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第二章〜記憶の石板〜
24話✡︎ユリナの勇気✡︎
しおりを挟む突然地鳴りの様な轟音と共に、全ての本棚が揺れだす……だが記憶の棚だけは揺れていない、その轟音も部屋の外には聴こえて無いらしい。
やがて記憶の棚以外の本棚の本は、全て床に落ちたが記憶の棚の本棚は微動だにせず、一冊も落ちなかった。
地鳴りの様な音も止み、静まり返り突然、ユリナが声に出して言った本が光り出し、その光りの中に記憶の棚が消えていった。
後には木の扉が現れ、中央に知識の間と書かれている。
「知識の間?」ユリナが声に出して疑問に思う……
「知識は何かあった結果から生まれる、つまり知識の向こうに記憶があるんだよ、何かを経験する、その経験すら物によっては知識になる、そして経験は記憶になるってことだよ。」
ウィンダムが説明してくれる。
ユリナは扉をゆっくりと押しあける。
扉は予想してた通り相当誰も開けてなかったのだろう……見た目よりかなり重く、重い音を立てながら開いてゆく。
そしてその先には、漆黒の闇を思わせる暗い地下へと続く石造りの螺旋階段が何処までも続いてる様な、そんな錯覚を思わせる程深く長く続いている。
ユリナは思い切って足を踏み入れるが、その時ユリナは僅かな息苦しさを感じる。
「ユリナ、明かりは?」
カナが聞くと、ユリナは即座に答える。
「魔法で明かりをつけちゃだめ!」
カナはまだ踏み入れてないから解らなかったが、不思議に思い足を踏み入れるとその訳が解った。
その階段は一切の魔力が無く、魔力が回復しない空間であった。
とてつもなく強力な結界なのか異空間なのか判断出来ないが、恐ろしい空間である。
そんな場所で明かりの為に魔力を消費すればこの先どうなるか解らない。
ユリナは矢を数本まとめ、小さなカバンから火矢用の布を全て巻きつけ、小瓶の油を染み込ませ僅かな火薬で火をつけ、即席のたいまつを作り二人は階段を降りていく。
暗い階段をたいまつの明かりを頼りに降りていく二人、十五分程歩いただろうか階段はまだまだ続いている、その時不意に後ろから……
ギィィィーバン!と扉が閉まる音がした。
「閉められた?」
カナが言う。
背後からコツ……コツ……と乾いた軽い足音が聞こえてくる。
「入って来た……何?」
ユリナがたいまつで上を見ようとするが暗くて見えないが、二人は急いで降り始めた。
暗い場所にたいまつ、螺旋階段が斜線を切っているが相手が弓を持っていれば一方的に狙われてしまう。二人が急ぎ始めるとそのペースに合わせてコツコツコツッと追ってくる者も足を早めているのが解った。
二人はその音が余りにも乾き軽い足音だと言うことを把握して、生き物では無いことを理解しカナがユリナを急かす。
?とユリナが一瞬振り向くと半泣き状態のカナが居た。
(お姉ちゃんこう言うのダメなんだ……)
先には部屋と思われる明かりが見えて来た。ユリナは仕方ないなと思い、壁に背をつけ道を譲ると猛スピードでカナが追い越していき、その部屋にカナは飛び込んで行くと。
ガキィーン!キンキン!
激しく斬り合う音がした、カナが何かと戦っている!
ユリナも急いで部屋に向かう、気のせいか後ろから追ってくる者は足を止めたのか、足音が消えていた。
ユリナが部屋に着くと、その部屋はドームの天井をしていて、天井には様々な種類の古い武器が何かで吊るされている。
その部屋の中央に真紅の鎧を纏い、赤いマントを身につけ……生前は屈強な騎士であった様に思わせる、体格のいいスケルトンが、カナと剣を交えていた。
だがただのスケルトンでは無いことは確かだ。
「ユリナ気をつけて、コイツ強い!」
カナは半泣き状態でなく、召使いの服を着ているが、サイサスと斬り合った時の様に鋭い殺気を帯びた目をしている。
ユリナは一瞬で気づいた、カナが祝福を使わない、いや使えないのである。
ウィンダムも言っていた、そう言う場所だと。
カナが斬りかかるが赤い騎士は剣で受けシールドで体当たりしようとするが、カナはサイサスとの戦いで、それを経験している為軽々とかわす。
ユリナは走り騎士の足を狙い矢を放ち、三本続けて右足に命中させ、一瞬騎士の動きが鈍り、カナがすれ違いざまに左の脇腹の鎧の隙間を小太刀で振り抜くと、スケルトンなのに切り口から血が吹き出す。
スケルトンの騎士は動きを止め、喋り出す。
「久しいな、これだけの血を我に流させる者は……」
「話した‼︎」
ユリナが驚くがカナが焦りながら言う。
「血を流し話すスカルの騎士……ブラットナイト何故ここに、何故!冥界の騎士がここにいる!」
ブラットナイトは答えずカナに襲いかかる、カナはかわしながら隙を伺うが、ブラットナイトの剣は甘く無い、容赦なくカナに襲いかかる。
早くカナには重すぎる斬撃は小太刀二本でも受け切れない。最悪なのは魔法が使えない事だ。
使えば痛手を負わせられるが、こちらの動きが鈍くなる。
カナは必死に倒す術を探るが、それが仇となりシールドでの重い突きを腹に貰ってしまい、カナは膝をついてしまう。
そこを斬り殺そうとブラットナイトが剣を振りかざした時。
背後からブラットナイトの胸を一本の鋼の矢が貫く、ユリナがあの鉄弓に魔力を込め矢に風の魔法をかけている。
「貴様……」
ブラットナイトの漆黒の目がユリナを睨む。
「来い!」
ユリナは怯まず、あえて挑発した!
ブラットナイトは怒りに満ち溢れユリナに向かって行く。
弓を構えていたのはブラフ、強力な魔法を矢に込めていたので発動させると、カナが近くに居て巻き込んでしまう。
ブラットナイトをカナから遠ざける為にユリナは死を覚悟して挑発していた。
ユリナは既に走るのもままならい程の魔力を使っていたが、必死にそれを悟られない様に凛々しく弓を構えていた。
「風よ、我に従え!」
ユリナが叫ぶとブラットナイトを貫いた矢がエメラルドグリーンに光り出し、溢れる光の線がブラットナイトの足元に円を描きだし、次第に風が渦巻いて行く。
ブラットナイトは立ち止まり、戸惑うがまたユリナとの距離を詰めようとした時、その風の渦が竜巻と化しブラットナイトを宙に上げ、ブラットナイトを真空の刃が切り刻んで行く。
ウィンダムがリヴァイアサンと喧嘩してる時に使った、竜巻の魔法をユリナは見ただけで覚えた様だ。
その苦しむブラットナイトにユリナはブラフで構えてた弓を打ち込んだ、その矢には突風が込められていて、凄まじい速度で加速して、ブラットナイトの鎧を貫通し風穴をあけた!
始めてユリナが祝福を受けて放った矢だ、その風穴からも真空の刃が鎧の内部からスケルトンを切り刻んで行く。
その時入り口の螺旋階段から、何か輝く光が放たれ天井のドームにあたり広がると、竜巻が始めて天井に届き、古びた武器が天井の模様を傷つけ始めた。
「貴方は油断し過ぎた!
この場所で私達が魔法を使わないか、少しづつ使うしか考えなかった!
私の様に命をかけて使う相手がいる事を考え無かった!
それがあなたを冥界に返すことになると!
帰りなさい貴方がいる場所に!」
ユリナは祝福を解放した、命をかけてその竜巻はブラットナイトを天井に叩きつけ凄まじい勢いで入り口脇の壁に吹き飛ばした。
ブラットナイトは音を立てて、床に落ち動かなくなった。
ユリナは祝福をとき、膝をついて激しく息をする。
だが命をかけたはずが、命を削るには至らなかった天井の模様が傷つき、結界の様なものが弱くなっていたのだ。
カナがなんとか立ち上がり、ユリナの元に行きユリナに声をかける。
「ユリナ無茶しすぎだよ、死んだらどうするの?倒せなかったらどうするつもりだったのよ!」
カナはまた半泣き状態だが先程とは訳が違うのは言うまでもない。
「お姉ちゃんは私のこと守ってくれてた。
ずっと……
私の知らない事から、ずっとずっと……
だから私だってお姉ちゃんを守りたかったんだ……」
ユリナが苦しそうに言う。
「バカ……」
カナはそう言いユリナを抱きしめた。
その時……
「まだ終わっていません、気をつけて‼︎」
入り口の方から、優しいがユリナ達を心配する様な声が響いた。
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