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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
100話✡︎✡︎生まれた確執✡︎✡︎
しおりを挟む「王子!ペンタリア国は既に崩壊し敵の手に落ち、これ以上の抗戦は無意味‼︎
ここは引いて下さい‼︎
我らの手には負えません!兵を思いセレスへ撤退を‼︎」
「ペンタリア?」
ユリナが何処か解らず疑問に思う。
「ペンタリア、今は地名も残らないな……
エルフは元々辺境地域の手前、ペンタリア地域の種族だったんだ……
それを巨人族がセレスの土地も与えたんだ、俺の時代までエルフ族は二カ国持つ強力な種族だったんだ……」
トールが説明してくれた。
「じゃ!国が崩壊したって……
何人殺されたの⁈」
「わからん……
だが今のセレスの半分くらいは命を落としただろうな……」
「そ、そんな……」
その被害の大きさにユリナは愕然とする、それだけの人々が死に、国が守れなかった……
悲劇どころでは無い絶望的である。
シェルドはそれを聞き振り向く……
民達の姿を見て叫ぶ!
「まだだ!我らが引けば……
あの民はどうなる?
国は民が居ればこそ再興出来る‼︎
踏み止まれ!
死力を尽くし剣を振れ‼︎」
シェルドは兵を鼓舞し防衛戦を繰り広げる……
「王子!無茶な‼︎
退いて下さい‼︎」
「戦わぬなら民と共に逃げよ‼︎
我は生き残った民を見捨てる事は出来ない‼︎‼︎
全部隊に次ぐ!全ての民を救え‼︎
国王軍の意地を見せよ‼︎」
シェルドは自らの剣が折れても、命を落とした兵の剣を拾い、死力を尽くして戦い乱戦に持ち込んだ。
その甲斐あってか、民達はミノタウロスの軍から十分距離を取ることが出来た……
だが、シェルドの部隊は僅か五個中隊、五千程まで兵を失ってしまう、甚大な被害を出していた。
そして敵の増援が度々来ていたのが、更に戦況を悪化させていた。
ついにその後方にミノタウロスの本体の旗が翻った。
それは先程、救えなかった者達が誰一人として生き残って無い証……残酷な旗にシェルドは見えていた。
「全軍撤退せよ!
生き残りたくば全力で走り切れ‼」
シェルドはついに撤退を指示した。
苦すぎる敗北……国を守れず民も半数は見捨てるしか出来なかった。
シェルドの心に初めて父ラステア国王への怒りが芽生えていた。
(なぜ民より先に逃げられたのか)
シェルドは心からそう思っていた……
「父上!フロースデア家‼︎
神の血を引く一族の誇りを!
忘れられたか‼」
シェルドはそう叫び涙を流し馬を走らせていた……
それでもシェルドの戦いによって、十数万の民を無事にセレスまで避難させる事が出来たのだが、シェルドの胸は悲しみと怒りが溢れそうな程に苦しんでいた。
ユリナはシェルドの言葉を聞き耳を疑った。
神の一族……フロースデア家が?じゃあ……彼は私のご先祖様なの?そう思っていた。
シェルドはすぐに王宮に向かい、ラステア国王の所に向かった。
ミノタウロス達は闇の街道を通ることは出来ない為に、守りを固める必要は無かった。
闇の街道を守るドッペルがエルフを守ってくれたのだ。
シェルドは王宮に向かう間、凄まじい程の歓声で迎えられる、彼はこの戦いで英雄と呼ばれる様になった……
だがそんな言葉は彼はどうでも良かった。
王宮につき玉座に座るラステアに駆け寄り直ぐに叫ぶ様に強く言った。
「父上‼
なぜ本軍を率いて先に撤退されたのですか⁉多くの民が残されているのを知っていたはず!それをなぜ‼」
「今の時代はな、他国にいつ攻め込まれるか解らん……
兵を無駄に死なせる訳にはいかんのだ……
よりによって攻めて来たのが辺境のミノタウロス、我らが兵を残せなければこのセレスも危うくなる、それが解らん訳では無かろう?」
ラステアは強くもなく弱くもなくそう言うと。
「ですが父上!」
「くどい!これ以上この話をするは無用!下がるが良い‼︎」
ラステアはシェルドにそう強く言い放ち、シェルドは下がるしか無かった。
シェルドが玉座の間から去ってすぐにラステアに話しかける者がいた。
「若君はまだお若いですな……
王が生き残ってこそ国は守れるもの、王が居なくては国はまとまりません。」
そう言いながらダークエルフの魔導師が話しかけて来た。
「最ッ低……」
ユリナがラステアに対して声を漏らした……
ピリアも思ってた事をユリナが言っていた。
「ラステア様、力を借りてペンタリアを取り戻してはいかがかな?」
「シュバルツ、何処に借りると言うのだ……」
ダークエルフはシュバルツと言うらしい、彼は不敵な笑みを浮かべて言う。
「不の闇の力です。
闇の女神が不在である今、闇の力の三分の一程が迷走しております。
その力を利用すればペンタリアを取り戻すのは可能かと存じます……」
シュバルツは自信に満ちた表情で言う。
「……」
ピリアがそれを聞いて怒りを覚えていた……
「この人が闇の力を悪用しようとしたんですね……なんて人なの……」
ピリアも解っていた、闇の女神オプスが囚われてから数万年は、一部の暴走し始めた闇の力を、闇の眷属がある程度は抑えていたが、地上世界の干渉により次第に効かなくなっていったのだ……
ユリナもそれを聞いて更に怒りを覚える、同じエルフ族の記憶であるから尚のことであった。
まだ記憶は続く……
「それは褐色を束ねる、そなたが言う意味を解っているのか?」
ラステアは聞く。
「無論、言う必要はありませんな……
今回の戦いで、命を落とした者達を考えればペンタリアを取り戻すこと、その意味の大きさは解って頂けるかと……」
しばらくの間、沈黙がその場を支配する……
「解った考えてみよう……」
その日を境にラステアとシェルドはあまり合わなくなってしまう。
シェルドも自らの屋敷を建て、そこに住む様になった、その屋敷は今のユリナの住む屋敷の場所に建てられた事がわかる。
それから五年の歳月が過ぎ、エルフ族はセレスの地で立ち直りつつあったある日、シェルドの部下が信じられない情報を持って来た……
ラステアはシュバルツと共に闇の不の力を、使う魔法を生み出そうとしているらしい、あろうことか、それは亡者を操る魔法であった。
ペンタリアでは多くのエルフが命を落としたそれを利用しようと言うのだ。
闇の力、そんなものをエルフが使いこなせるとはシェルドは考えられなかった、仮に使いこなせたとしても、死者を冒涜する様な行いは許される物では無い……
「父上、血迷われたか……」
シェルドは瞳に悲しみを宿しそう呟いた……
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