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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜
114話✡︎✡︎軍の傲り✡︎✡︎
しおりを挟むユリナ達は後二日でセレスの首都エルドにつくあたりで一日休息を取る。
カルデアからエルドまでは、通常は馬で二十日かかる所を、十日足らずでここまで来た……相当なペースで来ている。
フェルトの護衛も流石に疲労を見せている、ユリナは護衛の中からまだ元気な者を選び、その者達だけで翌朝出発する事にした……
天幕でユリナが一人で悩んでいると、カナがそっと入って来て優しく聞く。
「ユリナちょっといい?」
「お姉ちゃん……」
「こんなに急いで、何かあるの?」
「……」
「お母様に私達の結婚を催促してくれた見たいだけど……其れも関係あるの?」
「……」
ユリナは答えない。
「ユリナ変わらないね、隠すの下手すぎるよ」
カナがそう言い、少しの間を置いて言う。
「災いの日が近いの?」
カナはまだ状況を何も知らない……ニヒルとの戦いが近づいている事も、ガーラが命を落とした事も、まだ何も知らないのだ……
「お姉ちゃん……」
「あぁ、いっぱいあるぜ……」
フェルトが話に入って来て、ピリアも天幕の入り口に居るのが解る。
「俺から話そうか?
でもユリナから聞きたいんだと思うぜ……
俺だったら大切な人から聞きたいがな……
こんな話……」
フェルトはそう言って天幕から出て行った……
「優しいんですね、やり方は変ですけど」
天幕から出て少し離れた場所でピリアがフェルトに言った。
「一人で考えてもいい事ないんだよ……
こんな絶望的な話は特にな……」
フェルトが静かに言う。
「解るんですか?そんなことが」
ピリアが聞いた。
「俺がそうだったからさ」
フェルトはそう言って、部下達の元に歩いて行った……ピリアがそっとフェルトの魂に触れようとした時。
「可愛いお嬢ちゃん、やめときな!
見てもろくなことないぜ」
フェルトは振り向きもせずに、そう言ったがピリアは見られている気がして僅かに後退りしていた。
天幕では意を決してユリナが話そうとした時……
「ユリナ様!
エルド方面から軍がこちらに向かって来ます!
我らセレス軍!三万は超えます‼︎」
「なっ!」
「えっ!」
二人は驚いて天幕から飛び出した。
間違いなくセレス軍である、軽歩兵、重歩兵、騎馬隊、弓兵隊など含めて実戦を想定した編成での行軍である。
そして女王直属の証、フロースデア家の旗を掲げていた。
その部隊から使いがユリナ達の元に来た……
「貴軍は何処の所属か!
あの旗が見えぬのか‼︎
我らは女王様の命でベルリスに向かう!
道を開けよ!」
ユリナとカナはそれを聞いて道を開けなかった。
ユリナは怒りを覚えた。
「まず、馬から降りなさい……」
ユリナが静かに言った。
「何を無礼な‼︎我らは女王の……」
そう言った瞬間、使いはユリナの首飾りを見た、神の涙……今は女王の実の娘の証となって知れ渡っている。
「まっまさか!」
使いは慌てる……
「馬から降りなさい!」
ユリナが叫んだのと同時に使いは落馬した、ユリナの護衛達が慌てて前に出るが、ユリナは護衛を下げて前に出てた。
エレナが送った軍が近づき、行軍を止めた……
ユリナは軍全体に向かって叫んだ!
「私はフロースデア・ユリナです!
貴方達は!
女王の命で力を誇示するですか!
その様な気持ちでこの国に何かあった時!
命をかけて戦えるのですか⁈⁈
王立図書館で命を投げ出し、血の王に立ち向かった者達の様に戦えるのですか‼︎⁈
恥を知りなさい‼︎‼︎
その様に今後も驕り高ぶるなら!
全ての軍の規律を正し!
貴方達の様な者達を全て!
最前線に送ります‼︎
死して名誉を守りなさい‼︎‼︎」
ユリナは許せなかった、同じ軍にすらあの様な態度を取ると言う事は、民や力の無いものにはもっと酷いはずだと感じた、そしてそれをフロースデア家の旗を掲げてその態度を取った事が更に怒りを膨らませた。
その声はユリナの怒りを乗せ気迫に満ちていた……
二年前のユリナでは無い、カナはユリナの成長を目の当たりした。
王立図書館の一件、ユリナの最大の汚点である……だがそれは全て母エレナの器量で、必要最低限の犠牲と言う形になっている。
だが事実を知っているユリナとカナはその話題は口にする事が無かった……
ユリナは彼らの犠牲を受け止め、そしてそれを無駄にしない、してはならないと……
そう言える心の強さを身につけていた。
ユリナの怒りをその場の軍全体が把握した……
セレスは各国の中でも中心的な存在になっている、その為に一部の部隊では傲っていると言う報告を聞く様になっていた。
それを目の当たりにしユリナは一括する様に怒りをぶつけた。
直ぐに全軍がユリナとカナにひざまづいた、その隊にはユリナが指揮する弓兵師団が居ない事に、カナは僅かにホッとしていた。
ユリナは直ぐにユリナが指揮する弓兵師団の二個中隊にベルリス駐留軍に合流する様に指示を出した。
彼らの見張り役として送り込んだのだ。
「お母様に似てきましたね。」
カナが微笑みながら言う。
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