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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
第七章最終話✡︎✡︎光の騎士✡︎✡︎
しおりを挟むユリナが目を覚ました。
辺りを見ると、メトゥスに抱えられ空を飛んでいる。
遠くに此方に向かってくる松明の群れが見える……まだ夜が明けていない。
「メトゥス!降ろして!
お母さんの所に連れて行かないでお願い!」
ユリナが叫ぶ、メトゥスはユリナがエレナを守ろうとしているのに気付いて地上に降りた。
だがその姿をエレナは見ていた。
「ムエルテは?オプス様は?」
ユリナが聞く。
「私達を逃す為に戦っています。
二人の気持ちを解ってあげて下さい」
メトゥスがそれを伝えた。
「そんな!」
ユリナは知っていた、いや感じたオプスの死を……だがその時ムエルテの未来が頭を過りそれを見た瞬間。
「そんな……」
ユリナは驚いた。
「?」
メトゥスは解らなかった、ユリナが何を見ているのか……だがゆっくりしている時は無かった。
「まさか……ムエルテとオプスが負けた?
そんなはずは‼︎」
メトゥスが呟いた時、鋭い爪がメトゥスに襲い掛かった!
ニヒルだ……それをメトゥスは真紅の恐怖の剣で弾いて、ユリナを蹴り飛ばした。
ユリナは飛ばされて僅かに傷を追ったが、メトゥスはそうするしか無かった。
少しでもニヒルからユリナを遠ざける為にそうしたのだ。
「ニヒル!何故貴様がここに!」
メトゥスが叫ぶ。
「案ずるな、二人はまだ我と戦っている……
少しそのエルフが気になってな」
ニヒルが言う。
(まさか……気付いた……)
メトゥスがそう思った時、ユリナが立ち上がり凄まじい速さ正に疾風の様な速さで斬りかかった!
ニヒルは其れを躱したが疑問に思った。
(速過ぎる……なんだ……)
そしてニヒルがユリナを捕らえようとしたが、ユリナはあっさり躱す。
そしてその腕を斬り落とそうとした時、ニヒルが消えて背後からユリナを斬り裂こうとしたが、ユリナにはニヒルの先が全て見えていた。
その爪を背を向けたままユリナは暗黒で受け止める。
「まさか貴様!」
ニヒルが気付き始めた、そしてニヒルはユリナより速く動き、野獣の尾でユリナを吹っ飛ばした。
その速さはユリナ反応を上回り直撃を食らってしまうが、岩に叩きつけられる前にメトゥスが庇う……メトゥスが赤黒い血を吐く……
「メトゥス、そちはまだ力が戻ってないのだろう?ならば話さぬか?
話せば力を返してやっても良い……
そのエルフを何故庇う……」
ニヒルがそう言いながら恐怖の力を解放し始めるがメトゥスが叫ぶ。
「そんな力はもう要りません!
私は……」
メトゥスは以前の自分に嫌悪感を感じ始めていた……力の本質は全て恐怖だが、ユリナの守ろうとする本気の気持ちに揺り動かされていた。
そして本来の力をニヒルから受け取れば自分がどうなってしまうか解らなかった。
「ならば……」
ニヒルがそう言った時、ユリナの背後から水色の神聖な輝きが飛び出して、ニヒルに斬りかかった。
ドラゴンナイトと化したエレナだ。
その刃はニヒルに届くが、手応えが無い、素早く竜の爪を伸ばし、ニヒルを突き刺しようやく手応えがあるがニヒルの爪がエレナを襲う。
エレナの体を襲う竜の鱗をかすめてギリギリで躱すが、何枚か小さな鱗が剥がされた。
「お母さん!逃げて‼︎」
ユリナが叫びニヒルに斬りかかる!
メトゥスは驚いていた、ユリナの回復力の凄まじさに、それは再生では無いことにメトゥスは見て気付いた、ユリナに流れる竜の血までもが目覚めようとしていた。
「ハッ‼︎」
エレナがクリスタルの小太刀に全力でエヴァの力を注ぎ、凄まじい水圧の刃がニヒルを襲ったが、ニヒルは遊ぶ様にわざと其れをその身に受けた。
一瞬時が止まった様に誰もが感じたが、それと同時に恐怖が支配し始める!
ニヒルを擦り抜けたのだ……エレナの渾身の斬撃が……正に無、何も無い様にそれは擦り抜けた。
そしてメトゥスの力がより奪われていく……ユリナを庇った傷から激痛がメトゥスを駆け抜けていく。
「恐れないで!」
意志の強い声が響く!
その声に怒りが篭り不意に凄まじい旋風が巻き起こり、ウィンディアが現れた!
一瞬エレナの斬撃が効かない事に戸惑ったユリナも我に帰り、再びニヒルに立ち向かって行く!
「ニヒルを恐れないで!ニヒルを恐れたらメトゥスが消えてしまいます‼︎」
ウィンディアがそう叫び風を操りニヒルの目を狙って行く!
無駄かも知れないが、ニヒルの視覚を奪おうとした。
その声にエレナも意志を強く持ち直して立ち向かって行く。
エレナは素早く離れ矢を天に向かい放った、それは合図だった。
それを見たピリアが遠くで連合軍に叫ぶ!
「天界の神が救いの手を差し伸べた!
全軍死を恐れるな‼︎」
ピリアの声に全軍が怒号の様な叫びをあげる!
その声は、風に乗りウィンディアにも聞こえていた。
ウィンディアは静かに涙を流した。
それと同時にウィンディアが現れた意味は大きな役目がある事を感じていた。
希望で地上を満たさなければならない。
それをウィンディアは不安に思った、六大神とは言え天界は今、神々が争っている、自分一人でそれが出来るのか解らなかった。
「ウィンディア……
お前だけでは無い……」
遠いパルセスの戦場でアルベルトが呟いた。
そして眩い光を放ち光神ルーメンとしての力を解き放った、その光は天へ一直線に伸びる。
夜空に向かい光の柱が神々しく輝いた……
「ふっやはり来たか……
ユリナどうする?長くは持たないぞ……」
アルベルトは知っていた。ニヒルの本質が無であり何もない無の空間から現れる事を、それがニヒルの意思で複数現れる事も……
アルベルトの放った光の柱に気づいたのか、三体目のニヒルが魔獣の姿で現れる……だが様子が違う……。
アルベルト率いるサラン王国軍はアルベルトの変貌に驚き、それが光神ルーメンである事を知り、力が漲ってくるのを感じていた。
「ルーメンよ、そちとオプスが創造と破壊を司ればこの様な事にはならなかった……
そう思わないか?」
ニヒルが言う。
「……」
その言葉にルーメンは沈黙をしたが、ニヒルに剣を向け力強く叫ぶ!
「貴様が何を言いたいか解らぬ!
ただ解っている事は‼︎
貴様を止める神が居ない限り‼︎
誰が世界を作ろうと同じ結末が待っているだけだ‼︎‼︎
貴様がした行いは!
力で虐げる非道!
我ら人間は!
どの種族からも虐げられた時代があった!
貴様は最高神でありながら‼︎
力で!
支配しようとしている!
我ら人間を虐げた過去の者達と同じである!
それに屈した母アインは既に神では無い‼︎
我ら六大神が貴様を止めて見せる‼︎
我らは力では屈しない!
それを思い知れ‼︎」
ルーメンの叫びは何処までも響いた……
ニヒルと戦うユリナ達にも、ムエルテとオプスにも……全ての地上世界にいる者達、天界にも暗黒世界にも、冥界にさえ届いた。
「お兄様……」
ウィンディアにもその声はハッキリと届いていた。
そして気に食わなかったのか、何も言わずにニヒルがルーメンに襲い掛かる!
ニヒルの爪がルーメンの盾を斬り裂き破壊する、ルーメンはその盾を投げ捨て、隙を見せずに斬りかかる。
光神ルーメンの剣は六大神の中でも最速を誇る、その正確無比な斬撃が確実にニヒルに届くが致命傷は与えられ無い。
ルーメンはその刃に光を乗せ連続して斬りかかる、今まで見せた事の無いような斬撃を繰り出している。
だがニヒルは全ての斬撃を爪で弾き、振り返る様に尾でルーメンを吹き飛ばそうとするが、瞬時にルーメンはそれを躱した。
光神ルーメンの死闘が繰り広げられていた……
✡︎✡︎ユニオンレグヌス・ファーブラ✡︎✡︎~第七章 神々の参戦 ~完
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