16 / 234
第一章〜ユニオンレグヌス〜
9話✡︎ホーリーネクロマンサー✡︎
しおりを挟むサイスから東に馬を三時間ほど走らせた森の中に漆黒の馬が木に繋がれていた。
その二本隣の木の下で黒いローブを着た男が静かに木に寄りかかりながら座わり、木々の囁きを聞いている。
「ウィンダムとミューズか……」
男は重い声で囁く、あのドルイドだ。
そこに煌びやかな長い尾羽を持つ赤い鳥が、空から勢い良く降りて来て、その鳥が話し出した。
「ガーラ近いんだろ?災いの日が、そんなにゆっくりしてて良いのかい?」
「リヴァイアサンはサイスだ、他にウィンダムとミューズがじきに来る、手が出せると思うのか?それともガディア何かを伝えに来たか?」
苦そうな顔をしながらガーラが言うとガディアが笑いながら、
「ガーラらしくないね、どうした?水の巫女に惚れたのかい、祝福を解放した巫女は女神の様に美しいって言うからね。」
「貴様死にたいか?」
怒りを現さず、静かにガーラは言うがガディアは落ち着いて話す。
「やめてくれよ、今はそんなことしてる場合じゃないしね、ホーリーネクロマンサーが近づいてるよ、あんたを探してね。
いっそ水の巫女に災いの日を伝えてあんたの考えてることを伝えたら?巫女が解ってくれたらホーリーネクロマンサーも簡単には手を出さないだろうし」
「フッ、あいつか面倒だな、まぁ……巫女程ではないが……」
ガーラは空を見ながら少し考え、
「そうか……」
そう言うとゆっくり立ち上がり繋いである馬に向かい手綱をほどきながら言う。
「ガディア、巫女を探せ貴様の言う通り話してみよう。」
「あいよ!いい手があるのかい?」
「あぁ、私が調べた事を巫女に調べさせればいいんだ、そうすれば私が何を考えてるかわかるだろう」
「わかったよー」
ガディアはそう言うと鮮やかに枝を縫う様に空へ飛び去って行っく、
ガーラは漆黒の馬に乗りゆっくりとサイスへ向かった。
ユリナ達は森の中を進んでいた。昨晩カナのおかげで、魔力が急速に戻ったためユリナは馬を走らせるにも、まだ本調子では無いが弓を扱える程集中力が戻っている。
先頭で馬を走らせるユリナが何かに気づいて右手を静かにあげた、後に続く弓兵の騎馬隊もそれに合わせてペースを落とす。
ユリナは茂みに目をやりながら、軽く走らせる一瞬茂みの何本かの枝が折れてるのが目に移り、まだ新しく闇の魔力が僅かに残っているのを判断し素早く右手を前に振りペースをあげる。
「何かありましたか?」
カナが問いかける
「枝が数本折れています。
おそらく獣ですが闇の魔力を僅かに残して何かを追っている様に、この先まで続いています。気をつけて」
カナは一瞬で理解した。だいぶ前から違和感を感じていた訳、そしてユリナの顔つきが変わった事を。
カナは右手の人差し指と中指をぴったりつけて右手をあげると、後から続く騎馬隊は警戒を強める。
カナは茂みに注意払い見てみると、ユリナの言う通り茂みの枝が所々折れているが、カナは過ぎていく茂みしか確認出来なかった。
カナは思ってたより、ユリナがレンジャーとして成長しているの感じ僅かに微笑む。
(ウィンダム敵は近くにいる?)
ユリナが聞くと
(敵じゃないけど誰かこの先にいるね。一人?かな……?)
ウィンダムが悩んでいる、風や空気の動きを広範囲で正確に把握する能力を持つ風の守護竜が悩んで急に強く言う。
(止まって!)
ユリナは直ぐに右手を上げ、隊に合図を送り馬を緩やかに止め。
(ウィンダムどうしたの?)
(ゆっくりあの開けたところに一人と沢山いる、生きてない何かが沢山いる。
敵じゃないけど、弓兵は行かせない方がいいよ、何かあっても足手まといになるから。)
(生きていない?闇の力は感じないけど……)
ユリナは様子を伺いながら言う。
「隊はここで、合図があるまで待機してて下さい」
そう言うとカナに目で合図を送る、ユリナはその開けた場所から水の香りが僅かにするのを感じて不思議に思っていた。
(たしか……この辺りに水場は無かったはず)
そう思いながら下馬して、注意しながら歩きカナもそれに続く。
次第にぬかるみになり、大きな水溜りが目立つ様になる、ここに来るまで木々や草から雨の匂いは一切しなかった。
空気は乾いてはいなかったが、雨が降ったあとの様な香りも一切なかった。
(なんでこんなに、この辺りだけ雨が降ったってこと?)
ユリナが疑問に思った。
(エレナがこの先で二日前に戦ったんだよ。
その時に祝福の力で大雨が降ったんだろうね、まだその時の水が少し残ってるね。)
(これがお母さんの戦ったあと……
でもそこに今何がいるの?敵では無いって言うけど……)
そう思いながら慎重に進み、あの広場の端の木に隠れながら広場をカナと覗きこんだ。
あの日と変わらず一本の巨木が中央に立っている、そしてドルイドが出現させた巨大な岩の槍や城壁の様な壁も残っているが、その岩からはドルイドらしからぬ闇の魔力が感じられる。
その巨大な岩に触れながら、何かを唱えている白いローブに、小さい鹿の頭蓋骨の様な物をつけた杖を持つ人間の女性がいた。年はまだ二十歳ほどだろうか。
女性が唱え続けていると、光輝く透明な僧侶や騎士が現れ、その岩の浄化を始めた。
「凄い!ホーリーネクロマンサーだ」
ウィンダムが思わず姿を現して言う。
「ホーリーネクロマンサー?」
ユリナとカナがウィンダムに聞くと。
「ネクロマンサーは死霊使いで闇の力で、怨みや憎悪、苦しみの中で死んでいった全ての者を操ったり、禁呪、呪いを駆使する。死の女神の崇拝者なんだけど……
ホーリーネクロマンサーは光の力を使って、光の元に命を落とした。
聖者や聖騎士あと過ちを犯した罪人でも、天界に行きたいと魂が願っていれば、光の力で操り浄化を手伝わせたり、光の騎士として闇と戦う機会をあげたり、天界に行けるように機会を与えてあげるんだ。
でもネクロマンサーと違って、その魂がそれを望まない限りホーリーネクロマンサーは操れないけどね。」
「じゃあ、あの方も呼ぶことが出来るんですか?」
カナがウィンダムに聞くと。
「出来るよ、彼は偉大すぎるパラディンだからホーリーネクロマンサーなら、きっと誰でも契約を結びたがる、カナさんが考えてる以上のことも本当に凄い使い手なら、守護として人にその霊を渡すことも出来るよ、ただ……」
そう答え話を続けようとしたがそれを遮る様にカナはユリナに
「ユリナ様、申し訳ありません。」
そう言うとカナは正面からホーリーネクロマンサーに向かって行った。すると前に鎧を着た騎士がうっすらと現れ、具現化しカナの前に立ちはだかり、厳しい顔つきで剣を抜きカナに向けて来た、カナは冷静に相手がパラディンだと鎧から判断した。
「名のあるパラディン様にお見受けします。
センティネル•デュエリストのカナです。私はそちらの方にお話がありますので、通して頂けないでしょうか?」
カナは低姿勢でいて尚且つ対等の様に話しをすると……
「我はサイサス、剣を抜くかそれとも言いなおすか?選ぶがよい」
そうサイサスが言った直後声が聞こえて来た。
(そなたに訳があるのは察するが、隠せるものではない、そして、そなたの願いは隠したまま叶う物でもない)
サイサスは直接カナの心に伝えて来た。
カナはハッと目を見開き、読まれていると直感した。
とても単純な願い、アルベルト卿とエレナの再開、そしてユリナを父に合わせたい、叶うことなら一時と言わず、出来る限りの時を……
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
元現代人はそれでも安定を切望する
眼鏡から鱗
ファンタジー
思いつきで、ふわゆる設定です。
心を、めちゃ広げて読んで頂きたいです。
不定期投稿です。
※旧題 現代人は安定を切望するんです
★画像は、AI生成にて作成したものとなります★
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる