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〜第四章 変わりゆく時代〜

76話✡︎フェルミンの秘密✡︎

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 その日の午前中にトルミアの一行は到着した……
 流石女王である…二個師団しかないゴブリンの軍勢の四分の一、五個中隊五千を護衛として率いていた。

ベルガルがトルミアを出迎える。

「私がトルミアです、此度の会談のお誘い嬉しく思います。
昨夜使いから同盟のお話をお聞きしました……
今後無益な戦が無いように、お話を聞かせて下さい。」
 そう言いながらトルミアが馬車から降りて来た時……


 ウィンダムが驚きそれを隠せなかった……髪型こそ違うがトータリアに似すぎていた……
それにはピリアも驚いた。

「トータリア様……」

 そう声を漏らしたが、ドッペルではないかと闇の気配を探るが……感じられない。
「大丈夫ですよ、彼女は紛れも無くゴブリンの女王ですよ」
オプスがそうピリアの耳元で囁く……


 トルミアはオプスに歩み寄る。
「闇の女神オプス様、長らく囚われたことさぞ苦しかったでしょう。
ご心中お察し申し上げます……

配下の者よりお聞きしております。
どうか我らを見守り導き下さいますよう、お願い申し上げます」
女王らしく丁寧に礼を取りそう伝える


オプスもそれに対して女神として答える。

「トルミア、長い間ゴブリン達に苦労を掛けさせてしまいましたね……

それはトールに罪がある訳ではありません……
全て私の落ち度です、お詫び致します。

もう二度と繰り返しませんので、闇の眷属として地上を頼みますよ」
 その言葉にトールはウィンダムで居られなくなった、神々相手ならオプスが礼を取るのは理解出来るが、ゴブリンに頭を下げたのだ!

トールは姿を現し前にでる。

「トルミアよ!
ゴブリン達よ聞いてくれ‼︎
クリタスがゴブリンが没落したのは!
全て俺が愚かだった為だ‼︎

このクリタス王国最後の王子トールが!
道を誤り我が王国を犠牲にする道を選んだからだ‼︎

あの時代!各国に使いを走らせ!
全ての種族の英雄に助けを求めれば、あの様な……
あの様な……

我が王国が滅ぶ事は無かったかも知れぬ!
オプス様は何一つ悪く無い‼︎

我が我が道を誤った為だ!
世界を守る事しか考えて居なかった愚かな俺に全ての罪がある‼︎」
トールが深く頭を下げ初めて詫びようとした時……


「トール様!その様なっ‼︎

我々はオプス様も責めて居ません……
詫びなければならないのは私共です。
我らの歴史では、五万年前にクリタス山脈から、各地のゴブリン達に声をかけ……

クリタスを再興しようと動きましたが、既に騒乱の時代になってしまって、声をかけられず声をかけられた者達も誇りを失ってしまっていました。

今でも心あるゴブリン達を探して居ますが……王国の領土全て奪われる前に動くべきでした……

トール様がトータリア様を逃して下さった事は我らの神話として語られて居ます……
どうか頭をお上げ下さい……」

 トルミアの声はトータリアに似ていた、トールはその声を聞き、より罪を重く感じていた……地下都市トールに何かしてやりたいと言う気持ちがより強くなる。


 そしてトルミアは会談の席に案内される。会談は穏やかに始まり。
 トルミアも独立と同盟の件には異論はないようで、相互防衛の事も話し合われその日の会談はそこで終わり。
 翌日ベルリス温泉について話し合われる事になった。


 エレナ達はその夜いつもの様に、焚き火を囲んでいた。
 エレナはふと思いこの会談が終わったらセレスに帰る事を考えた。
 だいぶ長くアグドに滞在している。そしてフェルミンに聞きたいことがあった。

「ちょっと考えたんだけど、カナ……確かクリタス平原ってパルセスの中では軽視されてるよね?」
エレナがふいに聞いた。
「えぇ……確か六百年前くらいまではそうでしたね。
確か警備兵が配備されてる位で都市開発もされてませんね……」
 カナが思い出しながら答えた時、エレナは驚く事を言った。


「今回、地下都市トールがアグドから無事に独立したら……
パルセスにクリタス平原をゴブリン達に返還出来ないかフェルミンに聞いて見ようかな……」

 誰もが驚く、領土返還など普通は聞いてくれない話だ、幾らセレスがパルセスと交流があっても幾ら何でも度が過ぎている……


 だがエレナには出来る様な気がしていた。
(悪いな、クリタス平原にはもっといいクリスタルが有るのだが、あの土地は我らにはどうにもならない。)
 そうフェルトンが言っていたのだ、商売や物作りに全てを注ぐドワーフを諦めさせる何かがそこにはある様だ……

「そう言えば、フェルミンさんって……
とても人がいい気がしますが、どんな方なんですか?」
アヤが聞いてくる。
「フェルミンはあれでもお姫様なのよ」

⁈‼︎

 ピリアとアヤ、カイナが驚いた、それはそうだあの活発で元気で、お店を経営していてとてもじゃないがお姫様には見えない……

「祖父のフェルトンが他界され今は、フェルミンのお父さんが国王を継いでるんだけど、確か……

フェルミンは第五位かな?
王位継承権を持ってるお姫様なのよ……
本人は継ぐ気が無くて、お爺ちゃんみたいな鍛冶屋になりたいってこっちに来たんだけど。

フェルトン国王の時に私も沢山お世話になったから、私がお店を出してあげたんだけど……平和な時代だからかな?
クアパのお店も始めたんだよね」
エレナが優しい笑顔で説明する。
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