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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜
140話✡︎✡︎天界の反乱✡︎✡︎
しおりを挟む「オディウム!生まれ変わったのなら、我らと共にニヒルと戦いなさい‼︎」
メトゥスがユリナに駆け寄りオディウムに叫ぶ!
「メトゥスかどうした?
女らしく可愛くなったじゃないか、だが悪いが俺にその気は無い……
お前ら全員を相手にするのは少し分が悪いな……
だが昔のよしみだ一つだけ教えてやるぜ……
ユリナ!お前が今見たのは紛れも無い未来だ!
お前が守った未来だ……
だが守れるのか?今のお前に?」
オディウムはそう言いながら赤黒い霧になって消えて行ってしまった。
オプスが何かを感じで呟いた。
「ニヒル……」
それはゆっくりと森の中を歩み寄ってくる……
「オディウムは逃げたか……」
森の中から凄まじい重圧を放つ声がする。
「クッ……」
ムエルテが森を睨みながら声を漏らす。
「私が守った未来……」
ユリナが呟き、その言葉に希望を見出したそれは間違っていないと言う希望だった。
「なら何故ユリナさんを襲ったの?
オディウムは……」
メトゥスが呟きオプスが気付いた。
それはユリナが暗黒を持っている為に、闇の性質もオディウムは得ているのでは?
もしドッペルの性質であれば、ユリナを殺してその力を奪おうとしたのでは……?オプスはそう考えた。
オプスはそれを知り、自分の愚かさに気づいていた。
あれはトールでは無い、十万年待ち続けた愛が実り僅か二年しか……それは幻の様な時であったが、もうそんな事は言ってられなかった。
「お喋りしてる暇は無いぞ……」
ムエルテが鎌を構えて言う。
その瞳は殺気に満ち溢れている、そして僅かだが希望の光を宿らせていた。
以前ユリナに見せた敗北を見つめていた瞳では無かった。
足音を立てながらニヒルが現れる……崩壊を告げる、そう思わせる様な足音を立てて、ユリナがよろめきながら立ち上がる。
「オプス……
悪いが妾に付き合ってくれぬか?
メトゥス!ユリナを連れて逃げろ‼︎
貴様が消滅しようとも何としても逃がせ!
いいな‼︎」
ムエルテはまだ半神半人であるユリナが戦えるとは思わなかった。
トールの姿をしたオディウムに身も心も傷つけられ、正常な判断を欠く事を懸念していた。
メトゥスはそれを察してユリナが力を使わないように、ユリナの顔に手を当てて気絶させ空に飛び立ちその場を離れた。
「ふっ……エルフ一人を逃してなんになるのだ?
ムエルテお前らしく無い愚かな選択をするな」
ニヒルがそう言いオプスもムエルテも気付いた……ニヒルはまだ気付いていない事を、無の神ニヒルに対等する神、時の女神テンプスが目覚めようとしている事にまだ気付いて無いのだ。
オプスは立ち上がりニヒルを睨んだ……カイナの死も既に数十万の命が、この地上から消えた、それはニヒルがディアボロスとしてでは無く、無の神として本性を表したからだ……
そしてトールは命を落とした、その全ての怒りをニヒルにぶつけた!
オプスは瞳を見開きニヒルに飛びかかる!
右腕から闇の剣を出してニヒルの首目掛けて斬りかかる、闇の街道で無の力で身を守っていた巨人族を切り裂いた剣だ。
その背後からムエルテが素早く斬りかかるが、ニヒルは姿を消しムエルテの鎌にオプスの剣があたる。
ニヒルは二人の横から襲い掛かるが、オプスは漆黒の霧になり躱し、ムエルテは姿を消して躱す。
無を支配する神に、冥界を支配する神と暗黒世界を支配する神が共に挑んだ。
オプスとムエルテ、そしてニヒルも決定的に打撃を与える術がない様に見えるが、ニヒルは二人の戦いに疑問を抱いた。
(ムエルテ……お前は我を滅ぼせぬ……
それを知っている筈……
オプス……お前の力も我に類似する……
二人とも利口な神……
無駄な事を避けるはずだが……
何故だ!
何故!その瞳に希望を宿せる‼︎)
ニヒルが初めて困惑していた。
その様子を天界の神々が見ていた。
「お母様!
何故我らを地上に遣わさないのですか?」
ウィンディアがアインに問い正す。
「お姉様がニヒルと戦っているのです。
トールを失った悲しみを押し殺して……
其れなのに……
私達は本当に神なのですか!」
ガイアがそれに続く……母アインの怒りを最もおそれ、母想いのガイアが初めてアインに意見した。
そこに天界の者では無い者が現れた。
黒い影だ……ウィンディアもガイアもその者に手をかざし殺そうとする。
「何故巨人族が!ここに‼︎」
ウィンディアが怒り叫ぶ。
「やめなさい……」
アインがウィンディアとガイアを止めた!
「そう言う事だ……
ウィンディア、ガイアよニヒル様は地上を滅ぼす事を見守れば、天界には手を出さぬと約束された。
新しき世界を作る為に力を貸すと言われた……」
影が言う。
「そんな……お母様!
それを信じると言うのですか‼︎」
ウィンディアが激怒した。
アインは自分の息子と娘を考えそう判断した……それはニヒルの力が強大すぎる為に天界が関与しても無意味と思ったのだ。
ウィンディアとガイアはそれをその瞳で見た……。
ガイアは素早く黒い影に岩の槍を突き刺す!
「そんなの間違っている!
私達が守る命達をまた見捨てるなんて!」
ガイアが怒り、ニヒルの使者を殺すがそれをアインが止めようとしたが、黒い影が数多く現れた……
「アイン、其方は手を出さなくて良い。
意に背く者は我らが止めよう」
影がそう言い、次々とガイアに襲い掛かるが大地の女神ガイアの抵抗は凄まじく次々とガイアの手で殺されていく。
「六大神に貴方が敵うと思っているのですか⁈‼︎」
ガイアが叫ぶが、闇の祝福を過信しているのか巨人族は怯まないで向かってくる。
「ウィンディア!ガイアを止めなさい、天界の者でいたければ、ガイアを止めなさい!」
アインが叫ぶ……
「ウィンディア!地上に行って‼︎」
ガイアが叫ぶ。
美しい天界に巨人族の血が流れ汚されていく、ウィンディアは悩まなかった。
そしてガイアに向けて手をかざした。
力を込めて風を操ろうとする。
「ウィンディア!」
ガイアは驚き戸惑うが、ガイアの後ろから襲おうとした巨人族を、カマイタチの様な真空が斬り裂いて叫んだ。
「お母様は間違っています!
もうここは天界じゃない‼︎」
そう叫んでウィンディアは地上に向かって行った。
それを止めようと巨人族がその行手を阻むが、紅蓮の炎が焼き尽くした。
「行け……母上は俺が止める……」
屈強な戦士を思わせる男神が現れる。
「イグニス……」
ウィンディアが驚きその者を呼んだ、沈黙を守る炎神イグニスが動いたのだ。
「俺の種族オークの為だ気にするな……」
イグニスは戦士の魂の源、何もしない天界に嫌気がさしていた、その上に天界が地上を見捨てる事、ニヒルに屈する事に怒りを爆発させたのだ……
「天使達よ、母アインを捕らえなさい。
ニヒルの言葉を信じる事が何を意味するか考えれば解るはずです……」
水の女神エヴァが透き通った声で言う。
天界に残る六大神全てが、アインに背いた……六大神は六人揃ってもアインに敵うかわからない……それでも背いたのだ……
「みんな……」
「行け!兄上と姉上を助けよ‼︎」
イグニスが言う。
ウィンディアは頷き走り出した!全ての崩壊から抵抗する地上に向かって。
「貴方達!私に逆らうのですか⁈」
アインは怒り叫ぶが!
ガイアもイグニスもエヴァも神として恐れなかった……
そして天界で神々の戦いが幕を開けた。
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