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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
104話✡︎✡︎無の神ニヒル✡︎✡︎
しおりを挟む「妾が来たのは
そち達には良い話なのか
悪い話なのかは解らぬが……
きっかけは此奴じゃ」
そうムエルテが言うと、幼竜のウィンダムと同じ大きさの骨の竜が現れた。
タナトスが蘇り、まだ死が集まらないのか幼竜の姿をしていた。
ウィンダムが唸り、威嚇するがタナトスは動じずに相手にしない……タナトスがあくびをかいた時、ウィンダムは怒りタナトスに襲い掛かった。
だが幼竜同士でいつもリヴァイアサンとしている子供の喧嘩である。
「其方の竜は気が荒いのぉ……
訳はわからんでも無いがのぉ……」
ムエルテはくだらないものを見るような視線を送り言った。
「ほっといて下さい
何時もの事なんで……」
ユリナも呆れている……。
「まぁ良い
妾も地上の事は認めておる。
まさかそなた達がタナトスを退けるとはの、妾ですら思ってもいなかったのだ。
それでそなた達の力を
妾も認めてやったのじゃ……
さて、本題に入るかの……
我ら冥界は暫くの間
地上世界には関与せぬ事を話に来たのだ……」
「えっ……
どう言うこと?」
ユリナ達は驚いた……今まで争い続けた冥界が地上に関与しないと言うのだ。
「じゃあクリアスを守っていたのは?」
ユリナが質問した。
「あれは妾が命じたのじゃ
あんな物が世界に出れば地上が滅び兼ねない、そうしたらどうじゃ?
死ぬ者が居なくなってしまうではないか?
妾は地上の繁栄を望む……
それは地上が栄えれば栄える程に
命溢れいづれは皆、順に死んでくれる。
考えても見よ
その方が永遠に死を味わえるでは無いか」
ムエルテの考えは奥が深く、理に叶っていた。
確かに地上が滅べば一瞬で全てが死ぬ。
だがそれはムエルテからすれば一瞬の快楽でその後がない事を見通していた。
逆に地上が栄えれば栄える程、多くのの命が生まれ、より多くの死をムエルテは味わえるのである……。
その話にユリナは冷たさを感じていたが、納得する、ピリアも納得せざる負えなかった。
そしてムエルテが神としての役割を果たしている事をユリナは気づいた。
それと同時に、何故この様な神が冥界に居るのかに深く疑問に思えた、話を聞く限りある意味天界に居てもおかしくないと思えたのだ……
「妾を不思議に思ったようだの
だがそれは置いといてくれぬかの?
地上に関与しないと言う事には
もう一つ目的があるのだ……」
ムエルテがそう言うと。
「その目的は何ですか、話してくれますか?」
「余計な者が来たのぉ……」
ムエルテは微笑みながら、そう言った直後に一陣の爽やかな風が吹いた。
その風が小さい渦を巻き始める、人一人程の竜巻になり、ウィンディアがしなやかに現れた……
「ムエルテ様」
シャイナがムエルテを呼ぶが、気にするなと言わんばかりに手で合図する。
「ウィンディア様、なぜ……」
ユリナが聞いた天界の神々は基本的に地上には降りてこない。
だがウィンディアが降りて来たのだ。
「あなたが道を踏み外さないように
お話をともに聞きましょう。」
ウィンディアがユリナにそう優しく言った。
確かにウィンダムを授かってるユリナからすれば、ユリナはウィンディアが主神となるが、そんな事より姪にあたるユリナを心配して降りて来たのだ。
「良いのか?
ウィンディア天界からのこのこやって来て……
クロノスとアインに罰せられるかも知れぬぞ」
ムエルテがニヤニヤしながら言った。
「父上も地上に降りて何日も戻りません
私が叱られる覚えはありません。」
ウィンディアは言い返しながら、ユリナの隣に座る。
「全くだのぉ」
ムエルテは笑った、そして話し出した。
「まぁ、良かろう天界が知ってどう動くかも見ものだ、話そう……」
ユリナ達は真剣にムエルテの話を聞き始める……
「暗黒大陸を知っているとは思うがの、実はひと月程前に、そこで死が生まれた……」
「なっ!」
ウィンディアが驚いた、暗黒大陸にはディアボルスしか居ない。
そしてディアボルスは不死……その大陸から死が生まれたと言う事は他の命が存在する事を意味する。
「無論その魂は、冥界に送られ我が元に来たのだが、そやつなかなか口がかたくての、妾が散々拷問をしてやっと口を割ってな。
ディアボルスがこの大陸を滅ぼす為に
数年以内に来るらしい……
これが何を意味するか解るか?」
「そっそんな!
地上を救った魔王が何故‼︎」
ユリナが強く聞いた。
「奴は魔王でも魔族でも無い……
そして、無に返せぬ存在なのだ……
いや……
元から無そのものなのだ……」
ムエルテが悩みながら話した。
「なんせ、妾が死を与えても死そのものを無に返しおった……」
「そんな!
無に返す力は、オプス様の力……
それを持っているのですか‼」
ピリアは焦りながら聞いた。
「ピリアとやら
お主も無知よのぉ……
無に返す力はクロノスも持っておる。
そもそも何故オプスが暗黒大陸を産み出しディアボルスを幽閉したかと言えば、オプスがディアボルスの本質に気付いたからだ……
妾はオプスなりに最善の策を講じたと思うが……
その事を知って居たのか解らぬが
今クロノスが記憶の棚で必死になって
救う術を考えておる……
この世界を救う為にな……」
「じゃ、クロノスはディアボルスの事を知っていたと言う事なの?
ディアボルスは一体何者なの?」
ユリナは積極的に聞く。
「恐らくクロノスは気付いておったのだ。
あの時ディアボルスは憎悪の神オディウムを食らった、その時にこの世界から永遠に残る憎しみが消えた、憎しみが産まれても向き合えれば、消えていく程度の憎しみしか生まれなくなった……
それがあった為に、神々の影響を受けやすいエルフ族は、長年の敵アグドと手を取り合うことが出来たのだ……」
ムエルテは淡々と話す。
「そしてディアボルスは、無の神ニヒルじゃ、この世界が生まれる前の過ちを罰する為に……
全てを滅ぼし
全ての神々に苦しみを与え
天界も地上も冥界も
全てを無に返すつもりなのだ……
これを許せるか?そなた達は……」
「そんな暴挙!
許せるはずがありません‼︎
神々は産み出した命に責任を持ち
見守る事が役目!
それを投げ捨てると言うのですか⁉」
ウィンディアが感情をあらわにしてムエルテに言った!
「ニヒルが生み出したのが
アインとクロノスだとしたらどうじゃ?」
ムエルテが言った。
「それじゃ……」
ウィンディアが言葉を出せなくなってしまった。
この世界の秩序は基本、アインとクロノスが作り出した。その二人を産み出した存在となればそれが絶対となる……
「つまり
この世界にはニヒルを超える
もしくは対等する神が居ないと言うことだ……
無論妾も超えられぬ……
奴は強すぎる……
だが戦わねばならぬ!
でなければ四界全てが滅び
無に返されてしまう」
死の女神ムエルテは感情を見せ始める。
だが世界を守る事が、死の存続、自らの存在意義を守ることだと知り動いているのだった、ムエルテはまだ、自分の為に動いているがそれを正当化させ、味方を増やそうとしていたのだ。
「四界?」
ユリナが疑問に思った。
「四界とは、天界、地上世界、暗黒世界、冥界の四つの世界のことです。」
ウィンディアが説明してくれた。
「なぜ天界ではなく
ムエルテは地上に話に来たのですか?」
ユリナが質問した。
「話は簡単じゃ……
ディアボルス、ニヒルの考えを妾達冥界が気付いたが、地上が滅びることすなわち、世界が終わる事を意味する、地上の次は天界であろうからな。
とは言え、我らの事を天界は迎えてくれぬだろう?暗黒世界はもちろん我らと戦うための世界だ……
となれば、地上世界に話すしかなかろう。
我ら冥界はディアボルスの無の軍団と戦う事を決めた、その時に地上世界も手を貸して欲しいのだ」
「ちょっと待って!
もしかしてオプス様を冥界がとらえた訳は?」
ユリナがふと不思議に思い質問を投げかけた。
「妾がオプスから聞きたかったのだ
ディアボルスの事を……
だが他の冥界の神々が勝手に振る舞っての、オプスには悪い事をしたの……」
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