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〜第四章 変わりゆく時代〜

88話✡︎セレスの王とパルセスの姫✡︎

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 翌日、エレナとユリナはフェルミンも連れて馬車で王宮に向かい、その途中でフェルミンは王立図書館に立ち寄りたがる。
 エレナは疑いもせずに王立図書館に寄る……。
 フェルミンはその周辺のお店も周り色々と聞き回っている。
 何か良い事を聞けたのだろうか、よく話してくれたお店では、必要のない物でも買って馬車に積み込んでいる。


 そして王宮に向かいエレナはシンシルと話をする。

 王立図書館の閉鎖にシンシルは珍しく、エレナの要求を拒んだ。

「エレナよ気持ちは解るが
あの場所は謎で良いのだ
記憶の棚は邪な者を寄せ付けない

だが知られ過ぎては困る
そう思わないか?」
そうシンシルは穏やかに言う。

 確かにシンシルの言う通りだ閉鎖して、たかが図書館を王宮管理となれば、余程重要な何かがある事をこちらから言ってる様なものだ。

 シンシルは王に即位した時に、あからさまにエルド図書館を王立図書館と名を改め一般解放した。
 それは記憶の棚を、たいした物ではないと思わせる為であり、王立図書館と言うだけで王宮の兵を簡単に配備出来る様にした。

 シンプル且つ効果的な策であった。

「シンシル様
確かにそうかも知れませんけど
今なら閉鎖しても
国民は不思議に思いませんよ」
フェルミンが話し始める。


「なぜじゃ?」
シンシルが不思議そうに聞き返す。

「これを見て下さい」
そう言いながら、フェルミンは巻物を出してシンシルに直接渡す。

 衛兵もフェルミンがパルセスの姫君である為に直接渡すのを止めはしない、それだけでセレスとパルセスがどれだけ友好的なのかが良く解る……。

 それは王立図書館の入館者の人数を記した巻物だ、フェルミンが王立図書館に寄った時にエレナに頼んで写しを貰って来たのだ。

 その記録によると、確かに血の王の一件以来利用者はかなり減っている。

「王立図書館はあの一件から利用者は三分の一まで減っています。

理由としては、あの一件で二百名も亡くなりそういった場所が憩いの場に不向きなのです。」
フェルミンが説明し出した。

「それだけでは無く
周辺のお店も売り上げが落ちています。
それは血の王が現れた王立図書館に人が立ち寄りにくくなった為です。
周辺の住民も不安に感じています」

「なる程……
それで閉鎖してどうする?
何か良いことでもあるのかの?」
シンシルは穏やかに聞き返す。


(かかった……)


 フェルミンは心の中で呟き、フェルミンは提案する。

「閉鎖で無く、移設を提案します。

都市中心から離れたエルド湖の脇に移設します。
そして今ある王立図書館の建物を、王宮管理の都市警備の拠点として活用してはどうでしょう?

その場合、王宮の兵が駐留します。

あの地で命を落とした者達は国を守りし勇者達と石碑刻まれ、王立図書館にその石碑があります。

国を守る兵達からすれば誇れる存在、兵達があの地を恐るでしょうか?

そしてその兵達は周辺のお店も利用するでしょう、そうなれば活気は少しずつ戻って来ると思われ、周辺のお店も豊かになります。

そして兵が駐留してる分、血の王の一件を気にしてる周辺住民も、多少なりとも安心して頂けると思います。」
フェルミンは適切に利点を説明する。

シンシルは少し考えてから話す。
「フェルミンよそなたの考えをなぜ、我らセレスにもたらす。
そなたの知恵は確かに理にかなっている、エレナに頼まれたのか?」

 無論そんな事をエレナが頼む筈はないそれを知っていて、あえてシンシルは聞いた。
 何故かと言えば、フェルミンはパルセスの姫君、セレスに知恵を貸す利点が見当たらないのだ。

 意外な事を聞かれたフェルミンは、明るい笑顔でシンシルに姫として答える。

「何をおっしゃいます
セレス様は私達パルセスの大切なお客様。

お客様が栄えれば私達も栄えます。
お客様が損をされれば私達も商売がしにくくなります。

共に栄え共に歩まねば
長い商売は成り立ちません。
解って頂けませんか?」
そうフェルミンは丁寧に話した。

 そこには、名君であり鉄の魔術師と謳われた偉大な王、今は亡きパルセス国王フェルトンの教えを受け継いだ、フェルトンの孫娘の姿があった。

 シンシルもその言葉には頷くしか無かった……

シンシルは穏やかな穏やかな笑顔で言う。
「エレナよ
フェルミン姫の知恵のままにことを進めるが良い、管理はそなたに任せる。
好きにするが良い」

「国王陛下、有り難くお受け致します。」

 エレナは礼儀を正して礼を伝え、その場を立ち去る、フェルミンも優雅な礼を取りエレナと共にその場を去った。



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