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第三章〜戦士の国アグド〜

53話✡︎アグドとクリタス✡︎

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 その夜、エレナ達はベルダ砦の外に野営させてるエルフの野営地に居た。
流石にあれだけの事があった……
 オーク達を信用してもしきれないと言うのもあるが、何よりも同族達と一緒に居た方がやはり落ち着く。

六人は大きな焚き火を囲んでゆっくり、食べ物をつまんでいる。
「少し混ぜてくれないか?」
ベルガルが酒を持ってやって来た。


「傷は大丈夫なんですか?
お酒なんて持って来て……」
ピリアが心配して言う。
「この程度で酒も飲めなきゃ戦場ではやってられんぞ」
ベルガルが言う。
「戦場?この二千年……どこかで戦ってるんですか?そんなはずは……」
エレナが強い疑問を抱き聞く。

「ここはアグドだぞ、小規模な内乱が時折起きる……
中でも手強いのが自治を求め我らに従わないクリタスのゴブリン達だ……」
 えっ!と誰もが思った、十万年前にクリタス王国は滅亡してるはずだ。
 なのにクリタスを名乗るゴブリン達がオーク族と戦える程の力を持っているのかと、誰もが耳を疑った。

「ゴブリンがっ!ゴブリン達が!闇の眷属の街があるのですか⁉︎」
ピリアが驚きながら必死に聞こうとする。

「あぁクリタス山脈にトータリアと言うゴブリンの姫が十万年前に逃げ延びて来たらしい……そして巨大な地下都市トールを作り上げ未だに存在する。」
ベルガルが酒を飲みながら言う。

 一同が驚いたがエレナは知らなかった事実に希望を僅かに感じた。
 ゴブリン達の文化圏が僅かに生き残ってくれてる、そこを救い出す事が出来れば、僅かだが……災いの日そのものを抑え込む事が出来るかも知れない。
 ゴブリン達の国、クリタス王国は冥界と戦い続けた、貴重な存在であり滅びたと思われていた、そのクリタスがまだ存在していたのだ。

 だがそれ以上に、ピリアが大粒の涙を流していた。
「トータリア様……生き残られていたのですね……」
嬉し泣きをしながらピリアが呟いた。


「ピリア知ってるの?」
エレナが聞く。
「トータリア様は闇のレジェンド、トール様の妹君です。
私も何度かお話しした事はあります。」
 ピリアが泣きながら説明してくれるが感情が溢れて来た様だ……

「トータリア様は一族を守られた様ですね……この長い時の中でさぞ苦労されたでしょう……
そんな時を私とフィリアは……」
そう言い言葉が詰まってしまった。

 エレナがそばに寄り頭を撫で優しく抱きしめる。
「ピリア、これから頑張ればいいの……
言ったでしょ?
私達は無駄にしませんって……
そのトールって街を救ってあげようよ。
その方がトールもトータリアも喜ぶんじゃないかな?」
エレナは優しくピリアにそう語る。
 ピリアは静かに頷き涙を拭うがまた溢れて来ていた。

「それならば半分は既に達しているな。
半年後にアグドは軍の半分を送り地下都市トールを滅ぼす予定だった……
奴の指揮も元にな……だが今日のあのざまだ……
その計画は無くなったも同然だ」

ベルガルがそう言うとユリナがすかさず言う。
「なっ!
同胞のゴブリン達を守る為にウィースガルム卿を倒したなら……
まだ解るけどそこを滅ぼすって⁈
何それっ!信じられない‼︎」
ユリナは怒りを込めて言っていた。

「あぁ、そんな奴を見抜けなかった……
俺の責任でもある……
本当に申し訳ない、今日エレナ殿にした事は死んでも詫びきれない思いだ。」
 ベルガルが初めて詫びた、彼は一言でも恥を忍んで詫びに来たのだ。

 詫びる様な態度では無いが、そこをエレナは気に留めなかった。
 ここにその怪我で一人で来てくれた……それだけで良かった。

 ベルガルがエレナに酒を進め一口エレナは飲むと、エレナはウッと顔をしかめた。

「きっつぅ……」

相当強いみたいでエレナは思わず声に出した。

「ハハッきくだろ、これが我らの酒だ!
傷を癒す薬草を根から使う、そのまま傷口にかけても効果がある!
戦には欠かせない我らの酒だ‼︎」

 ベルガルも親睦を深めようとしてくれている、オーク達は強く勇気ある戦士が好きだ、彼もエレナの一太刀を受け、エレナの剣技を認めていた。

 エレナがその酒をカナに回すと、カナも一口飲んで見るが……口を押さえて、黙ってそれをユリナに回す。

そんなに?と思いながらユリナはそれを一気にあおった!
エレナもカナも目を丸くした。

「つっよいけど、美味しいかも……」
そう言いながらカナに寄りかかる様に倒れた。
 一同が笑い和やかな空気に変わっていく、ピリアにも僅かに笑顔が戻る。
ベルガルはその酒を簡単にあおる。
オークは体も強いが酒にも強い様だ……

 カイナは不思議でいた、誰もカイナがネクロマンサーだと言う事を聞きもしなければ、言いもしない、ましてやイミニーだと責めもしない……
「カイナさん?」
カナがカイナを気にした。
「うん?……」
カイナが反応する。
「気にしないで大丈夫ですよ、私達はカイナさんを責めたりはしません、カイナさんも協力してくれたじゃ無いですか?」
カナがカイナに優しく言うが、カイナは納得出来なかった。

「甘いよ……甘すぎるよ……
私だって嬉しいけど……私はいつみんなの敵になるか解らないんだよ‼︎」
カイナが言う。

「だから?」
ユリナが言う。
「えっ?」
カイナが驚く。

「今は敵じゃない……
それで良くない?
ネクロマンサーだったのは驚いたけど……
もうお母さんと話してるんでしょ?」
ユリナが言う。

「う、うん……」

「なら、それでいいじゃん。
仲間なんだからさ、気にしなくていいよ。
それより、カイナもコレ飲んでみたら?
意外と美味しいよ」
そう言いながら、ユリナはオークの酒をカイナに進める。

 立派な事をユリナは言ったが少し酔ってる様だった、だが本心で思った事を言ってくれてるのがカイナには良くわかった。

 そしてカイナはユリナに注がれたお酒を口にして、口の中が焼ける様に辛く口を押さえた。
「コレっお酒なの⁈」
カイナが驚き、ベルガルが笑う。

「あぁ、これでカイナも仲間だ!
イミニーなんだろ?
だがそれでいいのか?

抜けたいと思ってるんじゃないか?」
ベルガルがカイナに聞いた。

「……」
カイナは口を閉ざした。

「言いたくないならいいが……
イミニーを抜けたくなったらいつでも言ってくれ、アグドはそれを協力する。
シェラドも力を貸してくれるさ!」
ベルガルが暖かくカイナに言った。

「なんで……」
 カイナは不思議でいた、確かにネクロマンサーの魔法を使ったが、オークの兵達が騒ぐ事は無かった、ひそひそと話す者も居なかった……

「王の言葉だ……
我らは王の最後の言葉を知らなかった……
だが、カイナ殿のおかげで聞けたのだ……
我らはカイナ殿に感謝している……

我らの偉大な王を……
礼を言う……ありがとう……」
ベルガルがカイナに心から礼を言っていた。


「カイナ?私にもその時は言ってね。
必ず守ってあげるからね……
セレスも協力を惜しまないわよ」
エレナが微笑みながら言った。

 イミニーは脱退を許されない、必ず死の制裁として裏切り者、脱退しようとする者をつけ狙うのだ。
 カイナは心強い味方を得ていた事に気づいた、その様子をアヤは微笑みながら見ていた。

 少ししてベルガルがピリアに話しかけた。

「ピリアよ、良かったら聞かせてくれないか?

闇の眷属とは一体どの様な種族なんだ?
今日のお前の戦いといい……
あの女神の言葉どう聞いても闇とは思えない。

あの地下都市トールのゴブリン達も軍として機能している……
他の地方にいるゴブリンとは明らかに違う。
一体なんなんだ闇の眷属とは……」

 ベルガルがオーク達と思った疑問をピリアに投げかけて来た。

ピリアは少し悩んでると。

「ピリア、ベルガルは信頼できるよ、エレナ達と戦ってた時も、真っ直ぐ王に従っただけで邪な事は考えなかったよ。

だからリヴァイアサンも限界まで見てたんだ……
まぁ、リヴァイアサンも、もうちょっとエレナの事を考えてあげるべきだったね。
一歩間違えればエレナ死んでたよ……」
とウィンダムがピリアとリヴァイアサンに言った、すると……

「ウィンダム‼︎
俺は出たかったんだよ!

でもエレナに止められて出れなかったんだ‼︎」
 案の定リヴァイアサンが言い返しいつもの喧嘩が始まり、少し離れた場所で原っぱを荒らし始める。

仲が良いのか悪いのか……

 それ見てピリアは微笑み話し始めた。


十万年前、それ以前の創世神話の始まりを……
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