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✯第一章 西の国〜前編〜✯
1話✯『白金』✯
しおりを挟む「私達が届けるのですか?」
セリアがシャルルに聞いている。
「えぇ、もし取りに来てくれた人が疫病を持ってたら、森の動物達も困っちゃうでしょ?」
三人は森から出て二日程の距離の西の国にある街に向かっていた。
「大丈夫よ、治癒の星に入ってる魔法は私の魔法よ二人がなっても治してあげるわ」
「シャルルさんは大丈夫なんですか?」
「えぇ、私は一度超越しましたから……」
「あっそっかごめんなさい……」
「いいの、でも街中ではそう言う話はしないでね、貴方達の目をみてその事話したんだからね。」
暫く歩いて夕方になり、道の脇の草原でテントを貼り、焚き火をして簡単にご飯の用意をする。
シャルルは幌付き馬車を持っているのだが、疫病の広がっている地方に行くので馬は使わない事にして歩いているのだ。
「そうだ、セリアさん私と少し魔法勝負してみません?」
「え?」
セリエが驚くが……
「私が勝てる訳ないじゃ無いですか、やってみないと解りませんけど」
セリアが言う。
「ちょっとセリア?」
セリアは既に立ち上がって、テントから離れて草原に向かって歩き出した。
「なる程、やって見ないと……か……」
シャルルがそう言い跡を追うが楽しそうであった。
(久しぶりねあの子と魔法勝負って楽しそう。
手加減する必要あるのかなぁ?)
「ここでいいかな?」
「えぇ」
シャルルが美しい微笑みを見せながら答えると同時に、シャルルが急激に魔力を高めた。
薄い水色の輝きがシャルルから溢れ出した。
それと同時にセリアも魔力を高めた、セリアの髪が魔力の風になびき優しい微笑みを一瞬見せてから意志の強い瞳を見開いた。
「我が『金色こんじき』の力……その身を持って味わうが良い」
セリアが言う。
「『金色こんじき』……ってまさか、じゃあセリエは『白銀はくぎん』?」
シャルルは一瞬セリエを見たがその間に、セリアが距離を詰めていた。
「ファイアランス!」
セリアが叫び炎の槍を持ちシャルルに襲い掛かった!
シャルルは素早く躱して動作だけで衝撃波を起こして、セリアの動きを止めて距離を取ろうとしたが。
「エアニル!」
セリアが叫んだ!
セリアの視線の中心に衝撃波が生まれ、シャルルが放った衝撃波にぶつかった!
(クッ!この子本当になんなの⁈魔導士だよね⁈)
「ファイアーボール!」
セリアが遠距離からも攻撃した様に思えが違った、現れた火炎球の背後について距離をまた詰めて来た、そして凄まじい速さでシャルルに斬り込む。
(まさか私と同じ……近接タイプの魔導士⁈なら……遊べない‼︎)
シャルルはあの剣を出して素早く、炎の槍を受け止めた。
「ヒント!これは炎の槍だからね!」
セリアがそんな中可愛い笑顔でそう言った。
(……?)
シャルルが不思議に思ったが直ぐに解った。
熱がシャルルの剣を熱しはじめたのだ、シャルルは直ぐに押し返したが、まともに長時間受けては剣が持てなくなってしまう、つまり躱すしか無い。
シャルルは魔力を高めて劔に込めながら斬り込む、刃を振った瞬間高速で剣の歯車が回りセリアは完全に躱したつもりが、僅かにローブをかすめた。
(え?なんで?私の回避は完璧なはず‼︎)
シャルルがうっすらと笑みを溢した。
セリアが走り込みながら槍で斬りかかろうとした時、セリアの姿が歪んだ!シャルルは直ぐにバックステップで距離を取った。
「甘いよ!ボルケーノ‼︎」
セリアがそう叫び、槍で地面を突いてその反動を使い、空に飛び上がる。
大地は槍で突かれたのと同時にマグマが吹き出して意志を持った様にシャルルに襲いかかった!
(この子本気なの‼︎)
「シャルルさーーん、セリアは手加減を知らない子なのー‼︎」
セリエが叫ぶ!
「先に言ってーーー‼︎」
シャルルが叫ぶ!
素早くシャルルはマグマを躱して、剣を振りマグマを石化させた。
明らかに魔女であった時に習得した闇の魔力を使ってるように見える。
そして楽しそうな気配を空から感じ取り、素早く走り出し距離を取り確認したその姿は、炎の翼をはためかせたセリアの姿だった。
「ファイアーエンジェル……そんな魔法まで……」
凄まじい速さでセリアが急降下して斬りかかる、シャルルはその降りてきた瞬間姿を消した。
そしてセリアのファイアーランスが大地を切った時、真横からセリアの首に刃が突き付けられた。
「え……マジ?」
「えぇ、ほんとよ私の勝ちね」
シャルルが微笑みながらそう言うが、内心負けてもおかしく無かったと、心からそう思っていた。
(まさかこの子達が白金しろがねだったとはね……限り無く魔女に近い力を持つ二人組……どんなアーティファクト作るんだろう、本当に楽しみね)
「負けちゃったのかぁ……ざぁーんねん……ねぇお姉ちゃんも相手してもらったら?シャルルさん強いよ!」
「えー私は遠慮するわ、多分勝てない気がするから」
「さっ夕食の支度しましょう」
シャルルがそう言うと。
「はーい」
セリアが元気に返事をした。
セリエはお決まりの結界の支度をし、セリアが魔力を高め結界をはる。
シャルルはその結界を見て、自分の結界より少し弱い程度で結界の四方のナイフをアーティファクトにすれば、自分の結界を遥かに超える気がし……
(この子達って本当に凄いな、これだけの力を持ってたら普通の人間ならそれを振りかざすだろうけど、純粋な良心で溢れてる。
やっと出会えたのかな……)
シャルルはそう思いながら、ワイワイと楽しみながらご飯の支度をしているセリアと優しい目で見守ってるセリエを微笑みながら見つめていた。
翌日、シャルルが目を覚ますとセリエが居なかった、セリアは可愛らしい子供の様な寝顔で寝ている。
シャルルがテントから出ると、登り始めた朝日の光を浴びてセリエが剣を振っている。
日課の様だ、その剣を見てセリエの剣技が相当なのをシャルルは直ぐに解った、でも剣だけじゃ無いのもシャルルは見抜いた。
クリスタルが剣の付け根にはめ込まれていて時折日の光を浴びて七色に輝いている。
強い魔力を何度も注がれ魔力の性質が染み付いた証の輝きであり、アーティファクトの素材としては最高級品を超える秘石と化している。
「おはようセリエ」
「おはようございます」
「セリエとセリアって正反対な性格よね?
顔も似てるけど、なんでそんなに違うの?」
「昔は私もセリアみたいな子でしたよ」
セリエは笑顔で答えるが、僅かな僅かな悲しみをシャルルはその瞳から感じた。
「なる程、お姉ちゃんだからかな?
じゃ私は朝食の支度してるから、出来たら呼ぶね。」
「あっありがとうございます」
そして賑やかな朝食を三人は取り、シャーゼンの街に向かった。
夕方にシャーゼンの街について教会に向かう、街は活気が無くどの店もひっそりとしている。
ちょうど教会の前についた時、背後から叫び声が聞こえた、街の入り口付近で何かが起きている。
一人の衛兵が三人を押し除けて教会に走り込んで叫んだ!
「神父様!盗賊が街を襲っています!
我ら守備隊が防衛に回りますが、疫病の為に数で劣り守り切る事が出来ません!
どうか民を連れてお逃げください!」
それを聞いてシャルルは目を鋭くし、街の入り口に向かおうとしたが、それをセリアが腕を掴み引き留め耳元で囁いた。
「シャルルさんは元魔女でしょ?
私達が何とかするから神父様にそれを早く渡して」
「でも……」
「お姉ちゃんいこ!」
セリエが頷き二人は走り出した。
「二人とも……」
シャルルは二人の後ろ姿が頼もしく見えた。
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