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第三章〜戦士の国アグド〜
42話✡︎ウィンダムの斬馬刀✡︎
しおりを挟む王宮から馬を走らせ、少し急いで帰ろうとするが、途中のフェルミンの店に寄る。
もう遅いため店は閉まってるが、明かりは付いている。
「フェルミンいる~?」
ユリナがノックしながら言う。
「いるよ~今あけるね」
と元気よく現れて鍵をあけてくれた。
「ちょっと遅くなってごめんね。
新しいの見に来たけど、いいかな?」
エレナがゴメンねと言う感じで言うと、フェルミンは嬉しそうに奥に通す、やはり商売が好きな様だ。
店の奥は立派な武器屋になっていて、少ないが防具も置いてある。
一際目を引いたのは、剣の柄に一際大きな精霊石が埋め込まれていて、エルフの背丈に合わせて少しだけ小さい斬馬刀だ。
だが……見た目は通常より小さいが、やはり重そうである。
相当良い鉄と技術で鍛えられている様で、僅かな光りでも刃の輝きが見れそうである。刀身の黒い部分にはキラキラと光の粒が無数に見える。
「これは?」
ユリナが聞く。
「星のかけらと、星鉄鋼を使ったんだよ。
多分ユリナさんでも魔力を使えば持てるよ。」
フェルミンはニコニコしながら言う。
「星鉄鋼⁈そんな貴重な鉄をこんなに?」
エレナが驚く、そして相当高いだろうと……誰もが予想した。
そこにウィンダムが現れマジマジと見て……
「欲しい!エレナ買って~」
子供の様に飛びつくが……
誰もが無視した……
それでもウィンダムは欲しいと訴える。
「先日来たオークの戦士もこの斬馬刀を欲しがってたけど、先に見せたいお客さんが居るから、その後でって話になってるんだ。」
フェルミンがそう言う。
「シェラドさんが?
これいくら位なんですか?」
とカナが聞く。
「シェラド……?
カナ知ってるのそのオークの戦士」
エレナが聞くと、カナはシンシルの護衛であった事をその場で話した。
話を聞いてエレナはその戦士が相当な手練れだと感じる。
カナも剣士としてなら、決して弱くはない剣舞から放たれる斬撃は読みづらくて、エレナも剣士としても一目置いている。
それよりも古い呼び名を知っていた事にも驚いた。
そう考えているとフェルミンが値段を書いた紙を黙って見せてくる。
その値段を見て……一同が声を揃える!
「五十万ペルタ‼︎」
安い!安すぎる‼︎と思いみんなで声をあげた。
材料費を含めれば一千万ペルタはしそうな一品である。
「エレナさんにはこのお店プレゼントしてもらったし。
鍛治の設備も全部出してもらったから工賃だけで、ほんのお礼です」
「これはほんの、じゃないでしょ……」
ユリナが言う。
「恩は倍にして返せ、
恨みは炎にくべて灰にしてしまえ。
他人の幸せを心から喜び、
出し惜しみせずに祝え
私のおじいちゃんがいつも言ってたんだ、最初は良く解らなかったけど。
エレナさんにこのお店貰って、なんか解って来た気がするんだ。
だからおじいちゃん、エレナさんの小太刀が折れちゃった時、頑張って同じ物を作ったんだと思う。」
フェルミンが懐かしそうな目で話すと。
「同じ物じゃないよ。
昔使ってたのより、手に馴染んで凄く使いやすいよ」
エレナがその小太刀を抜いて、透き通る美しい刃を見つめながら言う。
フェルミンも嬉しそうな顔をして、その刃を見つめた。
「あ、あの~買ってくれる?」
結局、ウィンダムが子供の様におねだりしたために買う事にした。
帰りにユリナがその斬馬刀を背負うと、不思議と背負える程に軽くなった。
「え?どう言う事?」
ユリナが信じられない様な顔して言う。
「星のかけらの効果だよ、ユリナさんに合わせて剣が軽くなってるはず。
あと魔力を込めて抜いてみて。」
フェルミンがユリナに剣を抜く様に促す。
ユリナはその通りに抜いてみると、苦労せずに背負った斬馬刀を抜く事が出来た。
エレナとカナがおぉーと言う顔をするが……
「ユリナ……斬馬刀使えるの?」
エレナが聞くと
「使えない……」
ユリナは困り顔で言う。
「大丈夫!オークの国に行けば役に立つから!」
ウィンダムは自信満々で言う。
「とりあえずもう遅いし帰ろうか……
フェルミン、明日皆んなで昼過ぎに来るからその時にお金払うね。
あとアグド国に近いうちに行くから、武器や色々な手入れと、細かい物も買うから宜しくね。」
エレナがそう言うと、フェルミンは嬉しそうに。
「はーい、色々と出しとくね~」
元気に返事してエレナ達を見送り、店に入って気付く。
「今アグドって言った?よね……?」
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