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第二章〜記憶の石板〜
29話✡︎エレナと記憶の番人✡︎
しおりを挟むおまけにしては……凄まじい歴史を見せられた。
カナもユリナも気づいていた、六芒星の意味を、今いる五大神だけでは無くもう一人、重要な神がいた事を。
闇の女神オプスの存在を、そして神々でさえ完全な存在ではなく怒り狂えば、悲しむこともあると。
神々が神々を支えて居るのだと。
本当にウィンダムが言っていた世界感が変わるには十分な記録である。
「オプスは闇の女神……ってことはサイスを襲ったゴブリン達の神様ってこと?」
カナがユリナの番人に聞く。
「えぇ、他にも闇の眷属は居ます、私達も闇の眷属ですがゴブリン達が一番協調的ですね。
知ってるかも知れませんが、巨人族の時代ゴブリン達は闇の眷属の中で唯一、クリタスと言う国を持っていました。
文化的で美しく、領地も広く土地も豊かな国でしたよ。
あの日までは……?」
ユリナの番人が不思議な顔をした。
「お客様ですね、一日で記憶の棚を二回も開けられるとは珍しいですね……
試練を差し上げないと、行って参りますね。」
そう言うとはゆっくりと消えていった。
「これは……エレナの魔力……
上が片付いたか一人と言う事は、ガーラはエレナに頼まれたかな?」
そうアルベルトが言うと、
「え?お母さん……
試練って大丈夫なの?」
ユリナが心配そうにアルベルトに聞く、カナもアルベルトを心配そうな顔をして見る。
「エレナなら大丈夫だよ、本当に頭いいから、多分始まる前に終わるかな?」
アルベルトが笑顔で言うと、ユリナもカナも?と言う顔をした。
その頃エレナはあの暗い階段を明かりも付けず夜目だけで降りて行く。
しばらくすると同じ様に扉が閉まる音がして、またコツコツとスケルトンの足音がエレナの後をついて行く。
エレナは入り口からここまで屍無かった事、闇の強い魔力を感じなかったことを少し考えて走り出した。
コツコツと言う足音も早くなりつけてくる、そしてあのドームの部屋の明かりが見え走り込んだ。
記憶の番人が部屋に入ろうとした時……
エレナは入り口すぐ脇、左側の壁を背に寄りかかりながら、右手でクリスタルの小太刀を逆手に持ちスケルトンの首に突きつける。
「ちょっと待って、あなたドッペルゲンガーでしょ?
そこからこの部屋に入ると、私の魂と繋がっちゃうから、このまま話さない?」
エレナの言葉には半分脅しが入っている、単純に早く娘に会いたいのだ。
だが記憶の番人も正直驚いている、魂を繋げる前にもう勝負がついてしまった。
そしてユリナと髪の色が違うだけで本当に似ているエレナに更に驚いていた。
「厄介なのよね……自分と戦うって……
剣も魔法も全く同じ腕で、さっきの血の王より時間かかっちゃうし。
でも貴方は私に殺意は無さそうだから、アルベルトに恋してる訳でもないでしょ?
なら素直に通してくれない?」
エレナは記憶の番人の首の骨にクリスタルの小太刀を直につけて正面に立ち、通路に押し戻す。
本来ドッペルゲンガーにはキーになる言葉を言えば立ち去る、ただ殺意を持ったドッペルゲンガーには基本逃げ切るしかない。
一つの理由としてはドッペルゲンガーがその相手を殺せば、その人になりドッペルゲンガーでは無くなる。
エレナはヒューマンの国に伝わる伝説でドッペルゲンガーが恋をして、若い少女を殺しその少女になり。
その相手と子供を何人か作ったが、その殺された少女もその男を愛していた為、遺体が消滅する事なく発見され。
ドッペルゲンガーは姿をくらましたと言う。
悲しい話を聞いたことがあった。
そう言った強い思いから殺意が生まれるからだ。
エレナは強気で番人が抵抗するなら、本気で斬るつもりでいた。
「こんな事しなくても魂を断ち切れば貴方を斬ることは出来るの……
解ってくれるかな?」
更に強く迫ると記憶の番人が怯えて折れた……
「解りました……
貴方の知恵と力は十分理解しました。
ユリナさんとカナさんが心配なんですよね?
ご案内しますから剣を収めて下さい。」
番人はエレナの声で答えると、エレナはアッサリ小太刀を収める、魂を繋げる前のドッペルゲンガーは嘘は言えないからだ。
記憶の番人が部屋に入ると、光だしエレナの姿になる。
ただ水色の髪と僅かにユリナより大人っぽいエレナに合わせて、闇の法衣では無く魔精霊の衣を着ている。
黒と白の宮廷メイド風のワンピースのゴスロリっぽい服でエレナの水色の髪が一層冴えて可愛く美しく見えるが……やはり闇の力を持つ衣は女性色を際立たせ色っぽくなる。
それは普段エレナが着ないタイプの服であった。
「多分これが一番似合うかな?」
そう言いながら番人は服を確かめていた。
エレナは直感したこの子は普通のドッペルゲンガーでは無い、普通は全く同じ服を着て見分けられなくするが、この子は服装を楽しんでいる。
本当に悪意は無いんだと感じた。
そしてこんな服も似合うのかと、エレナは番人を色んな角度から見始め、今度は番人の方が少し恥ずかしくなる。
「こんな事なら、カナさんの番人に来て貰えば良かった。
エレナさんが、こんなにユリナさんとそっくりなら、遊べたかも知れないのに」
そう言った時、エレナは気が合いそうな気がしてクスクス笑う。
「私変なこと言いました?」
番人がエレナに聞く。
「私とユリナはたまに髪の色を変えたり同じにしたりして遊んでるから、って試しにやって見ない?」
と……エレナは楽しげに番人を誘った。
「え?ってそう言うの私達の方が惑わすのにやるんですよ!
エレナさんの方からって……」
番人の方が驚き困惑する。
「大丈夫よ、うちの屋敷で二三日に一回はそれで誰かが驚いてるから普通のことよ。
それに私もそれ着てみたいし」
(エレナさんの屋敷ってどんな屋敷?エレナさんってどんなエルフ?)
番人は汗をかいていた。
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