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光の屈折〜歪な二人
しおりを挟む突然の呼び出しメールに、神澤侑斗は保健室に向かっていた足を止めた。
三限目の体育の授業が始まってすぐのことだった。
今朝、下駄箱で体操服を取り上げられてオレンジジュースをかけられた時点で体育の授業に出られないことは確定していた。
体操服を忘れたと言って叱られるより体調が悪いことにして授業を欠席したほうが楽だと思い、仮病を使って保健室にしけ込もうとした矢先にメールは来た。
体育館裏のトイレ。
もちろん侑斗に拒否権はない。
屋上、トイレ、別校舎の空き教室、プールの更衣室、体育倉庫。不良グループから呼び出されたら、侑斗は何はさておき指定された場所に一刻も早く駆け付けなければならない。
これは侑斗に課せられたノルマのようなもので、いわば、虐められっ子の“大切な役回り”
不良たちは勝手気ままに侑斗を呼び出し、「来るのが遅い」だの、「顔が暗い」だの、こじつけめいた難癖を付けては侑斗に罰を与える。
彼らにとって侑斗はそういう役目を受け持つ存在であり、歪んだ娯楽の対象でもあった。
体育館裏のトイレにはいつものように不良グループのメンバーが四、五人たむろし、侑斗の到着を待っていた。
入り口に二人、中に二人。そして、突き当たりのモップ洗い用の流し台のヘリに腰掛けながら、不良グループのリーダー、水守新太が鋭い視線を侑斗に向けている。
精悍な顔付き、というのだろう。凛々しい眉に白と黒のコントラストのハッキリとした切長の目、引き締まったフェイスライン、力強く結ばれた薄い唇。厳めしい表情さえしていなければ、誰しもの目を引くなかなかの色男と言える。
鋭く睨み付けてはいるものの、その表情には、不良少年にありがちな自分の強さをひけらかしたり弱い者をいたぶり威圧するような低俗な虚栄心は微塵も感じられない。そういうモノを撒き散らすのはむしろ新太を取り囲む仲間たちの方で、侑斗はそいつらを密かに“金魚のフン”と呼んで軽蔑していた。
その金魚のフンの一人が、侑斗の制服のブレザーの首根っこを掴んで床の上に跪かせる。
「頭が高けぇんだよ! 頭が! 頭下げろや!」
新太は何も言わない。
それどころか顔色ひとつ変えず、ただ白目の目立つ目を鋭く光らせながら棒立ちになる侑斗を見下ろしている。
もちろん、このまま何も起こらないわけがない。
しばらくの沈黙のあと、新太の深い闇のような瞳がふいに横に外れると、それを合図に、仲間の一人が侑斗を羽交締めにして床から持ち上げ、もう一人がズボンのベルトを外してボクサーパンツと一緒に足首まで引き摺り下ろした。
「今日はまた一段と縮こまってんなぁ」
もじもじと足をすり寄せてペニスを隠そうとするものの、身体を浮かされているせいで思うように力が入らない。
そうしているうちにも、男は片手にスマホカメラを構え、もう片方の手を侑斗の無防備なペニスに伸ばす。
「ほんじゃあ早速やりますかぁ~。では、今から侑斗くんのちっこいチンコを扱いて大っきくしまぁ~す」
脅しのネタにするつもりなのだろう。すぐにでも拡散するような実況めいた声色で言うと、男は、親指、中指、人差し指の三本で侑斗のペニスを摘み、皮を剥きながらゆっくりと上下に扱き始めた。
男の指が動くたび、先端まで被った皮が少しづつめくれて綺麗なピンク色の亀頭が顔を出す。
それを侑斗の顔が一緒に入るようなアングルでフレームに収めると、男は剥き出しになった先端部分を執拗に捏ね回した。
「ほらほら、大っきくなってきたぁ~」
勃起時には完全に剥けるとはいうものの、いつも包皮で守られている亀頭が敏感なのは言うまでもない。男の執拗な扱きに、侑斗のペニスはみるみる反り上がりピンク色の亀頭が赤みを増してパンパンに腫れ上がる。親指の爪で鈴口をぐりぐりと擦られると、皮膚が逆立つような快感が身体を駆け抜け、堪えていた喘ぎ声が鼻から漏れた。
「はあッ……んんッ!」
「相変わらず可愛い声で泣くよね~。見かけによらず淫乱ビッチな侑斗く~ん」
波のように襲う快楽に腰が浮き上がり、鈴口から先走りが恥ずかしいほど溢れ出る。それが竿を伝いくちゅくちゅと音を立てるほどペニスを湿らせると、男がラストスパートとばかり一気に扱くスピードを上げた。
「やっ、や、やぁぁッ!」
首を振って抵抗するものの、不良たちは、侑斗の、涙袋のある切れ長の目とふっくらとした唇が印象的な女顔が気持ち良さと恥ずかしさに真っ赤になるのが堪らなく興奮するらしく、侑斗が嫌がれば嫌がるほどますます愛撫の手を強める。ならば大人しくされるがままになっていれば良いかというとそうでもなく、反応がなければないで嫌がるまで執拗に責められるので、侑斗は結局悶え泣かされることになった。
「もうビンビンじゃん。イキそう? イク?」
「んあぁっっ、はぁっ、はッ、んんんッ!」
「ほら、ちゃんと言わないとタマ潰すぞ?」
「んぃやぁぁ! イクッ! イクから、タマはやめてっ!」
押し寄せる絶頂感に侑斗のペニスがビクビク波を打つ。
その時、
「どけ!」
今まで流し台のヘリに腰掛けながら侑斗が扱かれるのを冷ややかな視線で見ていた新太が、突然、扱いていた男を払い退けて侑斗の前に立った。
同時に、羽交締めにしていた男が侑斗を離し、床の上にひざまずいたところで、新太の、同じ高校生とはとても思えない太く長大なペニスが目の前に迫る。
驚いて見上げると、
「咥えろ」
前髪を掴まれ、有無を言わさず口の中にねじ込まれた。
「んふぅ!」
顔を退けないよう両手で後頭部を押さえ付けられ喉奥まで一気に突っ込まれる。
突然の衝撃に、反射的に舌が、うげっ、と異物を吐き戻すように押し返すが、それがかえって刺激となり、新太のペニスがさらに膨張する。
ただでさえ太い昂ぶりを飲み込み圧迫された喉は、質量を増したそれに完全に塞がれまともに息をすることさえ出来ない。
口の代わりに鼻で大きく息をするものの、涙と鼻水が邪魔をして充分な酸素を得ることは出来ない。息苦しさに眉を顰める侑斗を、新太は、責めるわけでも面白がるわけでもなく、最初と同じ冷たい視線でただ睨み付ける。
「汚ねぇ顔……」
ならば見なければ良いものを、新太は、わざわざ侑斗の髪を掴んで上を向かせ、涙と涎でぐちゃぐちゃになりながら口一杯にペニスを頬張る侑斗をじっと睨み下ろす。
蔑むような視線。汚いモノでも見るかのような冷めた目に、侑斗の胸に劣等感にも似た惨めさが広がっていく。
いっそヘラヘラと笑いながらやってくれたら憎しみだけで済むものを、厳しい表情で黙々とやられると、自分のほうに否があるような責められているような気持ちになる。
逃げ出したくなるが、視線を逸らすことは許されない。
恥辱に歪む侑斗の顔を、新太は、自分の鼻先を見るように視線だけで見下ろし、バスケットボールを持つように両手で挟みながら自分の股間にグイグイ押し付ける。
「んッ……んぐぅ……んんッ……」
すでに奥まで詰まった喉の、そのさらに奥にぶつけるように何度も何度も押し込まれ、侑斗は、いよいよ本格的に息が出来ない。
しかし皮肉にも、その息苦しさが侑斗の下半身を疼かせているのもまた事実だった。
そうでなくともイキそうなところを寸止めされて我慢の限界だった。
新太のペニスがしょっぱい先走りを滴らせなが喉の奥を突くたびに、連動するように、侑斗のペニスが濡れた先端をヒクヒク震わせる。それを不良どもが見逃す筈はなく、あれよという間に侑斗のペニスは仲間の手に捕まり掌の中に握られた。
「チンコ咥えておっ立ててるとかガチで変態じゃん?」
「その変態チンコをこれからシコりまぁ~す。侑斗くんは三本派? 五本派? いっつもどんなふうにシコってんの?」
忙しなく竿を扱き上げ、敏感になった先っぽを手のひらで包んでくるくると押し回す。
「我慢汁ダラダラ~。金玉もパンパンで気持ち良さそう~」
恥ずかしさを感じている余裕はない。ペニス全体がカッと熱くなり、むず痒いようなゾワゾワとした快感がお腹の底から全身に広がっていく。
早くイキたい。高まっていく射精感に勝手に腰が揺れる。
やがて新太のペニスが喉の奥でビクビク痙攣し始めると、釣られるように侑斗のお腹がズクンと疼き、新太が射精するのと殆ど同時に射精してしまった。
「うわッ! すっげぇ飛んだ! めっちゃ元気やん!」
大袈裟にはしゃぐ仲間たちとはうらはらに、新太は、無言のまま侑斗の口からペニスを引き抜き、侑斗は、息苦しさから解放された反動から床の上に四つん這いになって激しく咳き込んだ。
あとは新太が指名した仲間の性欲処理をすればこの場は解放される。
今日は、羽交締めにした男とペニスを扱いた男の二人だ。
性欲処理と言っても、不良たちは皆ノーマルな異性愛者なのでやること自体はオナニーの延長。たいていの場合、二人一組で選ばれ、新太の決めた十分という制限時間の中で、侑斗に手コキやフェラをさせて性欲を解消する。ろくに洗ってもいない仮性包茎ペニスをしゃぶるのは正直キツいが、それでも、以前のように、腹パンされたりプロレス技をかけられたり股間に足型がつくほど電気アンマをかけられたりするよりはマシだった。
服で隠れるとはいうものの、身体に傷が付けば、表情や動作で気付かれてしまう。
そうでなくとも上履きや体操服を無くしてばかりで母親に不審がられていた。
第一志望だった公立の進学校の受験に失敗して入った滑り止めの私立高校で、教材費も交通費も公立高校の倍はかかる。ただでさえ金銭的な負担をかけているというのに、精神面でも負担をかけるわけにはいかなかった。
五分なんてあっという間だ。
立ち上がり、身体についた砂を払って足首に絡まった下着とズボンを引き上げ、口の中にへばりついた新太の精液を舌を回して舐め取りながら、汚れた手を洗面台で洗う。
どちらがフェラでどちらが手コキかはすでに決まっている。
与えられた時間を有効に使うため、奴らは、侑斗にフェラと手コキを同時にさせる。
男のペニスを頬張りながら片手で別の男のペニスを扱く侑斗を他の仲間が、「AV女優みたいだ」と笑ったことがあったが、その頃よりも髪が伸びた侑斗は、服を脱がなければ女のようにしか見えない。
その侑斗を相手に、不良たちはイメージを膨らませて己の欲望を満たす。
今日の相手は鬱陶しい遅漏野郎だ。
しかしそれも十分の間のこと。
気持ちを切り替え、水洗いした手についた水滴を空中で払って不良たちの前に進み床の上に膝立ちになった。
不良の一人が侑斗の前に立ちズボンのファスナーを下げると、もう一人も慌てて駆け寄り侑斗の真横に立ってズボンに手を掛ける。
もうあと三秒もすれば汚い仮性包茎チンコが目の前にこぼれ落ち、侑斗の口の中に押し入ってくる。
思いながら息を止めると、
「帰んぞ……」
ふいに、新太の低い声がぼそりと響いた。
「え……っと……」
突然のボスの号令に不良たちがキョトンと目を丸める。
しかし新太は全く耳を貸さない。
「帰るっつったのが聞こえ無かったか?」
「……でも、俺ら、まだなにも……」
「るっせー。俺が、帰るっつったら帰るんだよ」
冷たく吐き捨て、椅子代わりにしていた流し台から飛び降りる。
性欲を発散出来ると思っていた不良たちは、納得のいかない顔で新太の後ろ姿を目で追っている。
しかし口答えはしない。
体格も良い、一人でもそこそこ強い不良どもが、新太の一言で叱られた仔犬のように大人しくなるのが侑斗は見ていて小気味良い。
偉そうにしたところで所詮は手下。新太の許可なしには、奴らは、こんな吹けば飛びそうなモヤシ野郎の自分一人自由にすることが出来ないのだ。
露出させたペニスをすごすごと下着の中に仕舞う男たちを見ていると、さっきまでの威勢が急に滑稽に思え、侑斗の口許がひとりでに緩んだ。
気付かれたのか、新太が出口に向かって歩き始めると、フェラされるのを待っていた男が新太の目を盗むようにして侑斗の髪を鷲掴みにして耳打ちした。
「次はイラマチオさせてやっから覚悟しとけよ」
そのまま髪を横に引かれ、トイレの床に引き倒される。
さっき自分が飛ばした精液が床に飛び散っているのが目に入ったが、咄嗟のことに避けきれず、その上にもろに倒れてしまった。
制服を洗ってからでないと家に帰れない。
しまった。
汚れた制服に意識を向けながら、侑斗は、新太の後ろに続いてをぞろぞろと遠ざかっていく踵を潰したスニーカー足元をぼんやりと眺めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
結局、着たままの状態で部分洗いした制服のズボンは六限目を終えるまで生乾きのままだった。
精液のついたズボンは無事洗えたが、紺色のブレザーは、床に倒された時についた泥や砂埃、トイレ特有のアンモニア臭が気になり、手洗い場に設置されたハンドソープで洗っているうちにほぼ全面水浸しになり、着れる状態ではなくなった。
四月半ばとは言えまだ肌寒い午後、薄汚れたカッターシャツ一枚で下校する侑斗をすれ違う生徒が奇異な目で見る。
しかし、どうしたのかと声をかける者が一人もいないのは、この学校に通う生徒の殆どが、侑斗が水守新太率いる不良グループに虐められていることを知っているからだ。
体操服が汚れていたりカバンがずぶ濡れだったり裸足だったりとかいう、侑斗にだけ起こる特別なアクシデントは全て水守新太とその仲間たちの仕業であると誰もが知っている。
理由が解っているからこそ誰もそれ以上は詮索しない。教師も生徒も、侑斗を間近で見ているクラスメイトでさえも、表向きには侑斗の異変には何も反応しない。
ただ、水守新太と仲間の不良たちだけが反応する。
正確には、水守新太が反応し、侑斗に反応した新太に仲間が反応する。
それを裏付けるように、突然、バババババ、と、バイクのエンジン音が地鳴りのように鳴り響き、濡れた制服で膨らんだ通学カバンを胸に抱えて歩く侑斗の背後に近付き、ピタリと止まった。
水守新太だ。
自宅の最寄り駅の改札を抜けてすぐ。いつもの待ち伏せ。
「おっせーよ」
新太一人。他に仲間はいない。
週に二度のペースで、新太はこうして侑斗が帰ってくる時間を見計らって侑斗の前に現れる。
侑斗を呼び止めると、新太は、バイクのエンジンを切り、ヘルメットのシールドを上げて棒立ちになる侑斗を睨み付けた。
「てか、なんだその格好。俺への当て付けか?」
「違うよ……」
「チッ……」と、舌打ちし、長い足をひょいと上げてわざわざバイクから降りて手で押して歩く。
向かう先は侑斗の家。駅からも見える、歩いて五分ぐらいの場所にある市営団地。
人目を避けるように前屈みで歩く侑斗を横目に、新太は慣れた足取りでバイクを押しながら歩いて行く。
通い慣れているという理由だけではない。新太は中一の夏までこの団地に住んでいた。つまり侑斗とは、少年時代をともに過ごした幼馴染だ。
お互い一人っ子で分かり合える部分も多く、遊び仲間の中でも侑斗と新太は特に仲が良かった。一緒にいることが当たり前になっていたせいもあり、新太の母親の再婚が決まり新太が団地を引越すことになった時は、侑斗は、親友と兄弟をいっぺんに失ってしまったような淋しさに襲われ一晩中泣いて夜を明かした。
それだけに、志望校の受験に失敗し重い足取りで向かった入学式、クラス発表の掲示板で新太の名前を見付けた時は飛び上がるほど胸が高鳴った。
久しぶりに見る新太は、最後に見た時より身長もぐんと伸びて別人のように大人っぽくなっていたが、黒目の綺麗な利発そうな目と、鼻の高い整った顔立ちは一緒に遊んでいた頃のままだった。
新太との思わぬ再会に、侑斗は舞い上がった。
しかし感動の再会も束の間、翌日から新太による陰湿な虐めが始まった。
まさか、かつてあれほど仲の良かった幼馴染に虐められるとは夢にも思っていなかった侑斗は、自分の置かれた状況が飲み込めず狼狽えることしか出来なかった。
それは、一年経った今も変わらない。
新太とその仲間から嫌がらせを受けるたび、侑斗は、どうして自分がこんな目に遭わなければならないのだろうと考える。
虐められる覚えはない。
しかし理由がなければこんなことはされない筈だとも思う。少なくとも侑斗の知っている新太は、理由もなしに他人を傷付けるような男ではなかった。
最初の挨拶がマズかったのだろうか。久しぶりの再会に舞い上がってテンションが上がってしまった。馴れ馴れしいと思われたのか。それとももっと感動を伝えるべきだったのか。それとも。それとも。
考えても答えは見付からない。見付からないからこそますます考える。
特に、新太に待ち伏せされて一緒に並んで歩く帰り道は、幼い頃の記憶が嫌でも甦り今とのギャップに頭が混乱した。
昔もよく、学校帰りにこうして並んで歩いてどちらかの家に向かい、夕飯時まで一緒に遊んだ。
今は、遊びではなく虐められている。
もっとも、新太にとってはこれも遊びなのかも知れないが。
「モタモタすんなよ」
エレベーターが開くと、新太のほうが先に部屋に向かい、侑斗は、玄関前でせっつかれながら鍵を回して部屋の扉を開けた。
母親は、近所のスーパーにパートに出掛けて六時過ぎまで戻らない。
侑斗の家の事情を知っている新太は、部屋に入るなり、柱に掛かった時計を見ながら「早くしろ」と侑斗を急かす。
「五分以内な」
顎で指図され、浴室に入り、ボディソープを泡立て指先にすくってお尻の窄まりに忍ばせる。
お尻を洗うのにもずいぶん慣れた。
初めてされた時は、新太に市販の浣腸液を二本も突っ込まれ、あまりのお腹の痛さに脂汗を浮かべてトイレに引きこもったが、今は新太が買ってきた、中にお湯を入れて使う特殊なポンプを使っているから痛みはない。
それでも、ポンプのノズルをお尻の穴に突っ込んで中を洗い流すのはやはり屈辱的で、お尻の中に溜まったお湯を出すために排水溝の上で中腰になる自分の姿を浴室の鏡で見るたびに、侑斗は、惨めさのあまり消えて無くなりたい気持ちになる。
唯一の救いは、新太がこのことを他の誰にも言わずに二人だけの秘密にしていることで、そのお陰で、侑斗は、自分のこんな情けない姿を新太以外の誰にも知られずに済んでいる。
昔から二人だけの秘密を持つのが好きな新太であったが、まさかこんな秘密を持つとは夢にも思わなかった。
もっとも、新太も、ここでしていることを誰かに知られるのはさすがにマズイと思っているのだろう。学校では何かと言うとすぐにフェラや手コキ動画を撮影して脅しのネタにするものを、ここでのことは撮影どころか匂わせもしない。
まるで、最初から何もないかのように素知らぬ顔を決め込む新太に、侑斗は、これなら秘密が漏れる心配はないと安堵する一方で、自分は、新太がそこまでひた隠しにするような忌み事をされているのだと後ろ暗い気持ちになった。
すすぎを終えた後は、身体を軽く拭いて腰にタオルを巻いただけの格好で自分の部屋へ向かう。
部屋では新太がベッドの上で胡座をかいて侑斗を待ち構えている。
侑斗には全裸を強要しておきながら、自分は制服のシャツを着たまま下半身だけ脱ぐといういかにも犯り目的な格好で侑斗を待ち構え、使い古しのシングルベッドをギシッと軋ませながら後方へ移動し、「こっちへ来い」と無言で命令する。
催促されるまま、新太の前方に進み、筋肉のないのっぺりとした貧相な身体を仰向けに横たえると、新太の手が股間のタオルを剥ぎ取り、侑斗の両膝を思い切り左右に開いた。
「もう半勃ちかよ。ケツ洗って勃たせてるとかどんだけ変態なんだ」
膝がベッドにつきそうなほど真横に股を開かれ、剥き出しになったペニスを指先でチョンチョン弾かれる。
「だんだん大っきくなってんのはどういうことだ? チンコ触られてそんなに嬉しいか?」
「ちがッ……ぅぁッ……」
デコピンをするように弾いたかと思ったら、ふいに根元をグイと握り、もう片方の手でペニスの先端を真上から包んで揉み回す。
ビリビリとした快感がペニスの内側を走り抜ける。
逃れようと、身体が無意識に足を閉じようとするものの、すぐに阻まれ、逆に戒めとばかり包皮を剥かれて敏感な先端を弄られる。
「んあぁぁッ!」
身体中の血が一斉に流れ込むような感覚。痺れるような熱さに、侑斗のペニスがみるみる勃ち上がり、膨張した亀頭が包皮から完全に露出する。
赤みを増した鈴口がやがて先走りを滲ませると、それを潤滑剤にさらにくるくると指先で捏ね回され、濡れた鈴口に爪先を立てられた。
「んあぁっっ! あ、あらた……ぁッ……」
「なんだよ。甘えた声出しやがって」
「ちが……」
「ちがう? こんなビンビンにしといてどの口が言うんだよ。ちょっと触られただけでもうこんなにしやがって。ここ、気持ち良いんだろ? 触って欲しい、って正直に言ってみな」
「やぁ……」
機嫌が悪いのか、いつもよりペースが早い。
乱暴なのは相変わらずだが、いつもは胸から始まり、一応、順を追って局部へと辿り着く。こんなふうに最初から愛撫するのは、よほど性欲が溜まっているか機嫌が悪いかのどちらかだ。そういう時は責め方もしつこく陰湿だった。
ーーーそう言えば学校でも変だった。
思っていると、いきなりお尻を鷲掴みにされて持ち上げられ、侑斗は咄嗟にシーツを掴んだ。
「やっ……なにッ……」
あっという間にマングリ返しの姿勢をとらされ、両方の尻たぶを真横に広げられる。
恥辱的なポーズに、侑斗の顔がカッと熱くなる。
あまりの恥ずかしさに、ひとりでに目尻に涙が滲む。
新太は、瞳を潤ませながら唇を噛む侑斗には目もくれず、鈴口をいじくり回して濡れた指先を、横に引き伸ばした侑斗の後孔に押し当てた。
「あっ! 待って、そんなまだ無理だってッ!」
「ガマン汁たっぷりついてっから平気だろ?」
「そんなぁ……ちょッ……」
やめて、と言いかけた口が、そのまま、「あああぁぁ」と引き攣った悲鳴を上げる。
新太は、全く動じず、表面のシワを揉みほぐしていた指先を窄まりの中へぬぷっと埋めていく。
「ひあッ!」
「るっせー、動くんじゃねぇ!」
人差し指を真っ直ぐ根元まで埋め込み、指先を回して奥を広げる。
ぐりぐりと大きく指を回して広げると、今度はそれをスッと引き抜き、中指と一緒に二本重ねて挿入した。
「痛ぁぁッ!」
すでに新太のペニスを受け入れさせられているとはいうものの、先走りの湿り気だけで二本の指を入れられるのはさすがにキツく、侑斗は咄嗟に声を張り上げた。
「痛ッ! 痛いよ、あらたッ……ローション使っ……てぇッ……」
「淫乱ビッチがなに言ってやがる」
「あぁ……だっ……やッ……だッ……」
顔を真っ赤にしながら訴えるものの、新太はやはり全く動じず、重ねた指を無理やり根元まで押し込む。それでもやはりキツいと感じたのかすぐに引き抜き、そのままふらりとベッドを離れた。
まさか、これで終わる筈はない。
新太の行動が気になり後ろ姿を目で追うと、床の隅に置かれた、荷物の殆ど入っていないぺしゃんこの通学カバンの中から、新太がローションを取り出し再びベッドに戻った。
ローションを使ってもらえると知り、侑斗はホッと胸を撫で下ろす。
そんなモノを使うこと自体が異常だということにまで意識が及ばない。異常な状況に慣れすぎて感覚が麻痺してしまっている。物事の本質よりも、目の前の危険回避に安堵する。
しかしその安堵も、新太の手に握られたもう一つのモノによってすぐさま掻き消された。
「なにそれ……」
見慣れたスポイト状の容器。聞くまでもない、新太が侑斗に買い与えているお尻洗浄用のビデだ。
侑斗に見せ付けるように掲げると、新太は、ローションのキャップを外してビデのノズルをボトル突っ込み、中身を容器に吸い上げた。
「ローションが欲しいんだろ? これでたんまり入れてやるよ」
言うなり、再び侑斗のお尻を持ち上げ後孔の窄まりにノズルの先端を当てる。あっ、と思った時には、すでにノズルは窄まりを突き破り、冷たいローションが問答無用に侑斗の後孔に大量に流れ込んできた。
「いやッ……」
「テメェが欲しいっつったんだろ。ほぉら全部入った。……すっげぇ。溢れてくる」
「やぁ……やめてッ……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、新太の指がローションまみれの後孔を掻き出すように出入りする。
冷たさが、とろけるような熱さに変わる。
「ズブズブ入る。全然余裕じゃん。三本でも四本でも行けるんじゃね?」
「ひぃぃ、いぁッ……」
握り拳を口に当てて快感に耐える侑斗を面白がるように、新太は二本の指を出したり入れたりしながら後孔を奥まで広げていく。
探るように抜き差しされていたその指が、突然お腹の方にクイッと曲がって感じる部分を突いた。
「んあぁぁぁッ!」
強烈な快感に侑斗の腰が跳ね上がる。
新太はそれすら気にも止めない。
「逃げんなよ。ここ、こうされるの好きだろ? ほら、グチョグチョいってる。すげぇヤラシイ」
お尻をひっくり返されているせいで、痛いくらいに勃起した自分のペニスが、赤らんだ鈴口から透明な粘液を滴らせているのが見上げた視線の先に見える。新太の言う通り。感じていることを誤魔化せない。
歯を食いしばって耐えることしか出来ない侑斗を追い詰めるように、新太は、後孔に埋めた指をグイグイ曲げて侑斗の弱い部分を押し潰し、侑斗がいよいよ耐え切れなくなってきたところでスッと指を引き抜いた。
「ケツの穴もヒクヒクいってら……」
すでに充分ほぐされ広げられた後孔は、すぐには閉じず、薄っすらと口を開けたままピンク色の粘膜を僅かに覗かせる。
「気持ちよくて穴開けるとか、ホント、女みてぇ……」
そうしたのは一体誰だ。悔しさを堪える暇もなく、腰を掴まれて思い切り身体をうつ伏せにひっくり返された。
「ケツ上げろ」
太ももをピシッと叩かれ膝を立てると、まだ完全にお尻を上げないうちに脇腹を掴まれ腰の方へグイと引き寄せられる。
新太の硬くて熱いペニスがお尻の谷間に当たっている。
ひと思いに入れればいいものを、新太は、後孔の表面に先端を押し当て、そこから陰嚢の付け根までの会陰部分をお尻の割れ目に沿って何度もしつこく往復させる。
擦られた部分が熱く火照る。
会陰を滑るペニスの感触に、ギリギリのところでお預けを喰らった後孔が切なくヒクつく。堪らず声を漏らすと、侑斗がそうなるのを待っていたかのように、新太が、会陰を往復していたペニス の先を窄まりに移動させて重点的に擦り始めた。
「欲しいなら欲しいってちゃんと言えよ」
「んっ、ふぅ……」
入り口の周りを今にも挿入しそうな角度で何度も擦り上げられる。
度重なるフェイントに、侑斗の腰が次第にねだるようにくねり出し、新太のペニスに自らお尻の割れ目を押し付ける。
「淫乱」と、新太の声なのか自分の声なのか解らない声が頭の奥に響く。「この、淫乱!」
耳にこびりつく声を振り払おうと頭を振ると、いきなりお尻の肉を開かれ、それまで後孔の表面をじれったくなぞっていた先端が、窄まりの中にズボッとめり込んだ。
「はあぁぁうぅぅぅんッ!」
ただでさえ圧迫感の強い新太の長大なペニスが狭い腸壁をこじ開け、拡げながら奥へ進む。それだけで侑斗は息が止まりそうになる。
しかし新太は構わず、硬く直立したペニスを一気に根元まで押し込みグリグリと肉壁を撫で回す。
「こっから見るとまんま女だな……」
シーツを引っ掴んでうなじを震わせる侑斗を見下ろしながら新太が蔑むように笑う。
もともと肩幅と腰幅が狭く筋肉も殆ど付いていない。
加えて、新太に短くすることを禁じられた肩まで伸びた襟足を首の両側に垂らしながらうなじを震わせる姿は、後ろから見たら女のようにしか見えない。
女のような姿で女のように抱かれる。目を背けたくなる現実を、新太がわざわざ声に出して侑斗に突き付ける。
「男のクセに、チンコ突っ込まれてヨガってんだからもう女だな」
違う、と否定する心とはうらはらに、新太のペニスを奥深くまで受け入れた後孔は、その重苦しい圧迫感と肉壁が擦れる感触に甘い疼きを見出し腰をしならせる。
気持ちが快楽に負けている。もう否定のしようがない。
枕に顔を埋めて喘ぎ声を堪える侑斗を、新太は余裕たっぷりの表情で見下ろし、尻肉を開いてさらに腰をグイグイ突き出して後孔の奥を揺すり上げる。
「やあぁぁ……ぁは……」
「ぐっちょぐちょなのにすんげぇ締まる……。よっぽど俺のが欲しいんだな。自分から吸い付いてくんぜ」
「んッ……んはッ、はあぁぁッ……はッ……」
激しい揺さぶりに、侑斗の脚がガクガク震える。耐えきれずに膝を折ると、崩れそうな下半身を新太がお腹に手を回して立て直し、上半身ごと、えいやっ、と引き起こした。
「あひぃぃッ! これ、やあぁッ……」
角度が変わったことで、新太のペニスが侑斗の弱い部分をまともに擦り上げる。
お腹の奥が捩じれるような疼きに、堪えていたはずの喘ぎ声が甘い嬌声となって唇を突き破る。ペニスは、揺らされている振動だけで勃ち上がり、みるみる鈴口から先走りを滴らせる。そのペニスを、新太が股ぐらに手を回して手のひらに握り込んだ。
「嫌? 逆だろ? 自分のこの状態見てからモノ言えよ」
ビクン、と侑斗のペニスが揺れて先走りが新太の指先に溢れ落ちる。
握られただけで射精感が高まっていく。
沸き上がる絶頂感を必死で堪える侑斗を背後から抱き締めながら、新太は、肩に顎を乗せ、耳たぶに唇を寄せて囁いた。
「これはお前が望んだことだ。勘違いすんな」
ーーー俺が?
言葉の意味を考える余裕もなく、侑斗は、身体を突き抜抜けていく絶頂感に背中を仰け反らせた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「まぁまぁ、来るなら来るって言ってくれればオヤツでも買ってきたのに。この子ったら本当に気が利かないんだから、もう。ごめんなさいねぇ、新太くん」
「いえ。もう帰ろうと思ってたとこなんで本当にお構いなく」
テンションの高い母親と、さっきまでとは別人のように礼儀正しい新太に困惑しながら、侑斗は、テーブルに置かれた菓子パンを半分千切って新太に手渡した。
「ありがとう」と、笑顔で受け取る新太の全く笑っていない目に頬が引き攣る。
セックスの後、シャワーを浴びて帰り支度を整えた新太をバイク置き場まで送りに出たところで仕事帰りの母親とばったり出くわし、立ち話もなんだからと再び部屋の中へ連れ戻された。
新太と同じ高校であることは、入学式で新太と同じクラスになった時にすでに母親には話している。
昔の面影を残したままの新太に会えたのが嬉しくて、興奮気味に話したのを侑斗はつい昨日のことのように思い出す。
もっとも、話したのはそれきり。翌日からはむしろ新太の話題は避けていた。
母親もその後の様子が気になっていたのだろう。そういう意味では、母親が、新太をわざわざ部屋の中に呼び戻してまで話したがったのは侑斗のせいとも言えた。
「それにしても久しぶりねぇ。今は水守だったかしら。ますますカッコ良くなっちゃって、一体どこのモデルさんかと思っちゃったわよぉ」
「そんなことは……」
「背もずいぶん伸びたのねぇ。今、何センチぐらいあるの?」
「180ちょい切るぐらいです」
「やっぱりぃ。うちの侑斗にちょっと分けてやってよぉ。高校入ったら少しは伸びると思ったんだけどちっとも変わり映えしなくてねぇ」
「侑斗……侑くんだってそんな低くないですよ。侑くんより低いヤツはいくらでもいますよ?」
「あらそうなの? この子ったら学校のこと全然話さないから……。そう言えば、去年は同じクラスだったのよね? 侑斗はどう? お友達とは上手くやれてる?」
「侑くんは、明るくて楽しいヤツだからクラスのみんなから慕われてますよ。休み時間とか、よくふざけてプロレスごっことかしてるよな? 侑くん、細っこく見えて案外強いんですよ?」
「あらまぁ」と母親が満面の笑みを浮かべる。
慕われるどころか、クラス中に無視され孤立状態にある侑斗の現状を知りながらどの口が言うと侑斗は呆れる。しかもそう仕向けたのは新太本人。
もっとも新太が直接が命令したわけではなく、クラスの中心人物である新太が侑斗を無視することで、他の生徒にも空気が広がりやがてクラス全員から無視されるようになった。やがてそれは学年中に広まり、今では関係の無い上級生や下級生までもが、侑斗を“虐められっ子”と好奇な目で見る。
新太に言わせれば、「周りの奴らが勝手にそうしただけ」「俺は悪くない」らしく、そのあまりに勝手な言い分に、侑斗は、呆れて怒る気にもなれなかった。
それでも、新太の嘘を信じて喜ぶ母親を見ていると、真実を言われなくて良かったと安心している自分もいた。
母親には心配を掛けたくない。侑斗も、母親に知られることには抵抗があった。
侑斗にとって母親といる時間は、自分が、虐められていない自分に戻れる唯一の時間だ。母親に知られたら侑斗はそれを失うことになる。その瞬間から、侑斗は皆に虐められている可哀想な子供になり、侑斗の中にかろうじて残っていた虐められていない自分は消えてなくなる。
プライドというより自分自身の自衛ために、侑斗は、虐められている事実を母親には知られたくはなかった。
そんな侑斗の気持ちを見透かすように、新太はますます嘘を並べて立てる。
「まさかまた一緒に遊べるようになるとは思ってなかったんで本当に嬉しいです」
「おばさんも、新太くんが一緒の高校で本当に心強いわ。まだまだ子供で頼りない子だけどこれからも仲良くしてやってね。ほら、あんたからもお願いしなさい」
トン、と母親が侑斗のわき腹を小突く。
途端に、少し前まで新太の太くて長いペニスを受け入れていたお尻の奥がズキリと痛み、侑斗は、「イタタ」と顔を顰めた。
母親は、眉間に皺を寄せて固まる侑斗を、「またぁ?」と呆れ顔で見る。
「この子ったら、若いのに、しょっちゅう、あそこが痛いだここが痛いだ言ってんのよ? 体育の授業がキツいとか言ってるけど、それくらいで筋肉痛なんて、普段運動してない証拠よねぇ?」
母親に話を振られ、新太が、したり顔で侑斗を見る。
何も言うな。
思っていると、タイミング良く新太のスマホのアラームが鳴り、雑談はそこで終わった。
その後、玄関先で見送る母親を背に、侑斗は新太と親友よろしく肩を並べてバイク置き場まで歩いた。
「体育の授業、そんなにキツいんだ」
ウケる、と笑われ、腹立たしさが込み上げる。
平静を装うのは、新太を喜ばせないためのささやかな抵抗だ。
泣いても笑っても怒っても、感情を出せば新太の嗜虐心をくすぐることになる。ならば平静を決め込んで受け流すのが一番だと侑斗はこれまでの経験から学んだ。
諦めているわけではない。被害を最小限に食い止めるための侑斗なりの対処法だ。
新太がどれだけ執着しようと、侑斗はこの状態が永遠に続くとは思っていない。三年になって進路や就職への動きが本格化すればさすがの新太も虐めどころではなくなるだろう。
あと一年。
長くても卒業するまでの約二年間の辛抱。それを過ぎればこの状態からも解放される。
二年間なんて、過ぎてしまえばおそらくあっという間だ。
現に、虐められるようになってからすでに一年が経っている。始まった頃は毎日が途方もなく長く時が止まってしまったかのように感じたが、二年になってクラスが変わり、前のように授業中に嫌がらせをされることは無くなった。ゆっくりでも確実に時は流れている。
ーーーあっちの方も。
ふと思い、しかし同時に、新太の熱っぽい目が脳裏に鮮明に浮かび上がり、侑斗は慌てて頭から振り払った。
意識を向けるだけで、あの時の新太との一部始終が条件反射のようにたちまち脳裏に甦ってしまう。
新太の、じっとりと見据える暗い瞳。突き放すような、それでいてしつこく絡み付いてくるような視線、腰を掴む大きな手、身体の真ん中を容赦なく貫く熱い昂ぶり。頭と言わず身体のあちこちに触れられた時の感覚がぶり返し、皮膚が騒めき身体の芯が熱くなる。
こんなこと、誰にも言えない。
特に、新太には絶対に。
ーーー余計なことは考えるな。
気を取り直し、前方に見える新太のバイクに視線を向けて足を進める。
新太は、痛みの残るお尻を庇いながら歩く侑斗を揶揄うように、通学カバンの端が侑斗のお尻に当たるようにわざと大きく手を振って歩いている。
「おばさん、俺が同じ高校で嬉しいとか言ってたな。お前と俺がこんなことしてるの知ったらどう思うのかねぇ」
そんなことしてみろ。ただじゃおかない。
言ってやりたい気持ちを堪えて無言で受け流すと、新太が、後ろからガバッと腕を回して侑斗の肩を抱いた。
「そんな、怖い顔すんなよ。ビビんなくても言わねぇから安心しな」
小首を傾げて覗き込む新太の不遜な笑みに侑斗は一瞬たじろぎ、しかしすぐに何でもない風を装い視線を逸らした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌朝、いつもよりも遅い電車を降りた侑斗は、学校までの道程を、重い身体を引きずりながら歩いていた。
母親と新太が歓談したのも影響しているのだろう。セックスの最中、新太に言われた言葉が頭をぐるぐる巡り、侑斗は、殆ど一睡も出来ないまま朝を迎えた。
寝不足に加え、身体の痛みもまだ消えていない。足を踏み出すたびに走るピリリとした痛みと異物感に、新太の言葉が再び頭を巡り始める。
『これはお前が望んだことだ』『勘違いすんな』
新太の言う通り、自分が望んだと言えば確かにそうかも知れないと侑斗は思う。
些細な嫌がらせから始まった侑斗への虐め行為は、無視や仲間はずれを経て、物を壊すといった間接的な暴力に変わり、やがて肉体への直接的な暴力に変わって行った。
それが思春期の性の目覚めと重なり、次第に性的な嫌がらせと発展するのに時間は掛からなかった。
芽吹いたばかりの性への好奇心と有り余る精力、侑斗がアイドル雑誌から抜け出したような中性的な容姿をした少年だったことも影響した。
侑斗はいわば必然的に性的な虐めを受けるようになった。
そして、一学期最後の終業式の日、学校帰りに侑斗が自宅の最寄駅に着くと、改札を抜けたところで新太がバイクで待ち伏せていた。
『俺の相手をするのと殴られるのとどっちが良い』
公園で散々殴ったあと、新太はおもむろに切り出した。
『お前に選ばせてやる。俺たちに毎日こうして殴られるのが良いか、俺の相手をするのが良いか、どっちが良い』
頬がじんじん痺れ、口の中が切れて血の混じった唾液を何度も飲み込む。
身体中が痛くて堪らない。
そうでなくとも、新太の仲間たちに気分次第で殴られ、蹴られ、制服をひん剥かれて身体をいじくり回されたりトイレに連れ込まれてペニスを扱かされたり無理やり咥えさせられたりして心身ともに参っていた。
新太の言う“相手をする”というのが何を意味するのかはすぐにピンときたが、これ以上痛い思いをするのはもちろん、暴力を受けることで頻繁にこしらえる青あざや擦り傷を、母親に、友達との悪ふざけで出来たと誤魔化し続けるのにも限界があった。
嘘で誤魔化すストレスと、男としてのプライドを傷付けられ辱められるストレスを天秤にかけ、侑斗は後者を選択した。
『本当に殴らない?』
おそらく再開してから初めて、侑斗は、新太の目を真っ直ぐに見ながら聞いた。
『もしも俺が新太の相手をしたら、もう俺を殴らない?』
新太は真剣な顔で頷いた。
『もう殴らない。あいつらにももう殴らせない』
その日から侑斗と新太の密会は始まった。
新太との関係が始まってからは、約束通り、新太や仲間たちからの殴る蹴るなどの暴力はピタリと止んだ。
性的嫌がらせは続いていたものの、身体に傷を付けられることがなくなっただけでも侑斗にとっては有り難い変化だった。
そういう意味では、お前が望んだ、と言われても仕方なく、侑斗は何も言い返せなかった。
しかし一方で、新太のペースにまんまと嵌められたような気もしていた。
早生まれで他の同級生より心も身体も幼かった侑斗は、身体も大きく頭の回転の早い新太には、昔から何をやっても敵わなかった。
疑問に思うことも、新太に、『そうだ』と言い切られるとそれ以上何も言えなくなった。
仲良しだが決して同等ではない。侑斗に対してだけでなく、誰に対しても、新太は常にどこか一歩リードしていて、どんな場面でも中心的ないわばリーダー的存在。遊ぶ場所も遊ぶ方法も、新太が言い出せば皆そうすることが最善のように従った。
あの頃と同じように、いつの間にか新太の思い通りに従わされているのかも知れない。
ーーーしかしなんのために。
堂々巡りの疑問で頭を一杯にしながら、遅刻ぎりぎりで校門を抜け、昇降口へと向かう。
扉をくぐり、自分の下駄箱へ足を進めると、いきなり背中をドンと押され、侑斗はつんのめるように前に倒れた。
「タラタラしてんじゃねーよ。朝から邪魔くせぇ……」
ほんの一瞬のことで防ぎようがなかった。
突然の衝撃に、侑斗はなす術もなく砂埃の舞う土間に、ドシャッと派手な音を立てて倒れた。
前を歩く生徒にぶつかったのがクッションとなり顔面直撃は免れたものの、制服のズボンは砂だらけ。ファスナーの開いた通学カバンは派手にぶち撒かれ、飛び出した教科書が教室へ向かう生徒の足にぶつかり遠くへ蹴り転がされていく。
よろよろと身体を起こすと、四つん這いになったところで、襟首を掴まれ強引に上を向かされた。
「歩くの邪魔しといてゴメンナサイも無しかよ。てか、まだ挨拶もしてもらってねぇんだけどぉ?」
昨日、『イラマチオをさせてやる』と凄んだ男だ。
「ほらぁ、さっさと挨拶しろよ。それともまた痛い目に遭いたいかぁ?」
男は言うと、ブンブンと首を振る侑斗の鼻先ぎりぎりまで顔を寄せ、侑斗の口元に自分の耳をわざとらしく近付けた。
「お、おはよ……ございま……」
言ったところで侑斗がすんなり解放されるわけはない。
言い終わらないうちに、「声が小さい」と怒鳴られ腕を掴まれて引っ張り起こされた。
「こりゃあお仕置き決定だな」
抗う暇も与えられず、今度は腕をグイと引かれ、校庭へ連れ出される。
このままいつものように体育館裏のトイレに連れ込まれるのだろう。
項垂れていると、後を追ってきた不良仲間が、侑斗の腕を引いて歩く男の肩を掴んで止めた。
「お仕置きって、一体なにするつもりだよ」
「昨日の続きだよ。なんならお前も一緒に来るか?」
侑斗は一瞬ヒヤリとしたが、意外にも、仲間は止める姿勢を崩さなかった。
「やめとけって。勝手なことするとまた新太に叱られんぞ?」
「んだよ、新太、新太って、なんでアイツに全部仕切られなきゃなんねーんだ。俺らは仲間であってアイツの子分じゃないんだぜ?」
「そりゃそうだけど、さすがに今日はマズイって」
「はぁ?」と、男の眉間が苛立たしげに歪む。それも束の間、すぐに何かを思い出したようにハッと目を見開いた。
「今日って、あの日か……?」
「ああ、あの日だ」
仲間の返事に、男のうっすらと開いた口がたちまち真一文字に結ばれる。
あの日とは、新太の単身赴任中の父親が月に一度週末を利用して自宅へ戻る日だ。その日は朝から新太の機嫌が悪く、仲間たちもピリピリとした緊張感に包まれていた。
父親と言っても、母親の再婚相手で新太と直接血の繋がりはない。新太がこの再婚相手を、『父親ヅラして何かと干渉してくる嫌な中年男』と毛嫌いしていることを、侑斗は、不良仲間たちが話しているのを偶然聞いて知っていた。
明るく聡明であった新太が粗暴な性格に変わってしまったのは、おそらくこの義父との生活も関係しているのだろうと侑斗は思っていた。
「ただでさえ機嫌の悪い時にこれ以上刺激すんなって! 新太がどんだけ荒れるかお前も知ってんだろ?」
クソッ、と、男の顔が再び歪み、侑斗の腕を投げ捨てるように振り払う。
イラマチオからは免れたものの、新太の機嫌が悪いことを知り、侑斗は途端に憂鬱になった。
新太の不機嫌のとばっちりを受けるのは仲間だけではない。侑斗も同じだ。むしろそっちの方が侑斗にとっては深刻だった。
きっとまた酷いことをされるのだろう。
思った矢先、ズボンの後ろポケットに入れたスマホの着信音が鳴り、侑斗はビクッと肩を震わせた。
新太からの着信。
気配を察した不良が、「さっさと出てやれよ」と、首を竦めて固まったままの侑斗を急かす。
気分が重い。胃が痛い。
悪寒のような震えを足元に感じながら、侑斗は、蒼ざめた指先を恐る恐るズボンの後ろポケットに伸ばした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
案の定、新太は荒れていた。
「好きモンのくせにギャーギャー喚くんじゃねぇよ」
問答無用で学校をサボらされ、侑斗は、新太のバイクで自宅へと連れ戻された。
部屋に着くなり、ベッドの上に放り投げられ乱暴に衣服を剥ぎ取られる。
母親が仕事に出掛けてまだそう経っていない、ひょっとしたら忘れ物を取りに戻る可能性も充分考えられる時間帯だけに、侑斗の不安と緊張は嫌でも高まっていく。
「ドア……せめて、ちゃんとドア閉めてよぉッ!」
抵抗したところで、力では絶対に新太には敵わない。
覆い被さる新太の胸板に両手を当てて思い切り押し返すものの、逆に手首を取られて頭の横で押さえ付けられ両手の自由を完全に奪われてしまった。
「やるなら少しは手応え感じさせろよ。つまんねー」
力の差を見せ付けるかのように、新太は、見るからにひ弱そうな侑斗の痩せた身体に馬乗りに跨り、欲情に燃えた目で侑斗を睨み、じりじりと顔を近付ける。
獲物を前に舌舐めずりする獣のような目に身震いしたのも束の間、瞬きをする間もないまま唇を奪われ、侑斗は、ウッ、と息を止めた。
「んっ……ふぅ……やぁ……っぁ……」
堰き止めようとする舌を押し退け、新太の舌が弱い上顎を狙って執拗に舌先を擦り付ける。
深い部分まで舌を差し込まれ、口の中を乱暴に掻き回される。
絡み合った舌が熱い。頭がぼぉっとする。
無意識に首を振ると、新太の唇がふいに離れ、代わりに指先が胸元をまさぐり始めた。
「あッ……いやぁッ……」
肌を滑る指の感触に皮膚が騒めき立つ。
白い胸を反らし気味に硬直させる侑斗をいたぶるように、新太の指が、米粒のような乳首を乳輪ごと指の腹で潰して擦り回す。
「ちっせぇわりにすぐに硬くなってやらしいなぁ」
耳たぶに唇を付けて言いながら、潰した乳首を爪先でコリコリほじる。
「つッ……」
鋭い刺激に下半身がズクンと疼く。
「男のくせにピンク色とかスケベすぎんだろ。触って欲しそうな身体しやがって……、やっぱ、根っからの好きモンなんだよお前はッ」
「ちがぅッ……」
首を振って否定するものの、摘んだ乳首を舌の先でペロンと舐め上げられ、否定の言葉はたちまち喘ぎ声に変わった。
「んふぅうぅぅッ!」
「こんな声出しといて何がちがうんだ? こうされるのが好きなんだろ? こうして欲しくて堪んねぇんだろ?」
半泣きになる侑斗を横目に、新太は、硬くなった乳首を下から上へ何度も舐め上げる。乳輪の外側から円を描くように舐め、唇で摘んで先っぽを舌の先で弾く。
反対側の乳首も舌の動きと同じように指先で責め、やがて、両方の乳首をいじりながら顔を交互に動かして先端を吸ったり舐めたりを繰り返した。
「やあ……あぁッ、あぁん、やめてッ……」
「こっちは、やめて、って言ってねぇんだよ。いっそ乳首だけでイケるようにしてやろうか」
「んっ! 無理ッ! そんな……む、無理だからあぁぁ!」
新太は何も答えない。
ただ侑斗の乳首を執拗にいたぶり、それに飽きると、今度は侑斗の太ももの内側に膝を割り入れ股を大きく開かせた。
ディープキスと乳首への愛撫ですでに硬く勃ち上がった侑斗のペニスは、綺麗なピンク色の皮膚を充血させ、薄皮のめくれた先端を先走りで濡らしながらお臍を向いて反り返っている。
ぐっしょりと濡れた竿を新太の大きな手で乱暴に握られ上下に扱かれると、抗う意思とは関係なく、淫らな先走りが恥ずかしいほど鈴口から溢れ出た。
「相変わらず派手に感じてやがんな。ここ扱かれんの、そんなにイイか?」
「い、いや……」
問答無用に両足をガバッと開かれ、先走りを滴らせるペニスを一段と激しく擦り上げられる。
痛さと気持ち良さで頭がおかしくなる。新太の指が裏筋を擦りながら上下するたびに、お腹の奥がキュウキュウ捩れ、ペニスが熱くなる。
気持ち良さに追い討ちをかけるように、新太のもう片方の手が敏感な先端をくるくるなぞり、鈴口から溢れた先走りを指先にすくって侑斗の小ぶりなお尻の割れ目に滑り込ませる。
湿った指先で後孔の表面を擦られると、ぞくぞくとした快感が背中を走り抜け、侑斗は突き出すように腰を浮かせてしまった。
「自分からケツ振ってんじゃん。ケツ弄られんの好きだよな。いっぱい弄ってやっから、もっとケツ突き出しておねだりしろよ」
窄まりの内側のごくごく浅い部分を指先でほじるように何度も出し入れされ、焦らされた奥がジクジクと疼き出す。ペニスを扱いていた新太の手は会陰に移り、その内側にある感じる部分を侑斗に意識させるように、外側からギュゥっと指を突き立て間接的に刺激する。
抗う心とはうらはらに、身体はすでに限界を迎えていた。
「どうした、早くおねだりしろよ」
侑斗は、
「……くださ……い……」
新太に命じられるまま、腰を浮かせてお尻をくねらせた。
「いじってください……」
フッ、と新太の蔑むような含み笑いが響く。
「どこを弄ってほしいんだ?」
「尻の中……」
「尻の中……ねぇ……」
新太の声色が、ふと、ねちっこい声に変わる。
「あんなにギャアギャア嫌がってたヤツが、今はヒィヒィ泣きながらおねだりしてんだから笑っちまうよなぁ」
新太の言葉に、侑斗の胸に動揺が走った。
最初に犯された時、侑斗はあまりの痛さに始終泣き叫び、新太に制服のシャツを口の中に突っ込まれながらやっとの思いで行為を終えた。
不慣れだったせいもあり、狭い後孔は裂け、真っ赤な血が滴り、その後一ヶ月間はまともにトイレも済ませられない状態だった。
それが今では、新太のペニスを充分に受け入れられるほどに緩み、痛み以外の甘い快感を侑斗に与える。そして終には、後孔を突かれただけでペニスが勃起し、ペニスには一切触れないまま、後ろだけで射精を伴わない小さな絶頂を幾度も繰り返すようになってしまった。
自覚していたこととは言え、ハッキリと言葉にされるとさすがに堪えた。
一方新太は、情けなさと快楽に打ちのめされる侑斗の傷口を広げるように、後孔をなぞる指先を立て、ぬぷぬぷと中に押し込んでいく。
「んあああぁぁぁっ!」
一本、二本。途中でローションを垂らしてあっという間に三本の指を挿入して弱い部分を擦り上げる。
先ほどまでのじれったさから一転、感じる部分だけをピンポイントで責められ、侑斗の口から屈辱的な喘ぎ声が漏れる。
「ぁあッ! はっ、あッ! あ! ぁあぁ! あんッ! あッ!」
抑えても漏れ出す切ない声に、新太の指の動きがさらに加速する。
「面白れぇ。触ってねぇのにチンコが勝手にビクンビクン揺れてんぜ」
「はうぅぅんッ! ふぐっ、あ……ぅあッ……」
切ない痺れに侑斗の腰がひとりでに揺れる。快感を振り払おうと必死に頭を振るものの、それすらも新太の官能を刺激するスパイスにしかならない。なりふり構わず頭を振りたくる侑斗の切ない表情に、新太の指が、弱い部分をますますねちっこく擦り上げる。
「やっぱ、チンコよりこっちが良いってか? まぁ、感じるスイッチ直接押されてるようなもんだかんな。チンコとは全然違うだろ? 身体の奥がキュンキュンして、女みたいにイッちまう……」
「違う」と言い掛け、新太はふと黙った。
新太の言葉が引っ掛かる。
『チンコとは全然違う』『身体の奥がキュンキュンして、女みたいにイッちまう』
確かに、後ろを弄られるのはペニスを扱かれるのとは全く違う快感がある。
感じるスイッチを直接押されている、と言われればまさにそうだ。
他人の手でスイッチを押される。『イク』のではなく、『イカされる』感覚。
しかしそれをどうして新太が知っているのか。
侑斗は思ったが、確かめようにも、新太に両足を持ち上げられそれどころではなくなった。
「そろそろいけるな」
持ち上げた両足を侑斗に自分で持つよう命令すると、新太は、膝を抱えて脚を開く侑斗の股の間に腰を据え、後孔と自身のペニスにローションをたっぷり塗り込んだ。
「お前のここ、パックリ口開いて待ってんぜ?」
剥き出しの後孔を、新太がいつものようにペニスの先端で焦らすように撫で回す。
「物欲しそうに吸い付いてくる。入れて欲しいんだろ? 入れて欲しい、って言えよ」
「入れてください」
促されるまま答えると、後孔を撫でていた先端が窄まりの中心でピタリと止まる。
次の瞬間、硬く張り詰めた先端が侑斗の後孔をメリメリとこじ開けた。
「んんぁあぁぁッ……」
絶叫を迸らせながら、侑斗は抱えた足を硬直させた。
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