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〜第七章 ファーブラ・神々の参戦〜

128話✡︎✡︎終焉の始まり✡︎✡︎

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 ユリナ達はだいぶ馬を走らせた、十日程走らせて大きなリンゴの木を見つけた、ユリナはその木が気になって馬を止めた。

 馬から降りて木に歩み寄ると、不意に声をかけられた……


「そちも食わぬか?」


 ムエルテがリンゴの木の太い幹に座ってリンゴを食べていた、ムエルテはふわりと木から降りて、ユリナにリンゴを渡した。
 その様子をカナが見ていて、兵達に休む様に指示を出してユリナの方に来た。


「ムエルテ様……」
ユリナが言う。
「気にするな……
あの者は死ぬ定めじゃった
死相が見えてのぉ……
それを辿れば仲間のイミニーに
殺される定めだった……
そちに命を取られた事は
カイナの救いになったはずじゃ……」

 ユリナは何故カイナが仲間のイミニーに狙われる定めなのか解らなかったが、ムエルテは話続ける。
「カイナはの
本気で国を滅ぼす気は無かった様だ……
カイナが滅ぼそうとしたのは天界……

そう考えてみい
カイナは神に裏切られイミニーになった。

そのイミニーに裏切られでもしてみろ
カイナの居場所は
この世界から無くなってしまう……

産まれた時の妾の様にな……

そう思ってのカイナは
オプスの元に送ってやったぞ」

 ムエルテはリンゴをかじりながら話すが、何時もよりリンゴが優しく甘く感じた……
「妾は勘違いしていたのぉ……
この赤は血の色ではない。

命の色だのぉ……

力強い色をしているが……
人の様に甘く優しい」
ムエルテはカイナと自分を重ね見て、物思いにふけていた。


「ムエルテ様って本当に死の女神なんですか?
命の女神みたいですよ」
 ユリナがムエルテに笑顔でそう言った。
 ユリナも闇の女神オプス様ならカイナを悪い様にはしない気がしてほっとしたのだ。


 ムエルテは恥ずかしがりながら、何かを言おうとした時!ハッとして北を見た……


 天界ではオプスが大粒の涙を流していた……


 ユリナはえ?っと思った時、風が悲鳴をあげたように感じた、そして急に北風が吹いた……


「やりおったなぁぁぁぁ‼︎
ニヒルゥ‼︎」
急にムエルテが怒りだし叫ぶ‼︎

「ユリナよ!
早うエレナに知らせぇい‼︎‼︎
ニヒルが辺境地域でクリアスを使った‼︎
ケンタウロス族が滅びたとな‼︎‼︎」

 そう叫ぶとムエルテは北に向かって飛んで行った。
 死の女神ムエルテは感じたのだ、悍しい心地良さを、凄まじい数の死が生まれ……
 それがムエルテに救いを求める様に流れ込んだのだ‼︎‼︎

 直ぐにユリナは水の鳥を飛ばして馬に乗りバータリスに向かった。
 カナも直ぐに部隊に指示を出し後を追う
地上とニヒルの戦いが幕を開けたのだ……


「まさか……」
 ムエルテは何かに気付いて急いで天界に向かった。



 闇の女神オプスは直ぐに天界から暗黒世界に帰り、魔族を集め始める。

「急ぎなさい!魔王達‼︎
我らが冥界から守り続けた地上世界が無くなってしまいます‼︎‼︎」

 オプスらしく無い力の籠もった声を上げて叫んでいる!
 オプスもこれ程早く来るとは予想していなかったのだ……



 その頃辺境地域では、ミノタウロス族が巨人族と戦っていた。
 屈強な肉体を誇るミノタウロスは巨人族に引けを取らずに、戦を展開していた……
 だがそれが巨人族の遊びでしかなかった事にミノタウロス達は気づかなかった。

 巨人族はかつての兵器、科学が生み出した兵士フェルムナイトを繰り出して来た……
 鋼の巨人兵がミノタウロスに襲い掛かる!

 だが彼らはオークと同じ戦士の一族、恐れずに立ち向かって行く、ミノタウロスの巨大な戦斧やハンマーがフェルムナイトを破壊していくが、数に限界があり徐々に押され始め、ミノタウロスが後退を余儀なくされていく……


「ザラハトス様、そろそろ宜しいかと」
「皆楽しんだか?
我らを見限り恩を仇で返した地上の者どもを、殺戮し全てを破壊せよ!

そして我が父上の敵を!

天界の神々を全て滅ぼすのだ!
ニヒル様が我らと共に戦ってくれるのだ!
何も恐るな!」


 ザラハトス、彼は十万年前、闇のレジェンドが誕生する前に、オプスを救う為に竜の墓場に出陣した巨人族の王子、消息を絶った様に思われていたがタナトスを探索し続けたのだ。

 その為にアインの怒りを免れていた。

 たが巨人族の滅亡の知らせを聞いた彼は憎しみを抱き、闇の大陸を目指した、彼は復讐に燃え無の神ニヒルと契約を交わしていたのだ……


 ザラハトスが叫んだ直後。

 見たこともない獣が放たれた、巨人族が生み出した、科学から生み出された魂無き生物……巨人族はそれをシャッフェンと呼んでいた。

 目がない頭に毛も生えていない、牙が生えそろいムカデの様な尾を持ち、爪は鋭く曲がりかぎ爪の様になっている……
 その無数のシャッフェンがミノタウロスに襲いかかり、ミノタウロスの陣は崩壊し、敗走し始めた。

 だが一軍だけ持ち堪えている。
「俺が抑える……全軍撤退せよ……」
一際大きなミノタウロスが言う、巨大な椅子から立ち上がる。

 そのミノタウロスは背丈がオークの五倍はある……巨人族よりも巨大なミノタウロスは両手に一本づつ斬馬刀を持ち走り出す。

 その戦いぶりは正に野獣であり、凄まじい勢いで暴れ出す。

「グアンナ!逃げろ死ぬぞ‼︎」
部下だろうか、そのミノタウロスに声を掛けている。
「逃げたい奴……要らん……」
彼はそう言い戦い続ける。

 彼の部下達は彼に続き、殿として戦い始めた、ミノタウロスの軍を逃そうとしていた。
 彼はグアンナ、神の牛と呼ばれたミノタウロス族の英雄であった、彼は英雄として仲間を一人でも多く逃す事を選んだのだ。

 凄まじい勢いでグアンナはシャッフェンを斬り飛ばしていく、二刀の斬馬刀を小太刀の様に振り回し、身体中に傷を負っても目を真っ赤に滾らせ正に猛獣と化している。

 突然何かが放たれグアンナの右の角が折られた。

「放て!」

 正面から巨人族が大筒を放ったのだ、味方のシャッフェンもろとも、グアンナの部下を吹き飛ばして行く、凄まじい連続砲火でグアンナの部隊は崩壊してしまうが、グアンナは姿を消していた。

「どこに行った……グァァァ‼︎」
 探していた巨人族が悲鳴を上げた、グアンナは連続砲火の煙に紛れ巨人族の背後に回ったのだ、紅蓮に輝く瞳が怒りを表している……

 グアンナはそのまま、巨人族の砲兵部隊の中で暴れ回る。

「太古の支配者……弱い……」
グアンナが怒りに溢れながらも、ただ呟く……。

「グァ」
 いきなりグアンナの胸が槍で貫かれた。
フェルムナイトの槍だ……フェルムナイトは槍を抜き、頭を貫こうとしたが致命傷を負ったグアンナは、走り込みその斬馬刀でそのフェルムナイトを斬り裂こうとした。

 凄まじい鉄が斬り裂かれる音が鳴り響く、周囲にいるシャッフェンさえ、恐れ離れて行く、そしてグアンナの斬馬刀が折れグアンナは紅蓮の瞳を輝かせ、その巨大な拳で殴り倒し、フェルムナイトは動かなくなる。

 まだ戦場に残ったミノタウロス達は、グアンナの戦いぶりを見て、死を覚悟して最後の抵抗を見せる。
 グアンナは息絶えたが、英雄としての役目を果たした。
 最後まで戦い抜き戦士として、残ったミノタウロス達に戦う意志を与え、敗走した部隊を逃す事が出来た。



そしてその様子を見かねたのだろう……
赤黒い歪みが空間に生じた……

「私が愛した地上を……よくも……」

 優しく憎しみの籠もった声が響き渡る……
その直後に、自ら歩く牙を持った植物達が無数に現れ巨人族に襲い掛かった!

 破滅の女神フローディアだ、ムエルテが言った通り冥界がニヒルの軍に戦いを挑んだ……
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