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序章〜闇のレジェンド〜
序章1話✡︎始まりの地✡︎
しおりを挟むゴブリンはこの時代に最高の栄華を誇って居た。
クリタス山脈、クリタス平原、クリタス荒野を含むクリタス地方と言う広大な地域を中心に、ガディア大森林、バルト地域を有し、種族国家としては最大を誇った。
それは冥界に惑わされない、真実を見抜く真紅の瞳。
その瞳は冥界の力が精神を蝕む事を防ぐ抵抗力も有り、闇の女神オプスが地上に送り出した地上世界を冥界から守る、守護者としての使命を帯びた種族である。
巨人族がそれを深く理解しその国土を与え繁栄をもたらしたのである。
そしてゴブリン達は闇の眷属であり、その特徴として五千年程の長い寿命がある。
水の女神エヴァが生み出し、全ての命の源である水を力とするエルフ族には遠く及ばないが、種族として考えればエルフの次に長い寿命を有する。
そして首都クリタスから馬を飛ばして三時間程走ったクリタス平原に、二人の若いゴブリンと一人の若いオークが居た。
ゴブリンは男女で兄妹のようだ。
兄は大きな斬馬刀を模した木刀で、同じ物を持つオークの若者と叩き合っている。
ゴブリンの妹の方はそれを笑顔で見つめてる。
ゴブリンの木刀がかなりの速さで、オークの右胸を突こうとした。
オークはそれを間一髪で弾き叫ぶ。
「トール!今のは危ねぇだろうが!」
「あぁ⁈グーダ甘い事を言うな、戦場なら危ねぇ事しか無いぜ」
「お兄様、ここは戦場ではありませんよ!」
トールはこの時千歳、妹のトータリアは九百歳、オークのグーダは五百歳程度であり、オーク族は寿命で三千年程生きる為に、見た目は皆同じくらいの二十歳程の年頃に見える。
トールはクリタスの王子として生まれたにも関わらず、ひたすらに剣に磨きをかけるように、毎日の鍛錬を欠かさない。
グーダはオーク族最大部族の王子で、部族間争いに巻き込まれ無いように、クリタス王国の首都クリタスに来ていた。
二人は出会ってから意気投合し、頻繁にこうして木刀を交えている。
二人はまだ知らない、この先千年後にまさにこの場所で、世界の命運をかけた戦いに全てを捧げる事を……
その様子を天界から風の女神ウィンディアが風の輪を通して見ていた。
「ウィンディア?何を見ているのですか?」
「お姉様、今日は天界に何かご用ですか?」
「とくに何も無いのですが、お母様のお顔を見たくなりまして、来てみました。」
そう闇の女神オプスが瞳を閉じたまま笑顔で話す。
「ところで、ゴブリンの王子がどうかしたのですか?」
ウィンディアはそう聞かれると、頰を赤くしながら言う。
「いえ、彼は闇の眷属お姉様の生み出した種族なのに、風の様に包み込む様な優しさと竜巻の様に激しい心を持っていて……
何故私が生み出した、バディ族にその様な素敵な者が生まれないのかなって……」
明らかに誤魔化しながら言っているのをオプスは見てクスクスと小さく笑うと。
「お姉様笑わないで下さい…」
恥ずかしがりながらウィンディアは言うと
「はい」
オプスは笑顔で返事をして、アインの屋敷に向かって行った。
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