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〜第四章 変わりゆく時代〜

89話✡︎魔族の英雄✡︎

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「さっすがお姫様あったまいい!」
 ユリナなりにフェルミンを褒める、フェルミンもテヘッと笑顔になる。
 ユリナはまた一つ学んだ気がした、交渉には材料を揃える必要がある。
 相手の利点と此方の利点を綺麗に組み立て丁寧に説明し伝える。

 フェルミンが王立図書館に立ち寄ったのは、全てその材料を仕入れに行ったのだ。
 お店に聞くときはタダでは聞かない、ちゃんと物をそこで買い代金を払う。
 自分が得する事ばかり考えないフェルトン流の商売の基本であった。

 ユリナは一連の流れを目の当たりにして、また一つ完璧では無いにしろ学んだ。

 エレナも今のはフェルミンが話に入って正解だと思っていた。
 発言力は強くても内政的な知恵比べをシンシルとしても、三回に一回は負けてしまう。
エレナはシンシルが拒んだ時、どう話すか考えていた。

 何はともあれ、王立図書館をエレナの管理下に置く事が出来た。
 その書類を作る為にエレナは王宮の自分の執務室に行き書類を作成し始める。
 その仕事をこなす姿を見てフェルミンは、エレナが戦いだけで無く、仕事も完璧にこなす事を実感した。

 エレナは王立図書館をミレスと名を改め、フェルミンの言った通りエルド湖の近くに移設する計画を練り始める。
 ミレスの初期の兵はエレナに最も信頼を寄せる、ユリナ配下の弓兵師団から三個中隊をミレス所属とする事にした。

 細かい決め事は沢山あるが、エレナには簡単な事であり最も重要な事を最初に決めその日は早めに帰った。


 翌日から三日間を費やし、シンシルから承諾のサインを受け取り、書類を魔法で印刷して大臣達に決定事項として配布して、各部署が動き出し、王立図書館はミレスとなる。
 ミレスの兵が駐留する様になり、書物が一旦王宮の倉庫に運び込まれ、七日後には完全にエレナの管理下になった。


 その五日後に、信頼厚い兵五十名を連れて闇の街道を通りパルセスに向かう事にした。
 この行動は秘密裏に進められシンシルとエレナ、ユリナ、ピリア、フィリア、フェルミン、ガーラと同行する者と一部の者だけで進められる。

 エレナとユリナ、ピリアとフィリア、フェルミンでパルセスに向かう事になり、留守中のミレスはガーラに任せる事にした。


 そして出発三日前から、少しづつ必要な物質が運び込まれる。
 予め知識の間に物資を運んで置く為だ……
 この時、天地の間周辺は立ち入りを制限されミレス全体も必要最小限の警備にされ、人員も少数しか居ない状態にする。


 そしてウィンダムがかけた封印はユリナにが簡単に解く、あとはリヴァイアサンとルクスが封印を解いた。
 ユリナが封印を解けたのは、ウィンダムを心に宿していた為と思っていたが、神の力が少しだけ開花していた。

 記憶の棚をエレナが開けようとした時、本の題名が道を求める者であった。

「道を求める者?」
エレナがそう言うと。
「その題名でいいのです。
私達が今求めているのは闇の街道、題名はその人が求めている、もしくは必要なことに毎回変わるのです」
フィリアが教えてくれた。

「なる程……なら開けるね。

我!道を求める者なり!」


 再び記憶の棚が開かれる、先にピリアが行き中の様子を確認しに行った。
 久しぶりに入る記憶の棚の中、中の様子は何も変わっていなかった。
 フィリアに合図を送り、兵達が物資をあの暗い階段を松明の明かりを頼りに運び入れる。
 エレナも入って行き知識の間で指示をだし的確に運び入れる。


「ピリア、闇の街道はどこにあるの?出来れば見たいんだけど」
 エレナが聞き、ピリアはそっと壁に手をついたその時、スッと手をついた壁が消えその先に広々としたトンネルが現れる。

 闇の街道だ……

 ピリアが街道に足を踏み入れると、街道の脇にある燭台に蝋燭もなしに青い炎が灯り、何処までも続く様な街道が青い光に照らされていく。

「これが……」
「驚きました?この街道は私達ドッペルが居ないと通れません。
ですから地上世界でもドッペルと繋がりのある方しか通れないのです」
 そう言った時に丁度ユリナが来て闇の街道を目の当たりにし息を飲んだ。

「ピリア?一つ聞いていいかな?」
ユリナが聞く。
「なんですか?」
「この街道は誰が作ったの?」

 ピリアは少し考えたが、太古の神話を話し始めた。



「巨人族が地上に送り出され
まだ間も無い時代

まだエルフもオークも
ヒューマンもドワーフも
栄えてない創世時代

地上には百を超える
種族が溢れていた創世時代


冥界が再び地上を支配しようと
冥界の神々が亡者を引き連れ
巨人族を滅ぼしに現れました


七日と経たずに地上は業火に包まれ
七十を超える種族が滅びた時に
彼は現れました

闇の眷属……
魔族の英雄ディアボルス
彼は自らを魔王と名乗り
冥界の亡者達を喰らい
冥界の王達にも
化け物と呼ばれました


彼は暗黒世界と
冥界の狭間で産まれ
どちらの性質も持ち合わせ
闇の女神オプス様が
暗黒世界に導いた存在……

オプス様は彼の冥界よりも
残忍な性質を知り
天界には知らせませんでした
それはまだ彼が
善悪も知らない無垢な魂だった為

オプス様は大切に見守り
良心を教え命の大切さを教えました
彼は地上が危ういのを知り
地上に飛び出し

冥界の軍に恐怖を与え続け
最後には冥界の神の一人

憎悪の神オディウムを
英雄の身でありながら
倒しその亡骸を
残忍な程切り刻み
喰らい最後には
消滅させてしまいました

冥界の神々は
その光景を目の当たりにし
冥界に引き上げました
彼は地上を守りました

ですが彼は全ての恐怖の存在となり
その恐怖は冥界の神
恐怖の女神メトゥスを凌ぐ程に
恐れられました


彼は暗黒世界に帰り
魔族を引き連れ
魔族の道を作り
地上に張り巡らせました

地上の者達に逃げ道を作る為に……

その道は二度ほど
地上の者達に使われ
十を超える種族を救いました

ですが……
天界はディアボルスを恐れ
暗黒世界から彼を追放し
無に返す様にオプス様に
言われましたが……


オプス様の慈悲で
闇の大地を生み出し
そこに彼を送り
彼を助けました


破壊神クロノスは怒りましたが

光神ルーメンが
破壊神クロノスと
創造神アインに伝えました


彼を無に返せば
恐怖の女神メトゥスが
再び力を取り戻してしまうと

その言葉を神々は聞き入れ
彼は闇の大地に
幽閉される事になったのです



私は記憶の石板でこの事を知りました。
彼の残忍さは思い出したく無い程です……

ですが彼が作った、この闇の街道が無ければエルフはとうの昔に滅びていたのです……」


 ピリアはそう言いながら闇の街道を見つめていた。
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