99 / 234
〜第四章 変わりゆく時代〜
88話✡︎セレスの王とパルセスの姫✡︎
しおりを挟む翌日、エレナとユリナはフェルミンも連れて馬車で王宮に向かい、その途中でフェルミンは王立図書館に立ち寄りたがる。
エレナは疑いもせずに王立図書館に寄る……。
フェルミンはその周辺のお店も周り色々と聞き回っている。
何か良い事を聞けたのだろうか、よく話してくれたお店では、必要のない物でも買って馬車に積み込んでいる。
そして王宮に向かいエレナはシンシルと話をする。
王立図書館の閉鎖にシンシルは珍しく、エレナの要求を拒んだ。
「エレナよ気持ちは解るが
あの場所は謎で良いのだ
記憶の棚は邪な者を寄せ付けない
だが知られ過ぎては困る
そう思わないか?」
そうシンシルは穏やかに言う。
確かにシンシルの言う通りだ閉鎖して、たかが図書館を王宮管理となれば、余程重要な何かがある事をこちらから言ってる様なものだ。
シンシルは王に即位した時に、あからさまにエルド図書館を王立図書館と名を改め一般解放した。
それは記憶の棚を、たいした物ではないと思わせる為であり、王立図書館と言うだけで王宮の兵を簡単に配備出来る様にした。
シンプル且つ効果的な策であった。
「シンシル様
確かにそうかも知れませんけど
今なら閉鎖しても
国民は不思議に思いませんよ」
フェルミンが話し始める。
「なぜじゃ?」
シンシルが不思議そうに聞き返す。
「これを見て下さい」
そう言いながら、フェルミンは巻物を出してシンシルに直接渡す。
衛兵もフェルミンがパルセスの姫君である為に直接渡すのを止めはしない、それだけでセレスとパルセスがどれだけ友好的なのかが良く解る……。
それは王立図書館の入館者の人数を記した巻物だ、フェルミンが王立図書館に寄った時にエレナに頼んで写しを貰って来たのだ。
その記録によると、確かに血の王の一件以来利用者はかなり減っている。
「王立図書館はあの一件から利用者は三分の一まで減っています。
理由としては、あの一件で二百名も亡くなりそういった場所が憩いの場に不向きなのです。」
フェルミンが説明し出した。
「それだけでは無く
周辺のお店も売り上げが落ちています。
それは血の王が現れた王立図書館に人が立ち寄りにくくなった為です。
周辺の住民も不安に感じています」
「なる程……
それで閉鎖してどうする?
何か良いことでもあるのかの?」
シンシルは穏やかに聞き返す。
(かかった……)
フェルミンは心の中で呟き、フェルミンは提案する。
「閉鎖で無く、移設を提案します。
都市中心から離れたエルド湖の脇に移設します。
そして今ある王立図書館の建物を、王宮管理の都市警備の拠点として活用してはどうでしょう?
その場合、王宮の兵が駐留します。
あの地で命を落とした者達は国を守りし勇者達と石碑刻まれ、王立図書館にその石碑があります。
国を守る兵達からすれば誇れる存在、兵達があの地を恐るでしょうか?
そしてその兵達は周辺のお店も利用するでしょう、そうなれば活気は少しずつ戻って来ると思われ、周辺のお店も豊かになります。
そして兵が駐留してる分、血の王の一件を気にしてる周辺住民も、多少なりとも安心して頂けると思います。」
フェルミンは適切に利点を説明する。
シンシルは少し考えてから話す。
「フェルミンよそなたの考えをなぜ、我らセレスにもたらす。
そなたの知恵は確かに理にかなっている、エレナに頼まれたのか?」
無論そんな事をエレナが頼む筈はないそれを知っていて、あえてシンシルは聞いた。
何故かと言えば、フェルミンはパルセスの姫君、セレスに知恵を貸す利点が見当たらないのだ。
意外な事を聞かれたフェルミンは、明るい笑顔でシンシルに姫として答える。
「何をおっしゃいます
セレス様は私達パルセスの大切なお客様。
お客様が栄えれば私達も栄えます。
お客様が損をされれば私達も商売がしにくくなります。
共に栄え共に歩まねば
長い商売は成り立ちません。
解って頂けませんか?」
そうフェルミンは丁寧に話した。
そこには、名君であり鉄の魔術師と謳われた偉大な王、今は亡きパルセス国王フェルトンの教えを受け継いだ、フェルトンの孫娘の姿があった。
シンシルもその言葉には頷くしか無かった……
シンシルは穏やかな穏やかな笑顔で言う。
「エレナよ
フェルミン姫の知恵のままにことを進めるが良い、管理はそなたに任せる。
好きにするが良い」
「国王陛下、有り難くお受け致します。」
エレナは礼儀を正して礼を伝え、その場を立ち去る、フェルミンも優雅な礼を取りエレナと共にその場を去った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~
明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ!フルボッコにしてやる!~
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ハルドン伯爵家の三男として生まれた俺、カインは千万人に一人と言われている二つのスキルを持って生まれてきた。だが、その二つのスキルは〈創造〉と〈操作〉というハズレスキルだった。
そんな俺は、ある日、俺を蔑み、いじめていたやつらの策略によって洞窟の奥底に落とされてしまう。
「何で俺がこんな目に……」
毎日努力し続けてきたのに、俺は殺されそうになった。そんな俺は、復讐を決意した。
だが、その矢先……
「ど、ドラゴン……」
俺の命は早々に消えそうなのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる