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第一章〜ユニオンレグヌス〜

9話✡︎ホーリーネクロマンサー✡︎

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 サイスから東に馬を三時間ほど走らせた森の中に漆黒の馬が木に繋がれていた。
 その二本隣の木の下で黒いローブを着た男が静かに木に寄りかかりながら座わり、木々の囁きを聞いている。

「ウィンダムとミューズか……」
男は重い声で囁く、あのドルイドだ。
そこに煌びやかな長い尾羽を持つ赤い鳥が、空から勢い良く降りて来て、その鳥が話し出した。
「ガーラ近いんだろ?災いの日が、そんなにゆっくりしてて良いのかい?」

「リヴァイアサンはサイスだ、他にウィンダムとミューズがじきに来る、手が出せると思うのか?それともガディア何かを伝えに来たか?」
苦そうな顔をしながらガーラが言うとガディアが笑いながら、


「ガーラらしくないね、どうした?水の巫女に惚れたのかい、祝福を解放した巫女は女神の様に美しいって言うからね。」
「貴様死にたいか?」
怒りを現さず、静かにガーラは言うがガディアは落ち着いて話す。


「やめてくれよ、今はそんなことしてる場合じゃないしね、ホーリーネクロマンサーが近づいてるよ、あんたを探してね。
いっそ水の巫女に災いの日を伝えてあんたの考えてることを伝えたら?巫女が解ってくれたらホーリーネクロマンサーも簡単には手を出さないだろうし」
「フッ、あいつか面倒だな、まぁ……巫女程ではないが……」

ガーラは空を見ながら少し考え、

「そうか……」
そう言うとゆっくり立ち上がり繋いである馬に向かい手綱をほどきながら言う。
「ガディア、巫女を探せ貴様の言う通り話してみよう。」
「あいよ!いい手があるのかい?」
「あぁ、私が調べた事を巫女に調べさせればいいんだ、そうすれば私が何を考えてるかわかるだろう」
「わかったよー」
ガディアはそう言うと鮮やかに枝を縫う様に空へ飛び去って行っく、
ガーラは漆黒の馬に乗りゆっくりとサイスへ向かった。


 ユリナ達は森の中を進んでいた。昨晩カナのおかげで、魔力が急速に戻ったためユリナは馬を走らせるにも、まだ本調子では無いが弓を扱える程集中力が戻っている。
 先頭で馬を走らせるユリナが何かに気づいて右手を静かにあげた、後に続く弓兵の騎馬隊もそれに合わせてペースを落とす。

 ユリナは茂みに目をやりながら、軽く走らせる一瞬茂みの何本かの枝が折れてるのが目に移り、まだ新しく闇の魔力が僅かに残っているのを判断し素早く右手を前に振りペースをあげる。

「何かありましたか?」
カナが問いかける
「枝が数本折れています。
おそらく獣ですが闇の魔力を僅かに残して何かを追っている様に、この先まで続いています。気をつけて」


 カナは一瞬で理解した。だいぶ前から違和感を感じていた訳、そしてユリナの顔つきが変わった事を。
カナは右手の人差し指と中指をぴったりつけて右手をあげると、後から続く騎馬隊は警戒を強める。
 カナは茂みに注意払い見てみると、ユリナの言う通り茂みの枝が所々折れているが、カナは過ぎていく茂みしか確認出来なかった。

 カナは思ってたより、ユリナがレンジャーとして成長しているの感じ僅かに微笑む。

(ウィンダム敵は近くにいる?)
ユリナが聞くと
(敵じゃないけど誰かこの先にいるね。一人?かな……?)
ウィンダムが悩んでいる、風や空気の動きを広範囲で正確に把握する能力を持つ風の守護竜が悩んで急に強く言う。

(止まって!)

ユリナは直ぐに右手を上げ、隊に合図を送り馬を緩やかに止め。
(ウィンダムどうしたの?)
(ゆっくりあの開けたところに一人と沢山いる、生きてない何かが沢山いる。
敵じゃないけど、弓兵は行かせない方がいいよ、何かあっても足手まといになるから。)
(生きていない?闇の力は感じないけど……)


ユリナは様子を伺いながら言う。
「隊はここで、合図があるまで待機してて下さい」
 そう言うとカナに目で合図を送る、ユリナはその開けた場所から水の香りが僅かにするのを感じて不思議に思っていた。
(たしか……この辺りに水場は無かったはず)
そう思いながら下馬して、注意しながら歩きカナもそれに続く。

 次第にぬかるみになり、大きな水溜りが目立つ様になる、ここに来るまで木々や草から雨の匂いは一切しなかった。
 空気は乾いてはいなかったが、雨が降ったあとの様な香りも一切なかった。
(なんでこんなに、この辺りだけ雨が降ったってこと?)
ユリナが疑問に思った。


(エレナがこの先で二日前に戦ったんだよ。
その時に祝福の力で大雨が降ったんだろうね、まだその時の水が少し残ってるね。)
(これがお母さんの戦ったあと……
でもそこに今何がいるの?敵では無いって言うけど……)
そう思いながら慎重に進み、あの広場の端の木に隠れながら広場をカナと覗きこんだ。


 あの日と変わらず一本の巨木が中央に立っている、そしてドルイドが出現させた巨大な岩の槍や城壁の様な壁も残っているが、その岩からはドルイドらしからぬ闇の魔力が感じられる。

 その巨大な岩に触れながら、何かを唱えている白いローブに、小さい鹿の頭蓋骨の様な物をつけた杖を持つ人間の女性がいた。年はまだ二十歳ほどだろうか。

 女性が唱え続けていると、光輝く透明な僧侶や騎士が現れ、その岩の浄化を始めた。
「凄い!ホーリーネクロマンサーだ」
ウィンダムが思わず姿を現して言う。


「ホーリーネクロマンサー?」
ユリナとカナがウィンダムに聞くと。


「ネクロマンサーは死霊使いで闇の力で、怨みや憎悪、苦しみの中で死んでいった全ての者を操ったり、禁呪、呪いを駆使する。死の女神の崇拝者なんだけど……

ホーリーネクロマンサーは光の力を使って、光の元に命を落とした。
聖者や聖騎士あと過ちを犯した罪人でも、天界に行きたいと魂が願っていれば、光の力で操り浄化を手伝わせたり、光の騎士として闇と戦う機会をあげたり、天界に行けるように機会を与えてあげるんだ。

でもネクロマンサーと違って、その魂がそれを望まない限りホーリーネクロマンサーは操れないけどね。」


「じゃあ、あの方も呼ぶことが出来るんですか?」
カナがウィンダムに聞くと。
「出来るよ、彼は偉大すぎるパラディンだからホーリーネクロマンサーなら、きっと誰でも契約を結びたがる、カナさんが考えてる以上のことも本当に凄い使い手なら、守護として人にその霊を渡すことも出来るよ、ただ……」

そう答え話を続けようとしたがそれを遮る様にカナはユリナに
「ユリナ様、申し訳ありません。」

 そう言うとカナは正面からホーリーネクロマンサーに向かって行った。すると前に鎧を着た騎士がうっすらと現れ、具現化しカナの前に立ちはだかり、厳しい顔つきで剣を抜きカナに向けて来た、カナは冷静に相手がパラディンだと鎧から判断した。


「名のあるパラディン様にお見受けします。
センティネル•デュエリストのカナです。私はそちらの方にお話がありますので、通して頂けないでしょうか?」
カナは低姿勢でいて尚且つ対等の様に話しをすると……


「我はサイサス、剣を抜くかそれとも言いなおすか?選ぶがよい」
そうサイサスが言った直後声が聞こえて来た。
(そなたに訳があるのは察するが、隠せるものではない、そして、そなたの願いは隠したまま叶う物でもない)
サイサスは直接カナの心に伝えて来た。
カナはハッと目を見開き、読まれていると直感した。
 とても単純な願い、アルベルト卿とエレナの再開、そしてユリナを父に合わせたい、叶うことなら一時と言わず、出来る限りの時を……
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