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第一章〜ユニオンレグヌス〜

5話✡︎ウィンダム✡︎

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 丁度その時サイスに居るエレナが、ハッと目を覚まし慌ててベッドから飛び起き水鏡に魔力を送り覗きこんで、女神の祝福の力を高めると全身が水色に輝きだす。

 そして手を握り声を出して祈り始めた。

「大いなる風の女神ウィンディア、エヴァの巫女として祈ります。
我が娘を愛して下さり嬉しく思います。
ですがまだ娘は巫女に相応しくなく命を削ってしまいます。
どうか我が娘にお与え下さった祝福をお解きください……
母として……巫女として……
切に願い祈りを捧げます……」


 そう祈ると締め切った部屋の中にもかかわらず、エレナを優しい風がそっと包み込み、そっと離れていく。そして風が部屋から消えると、水鏡を見てユリナの様子を伺った。
するとユリナの髪の色が薄くなって行くのが止まった。

 ユリナはうっすらと開いた目でカナを見て。
「大丈夫、少し……休みます……そのままお母さんのところに……」
そうユリナは弱々しく言うと静かに眠りについた。

 カナは直ぐに数名の弓兵に指示をだし、荷馬車に横になれる空間を作り出して、ユリナを休ませた、

「ユリナ様失礼します。」
カナはそう言うとユリナのお腹に直接手をあて、口元に軽く指をあて何かを確かめる。

「良かった、まだ魔力が残ってる。」

カナがそう言うと、エレナもほっとして水色の輝きも消えて行ゆく。
 そして部屋の机の引き出しをあけ、小さな小箱とりだし、その小箱を優しい瞳で見つめる
「ユリナにもこれが必要な時期が、来たのかな」
そう優しい声で呟いた。


 エレナは水鏡をまた見つめユリナが寝ている様子を伺う、横にカナが付き添っている。
護衛隊は再出発したようで馬車は軽く揺れていた。

 ユリナの寝顔を見て、夢を見ているのに気づいた、ただの夢では無い様子を感じた。
「?」
不思議に思い夢見の魔法を使う事にして、エレナはベッドに潜り込んで目を閉じ意識を深く落としてゆく、次にユリナの意識をイメージした。

「スクゥイ」

そう唱えた。その瞬間エレナは眠りにつき、ユリナの夢に入り込んだ。


 そこはエレナの屋敷の庭、柔らかな芝生が青々としいつも通りの風景、爽やかな風が吹いていた。そんな庭の中央の噴水にユリナは座り悩んでいる。
 エレナはコソコソと物陰に隠れて様子を伺った。

「うーん。あの言葉、聞いた事あるんだけどぉ……」
ユリナが悩んでいる。
(あの言葉?)
そうエレナが思った時。


「それなら本人に聞いた方が早いよ!そこに居るから」

急に幼い子供の様な声がした。
 エッ!とエレナもユリナも全く同時に驚いた、そして二人とも声のした方を全く同じタイミングで見る流石親子である。

 その声の主はユリナの右、手を伸ばして届く程近くにいて、ユリナの顔の高さくらいの所で、全身エメラルドグリーンの可愛らしい幼竜がパタパタパタパタと飛んでいた。

「こんにちはユリナ、僕はウィンダム風の守護竜だよ」
そうウィンダムはニコニコしながらユリナに言う。

「守護竜ってあの女神を守ってるって言う、あの神話の?」
 ユリナは本当に?と思いながらウィンダムに聞き返した。
ウィンダムはニコニコしながら答える。
「そうだよ、ユリナはまだエレナがリヴァイアサンを召喚したのを見たこと無いんだ。」
ウィンダムがそう言うと。

 エレナは胸元がムズムズしたのを感じ、慌てて抑える。ネックレスの宝石からリヴァイアサンが出たがってるのだ。

(ちょっと今出たら、バレちゃうでしょ)
心でリヴァイアサンに言い聞かせる。
その時ウィンダムがエレナの方をチラ見する。エレナは指を立てシーッとウィンダムにする。

「お母さんってリヴァイアサンを扱えるの?」
ユリナは質問を続ける。
ウィンダムはエレナのシーにどうしようかなぁと言う感じで言う。
(あぁ……めんどくせぇ……)
ウィンダムは内心そう思っていた。

「そうだよユリナも僕の事扱えるよでも、それは祝福を受けた事と同じ意味があるんだよ。
エレナがユリナを心配してウィンディア様にお祈りして、祝福を解いてもらったの。
でもウィンディア様に、僕はここにいるように言われたから。
ユリナが成長したら、また祝福をきっと受けれるよ」


(魔力修練…ユリナ苦手だよね~)
そう思いエレナは心で涙をながして聞いていた。
 その苦手の様は、リヴァイアサンも宝石の中から見ていて汗を流す。

「成長って私に何が足りないの?」
ユリナがそれを質問した。
「魔力だよ、さっきもユリナは祝福を受けたけど、ユリナ自身の魔力が足りないから。
あの一本の矢を射って魔力が尽きちゃったんだ。
魔力が尽きても祝福を維持出来るけど、それは命を削っちゃうんだ。」
ウィンダムがそう言う。

「じゃ、魔力を維持する方法は?」
ユリナが聞く
「魔力修練だよ!」
すかさずウィンダムが答える。
ユリナの時が止まる……

「うーん他にも魔力を維持する方法はあるけど」
とウィンダムが続けようとした時、それを黙らせるようにリヴァイアサンがエレナの宝石から飛び出してウィンダムに飛びつく。
「お前は本当に口が軽いヤツだな」
リヴァイアサンが幼い声でウィンダムに文句を言う。

 ウィンダムは強風を吐き出し、リヴァイアサンを吹き飛ばそうとするが、それをリヴァイアサンは高圧の水を吐き出し対峙するが……二匹とも幼竜の姿で、うちわと水鉄砲の様な戦いで迫力は無く可愛い子供のケンカでしかない。

(もう仕方ないわね……)
エレナがそう思い姿を表した。


「二人ともあっちでやりなさい」


エレナが仕方なく言うと。
「はーい」
ウィンダムとリヴァイアサンは素直な返事をして離れていく。
エレナは幼竜を見事に子供の様に扱った。
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