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第三章〜戦士の国アグド〜
58話✡︎口は災いのもと✡︎
しおりを挟むその日の深夜みんながお風呂から出て、寝静まった頃。
何時もの様にリヴァイアサンとウィンダムはエルフの野営地で喧嘩をしていたら、ユリナに怒られた。
アンサラが頑張り、みんなに温泉を作ったがリヴァイアサンとウィンダムは何もしないでいたので、簡単にユリナの怒りを買った。
二匹は野営地から少し離れ続きをしてから暫くして二匹は落ち着いた様で、夜空を見上げながらボーッとしていた……
ふいに夜空を赤い線が横切り、ひと回り旋回し、ウィンダム達の方に勢い良く突っ込んで来た!
赤い流れ星の様に凄まじい勢いでそれは突っ込んで来る!
ウィンダムとリヴァイアサンはあわわと慌ててその場を離れる!
赤い流れ星は地面に突っ込む直前でふわりと止まり羽ばたいている。
炎の守護竜ヴァラドだった、ヴァラドはニコニコしていた。
「ヴァラド何するんだよ!危ないじゃないか」
二匹はヴァラドに口を揃えて言うが、ヴァラドはニコニコして何も言わない。
ウィンダムとリヴァイアサンは、無口なヴァラドに聞こえない様にこそこそと二匹で話す……
「おぃ、ヴァラドの声聞いたことあるか?」
「僕は無いよ、リヴァイアサンは?」
「ある筈無いだろ前にルクスといた時、しりとりに誘ったんだが、一切喋らなかったぞ……」
「それって、しりとりになるのか?」
「ならん……」
二匹の会話を静かにニコニコしながらヴァラドは聞いていた。
「そもそもアンサラは、なんでヴァラドと話せるんだ、ヴァラドは頷くだけで会話が成立している様に見えないぞ……」
「アンサラは頭いいからな……表情で解るんじゃないのか?」
そうウィンダムが言うと、二匹は振り向きヴァラドの顔を見つめる……
「ジーー……」
わざわざ声に出してヴァラド見つめる。
「ウィンダム、何か解るか?」
「ヴァラドがいることは解る……」
二匹はヴァラドを見つめるが、ヴァラドはニコニコしていて、特に変化の無いヴァラドの表情から何も読み取れずに、更に深く悩みはじめる……
そして少しつねったり、口を開けさせて歯並びを観察したり、くすぐったりして色々とヴァラドにしてみるが、一切変化がない……
「そう言えば、ヴァラドの主人シェラドも無口だよな?」
リヴァイアサンが言う。
「守護竜って主人に似るのか?それならリヴァイアサンがいつも飛びかかって来るのが納得来る……」
「何だと⁈エレナを馬鹿にするのかウィンダム!」
「そんな恐ろしい事出来るか!
ただ何かアルベルトが言うと、小太刀で訴えてるじゃないか!」
「ならお前の主人は心が狭いよな!
俺達が遊んでるといつも怒るじゃないか!
だからお前だってケーキ食べられただけで怒るんだよ!」
「あれはお前が神の竜の癖に盗み食いしたからだろ!」
「お前こそ、それくらい寛大になれよ!」
二匹が言い合っている間も、ヴァラドはニコニコして二匹を見つめているが、ヴァラドが何かに気付いた……
「エレナはな!
心優しい子だったんだよ‼︎
それが地上の欲望にさらされて、痛い子になってしまったんだ!
それをお前なんて事言うんだ!」
「それはリヴァイアサンがしっかり守らなかったからだろ!
ユリナだってお前が近くに居たんだから、しっかり見てればあんな無鉄砲な子にはならなかった筈だぞ‼︎」
そうウィンダムが言った時、リヴァイアサンの首に小太刀が当てられた……
その瞬間ウィンダムは背後から凄まじい殺気を感じる……
帰りが遅い二匹を気にして、エレナとユリナが見に来たのだ……
最初は二匹の会話をゆっくり聞いていたが二人とも我慢出来なくなったのだ。
「リヴァイアサン?誰が痛い子ですって、もう一度言ってごらん?」
エレナの優しい声の裏に何かがある事をリヴァイアサンは察する……
「ウィンダム?誰が無鉄砲で心が狭いの?教えてくれない?」
ユリナのおしとやかに話す声に、ウィンダムは狂気を感じた……
「今の私は優しく無いのかしら?」
エレナが殺意を込め優しく言う……
二匹は静かに、ヴァラドのいる方を見ると……そこには何も居なかった……
リヴァイアサンとウィンダムは全身の全ての水分がでる様な汗をかいた……
「よそ見出来るなんて、随分と余裕ね……
それとも覚悟は出来てるってことかしら?」
数秒間の沈黙の後にベルリス平原に二匹の悲鳴が響き渡った……
リヴァイアサンとウィンダムが、平原で怒られた頃……アンサラが一人で温泉の中で犬かきをしていた……
「ふぅー温泉っていいなぁ、きもちぃぃなぁ~」
アンサラは温泉を楽しんでいた。
「久しぶりに疲れが取れるようだ」
リヴァイアサンも入って来た、体にあざがあり何かに痛めつけられた様だ……
「なんで俺たちだけ……」
ウィンダムがぼやきながら来るが、こちらもやられた様である……
「みんな、のぼせないようにして下さいね。」
たまたま通ったピリアが優しく声をかける。
「はーい」
幼竜達は可愛く声を合わせて返事をした。
珍しく仲良く入ってるようで、パシャパシャお湯をかけ合ってる音はするものの、喧嘩してる様子はなく平和な時が流れている。
いや、リヴァイアサンとウィンダムは酷い目にあったばかりで第二ラウンドはしたくなかったのだ。
そこにヴァラドがニコニコしながら入って来た。
ヴァラドが湯船に入る時、僅かにジュッと音がした……アンサラはその音に気付いた。
ヴァラドは相変わらずニコニコしていて気持ちよさそうにしている。
アンサラは少し気を使い湯加減を調整している……
「ヴァラド~なんで教えてくれなかったんだ?おかげで酷い目にあったぞ」
リヴァイアサンが言うがヴァラドはいつも通りニコニコして何も言わない。
「エレナ達が迎えに来たから、ヴァラドも帰ったみたいだよ。」
アンサラが通訳する。
「今の解ったか?」
ウィンダムがリヴァイアサンに聞いた。
「全く解らん……」
リヴァイアサンが答える。
そして二匹はある事に気づかなかった……
アンサラはそっと温泉からあがり、皆んなに言う。
「あまり長く入るとのぼせるからね」
そしてアンサラはブルルっと毛も無いのに犬の様にお湯を少し飛ばして、去って行った。
「どこをどう見れば、ヴァラドと話せるんだ?」
リヴァイアサンが汗を流す、ウィンダムも汗を流すがヴァラドは汗を流さない……次第に湯気が強く立ち昇る。
二匹はヴァラドのことをその後、三十分はああだこうだと言っていた……
そしてヴァラドはあったまったのか、あっためたのか……熱くしたのかニコニコしながらお風呂から出て行った。
そして暫くして光竜ルクスが温泉に来た……
「えっ、ちょっと‼︎」
ルクスはエレナ達の所に光の様に走り込む!
「エレナさん、ユリナさん、お風呂に来て下さい!」
エレナ達が温泉の天幕に行くと、そこには茹で蛸のようにのぼせあがり、倒れていた二匹の幼竜が居た。
ユリナがちょっと温泉を触ると……
「アツ……あんた達馬鹿なの?
こんな熱いお風呂にのぼせるまで入ってたの⁈」
流石のユリナもエレナものぼせて倒れた二匹をそれ以上怒る気にはなれず、その後は優しく介抱する……
(ヴァラド恐るべし……)
ウィンダムもリヴァイアサンもそう心で呟いた……
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