰を跳ね上げた。
「やぁッ……」
驚く暇もなく、後孔に男の指が添えられる。
窄まりの周りを、ローションを塗り込みながらくるくると回しほぐし、少し柔らかくなったところで指先を後孔の中にズルリと滑り込ませた。
「むふぅッ……」
新太の身体のことなら充分心得ていると言わんばかりに、男の指は新太の弱い部分をピンポイントで捉え、刺激する。
最初は人差し指一本を抜き差しし、次に、中指を加え、最終的に薬指を加えて三本の指で中を掻き回す。
弱い部分をこれでもかと攻められ、新太の絶頂感が高まっていく。
しかし、ここでも男の悪趣味な性癖は遺憾無く発揮され、新太は、絶頂を迎える寸前で指を引き抜かれ、強烈な疼きを抱えたまま身悶えた。
「クッソ……」
焦らしは一度にとどまらず、男は、何度も指を突き入れては絶妙なタイミングで引き抜き、新太を悶え泣かせる。
感じる速度がどんどん速くなる。絶頂感が高まる感覚が狭くなる。
敏感になっていく新太をよそに、男は、新太をイカせることなく延々と焦らし続ける。
「そろそろ欲しくなって来たんじゃないのかい?」
「だ……れがッ……」
さんざん焦らされ、性感を高められた新太の後孔は、意地だけでは抗えないほど熱く疼き、うっすらと開いた窄まりをイヤらしくヒクつかせながら貫かれるのを待っている。
それを知りながら、男は、新太のお尻の溝にペニスの先をあてがい、後孔の表面を何度もなぞり上げる。
「欲しいなら欲しいって素直に言わなきゃ入れてあげないよ?」
入りそうで入らない角度でしつこくなぞりながら、男が意地悪く笑う。
「ほら、どうして欲しいの? いつもみたいに言ってごらん?」
意図的に、亀頭の先っぽを窄まりにグイッと押し込まれてすぐに抜かれたら最後だった。
今までの我慢が一瞬で吹き飛ぶほどの疼きがお尻の奥を火照らせ、新太は、泣き出しそうに顔を顰めた。
「く……だ……さい……」
「そんなに小さな声じゃ聞こえないなぁ」
「いっ、入れて……くださいッ……」
「そうじゃないだろう?」
新太の瞳に悔し涙が滲む。屈辱に唇を震わせながら、新太は、いつもの言いつけ通り、男の目を見ながら絞り出すように言った。
「いっ、入れて……と、義父さんの……硬いのを……」
怒りに顔を紅潮させながら嫌そうに言う新太を見据えながら、男は、言葉の一言一言を噛み締めるようにじっと聞く。
薄ら笑いを浮かべて見下ろすその顔は父親の顔ではない、ただの獰猛な雄の顔だ。
その顔がふと真顔に戻り、瞳が、獲物を追い詰めた獣のような残忍な光を帯びた。
「しょうがないな」
優しい声色に、新太が観念したように目を伏せる。
同時に、尻肉を下からすくい上げるように持ち上げられ、グチュッ、とペニスの先が後孔にめり込んだ。
「ぁああぁああッ!」
体重を乗せて一気に奥まで突き入れ、肉壁の感触を愉しむように揺さぶった後、そこからゆっくり引き戻す。
排泄感が背筋を震わせる。
身体がキュゥっと細く窄まるような快感。しかしまたズンと奥を突かれ内臓を揺さぶられる。
突いては戻し、突いては戻し、獲物を捕食する獣の衝動そのままに、男は、新太の身体を忙しなく貪る。
ズズッと粘膜を擦り上げられるたびに、身体の中に入り込んだ男の昂ぶりが、狭い腸内で大きくなって行くのがわかる。
勢いを増した動きに新太の肉壁が騒めき立つ。それが皮肉にも男の昂ぶりをキュッ、キュッと締め付け、男をよけいに喜ばせた。
「こんなに絡み付いて……お前のここは本当に最高に気持ち良い……」
「あひッ! やぁッ……やめろッ……」
本来褒められるべきでないところを褒められたところで新太には何の感動も起こらない。むしろ、女のように扱われる自分を呪わしく思う。俺は男だと叫んで男を殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られるが、疼き火照った肉壁を硬い先端でグリグリと捏ね回されると、新太は、我を忘れて身体を震わせることしか出来ない。
それすらもお見通しとばかり、男は、新太の両膝を開いて腰を何度もしゃくり上げ、硬く勃起したペニスを最奥へと突き立てる。
「こうすると、精巣と膀胱が揺さぶられて気持ち良いでしょう?」
「だッ……ダメだッ……そこはッ……」
「んんんッ……そんなに締めないで……力を抜いてごらん……」
「やあぁッ! やだッ! やめて! 頼むからッ!」
男は構わずさらに腰の動きを加速させる。
パン、パン、と、肌と肌がぶつかる乾いた音が響く。
軽快な音に合わせ、全身を貫くような鋭利な刺激が後孔の奥を震わせる。
腸壁の前側の感じる部分を容赦なく擦り上げ、かと思えば、深い位置をグイグイと押し、揺さぶり上げる。
身体の内側が火を噴くように熱い。絶頂感か尿意か解らない切ない衝動が突き上げる。
漏れる。
思った瞬間、新太の鈴口から生温かい液体がじょろじょろと溢れ出し、竿からお尻の谷間を伝って下へ流れた。
「オシッコか潮か解らないね。もっとも終わるまでにはしっかり潮を噴いてもらうけども……」
「だぁッ……あっ……やぁッ……」
弾けるような絶頂感とは違う、重く、じわじわと迫るような快感。
それが、男の動きに合わせて押し寄せる波のように湧き上がる。
鈴口から伝い漏れていた液体はいつしか噴水のように上へ噴き出し、新太のお腹を湿らせる。
「すごいね。見てごらんよこれ。まだ始まったばかりなのにこんなになっちゃって」
「誰のせい……だと……ぁはッ……」
強がりも限界。
男が、横に大きく開いた膝をふいに内側に戻し、胸の前で揃えるように持ち替える。
すると、突然、パシッ! と空気を切り裂くような音が響き、鋭利な痛みがお尻に走った。
「あうぅッ!」
痛みは一度に止まらず、二度三度と新太を襲う。
「締まるッ! 締まるよッ! 新太くんッ!」
新太の横っ尻を引っ叩きながら、男が狂ったように腰を突き入れる。
パンッ、パンッ、パンッ、と、肌がぶつかる音にお尻を引っ叩かれる音が混ざり合う。
ベッドがギシギシ揺れる。
嫌悪感で一杯になる心とはうらはらに、新太の身体は、容赦なく襲う快楽に何度も気をやられ、声にならない声を上げながら全身を痙攣させる。
「あッ、あああ……あッ……」
止まらない絶頂に目の前が白くなる。
「いいッ! 気持ち良いッ! 気持ち良いよッ、新太くんッ!」
「ハァ……やッ……んぁッ」
「ダメだ。もうイクッ。イッていいかい? あぁッ、イクッ! イクよッ、新太くんッ!」
とっくに限界を超えている、イキっぱなしの新太に追い討ちをかけるように、男が、ラストスパートとばかり激しく腰を突き入れる。
「おおおおお」と、獣のような唸り声を上げながら新太の身体の一番奥に腰を沈めてピタリと動きを止めると、男は、そのまま幾度も背中を仰け反らせながら新太の中にビクビクと射精した。
「もう……いいだろ……早く抜け……」
崩れ落ちるように身体の上に覆い被さる男から顔を背けながら、新太が息も絶え絶えに言う。
やっと終わった。今は一刻も早く男から離れたい。
しかし男は、新太の胸に埋めた顔をむっくりと上げ、イッたばかりのペニスをさらにグイッと新太の中に突き立てた。
「え……?」
予想外の反応に新太の目が反射的に男の顔を捉える。
男は笑っている。
「今日はこれで終わりじゃないんだ。実は、とびきりの強壮剤が手に入ってね」
そう言えば、ペニスはまだ昂ったまま衰えていない。
いつもなら射精を終えるとすぐに萎えているはずが、しっかりと質量を保ち、狭い腸内をみっちりと押し広げている。
「向こうへ行ったら今までみたいに自由に出来なくなるからね。今のうちにやっておかないと……」
不気味な笑顔に新太の背筋が凍り付く。
不安を煽るように、男は、新太の頬を両手で包み込み、恐怖に引き攣る唇に小さく口付けた。
「まだまだたっぷり可愛がってあげるからね」
言うなり、再び腰を大きくスライドさせ、ペニスの先端を新太の深部へ突き立てる。
戦慄にも似た震えがぞわぞわと皮膚を波立たせる。
「やめろ」という新太の叫びは声にはならなかった。
男の勃起した昂ぶりに腸壁を突き回されながら、新太は、迫り来る熱に硬く目を閉じた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
知らない町並み。
右も左も解らない初めての道を、侑斗はキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていた。
頼みの綱は、新太の住所が書かれた走り書きのメモとスマホの地図アプリ。
新太に会えなくなるかもしれないという焦りが、内に篭りがちな侑斗をいつになく情熱的に行動させていた。
あと先も考えず電車に乗り、侑斗は、新太の家の最寄駅に降り立った。
確かめなければならないことなら山ほどある。
どうして虐められなければならなかったのか。自分はそれほど新太に嫌われてしまったのか。そもそもどうしてそうなったのか。
かつては親友と呼び合った新太が自分に非情な刃を向ける。新太の豹変の原因は。自分の中の何が新太をそさせたのか。
しかし、今となっては全て過ぎた過去。それよりも、侑斗はこれからのことが知りたかった。
今はただ新太の気持ちが知りたい。
本当にもうこれきりなのか。
もう金輪際会うつもりはないのか。
それに、新太の胸にあった、あのキスマーク。
新太のうっすらと日焼けした肌に点々と散らばる赤い痣を見た時の衝撃が、未だに侑斗の胸を騒つかせる。
乳輪のきわ、鎖骨、みぞおち。胸元をしつこく舐め回されたのだろうと一目で解る位置に、それは開ききった花のように毒々しい色を放ちながら佇んでいた。
いきなり目に飛び込んできた光景に、侑斗は、
最初は衝撃、次に、胸を引き裂かれるような感傷に襲われた。
新太が自分以外の人間とそういうことをしているという事実が、思いのほか侑斗の心を激しく揺さぶる。
新太が他の誰かと抱き合っているところを想像すると、心臓がバタバタと騒ぎ出し、胸を掻き毟りたくなるほどの激情に駆られる。
ホテルでの新太の立ち振る舞いを見て覚悟はしていたものの、いざ現実になると、想像を超えるショックにパニックになり、一瞬頭が真っ白になった。
時間が経ってもそれは一向に色褪せず、むしろ侑斗の胸の真ん中に蛭のように吸い付いて離れない。
この狂おしい思いをこのままにはしておけない。
中一の夏、引っ越して行く新太を無言で見送った時。夜、布団の中で一人泣いた時。新太なんて大嫌いだ、と、意地を張って何でもないふうを装った時。その時の気持ちが今の気持ちに重なり何倍にも膨れ上がる。
今までの新太に対する押さえ込まれた感情が、侑斗を突き動かしていた。
ーーー会わなきゃいけない。たとえ最後になったとしても。
思いを胸に、侑斗は、地図の指し示す方へ足を踏み出した。
侑斗が尋ねると、男子生徒は、教室中に響き渡るような素っ頓狂な声を上げながら、傍らに立つ侑斗を仰ぎ見た。
「俺……何かおかしなこと……言ってる?」
まん丸に見開かれた目が、明らかに『おかしい』と言っている。
入学以来、水守新太率いる不良グループの虐めの標的にされ、性的嫌がらせまで受けていると噂される侑斗が、自分を虐める張本人である水守新太の自宅の住所を教えてくれと突然言い出したのだ。男子生徒が驚くのも無理はない。
ましてや、新太は、家の事情で急遽県外へ引っ越すことになり、ゴールデンウィークが始まる来週末には転校することが決まっている。
いじめの首謀者である新太がいなくなれば、侑斗へのいじめもやがて落ち着く。
新太の転校は、侑斗にとっては、つらい日々から解放されるビッグニュースだ。それをわざわざこのタイミングで、何を好き好んで寝た子を起こすような真似をするのか、男子生徒には侑斗の考えていることが全く理解出来ないようだった。
二人のやり取りを見ていた周りの生徒も、自分を虐める相手が目の前からいなくなるというのに、喜ぶどころかむしろ困っているような様子の侑斗に、驚きと呆れの入り混じった冷ややかな視線を向けている。
そういう目で見られることにも侑斗はもう慣れている。
生徒も教師も、この学校にいる人間の殆どが、侑斗の中に虐められる原因を探している。
侑斗の中に非を作ることで、『アイツはああいう奴だから』と、侑斗が虐められることを黙認する。『だから仕方ない』と、見て見ぬふりをする自分を許し、その行為を正当化する。
しかしそれすらも侑斗は何とも思わなかった。
侑斗にとって周りの人間は景色と同じだ。
侑斗の中で、新太から受けるいじめ行為は、いつも新太と自分二人だけの問題だった。
不良たちがどんなに加勢しようと、周りがどんなに煽ろうと、その先にはいつも新太の存在があり、新太以外はその他大勢の脇役でしかなかった。
怒鳴られ、殴られ、犯されながら、侑斗は、心の中で、いつも新太に『どうして』と問い掛けていた。
今にして思えば、新太へのそのこだわりが、侑斗の気力を奮い立たせ、いじめに立ち向かう原動力にもなっていた。
おそらく最初から、自分の心は新太に囚われていた。
新太と再会したあの瞬間、ひょっとしたら中一の夏、引っ越して行く新太に、『さよなら』と言われたあの時から。
本当の気持ちに気付いた今、これまで感じた説明のつかない胸のモヤモヤや、心とはうらはらな身体の反応が侑斗の中で全て繋がった。
自分はずっと新太を追い求めていた。
このまま新太と離れるわけにはいかない。
このまま離れたら、この先もずっと新太に囚われ続けることになる。
「新太……水守くんの住所を教えて欲しい。どうしても水守くんに会わなきゃいけないから」
もう一度、侑斗は男子生徒に深々と頭を下げた。
男子生徒は、
「俺が教えたって言うなよ」
しつこく食い下がる侑斗を穢れたものでも見るような目で眺め、スマホの住所録を開いて、ほらよ、と机に置いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
昇降口を出ると、不良グループの一人が、まるで侑斗が来るのを待ち構えていたかのように侑斗の行く手を塞いだ。
「ちょっと顔貸せ」
腕を掴まれ、有無を言わさず体育館裏へと連れられる。
いつもの性欲処理だろうか。想像しただけで雄臭いペニスの臭いと独特の苦みが口の中に広がる。
酸っぱい唾液が舌の裏側から溢れ出す。気持ち悪い。慣れているはずなのに初めてされた時のような吐き気に襲われる。
無理だ。
むしろ今まで平気で咥えられたことが嘘のように、今は身体が全力で拒絶している。
もうあんなことは出来ない。
もっとも、そんなことをしている場合ではなかった。今は新太のところへ行くことが先決だ。
「離してください……」
殴られるのを覚悟で思い切り腕を振り払った。正確には、振り払おうとしたがびくともせず、ただ大きく腕を振り回しただけだった。
「なんもしねぇからそんなビビんな」
不良メンバーは、抵抗する侑斗を簡単に片手で制すると、侑斗を体育館裏のコンクリートの壁に追い詰め、腕を掴んだ手を離して一歩後ろへ下がった。
「別にお前に変なことしようってんじゃねぇ。ただお前に聞きてぇことがあるんだ」
「俺に……?」
「アイツらに何があったか知らねぇか? 昨日、アイツらと一緒だっただろ?」
「昨日……」
オウム返しする侑斗を見ながら不良が真剣な顔で頷く。
昨日、体育倉庫で犯された時の記憶が甦る。そう言えば、あの時の不良たちの姿が見えない。
「昨日から連絡が取れねぇんだ。サボりなんて珍しくもなんともねぇが、昨日の今日で揃いも揃って三人同時に連絡つかねぇとか、こんな偶然あり得るか?」
どう答えていいか解らず黙っていると、不良メンバーは、あたかも侑斗も同意見であるかのように、一方的に話しを進めた。
「アイツらが昨日お前に何したのか、だいたいの想像はついてる。新太に見つかって一悶着あったんだろ? お前、あの後、新太と一緒にいたんだよな。新太がお前とバイクで走ってくとこ見たって奴が何人もいるんだ。教えてくれよ。あの後、一体何があったんだ?」
「何がって……」
不良たちとは学校で別れたきり会っていない。新太ともホテルで別れてそれきりだった。
その後のこと聞かれても侑斗には何も答えられない。黙ったままオドオドと不良を見上げると、何も言わない侑斗に痺れを切らしたのか、不良は、侑斗から少し距離をとった位置に立っていた身体を前のめりに乗り出し、再び距離を縮めて侑斗に詰め寄った。
「別に、新太をどうこうしようってわけじゃねぇんだ。ただ、アイツらは俺の仲間だし、もし新太と何かトラブってんなら助けてやんねぇと」
顔が近い。
反射的に仰け反ると、殆ど同時に腕を掴まれゾクリと鳥肌が立った。
「新太がお前を特別な目で見てるってことは解ってんだ。お前に勝手に手ェ出されて、新太があのまま黙ってるとは思えねぇ。なんか仕返し的なもんがあったんじゃねぇのか? アイツらがどうなったか知らねぇか?」
唾を吐きかけんばかりに迫られ、思わず息を止める。
鼻息が頬に当たって気持ち悪い。拒絶反応だろう。吐き気を催すほどの嫌悪感が胸に迫り上がり、悪寒と鳥肌が全身を覆い尽くす。
もう耐えられない。
これ以上触れられたら本当に吐いてしまう。もう一秒たりともこんな所にいたくない。
「離して……」
「そんなこと言わずに……なぁ……」
「離せッ!」
自分でも信じられないような大声が口から出た。同時に、身体が無意識のうちに俊敏に動く。
俺に触れて良いのは新太だけだ。
「お前ッ!」
がむしゃらに腕をぶん回して不良を振り払い、後ろも見ずに、全速力で校門に向かって走る。
「テメェこらッ! もとはと言えばテメェのせいだろう! 逃げんじゃねぇよ!」
不良の怒鳴り声が背中に突き刺さる。
凄い剣幕だ。あんなに怒らせてしまって、次に会ったら一体何をされるか解らない。
また昨日みたいなことになったら。そう思うと身体が震えて足がもつれる。
「助けて、新太……」
ひとりでに、唇が新太の名前を呼んだ。
さんざん虐められ、辱められ、それでもたった一人誰かに助けを求めるとしたら、それは新太であると侑斗の本能が言っている。
理屈ではなく、感覚で解る。共にすごした幼い日、友達と喧嘩して仲間はずれにされた時も、母親に叱られて締め出しを食らった時も、いつも新太が庇い、助けてくれた。昔から、どんなことがあっても最後は必ず新太が助けてくれる。たとえ今の関係があの頃と違っていても、幼い頃に培った感覚は今も侑斗の中に変わらず根付いている。本質的な部分は何も変わらない。頭ではなく、侑斗の魂がそれを知っている。
「新太……新太……」
足を踏み出すごとに名前を呼びながら、侑斗は校門を抜け、駅を目指した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
最初は懐かしさ。次に、嫉妬のような苛立だたしさに襲われ、やがてやり切れない怒りに変わった。
『新太だよね? 俺、侑斗! 神澤侑斗!』
記憶の中に鮮明に残る笑顔が、そのままの輝きで真っ直ぐ新太を見る。
あまりの眩しさに目が眩む。
人懐こい笑み、期待に膨らんだ澄んだ瞳。軽快に動く唇。弾けんばかりの声色。再会の喜びを全身で伝える素直さが、楔となって新太の胸に突き刺さる。
可愛い侑斗。いつも自分の周りを犬のように纏わりついてきたあの侑斗が、何かあるとすぐに泣きつき、全力で甘えてきたあの侑斗が、突然目の前に現れ、あの頃と同じ純粋な笑顔を向ける。
いけない、と、引き込まれそうになるのを慌てて視線を逸らして逃れる。
一瞬でも懐かしく嬉しく思った自分を、新太は自分自身で戒めた。
ーーーもうあの頃とは違う。
あのまま侑斗と一緒に時を過ごしていたならば、或いは自分もあの頃のままでいられたのかも知れないとも思う。
しかし所詮は憶測だ。新太は今の状況を嫌というほど理解している。
もうあの頃には戻れない。
ようやく諦め、受け入れた。
だからこそ、新太は侑斗を迎え入れるわけにはいかなかった。
新太にとって侑斗は、自分の心を過去へと引き戻す悪しき誘因だ。
侑斗のキラキラとした目、弾んだ声色、新太をあの頃のままの新太だと信じて疑わない無邪気さが、新太の胸を掻き乱す。
これ以上、心を乱されたくはない。
侑斗が慕い、追いかけた昔の自分はもういない。それを侑斗に思い知らせてやらねばならない。
侑斗がこれ以上笑顔を向けないように。侑斗がもう二度と関わりを持ちたくないと思うように。もう顔も見たくないと思うほどに。
なぜなら、今の自分は笑顔を向けられるに値しない。それほど変わってしまった。
「まだ怒ってるのかい?」
遠くを眺める新太の瞳を、新太の、体毛の薄い腋の下に唇を這わせていた男が、ふと顔を上げて覗き見る。
ねちっこい視線が新太を現実へと引き戻す。
「何度も言うようだが、私だって本当は今のままの方が良いんだよ。なのにお前の母親がどうしても一緒に住むって聞かないから。向こうへ行ってもどうせすぐにはパート先は見つからないだろうし、狭い町だから今までみたいにホテルに行くことも出来やしない」
「あんたの頭ん中はそればっかだな」
「父親に向かって『あんた』はないだろ?」
「他人だろ」
「またそんな生意気な口を……。ともあれ、向こうへ行ったら、こうしてお前と二人で過ごす時間もあまりとれなくなる。もっとも、お前が部屋に入れてくれるなら話は別だが」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ」
「ふざけてなんかないさ。母親と一つ屋根の下で交わるのも背徳的で燃えるんじゃないか?」
「テメェ」
ぶっ殺す! 言おうとしたところを、唇を指で塞がれ、チッ、チッ、と嗜められる。
本気を出せばこんな中年男など簡単に床に沈められるものを、両手をバンザイの姿勢でヘッドボードに繋がれ、両脚を、膝を折った状態で太ももとふくらはぎを一緒に固定バンドで留められているせいでまともに反撃出来ない。
伸び盛りとはいえ、男子高校生の部屋に置くには大きすぎるセミダブルのベッドの上で、新太は、両手両足を不自由な形で拘束され、細身ながら、筋肉のよくついた引き締まった身体を男の舌や指で弄ばれていた。
腋の下に鼻先を埋めて匂いを嗅がれ、窪みを、薄い体毛ごと唇で吸われて舐め回される。
熱くヌメった舌先が、筋肉の浮いた胸を伝ってその上の乳首に辿り着く。敏感な粒を甘噛みされて強く吸い上げられると、ゾクゾクするような快感が身体の内側を走り抜け、こらえてた喘ぎ声が漏れた。
「あうッ……」
ピチャピチャとイヤらしい音を立てながら、男の舌が、新太の硬くなった乳首を弾き、くるくると回しながら包み込むように口に含む。
尖った舌先が小さな乳首を上下左右に舐め転がす。根元から先っぽから斜めから角度を変えて何度も何度もしつこく舐め倒し、唾液まみれになった乳首を唇でジュルッと音を立てて吸う。
もう片方の乳首は親指と人差し指で捻り上げ、二本の指を擦り合わせるよう揉みながら、時折り引き千切らんばかりの力で引っ張り上げる。
「んふッ!」
ビリっ、と、電気が流れるような痛みが乳首の奥に走る。
全身の皮膚がざわざわと鳥肌を立てる。下腹部がズキンと熱く疼く。
「乳首の感度はバッチリだね。本当はもっと大きくして咥えやすいようにしたいんだけど、高校だとまだプールの授業があるだろう? お前の綺麗な胸にイヤらしい形の乳首がついてたらさすがに怪しまれちゃうからねぇ」
「テメ……変なことしやがったらただじゃおかね……あひッ!」
言い終わらないうちに乳首を甘噛みされて引っ張られ、新太が背中を弓なりに逸らす。
こんなことで声を上げてしまう自分が悔しい。
しかしもう三年。
母親と共にこの男と暮らし始めた中一の夏から少しづつ蝕まれていった新太の身体は、これまでのおよそ三年という月日の中で、負けん気だけでは耐えきれないほど敏感に反応するようになってしまった。
中でも乳首は、ほんの少し触れられただけで先っぽから胸の奥へと甘い痺れが広がり、それがお腹を抜けて下腹部までもをジンと疼かせる。ペニスは触れられてもいないのに勃ち上がり、扱かれる時とは違う、じんわりと纏わり付くような快感が睾丸をじわじわと追い詰める。
身体の中心が焼けるように熱い。
「ここをこうされると、ペニスの先がゆらゆら揺れてイヤらしいんだよね。ほら、見てごらん」
クソッ、と必死で唇を噛み締めるものの、それがかえって声を細く絞り、鼻にかかった悩ましい喘ぎ声となる。
自分の声に自分で絶望する。羞恥に震える新太を、男のじっとりとした視線が舐め回す。
「相変わらず強情だねぇ。昔はもっと素直だったのに……。もっとも、これはこれで悪くないけども……」
「この、変態野郎ッ!」
敵意を剥き出しにする新太をものともせず、男は、追い詰められたネズミのように必死で牙を剥く新太を、むしろ可愛くて仕方ないというように、うっとりと目を細めて見る。
その目が、膝を折り曲げられてバンドで固定された足元へと視線を移す。
強制的に開かされた足の間で、新太の、しっかりと皮の剥けたペニスが雄々しく鎌首をもたげている。
新しい父親だと名乗るこの男と初めて一緒にお風呂に入った中一の夏休み、『これが本当の形だ』と、まだ先っぽまで被さったままの包皮を無理やり剥かれて以来、入浴のたびにペニスを弄られ、皮を剥かれた。
お陰で、新太のペニスは、高校二年にしてすでにすっかり大人の風格を漂わせ、クラスメイトの羨望の視線を集めた。
他人の手によって何度も扱かれ射精させられたペニスが、何もしなかったペニスと比べてどれほどの成長の差を見せるのかは定かではないが、新太のペニスは他の同年代と比べてサイズもカリ首の張りも申し分なく、その雄々しく育ったペニスを美味しそうに口に含みながら、男は、さも自分の性技の賜物であるかのように、『将来は、男女問わず数多の人間を夢中にさせるだろう』と得意気に笑った。
新太が望んだわけではない。しかし、通常よりも早い段階で性感を目覚めさせられた新太の身体は、他の同年代にはない色香を放ち、男の思惑通り、数多の人間を惹きつけた。
男は、凛々しく美しく成長した新太を自分の思い通りに出来ることが嬉しくて仕方ないらしく、未だに母親の目を盗んでは新太のベッドに忍び込み、こじつけの用事を作っては新太をホテルへ連れ出す。
思春期の多感な頃から身体を弄られ、毎日身体の奥が異様な熱を上げていた。
泣いて抵抗したが、母親にバラすと言われ、何も言い返せなくなった。
被害者ではなく、加害者なのだ、と言われた。
母親に隠れて密通する義父と息子。いわば母親を裏切る共犯者。
最後の一線を超えると、母親への罪悪感と自分への嫌悪感で、新太はいよいよ逃げ出せなくなった。
まさか自分の旦那と息子が肉体関係にあるとは夢にも思っていない母親は、むしろ良好な親子関係を築いていると信じて疑わない。
そんな母親に本当のことなど言えるはずもなかった。
男は、そんな新太の気持ちを逆手に取り、母親の前で、新太に自分の背中を流すよう堂々とお風呂に誘い買い物と称して新太を外へ連れ出した。
実際はホテルへ向かうとも知らず笑顔で見送る母親を、新太は、そんな目で見ないでくれと心の中で叫びながら、気付かれないよう精一杯の笑顔で手を振った。
自分の罪を隠すために、母親を傷付けないために、新太は自分を偽り男に従った。
男がそれに味をしめたのは言うまでもない。行為は次第にエスカレートし、新太は毎日のように身体を求められるようになった。
男の単身赴任が決まった時も、ホッとしたのも束の間、男は、毎月帰宅するたびに、会えない鬱憤を晴らすかのようにしつこく新太に迫った。
母親に知られないためとは言え、男の要求を全て受け入れ、言いなりになる自分を疑ったこともある。
侑斗に肉体関係を迫り、部屋に上がり込んでまで行為に及んだのも、今にして思えば、その答えを知りたいという欲求の表れだったのかも知れない。
嫌われるだけなら虐め行為だけで充分だった。
それを、侑斗の身体まで奪い、自尊心をも傷つけた。
屈辱的に犯されることで、侑斗が何を思い、どうなるのかが知りたかった。
侑斗を奥深くまで犯しながら、新太は、唇を噛んで耐える侑斗に視線を尖らせ、悲痛な叫びに耳を凝らした。
自分の答えを見つけるために、侑斗を自分と同じ位置に引き摺り下ろし、反応の中に自分の答えを探した。
しかしーーーと、新太は、ふいに頭をもたげた疑念に意識を向けた。
ーーー今は?
最初はそうだったかも知れない。でも今は。
侑斗の悶え泣く顔がふと脳裏に浮かぶ。
うっすらと上気した頬。泣き出しそうに潤んだ瞳。痛めつけてもなお、お互いを『親友』と呼び合っていた頃と同じ眼差しで見詰める侑斗を頭の中で見返しながら、新太は、その真っ直ぐな瞳に問い掛けた。
しかし、目の前の現実が新太の意識を引き戻す。
「他所ごとを考えるなんて悪い子だ」
乳首を弄っていた男の指が、美しく生え揃った陰毛の茂みの中から反り返ったペニスの先をイヤらしく撫でる。
尿道まで開発された先端が、パックリと開いた鈴口をヒクつかせながら上下に揺れる。
新太の意思に逆らうように勃起したペニスをぎゅっと握り締めると、男は、添い寝するように新太の横にぴったりと身体を横たえ、本格的にペニスを扱き始めた。
「んはッ……やッ……やめろッ……」
「やめていいの? こんなに、はち切れそうなのに?」
「んあぁ、うッ……」
羞恥心を煽るように股を極限まで開かせ、親指を濡れた鈴口に食い込ませながらぐりぐりと何度も擦り回す。
「お尻の中を触らなくても、こうやってペニスの入り口を弄られてるだけでお腹の奥が感じるようになってきたんじゃないのかい?」
男の言う通り、指先の刺激が尿道への挿入感を呼び起こす。
お尻の奥の弱い部分がキュンキュン疼く。身体の芯が熱く痺れる。
「言葉だけで感じて……可愛いね……。ブジーで可愛がってやりたいとこだが、あいにく持って来るのを忘れてね。何か代わりになるものがあればいいんだけど……」
「やッ、やめろッ!」
身体を捻って抗うものの、ヘッドボードに吊られた両手はバンザイしたまま動かず、縛られた両足は芋虫のように身体を回転させるだけ。
ただされるがままにペニスを弄られる新太を揶揄うように、男は感じやすいカリ首や裏筋に指先を立てて器用に撫で回し、時折り、内股や陰嚢にも手を伸ばす。
「冗談だよ。お前の大事なペニスに俺がそんな無体をするわけがないだろう?」
「うるせぇ……ッ……好き勝手しやがって、一体どの口が……ぁはぁッ……」
唇は、おしゃべりしている時以外、腋の下や脇腹を這い回り、若者の瑞々しい皮膚を吸ったり舐めたりを繰り返す。
快楽が嫌悪感を上回る。
男のねちっこい愛撫に、新太のペニスは限界まで勃ち上がり、先走りが、ぽたぽたとお漏らしするように先端から滴り落ちる。
「憎まれ口をきくのもそろそろ限界かな?」
「くッ……そッ……」
裏筋を指の腹でぐりぐり押しながら、敏感な鈴口に爪先を立てられると、我慢していた声が喉を突き破り、新太は、ついに女のような喘ぎ声を上げた。
「んはあぁぁぁっ!」
「相変わらず良い声で泣いてくれるねぇ。跳ねっ返りを泣かせるほど興奮するものはないよ」
「あっ、ッはぁっ……やめッ……んはぁッ」
仰け反るような痛みと気持ち良さが交互に襲い掛かる。
首を左右に振りたくって抵抗する新太をうっとりと眺めながら、男は、寄り添っていた身体をもぞもぞと動かし新太の足元に移動する。
ゾクッ、と、新太の背筋に悪寒が走る。
男が次に何をするのかは、これまでの経験から容易に想像がつく。
気配を察して腰を捻ると、新太の予想通り、男の湿った唇が逃すまいとペニスを咥え、ねっとりとした舌が亀頭を揉み潰すようにねぶり回した。
「やッ……めろッ……ぁはぁッ、はッ……」
カリ首を舌の先端で一周し、竿の部分を唇で下から上へ優しく撫で上げる。
先ほどとは違うソフトな刺激に腰が勝手に浮き上がる。
いつもの悪趣味な愛撫だ。ギリギリまで追い詰めてスッと引く。竿の次は、もっとも弱い裏筋を舌先を尖らせてチロチロと舐め、溝を伝い上がって真上から先端を咥え込む。
「ッあぁぁぁッ……」
口の中でも緩急をつけるのは忘れない。頬肉、上顎、舌、男の口の粘膜が、時に優しく時に強く新太のペニスを扱き上げる。
「ひぁッ! だッ……」
ひときわ大きな声が上がったのは、男が、カリ首に歯を立てたからだ。
しかしそれも一瞬。男はすぐに口からペニスを吐き出し、再び竿から陰嚢へと唇を這わせた。
「そろそろこっちも弄って欲しいんじゃないのかい?」
陰嚢の皮膚を細かく吸いながら、顔を少しづつ下にずらして会陰へと向かう。
普段は脚の間に閉ざされた部分を開かれる恥ずかしさ。掛かるはずのない鼻息の感触に新太の身体がブルッと震える。
男に自由にされている自分が情けなくて悔しい。さらに脚を開かれ、引き締まった尻肉をギュッと掴んで左右に開かれると、ギリギリで堪えていた悔し涙が目尻からツーっと頬を流れた。
「こんなにヒクヒクさせて……いやらしい子だ……」
尻肉を開かれたことで、新太の後孔が、無惨に引き伸ばされた状態で男の目の前に曝け出される。
ねだるようにヒクつく窄まりを満足気に眺めると、男は、それを両側から指で広げ、唇を押し当ててジュルジュルと吸い上げた。
「あっ! ぁあぁッ、なにやッ……ぁッ!」
抗う新太をものともせず、男は、後孔を限界まで広げて、細めた舌先をぐぽぐぽと捻じ込む。
快感に全身が総毛立つ。
逃れようとしたところで無駄な抵抗。縛られた身体を窮屈そうに捩ることしか出来ない新太を揶揄うように、男は、敏感な入り口周りを舌先でしつこく舐め回し、ふいに、唾液塗れの後孔からスッと顔を離した。
またしてもギリギリのところでお預けを食わされる。
しかし同時に、冷たい感触がお尻の谷間を伝い、新太はビクッと腰を跳ね上げた。
「やぁッ……」
驚く暇もなく、後孔に男の指が添えられる。
窄まりの周りを、ローションを塗り込みながらくるくると回しほぐし、少し柔らかくなったところで指先を後孔の中にズルリと滑り込ませた。
「むふぅッ……」
新太の身体のことなら充分心得ていると言わんばかりに、男の指は新太の弱い部分をピンポイントで捉え、刺激する。
最初は人差し指一本を抜き差しし、次に、中指を加え、最終的に薬指を加えて三本の指で中を掻き回す。
弱い部分をこれでもかと攻められ、新太の絶頂感が高まっていく。
しかし、ここでも男の悪趣味な性癖は遺憾無く発揮され、新太は、絶頂を迎える寸前で指を引き抜かれ、強烈な疼きを抱えたまま身悶えた。
「クッソ……」
焦らしは一度にとどまらず、男は、何度も指を突き入れては絶妙なタイミングで引き抜き、新太を悶え泣かせる。
感じる速度がどんどん速くなる。絶頂感が高まる感覚が狭くなる。
敏感になっていく新太をよそに、男は、新太をイカせることなく延々と焦らし続ける。
「そろそろ欲しくなって来たんじゃないのかい?」
「だ……れがッ……」
さんざん焦らされ、性感を高められた新太の後孔は、意地だけでは抗えないほど熱く疼き、うっすらと開いた窄まりをイヤらしくヒクつかせながら貫かれるのを待っている。
それを知りながら、男は、新太のお尻の溝にペニスの先をあてがい、後孔の表面を何度もなぞり上げる。
「欲しいなら欲しいって素直に言わなきゃ入れてあげないよ?」
入りそうで入らない角度でしつこくなぞりながら、男が意地悪く笑う。
「ほら、どうして欲しいの? いつもみたいに言ってごらん?」
意図的に、亀頭の先っぽを窄まりにグイッと押し込まれてすぐに抜かれたら最後だった。
今までの我慢が一瞬で吹き飛ぶほどの疼きがお尻の奥を火照らせ、新太は、泣き出しそうに顔を顰めた。
「く……だ……さい……」
「そんなに小さな声じゃ聞こえないなぁ」
「いっ、入れて……くださいッ……」
「そうじゃないだろう?」
新太の瞳に悔し涙が滲む。屈辱に唇を震わせながら、新太は、いつもの言いつけ通り、男の目を見ながら絞り出すように言った。
「いっ、入れて……と、義父さんの……硬いのを……」
怒りに顔を紅潮させながら嫌そうに言う新太を見据えながら、男は、言葉の一言一言を噛み締めるようにじっと聞く。
薄ら笑いを浮かべて見下ろすその顔は父親の顔ではない、ただの獰猛な雄の顔だ。
その顔がふと真顔に戻り、瞳が、獲物を追い詰めた獣のような残忍な光を帯びた。
「しょうがないな」
優しい声色に、新太が観念したように目を伏せる。
同時に、尻肉を下からすくい上げるように持ち上げられ、グチュッ、とペニスの先が後孔にめり込んだ。
「ぁああぁああッ!」
体重を乗せて一気に奥まで突き入れ、肉壁の感触を愉しむように揺さぶった後、そこからゆっくり引き戻す。
排泄感が背筋を震わせる。
身体がキュゥっと細く窄まるような快感。しかしまたズンと奥を突かれ内臓を揺さぶられる。
突いては戻し、突いては戻し、獲物を捕食する獣の衝動そのままに、男は、新太の身体を忙しなく貪る。
ズズッと粘膜を擦り上げられるたびに、身体の中に入り込んだ男の昂ぶりが、狭い腸内で大きくなって行くのがわかる。
勢いを増した動きに新太の肉壁が騒めき立つ。それが皮肉にも男の昂ぶりをキュッ、キュッと締め付け、男をよけいに喜ばせた。
「こんなに絡み付いて……お前のここは本当に最高に気持ち良い……」
「あひッ! やぁッ……やめろッ……」
本来褒められるべきでないところを褒められたところで新太には何の感動も起こらない。むしろ、女のように扱われる自分を呪わしく思う。俺は男だと叫んで男を殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られるが、疼き火照った肉壁を硬い先端でグリグリと捏ね回されると、新太は、我を忘れて身体を震わせることしか出来ない。
それすらもお見通しとばかり、男は、新太の両膝を開いて腰を何度もしゃくり上げ、硬く勃起したペニスを最奥へと突き立てる。
「こうすると、精巣と膀胱が揺さぶられて気持ち良いでしょう?」
「だッ……ダメだッ……そこはッ……」
「んんんッ……そんなに締めないで……力を抜いてごらん……」
「やあぁッ! やだッ! やめて! 頼むからッ!」
男は構わずさらに腰の動きを加速させる。
パン、パン、と、肌と肌がぶつかる乾いた音が響く。
軽快な音に合わせ、全身を貫くような鋭利な刺激が後孔の奥を震わせる。
腸壁の前側の感じる部分を容赦なく擦り上げ、かと思えば、深い位置をグイグイと押し、揺さぶり上げる。
身体の内側が火を噴くように熱い。絶頂感か尿意か解らない切ない衝動が突き上げる。
漏れる。
思った瞬間、新太の鈴口から生温かい液体がじょろじょろと溢れ出し、竿からお尻の谷間を伝って下へ流れた。
「オシッコか潮か解らないね。もっとも終わるまでにはしっかり潮を噴いてもらうけども……」
「だぁッ……あっ……やぁッ……」
弾けるような絶頂感とは違う、重く、じわじわと迫るような快感。
それが、男の動きに合わせて押し寄せる波のように湧き上がる。
鈴口から伝い漏れていた液体はいつしか噴水のように上へ噴き出し、新太のお腹を湿らせる。
「すごいね。見てごらんよこれ。まだ始まったばかりなのにこんなになっちゃって」
「誰のせい……だと……ぁはッ……」
強がりも限界。
男が、横に大きく開いた膝をふいに内側に戻し、胸の前で揃えるように持ち替える。
すると、突然、パシッ! と空気を切り裂くような音が響き、鋭利な痛みがお尻に走った。
「あうぅッ!」
痛みは一度に止まらず、二度三度と新太を襲う。
「締まるッ! 締まるよッ! 新太くんッ!」
新太の横っ尻を引っ叩きながら、男が狂ったように腰を突き入れる。
パンッ、パンッ、パンッ、と、肌がぶつかる音にお尻を引っ叩かれる音が混ざり合う。
ベッドがギシギシ揺れる。
嫌悪感で一杯になる心とはうらはらに、新太の身体は、容赦なく襲う快楽に何度も気をやられ、声にならない声を上げながら全身を痙攣させる。
「あッ、あああ……あッ……」
止まらない絶頂に目の前が白くなる。
「いいッ! 気持ち良いッ! 気持ち良いよッ、新太くんッ!」
「ハァ……やッ……んぁッ」
「ダメだ。もうイクッ。イッていいかい? あぁッ、イクッ! イクよッ、新太くんッ!」
とっくに限界を超えている、イキっぱなしの新太に追い討ちをかけるように、男が、ラストスパートとばかり激しく腰を突き入れる。
「おおおおお」と、獣のような唸り声を上げながら新太の身体の一番奥に腰を沈めてピタリと動きを止めると、男は、そのまま幾度も背中を仰け反らせながら新太の中にビクビクと射精した。
「もう……いいだろ……早く抜け……」
崩れ落ちるように身体の上に覆い被さる男から顔を背けながら、新太が息も絶え絶えに言う。
やっと終わった。今は一刻も早く男から離れたい。
しかし男は、新太の胸に埋めた顔をむっくりと上げ、イッたばかりのペニスをさらにグイッと新太の中に突き立てた。
「え……?」
予想外の反応に新太の目が反射的に男の顔を捉える。
男は笑っている。
「今日はこれで終わりじゃないんだ。実は、とびきりの強壮剤が手に入ってね」
そう言えば、ペニスはまだ昂ったまま衰えていない。
いつもなら射精を終えるとすぐに萎えているはずが、しっかりと質量を保ち、狭い腸内をみっちりと押し広げている。
「向こうへ行ったら今までみたいに自由に出来なくなるからね。今のうちにやっておかないと……」
不気味な笑顔に新太の背筋が凍り付く。
不安を煽るように、男は、新太の頬を両手で包み込み、恐怖に引き攣る唇に小さく口付けた。
「まだまだたっぷり可愛がってあげるからね」
言うなり、再び腰を大きくスライドさせ、ペニスの先端を新太の深部へ突き立てる。
戦慄にも似た震えがぞわぞわと皮膚を波立たせる。
「やめろ」という新太の叫びは声にはならなかった。
男の勃起した昂ぶりに腸壁を突き回されながら、新太は、迫り来る熱に硬く目を閉じた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
知らない町並み。
右も左も解らない初めての道を、侑斗はキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていた。
頼みの綱は、新太の住所が書かれた走り書きのメモとスマホの地図アプリ。
新太に会えなくなるかもしれないという焦りが、内に篭りがちな侑斗をいつになく情熱的に行動させていた。
あと先も考えず電車に乗り、侑斗は、新太の家の最寄駅に降り立った。
確かめなければならないことなら山ほどある。
どうして虐められなければならなかったのか。自分はそれほど新太に嫌われてしまったのか。そもそもどうしてそうなったのか。
かつては親友と呼び合った新太が自分に非情な刃を向ける。新太の豹変の原因は。自分の中の何が新太をそさせたのか。
しかし、今となっては全て過ぎた過去。それよりも、侑斗はこれからのことが知りたかった。
今はただ新太の気持ちが知りたい。
本当にもうこれきりなのか。
もう金輪際会うつもりはないのか。
それに、新太の胸にあった、あのキスマーク。
新太のうっすらと日焼けした肌に点々と散らばる赤い痣を見た時の衝撃が、未だに侑斗の胸を騒つかせる。
乳輪のきわ、鎖骨、みぞおち。胸元をしつこく舐め回されたのだろうと一目で解る位置に、それは開ききった花のように毒々しい色を放ちながら佇んでいた。
いきなり目に飛び込んできた光景に、侑斗は、
最初は衝撃、次に、胸を引き裂かれるような感傷に襲われた。
新太が自分以外の人間とそういうことをしているという事実が、思いのほか侑斗の心を激しく揺さぶる。
新太が他の誰かと抱き合っているところを想像すると、心臓がバタバタと騒ぎ出し、胸を掻き毟りたくなるほどの激情に駆られる。
ホテルでの新太の立ち振る舞いを見て覚悟はしていたものの、いざ現実になると、想像を超えるショックにパニックになり、一瞬頭が真っ白になった。
時間が経ってもそれは一向に色褪せず、むしろ侑斗の胸の真ん中に蛭のように吸い付いて離れない。
この狂おしい思いをこのままにはしておけない。
中一の夏、引っ越して行く新太を無言で見送った時。夜、布団の中で一人泣いた時。新太なんて大嫌いだ、と、意地を張って何でもないふうを装った時。その時の気持ちが今の気持ちに重なり何倍にも膨れ上がる。
今までの新太に対する押さえ込まれた感情が、侑斗を突き動かしていた。
ーーー会わなきゃいけない。たとえ最後になったとしても。
思いを胸に、侑斗は、地図の指し示す方へ足を踏み出した。
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