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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜
118話✡︎✡︎フィリアの最後✡︎✡︎
しおりを挟むユリナが走りながら叫ぶ!
「お母さん!ここはお願い‼︎」
「ユリナ!何処に!」
カナが追おうとした時、ピリアも気づいた。
「オプス様……」
涙を流しながらピリアが言う。
エレナは即座に理解した、既にフィリアの命は無い、だが魔族を産み出した闇の女神オプスなら救えるかも知れない!
「ピリア!フィリアの魂はまだいる⁉︎」
エレナが戦いながら叫ぶ!
ピリアはそっとフィリアの額に手を当てて感じ取った。
「お願い……もう少しそこにいて……」
ピリアが言う。
「呼び続けて!」
エレナが叫ぶ。
「フィリア!フィリア!
いっちゃだめだよ!フィリア‼︎」
ピリアの感情を溢れ出した。
「フィリア⁈女王では無いのか⁈⁈」
黒い影が驚いたか叫び、後ろに下がった瞬間!
エレナが腕にありったけの水の魔力を込めて、影の頭部を神の瞳で見切り、竜の手と化した右手で鷲掴みして床に叩きつけた!
「お前はフィリアの気持ちに負けたんだ‼︎‼︎」
エレナがそう叫び、渾身の力で頭部を押しつぶした!
闇の街道の特殊な石畳が割れ、赤い血が飛び散る、そして黒い影が人の姿を表す、頭部を潰され息絶えている。
だが気は休まらない、ここは闇の街道ディアボルス、無の神ニヒルが作った街道……
いつまた現れるか解らない、そしてフィリアの魂はをつなぎ止めなくてはならない、更にユリナが行ってしまった。
エレナはユリナを守るウィンダム、トールを信じるしかなかった。
そしてフィリアに駆け寄り、精一杯魔力を注いだ……
(出来る事をしなきゃ……)
「ここなら……」
ユリナが立ち止まり矢を構えそして放った。
矢は漆黒の闇の中一瞬で見えなくなり、そして聞こえた。
「グァ!」
手応えがあった……ユリナはエレナの戦いで、神の魔力ならば傷を負わせられる事に気づいていた。
ガーラがアンサラの力を使わずに自らの力だけで戦ったなら、手も足も出なかった事に納得が出来る。
シェラドが勝ちエレナの戦いを見て、ユリナは瞬時に読み解いた。
ガーラの敗因が自らの力を過信した事だと。
ユリナは空気の流れを読み次々と矢を放つ!
そして見えた、漆黒の風と化して凄まじい速さでオプスが駆け抜けて来た。
「ユリナさん、ありがとう走って!」
オプスの声に合わせてユリナも全力で走り出した。
ユリナも風の力を使いオプスの速さについて行く、だがまだ奴らは追って来る。
「トール!漆黒の霧を‼︎」
オプスがそう強く言った。
ウィンダムがトールになり、暗黒を使い漆黒の霧を放つ。
そしてオプスは立ち止まり、なにかを囁いた時、漆黒の霧からメドゥーサが現れひざまづき言う。
「冥界の敵ですか?オプス様……」
「ディアボルスは無の神ニヒルです。
冥界以上の敵とみなします‼︎
その手の者が五人‼︎
闇の力を使い踏み潰しなさい‼︎‼︎」
「魔王ディアボルスが……裏切ったのですか⁈」
「そう言う事です‼︎」
「かしこまりました、魔族の者ども‼︎
裏切り者を踏み潰せ‼︎」
そうメドゥーサが叫び漆黒の霧に入って行った。
そしてオプスとユリナ達は全力で走り、直ぐにエレナ達の元に着いた。
「オプス様……」
エレナが言いオプスが駆け寄る……
そして涙を流し始める。
「オプス様、フィリアは?」
ピリアが聞く。
オプスが首を横に振った……
全員が涙を静かに流し始め……重い空気がその場を支配した。
そしてフィリアの傷口にオプスが手を当てると、エレナの力で抑えるのがやっとだった無に帰って行く現象が収まり、傷口が無かった様に綺麗になって行った。
その時メドゥーサが足音も立てずにやって来て、ひざまづいてオプスに言った。
「ディアボロスの手の者、全て踏み潰しました。
他に居ないか今調べております。
その者は……ドッペルですか?」
オプスは悲しみを抑え、話し出した。
「この者はフィリア、地上の一人の女王を守る為に命を投げ出しました……
私の星から産まれた優しい子でした。」
そしてメドゥーサに命じた。
「直ぐに‼︎闇の街道全てに我らの結界を施しなさい!
そして全ての魔王を集め戦いの支度をなさい‼︎
我ら暗黒世界が守って来た地上世界を無の神ニヒルが滅ぼそうとしています‼︎
それを冥界が守ろうとして居るのです‼︎」
「なっ!冥界が‼︎」
メドゥーサの蛇の髪までもが驚いていた。
「闇の女神オプスとして命じます!
魔族の力をニヒルにぶつけ、我らの力を冥界に見せつけるのです!」
「では、今は冥界が敵では無いと言う事ですか?」
メドゥーサが聞く。
「今は敵ではありません……
残念ながら……」
ピリアが静かに答えた。
「貴様に聞いては居ない!」
メドゥーサが叫ぶ。
ピリアは姿を消しエレナの姿で現れメドゥーサに剣を突きつけた。
「その変化……影の女王……
ドッペル族の魔王……」
「えぇ、オプス様が全ての魔王とおっしゃいました……口に気をつけなさい」
ピリアが言う。
「ピリア……やめなさい貴女に魔王は似合いません。
怒りだけで剣を振ればシャイナにも敵いませんよ」
オプスが諫めると、ピリアは姿を消してフィリアの遺体を抱きしめて現れ泣いていた……
エレナも闇の女神オプスが魔族と共にニヒルと戦ってくれる事になったが、素直に喜べず悲しみがまさっていた。
コツコツ……
コツコツ……
静かに足音がして近づいて来た。
「嬉しいのぉ、オプスよやっと会えたのぉ」
「ムエルテ!」
ムエルテが小さいタナトスを連れてやって来た……そして嘲笑うかの様に言った。
「我らの宿敵魔族が我らと共に戦ってくれるのならば……
多少は楽になるかも知れぬのぉタナトスよ」
「なっ!私は共に戦うなど」
オプスが言う。
「話は同じ事であろう……
妾は本気で戦う……
でなければ勝てぬ、いやそれでも勝てないだろうな?
まぁ良い……此奴に褒美をやらねばの」
死の女神ムエルテはそう言いフィリアに歩み寄った。
「ピリアよ泣くで無い、そちの妹はその死をもって地上に大きな希望をもたらした……
死を司る妾から褒美をくれてやる」
そうムエルテが言いフィリアの額に手を当てた、ピリアがその手を跳ね除けようとすると、ユリナがピリアの手を押さえて囁いた。
「きっと大丈夫だよ」
ムエルテはそれを聞いて僅かに微笑んで囁く……
「汝が魂……
我が冥界へ落ちる事を禁ずる」
そう囁くと白い物が一瞬だけ見えて、フィリアの中に戻って行った。
フィリアの魂だ……闇の街道は地上では無い為に、ここで命を落とせば冥界に行くしか無くなってしまう。
冥界に落ちれば魂が犯されただの亡者になってしまう。
だが冥界に落ちる事を禁じられ死した肉体に戻って来たのだ。
「生き返る事は出来ぬが、あとはオプスが導いてくれるであろう」
そう言ってムエルテは歩いて去ろうとした。
「少し待ちなさいムエルテ」
オプスが呼び止めた。
「ほぅ……珍しいのぉ……」
オプスはフィリアの額に手を当て、フィリアの魂に問いかけている。
そしてフィリアの口から小さい星の様に光る魂が静かに浮き上がり、オプスの髪に入って行った。
そしてオプスの髪に輝く星々に一際輝く星が現れた。
フィリアは生まれる前の姿、オプスの髪に瞬く星に戻れたのだ。
「ピリア、これでいつか貴女達が産まれた時の様に、フィリアも生まれ変われます。
ですからもう大丈夫です。
エレナさんフィリアの埋葬お願い出来ますか?
フィリアはエレナさんを本当に母だと思ってました。
側に置いてあげて下さい」
エレナは元の姿に戻り涙を流しながら礼を取り。
「はい……」
悲しい声で返事をした。
いつか生まれ変われる、それは死は死で変わらないことである……
ただ救いなのは冥界に落ちずに済んだ事しか無い、とても大切なことだが。
数年以内に全てが滅びるかも知れない今、何の救いにもならない事をエレナは解っていた。
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