50 / 234
第三章〜戦士の国アグド〜
43話✡︎心の扉✡︎
しおりを挟む次の日の昼過ぎに、エレナ達は約束通り来た。
「エレナさんアグドって本当に行くんですか?絶対に狙われますよ?
オークの戦士にとってエレナさんを倒せば、それだけで英雄になれちゃうくらい、アグドはエレナさんを敵視してます……
本当に……行くの?」
フェルミンはとてもエレナを心配してるが、
「うーん。
外交で行くつもりだし、まぁ何かあった時の為にちゃんと手入れ宜しくね。」
エレナはオークの風習を知っていた。
その為にフェルミンに武器と防具の手入れを頼みに来たのだ。
エレナはクリスタルの小太刀、カナは双刀の小太刀、ユリナは鉄の弓を預ける。
「アヤさんも行くの?ヴァイオリンも見ようか?」
フェルミンはアヤのヴァイオリンに興味を持つ。
「ヴァイオリンも見れるのですか?」
アヤは不思議そうにケースからヴァイオリンを取り出すと、フェルミンはマジマジと見て……言う。
「これ……うん……大丈夫。
もっと良いものに出来るよ!」
「ピリアさんとフィリアさんは何かある?」
そうフェルミンは二人に聞くと。
二人はニコッと笑い光り輝きエレナの姿になる……
「私達の武器はこれですから、大丈夫ですよ」
そうエレナの声でピリアが言う。
「ドッペル、初めて会った……
本当にエレナさんそっくりだね。」
フェルミンはマジマジと二人を見た。
「あ!おじいちゃんが言ってた。
姿を変えるのを好むお客さんには、
魔宝石のアクセサリが一番!って」
「フェルミン、魔宝石もあるの?」
エレナが驚いて聞く、魔宝石は自ら目に見えない紺色の様な紫の様な輝きを淡く放つが、漆黒の闇の中ではその輝きが目に見えると言う、黒い宝石である。
だが珍しすぎる割には闇の眷属が好む宝石で、闇が恐れられるこの時代には値打ちがあまり無い。
「もちろん!……無いです!」
みんなコケる。
「少し時間があれば手に入るんだけど……
欲しがるお客さん居ないから、仕入れて無かったんだよね、エレナさんいつ出発するの?」
フェルミンはエレナ達の事がよほど心配なのだろうか、そう聞きながら羊皮紙に何かを書いている。
「五日後か六日後かな、まだ王宮にやることあるから、間に合うかな?」
エレナが答えながら聞く。
「じゃ五日後までに全部終わらせるね!」
フェルミンも時間が少し欲しい様だ。
「じゃお願いね。
これ斬馬刀の代金と、手入れの代金。
足りなかったら言ってね」
そう言うとお金の入った袋を竜魔石からリヴァイアサンに取り出してもらい、フェルミンに手渡した。
フェルミンもエレナを信頼してる為、中は確認しないで受け取る。
エレナ達を送りフェルミンは袋を開けると……金貨で五十万ペルタ入っていた。
あれ?と思い数え直し、フェルミンはやっと気づいた。
全てロイヤルコインであった。
通常の金貨の十倍、つまりエレナは五百万ペルタを支払っていった。
フェルミンは、喜ぶより、困った。
斬馬刀の料金五十万ペルタ、手入れの料金四百五十万ペルタ……
そこに気持ちと言う言葉を含まずシンプルに計算した。
「四百五十万ペルタ分の武器手入れって……
新品買ってよー‼︎」
それからフェルミンに過剰に支払われた代金に見合うだけの!
預かった武器と楽器を新品に近づける、又は性能を向上させる、新しいアクセサリを作る四日間のアツイ戦いが始まった!
エレナ達はその後五日間は、王宮に行ったりアグド国にどこから入るか、出発の荷造りをしたり。セレスに残る仲間とアグドに行く仲間など、色々と計画を考える。
だが一つ関係ない事も考えていた。
(私は神を憎んでいます……ですが……
死の女神ムエルテ様は……
地上が滅ぶことを望んではいません。)
あの王立図書館のネクロマンサーの事を考えていた。
(なぜあのネクロマンサーは、字で言ったの?普通に話せばいいのに……
あの子は私に敵意は無かった、あればブラットロードに力を貸していたはず……
話せない?いや……
違う……神を憎んでいるなら……
そうか……)
エレナはその文字のまま、死の女神ムエルテの考えが彼女を引き止めているのでは?と考えるが、世界に災いを振りまくだけでも神への反逆へと繋がる。
セレスにネクロマンサーが居る限り、安心は出来ないとエレナは考えて言う。
「ガーラさん、王立図書館にネクロマンサーがいたのは知ってますよね?」
「あぁ……奇妙な者だったな……
我らに手を貸すイミニーを初めて見たが……」
ガーラは考えながら言う。
「はい、ですが相手はイミニー、いつ気が変わるか解りません……
私ももっと話してみたいのですが、見つかりません……
ですから念の為にガーラさんは私の留守の間セレスを見てほしいのですが……」
エレナが控えめにガーラに頼んだ時、カイナが小さな笑み浮かべたのに、エレナが気付いた。
その笑みを浮かべたカイナの放つ雰囲気はあのネクロマンサーのものだった……。
「あぁ、引き受けよう……」
ガーラが引き受けてくれ、その日の話はだいたい終わる。
(ふっ、声で言えなかったのね……
隠さなくていいのに……)
エレナはそれに気付かないふりをして、そう思った。
その夜、エレナは屋敷からでて行くカイナのあとをつけて行った。
暫く歩き、カイナはエルフの墓地に行く。
「うーんっとこの人かな?」
カイナがいい、何かを唱える。
「汝、光の為に、神聖な行いをせし者よ、我に支え我が剣として、闇を斬り裂き天を望むか?」
カイナがホーリーネクロマンサーとして、ブラットロードに立ち向かった者達と話しているが……
断られた様でガッカリしている。
「ユリナ様の為に、エレナ様の為にって、本当に好かれているんだなぁ、エレナ様って」
断られた理由をぼやきながら、カイナは墓地からでて行く。
その様子をエレナは見ていて、僅かに安心する、墓を荒らすネクロマンサーでは無いと思った。
だが、あの雰囲気は間違いない、ちょうどここには誰もいない、エレナは思い切って聞く事にしたが。
「エレナさん、隠れてなくていいよ……
解ってるから。
私に話があるの?」
カイナが空を見ながら言う。
「解ってたんだ」
エレナはそう言い姿を表す。
「うん、とりあえずありがとうね、死者との交渉を見守ってくれて……
とりあえず先に聞くけど、こっちに話があるの?」
そう言いながら、カイナはドクロの仮面をエレナに見せた……
「えぇ……」
エレナは静かに答える。
「何を聞きたいのかな?」
カイナが言う。
「カイナあなたは何故私に近付いたの?
イミニーのあなたから見れば私は敵よ……」
エレナは自然に一番の疑問を投げかける。
「エレナ様と戦う気は無いよ……
エレナ様が見てるこの国は、いい国だから……
みんな幸せそうにしてる
私が産まれた村がある同じ世界ってのが信じられないくらい……」
カイナはそう言いながら、目を伏せる。
「どこの村なの?」
エレナは優しい目で聞いた。
「もう無いよ……私が滅ぼしたから……」
カイナはそう応えた。
「なっ……」
エレナは一瞬耳を疑ったが、カイナはやはりイミニーなのかと感じた、それでもエレナはカイナに聞いた。
「何があったの?
訳があるんでしょ?」
エレナはそれ相応の訳があるのだと信じた……
「これ以上は言えません……
それに、イミニーとして声がかかればエレナ様に刃を向けるかもしれません……
そんな私でも
そんな私でも
そばに居て……いいですか?」
カイナが諦めた様に静かに言う。
王立図書館でカイナは姿を消し、ブラットロードが敗れたあと、ブラットロードから飛び散った怨念をカイナは直ぐに感じて、あの場所に戻ったのだ、エレナに見つかるかも知れない、そう覚悟もしていた。
「えぇいいわよ、好きにしなさい。
言いたくなった時に言ってくれれば……
それでいいわ……」
エレナは何も考えなかった、カイナがした事は許されない事かもしれない……だが、カイナの心の中で寂しそうな何かが光っている気がした。
それに、そうなった時はエレナがカイナの心を開けなかった……
そう考える事にした。
それを聞いたカイナは涙を流してエレナに向かって言った。
「ありがとう……
エレナ様が神様なら良かった……」
カイナがそう言いエレナに歩み寄って来てくれた。
エレナはカイナが何故神を憎むのか、解りそうで解らないもどかしさを覚えたが、気になった事をカイナに言う。
「もし自分が本当に正しいっ!って
思うなら」
エレナはそう言いながら、醜いドクロの仮面をカイナから取り、その仮面を魔法で割った。
「こんな仮面に頼らないで、素顔で居なさい……
その綺麗な瞳でみんなに、神様にも訴えなさい……その方がいいよ絶対……
誰か解らない……
顔も見せない人のことなんて、神様は相手にしてくれないから」
カイナは真っ直ぐなエレナの言葉に、心の扉をノックされた気がしたが、まだ開ける気にはならなかった。
それでも……カイナは嬉しかった、喜びを感じていた。
誰も尋ねてくれない扉をノックしてくれた……ただ嬉しく涙を流していた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
♪イキイキさん ~インフィニットコメディー! ミラクルワールド!~ 〈初日 辰みっつの刻(8時30分頃)〉
神棚 望良(かみだな もちよし)
ファンタジー
『みなさん!こんにちはっ!私の名前は、大事 守香!やっと、ネコさんに会えました!
もう、嬉しくて、嬉しくて!早速、自分のタブレットを取り出して、職場に報告しようとしたのですが・・・・・・。
あ、あと、ネコさんのご厚意で、お茶に呼ばれてしまいました!ただ、これが、もう、嬉しさの連続で・・・・・・』
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ!フルボッコにしてやる!~
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ハルドン伯爵家の三男として生まれた俺、カインは千万人に一人と言われている二つのスキルを持って生まれてきた。だが、その二つのスキルは〈創造〉と〈操作〉というハズレスキルだった。
そんな俺は、ある日、俺を蔑み、いじめていたやつらの策略によって洞窟の奥底に落とされてしまう。
「何で俺がこんな目に……」
毎日努力し続けてきたのに、俺は殺されそうになった。そんな俺は、復讐を決意した。
だが、その矢先……
「ど、ドラゴン……」
俺の命は早々に消えそうなのであった。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる