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第二章〜記憶の石板〜

30話✡︎エレナと記憶の番人Ⅱ✡︎

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 ユリナ達はカナの番人と話をしていた。
「アルベルトさんの言う通り試練が始まる前に終わりましたね。
エレナさんって本当に凄い人なんですね。」
カナの番人は笑顔で言うとユリナとカナはほっとした。
 既に調べることは決まっていた、ユリナはユニオンレグヌスには闇の眷属も参加しなくてはならない事を理解していた。

 ただ一つの疑問をカナの番人にユリナが聞いた。
「あの……私達は闇と言えばそれは災いをもたらすものだと思っていました。
でも本当は違うんですよね?
なぜ闇は災いをもたらすのですか?」


それにはアルベルトが話し出した。
「それは私が、天界で少し調べて来たんだが……
アインは最初に天界を作り、次に地上を作られたが、その時に冥界はまだ無かったらしい。

だがアインが地上に命を生み出した時に、冥界が生まれたようだ。

冥界の力は天界に等しく、豊かな楽園にしようとした地上を脅かし始めた。
そしてクロノスとアインは闇の女神を生み出し、地上と冥界の間を守らせた。

そして同じ様に光神ルーメンを生み出し、その闇を超えて来る冥界の者を見張らせて、ようやく地上は冥界から守られたらしい。」


アルベルトが話すと、カナの番人が足りない部分を話し出す。

「闇の女神オプス様は六大神の中でも最も慈愛に満ち溢れています。

気性の荒い闇の力は、悲しみや憎しみに満ち溢れて、復讐の刃や殺戮に溺れる魂達を常に溢れる慈愛で包み込み、慰め癒し彼らを来世に導き続けていました。

そのオプス様を冥界で生まれた死の女神が、捉えてしまった為に。

導く神を失い理性を忘れた一部の闇の者達が、災いを振り撒く様になってしまったのです。」
アルベルトは全てを知っている様に聞いていた。

「そうだったんだ……」
エレナの服を着たエレナの番人がエレナを演じて記憶の間に入ってくる、エレナは魔精霊の衣を着て後から入ってくる。
「エレナ遅かったな、上は大丈夫か?」
アルベルトがエレナの姿をした番人に話しかける。


「王立図書館はガーラさんに任せて二人が心配で直ぐに来ました、アルベルト二人を守ってくれてありがとう。」

 その時ユリナとカナはアルベルトと呼んだ事に違和感を感じ、エレナの番人の姿をしたエレナを見た。


 エレナはすました顔をしながら僅かに口元が笑った。


 二人は気づいて、あ、危ないと思い一歩後ろに下がったのを見てエレナは歩み寄る。


「エレナも闇系の法衣凄く似合う、いつも着ないから新鮮さもあるけど、本当に可愛いよ。
あの時とは違う魅力あるけど、やっぱり俺たちの式を挙げた時の妖精のドレスが一番かな」
アルベルトは懐かし目をして、二人が愛を誓った日を思い出し。


 エレナはハッとしてあの日を思い出した。
この六百年忘れてはいなかったが、鮮明にあの日の喜びが溢れて来た。

「エレナ?イタズラ好きなのは解るけど、俺は騙せないぞ」
 そうアルベルトは言いながら笑顔で、本物のエレナの頭を軽く撫でエレナもそれにはテヘッと可愛く笑い、ユリナもカナもホッとした瞬間。


「エレナさん、可愛いじゃないですか?
アルベルトさん何処が死竜より怖いん……」
 カナの番人がそう言いかけたのを、カナが素早く飛び掛かり手で口を塞ぐが遅かった。

 既にエレナは神速と言うべき速さで、小太刀を抜きアルベルトの首に刃を寸止めしていた。


「あなた?何か聞こえたんだけど、あなたの口から言ってくれる?」


 エレナはまた優しく殺意のこもったハートをつけて笑顔でアルベルトに聞く……血の王を軽く剣技だけであしらったアルベルトが反応すら出来てなかった。

 ユリナは黙って頭を抱えている、エレナの番人は青ざめた。
(本当に……死竜より怖い……)
心で呟いた。

 アルベルトも今は死者であるから、一言でも間違えれば本当に首を飛ばされ兼ねない。


 凄まじく冷静に考える。


「お母さん?お父さんも本当にそう言ったけど。

血の王がお父さんの死んだ時の事を笑って、お姉ちゃんが落ち込んじゃったから……
笑わせるのに楽しく言ってくれただけだよ」
ユリナが状況を説明してくれた。


「あなたが来てくれなかったら、可愛い娘がどうなってたか解らないし……
それなら許してあげる」
 そう言うとエレナは小太刀を収めアルベルトの頰に軽くキスをした。そしてエレナの番人に言う。

「あなた演じるのセンスあるけど。
私はアルベルトのこと、あなたって呼んでるから、覚えていてね」
 楽しそうに番人に言うと。

「はい!」

そう声を合わせていい返事をした。


 既にクリタス王国の滅亡、そう書かれた石版が既に用意されていた。

 ゴブリンの国がなぜ滅亡したか、それを見れば巨人族の魔法、科学の力が解ると番人が言う。

「クリタスって……クリタス地方?
あのオーク族がクリタス山脈、ドワーフ族がクリタス荒野とクリタス平原を持つあの辺の事?」
エレナが直ぐに気付く。

「はい、あの辺りを中心にバディ族の国の半分と褐色のエルフ族の国の一部がゴブリンの国クリタスでした。」
エレナの番人が言う。


 だがその領土が本当であれば相当大きな国で、今のセレスとサランの二カ国を合わせたのと同じくらいの領土になる。
 いかに闇の眷属が強い力を持ち、冥界と対抗していたかが一目で解る。
 だが同時に、なぜ……そんな大国がユニオンレグヌスの時代に滅亡したのか、誰も想像出来なかった……
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