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〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜

96話✡︎✡︎冥界に落ちた魔族✡︎✡︎

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 翌日エレナにクリアスの石板を見に行く事を知らせた。
 エレナは見に行った報告をしっかりする様にユリナに伝え、トールにユリナを頼みユリナ達を見送った。

 クリタスの棚からクリアスの石版がある、破壊と科学の棚まで片道半日かかる……

 ピリアとトールとユリナは念の為に二日分の食料を用意し魔法輪にしまい。
 ミレスから記憶の棚に入り、クリタスの記憶の棚に行き、クリタス王国には寄らずそのまま、記憶の間に行きその扉の前で不思議な物をみる。


 それはクリタスの棚から記憶の間に入る扉の前にあった……

 石像だ……

 ダークエルフの騎士の石像だった……その表情は驚きの顔をしている……

 だがピリアには見覚えがあったようで、距離を変えたり角度を変えたりとまじまじとよく見て思い出した。


 ミレスが王立図書館だった時、知識の間に血の王を召喚した者だった。
 何をどうやってここまで来たのかは解らないが石像にされた様だ……


「メドゥーサだな……」
トールが言う。
「えぇ……メドゥーサしか居ませんね。
ですが魔族がここにいる事は不思議ではありません……
問題はなぜメドゥーサが彼を石にしたかです。

ここはクリアスの石板から一番近い入り口……そもそも記憶の棚はドッペルが管理しているので、この辺りにもドッペルが居てもおかしくないのですが、気配がありませんね……」
 ピリアがそう言い、その石像の背後の扉を見る、何も変わらない記憶の間の扉がある。


 ピリアが扉に手をかけた時、知識の間の方から強烈な闇の気配が発せられた……
 トールが振り向いた時、トールの瞳から強烈な魔力を叩き込まれた!

トールは即座に暗黒を掴み叫ぶ!


「振り向くな!」


 ユリナは驚いたがその言葉に従う……メドゥーサが現れたのだ。

「へぇ~~私の魔力を受けて叫べるの……なら殺さないとね……

記憶の間には誰も通すなって影の女王様からの命令だからね」
メドゥーサが言う。
「影の女王……シャイナか?
あいつがどおして?」
トールが聞き返す。


「シャイナ様を知っているのかい?」
メドゥーサが歩みよって来たがその瞳は真紅の瞳であった。
「シャイナは冥界にいるのか?」
トールが聞く。
 トールはメドゥーサの魔力全てを暗黒に吸わせ何とか石像になるのを防いでいるが、気を抜けない……


「えぇ……今は暗黒世界を見捨て冥界の姫の一人になっていますよ……
それは暗黒!お前はトールか‼︎」
メドゥーサが驚きながら魔力を強めた。

「あぁ、だからなんだ?」
「シャイナ様が愛されたお方、今お連れします」


 その瞬間トールは理解した、なぜ十万年前にシャイナがオプスの命を取ろうとしたのか……なぜオプスを救う術を教えなかったのか話が繋がった。


「そこまでにしなさい……」
その声と共に漆黒の風がダークエルフの石像の背後から吹いてきた。
ピリアがオプスに変身したのだ。


オプスの姿を見たメドゥーサは驚き戸惑う。
「馬鹿なオプスの気配は感じられ無かった……貴様ドッペルか?」
「えぇ……」
そう言いピリアは一歩歩む度に姿を変えた……それは影の女王にしか出来ない変身だった。


「まさか、影の女王が⁉
地上に‼︎何故⁉︎⁉︎」


 ピリアは一歩一歩姿を変えながら歩き、メドゥーサの前でオプスの姿になる。

「一つ教えて下さい……あなたは何故この扉を守っていたのですか?」

 そう静かに聞いた、ピリアは一つ疑問に思っていた。
 記憶の間を守る、それはドッペルの役目だが役目なんてどうでもよかった……
 問題は冥界に屈した者が守る理由が見当たらないと言うことだった。

 メドゥーサは答えようとしない、一歩一歩後退りし少しずつ距離を取ろうとしている……ピリアは一歩一歩距離を離さない。


「教えて下されば、オプス様の元に送り魂からやり直す機会を差し上げます……
冥界の瞳……
魔族として恥に思いませんか?」
 ピリアがそう聞くがメドゥーサは抵抗できない、何故ならば最大の武器がオプスは瞳を瞑り続けている為に使えないのだ。

「仕方ないですね……トールさんウィンダムの力で聞いて下さい……」

 トールはそれを聞き、瞳を瞑り少しして見開くと片目がエメラルドの色になっていた。トールは守護竜の力でメドゥーサの心と記憶を読む……

「なるほどな……
冥界の神もクリアスを地上世界が再び使うのを恐れているのか……無駄な事を……」
 トールがそう言うとユリナがとてつも無い疑問を覚えた。
 冥界の神がクリアスを使いなぜ地上を滅ぼさない!

「ちょっと待って!」
 ユリナはそれを聞こうとして振り向き、メドゥーサはすかさずユリナに魔力を叩き込もうとしたが、ピリアが瞳を見開き暗黒の瞳でメドゥーサの瞳から強烈な魔力を叩き込み、無に返した……


「ユリナ、振り向くなっていったろ?」
「ごめん……でも不思議じゃない?
なんで冥界の神がクリアスを使おうとしないの?
クリアスを使えば一瞬で地上を滅ぼせる……なんで?」
「確かにそう言われればそうですね……」


 おかしい、冥界は地上を滅ぼそうとしているはず、なぜ冥界がクリアスを守る理由が本当に見当たらなかった。
 ユリナは死の女神ムエルテが地上を滅ぼす事を望んでいないと聞いていたが、信じて居なかった。


「とにかく記憶の間に入って見ないか?
破壊神クロノスが封印した物……何か解るかも知れない……」
トールがそう言い二人もそう思った。


 記憶の間の扉を開き、クリアスの石板がある破壊と科学の棚に向かった……
 やはり歩き続けて、その日のうちにはつかなかった。

 だが巨人族時代よりも前の時代に魔族が作った施設なのがよく解った。
 地上世界とは違う空間であり、暗黒世界と地上の狭間の様な空間で、所々に水飲み場があり、地上から水を引いてる様だ、エルフのユリナも飲める水と言う事が一瞬で解る、用を足す場所もある。
 まるで巨大な図書館とも街とも言えそうな空間である……


 用を足せれる場所の少し離れた所で食事を取り、そこで休む事にした。
 わざわざ離れている所に行く方が危険かも知れないと考えたからだ……

 嫌な臭いなどは一切しない……ピリアが言うには、この場所の石材は全て暗黒世界で作られているらしく、居心地を汚す物は全て無に返されるらしい……
 何故そこまで気を使った様な作りなのかと言えば、全ては記憶の管理の為らしく衛生管理まで気を使われていた。

 
 調理は出来ないと考えて居たのは正解だった。
 干し肉とパンで空腹を満たし、念の為に暗黒を使い魔力も通さない結界を張り三人は眠りに着いた……
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