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〜第四章 変わりゆく時代〜

75話✡︎トールの思い出✡︎

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 その後の会談はエレナが機転を利かし話を進め、最終的な決定は明日ゴブリンの女王トルミアが到着してからになり、細かい話はその後話し合う事になった。

 ウィンダムをその姿のままユリナはオプスに返した。
 オプスはウィンダムをぬいぐるみの様に扱い抱きしめ、オプスはウィンダムの気持ちを深く理解していた……


 そこにピリアがようやくウィンダムに願い出た。
「ウィンダムさん……
私達の願いを聞いて頂けますか?」
丁寧にピリアが聞くとウィンダムが慎重に答える。

「まずは、そこに行ってみてから決めないか?
俺はオプスと天界に行き、クロノスと話して来た……
あのクロノスが何故クリアスの石板を無に返さなかったのか腑に落ちない……

ひょっとしたら何かを問いかけて居るのかも知れない……」
そう言われ、ピリアは少し考え頷く。

「クリタス記憶の棚はクリアス平原にあります、昔の首都クリタスにあった闇の大神殿の地下にあるはずです」
ピリアが言う。

「あそこか……」
ウィンダムが考えながら呟く。

「ウィンダム知ってるの?」
ユリナが聞く。
「知ってますよね?ウィンダムが始めてキスされたのはその神殿の前ですからね。」
 オプスがウィンダムの頰をつつき弄りながら言う。

 その昔トールにそこで何があったのかを知らない、ユリナとピリアはキョトンとした目で二人を見る。
「まぁ、そこに行けば解る
王族も立ち入りを許されなかった闇の封印が施された石扉がある……
そこしかない」
ウィンダムは汗を流しながらそう言いう。

 オプスもクリアスの石板の話は聞いていたが、クロノスが封印したと言う事に何かしらの意図があるのは理解していた。
 地上ではなるべくただのオプスとして居たい為にあえて天界では聞かなかった。


そこにエレナが来た会談が終わった様だ。
「ウィンダム、トルミア王女はトータリア姫の子孫らしいわよ、本当に会わなくていいの?」
リヴァイアサンがエレナに教えた様だ……

 ウィンダムはクリタス時代……トータリアとの最後の別れを思い出した。



「トータリア!急げ‼︎
南門に兵を集めてある
彼らと共にクリタス山脈に行け!
周りの都市の兵と市民
金品や資材をクリタス山脈に集める!
そこで生き抜け‼︎」
トールが必死に妹を逃がそうとしている。


「お兄様!どうされたのですか?
ザラハドール様は何を言われたのですか⁈」
「それは言えない

だが!

兄に誓ってくれ!
事が終わるまでオプス様には祈らぬと!
そして一族を導いてくれ‼︎」
「それでは解りません!
どうしたのですか⁈」

トールはトータリアを抱きしめた力強く……そして語る。
「俺は過ちを犯そうとしているのかも知れない
守る為に支払う代価が余りにも大き過ぎる……
俺の為に生きたいなら一族を導いてくれ……お前にしか頼めない俺の願いだ……

頼む……」


 トールはこれから起こる戦いの結果を理解していた、そしてトールはそれしか手が無いと考えていた……
 これはユニオンレグヌスが育んだ各種族の強すぎる絆が裏目に出た考えだった。
 他の種族を想い自己犠牲の道を選んだ闇のレジェンド・トールの悲しい声だった。


「お…お兄様……」
トータリアはトールが死ぬ覚悟でいる事を悟る……
 クリタスの国民は全て、トールが生きている限りクリタスは繁栄し続けると信じていた……その想いはトータリアも同じだった、


信じていた!強く信じていた‼︎


 トータリアの心の中に悲しみが溢れ出した。

 愛した兄が死を覚悟した戦いに赴く……
クリタス王国の王子が英雄が!

 神々に愛されたレジェンドが……

 トータリアは何か途方も無い戦いが起きる事を悟った……そしてこのクリタス王国に未来が無いことも……


「お兄様、その願いお聞きします。
初めてお兄様が私を頼ってくれましたね……
でもあんまりです……

でも、それでお兄様が英雄として心置きなく戦えるなら私はそうしましょう
お兄様が何をなされようとしているかは解りませんけど……

それでお兄様を悪く言う人が居たらトータリアはその人を許しません!
私のお兄様は……トールは私のたった一人の愛した人なんです!

頑張って来て下さい、最後の時が来てもお兄様らしく!
決して屈しないで下さい‼︎
最後まで最後まで……
お兄様で居てください‼︎」


 トータリアは必死に受け止めた。
 そして姫らしく必死に涙を堪えて気丈に振る舞いその場を後にし、兵とともにクリタス山脈へ向かって行った……

「英雄か……本当の英雄ってのはこんな時どうするんだろうな……」
トールはそう呟いた……



 ウィンダムは何も言わずに、オプスの腕の中にいた、その想いはオプスにも伝わり……
「トール、いいですね?

明日その人に会いなさい

貴方の想いを伝え
トータリアの気持ちを汲んであげなさい」
 オプスが優しくそう言うと、ウィンダムはユリナが身につけている神の涙を見て、頷いた。


 翌日、早朝……まだ朝日が顔を出さず空が明るくなって来た頃、昨日と同じ音でユリナは目を覚まし、星屑の太刀を背負い天幕を出る、昨日と同じ様にトールは暗黒を振っている……だが昨日と違いその剣からは悲しみが感じられる。

 ユリナは静かにまた距離を取り、剣を振った……朝日が顔を出して来た。

 二人は剣を振り続ける……

「ユリナ、剣を交えて見ないか?
魔力は込めない太刀として振るう……
やって見ないか?」
 トールが言って来た、ユリナは静かに頷き構えた。

 すると最初に仕掛けたのはトールだった、無論本気では無い、ユリナが受け止めるとトールは素早く踏み込みユリナを押し込む、ユリナも星屑の太刀に魔力を込め力に変えるが止めきれない。

「魔力を全て力にせず、太刀の重さにも変えろ!」
 ユリナはそれに従い集中し、使う魔力の僅かを重さに変えてみる……
 すると不思議と先程より楽になった、トールはあえて、僅かに不利な踏み込みをしている……

「そうだ……そして魔力を一瞬で出せるだけ出して弾いて見ろ!」

 ユリナはそれに従い瞬間的に魔力を爆発させ踏み込み弾くには至らないが、押し返した……
 ユリナは自ら押し返せた事に驚く、トールは手加減しているが大剣で押し返せたのだ……

「覚えとけよ、力比べじゃ女のお前は大抵不利になる。
俺だって恐らくダンガードと力比べをすれば、負けるかも知れない……
そうなったら勝負は一瞬で決めろ!
いいな‼︎」
 トールは女性が大剣を扱うには相当な技量が必要なのを知っていた。そして瞬発力が生死を分けることも……それを伝えたかったのだ。

ユリナは真剣な顔つきで頷いた……

 今日トータリアの子孫、トルミアと会う為に思い出していたのかも知れない。
トータリアがトールにせがみ大剣を何度か教えた事を……
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