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THE GROUND ZERO Chapter3
第10章 沈黙の戦場【8】
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「そうだ」
突然思い立った僕は、ジョンの冷たい手に握られているハンドガンを彼の手から離し、代わりに僕が手に取った。
「コイツはもう、お前にはいらないだろ。僕が引き継ぐ」
「コヨミ、お前そのハンドガンを使うのか?」
マジスターが僕に尋ねると、僕は首を縦に振った。
「ああ……現代兵器はやっぱりあんまり好きにはなれないけど、でもこの銃だけは特別だ。ジョンはライフルの弾が飛び交う中、コイツ一丁で戦火に飛び込んだんだ……その勇気を少しでも僕に分けて欲しい」
「お守りのつもりか?」
「兵器はお守りにはならないだろ? 自分の力にするんだ」
「なるほど、取り込むということだな」
「そうだ……それにこの銃は、どの銃よりも綺麗なはずなんだ」
「どうして?」
マジスターが首を傾げてみせる。
「ジョンが官給品だからって、毎日磨いていたんだ……これにはマグナブラの人々の血と汗が混じってるって。だからせめて、自分の手の内にある間はそれを常に輝かせていたいってね……」
「なるほど……どおりで他のハンドガンには無い威厳を感じたと思ったわ!」
「本当かよそれ?」
「カッカッカッ!」
マジスターが本当にそんなことを思っていたかは定かではないが、しかし本当によく磨かれている……スライドがまるで鏡のように磨かれており、月光を反射する。
でもこれから僕が管理するとなると、おそらくこの美しさは長くはもたないだろうな。僕はあいつと違って、大雑把なところがあるし……。
できる限りの努力はしようと思うけど。
「そうだルーナ、君確か射撃の腕が良いんだったよね?」
「えっ!?」
唐突に話を振られ、ルーナは一瞬困惑していたが、しかしいつものように強気な態度というか、腕を組んで、自慢げに鼻を高々と伸ばした。
「ま、まあね! 射撃だって、レジスタンスの中でわたし……(以上の人も結構いたけど)……上手い方だったわよ!!」
「えっ? 今小さい声でそれ以上の人も結構いたって……」
「だあああああああああああっ!! 細かいこと言わないっ! 少なくともアンタよりかは上手いからっ!!」
「なにムキになってるんだよ……」
「ムキになってない!!」
急にプンスコ怒り出して……忙しい子だなぁ。
「それで、腕が良いからなによ?」
「ああ……いやぁ、もしよかったら僕に射撃を教えてくれないかなって思ってさ。拳銃は持ってるだけじゃ力にはならないからね」
「えっ! でも……教えるならマジスターさんの方がいいんじゃないの?」
「マジスターはさっき手に入れた無線機について色々やることがありそうだし……ねっ? マジスター?」
「ああ、この無線機でマグナブラの無線を傍受できれば、わしらの今後の行動もとりやすくなる。しかし周波数を探し当てるのに少し手間取りそうだからな……」
「ということだ」
「そう……」
これで納得してくれるだろうと思っていたのだが、しかしルーナは腕を組んだまま、しかめっ面をしていた。
「……そんなに僕に射撃を教えるのが嫌なの?」
「えっ? いや……嫌ってわけじゃないけど……」
「けど?」
「教えるのが苦手なのよ……」
「ああ……」
「ああってなによ! そうだと思ったみたいな……」
「でも、そうなんだろ?」
「んん……まあ……」
ルーナは肩を落とす。突っぱねずに折れてくるあたり、どうやら本当にあまり自信が無いようだな。
「大丈夫、僕は現代兵器が好きじゃないからって、扱いをまったく知らないズブの素人ってわけでもない。そうだな……現に君のハーミットだって撃ってみせただろ?」
「なによそれ……あんなのただ引き金を引いただけじゃない。射撃とは言えないわ」
「だからその射撃とやらを僕に教えてくれよ」
「なによそれ……まあいいわ、わたしはどちらかと言えば、習うよりも慣れろって主義だから、細々と一々説明しないからそのつもりでね」
「ああ、僕も長々と同じ説明をされるのはあまり好きじゃない。一度でその技術を盗んでやるよ」
こうして僕は剣に固執することを捨て、絶対に握らないと僕の中で誓っていた銃を、その手に握ることを決意した。
この世界を本当に壊すつもりなら、一つの物に、一つのこだわりに縛られてはならない……あらゆる状況で、あらゆる手段を取れるような、そんな戦士にならなければならないのだ。
僕の手元には小剣しかない。しかし小剣だけでは、この現代の戦場において主力とされている飛び道具には到底対抗できない。
だったらもっと、戦略的に有効に使える拳銃を体得しておくべきだと、そう判断するキッカケをこの沈黙の戦場が……そしてジョンが、僕に与えてくれたのだ。
僕は今まで現実から目を背き、自分の中の妄想ばかりを見ていた。人の死も見ずに、戦うことの全てを理解しているフリをしていたんだ。
しかし今は違う……人の死に直に触れたことで、ハッキリ目を覚ますことができた。
これから僕の目に映るのは正真正銘、本物の現実だ。そしてその、現実が映る目をしっかりと見開いたまま、その波に抗っていかなければならない。波の飛沫で目を瞑ることさえも、許されない。
全てはこの世界に……僕達の思い描く理想を実現するために、僕達はこの現実を戦い抜くことを、この戦場に、ここで散っていった者達に、そしてジョンに、僕は心の底から……強く誓った。
突然思い立った僕は、ジョンの冷たい手に握られているハンドガンを彼の手から離し、代わりに僕が手に取った。
「コイツはもう、お前にはいらないだろ。僕が引き継ぐ」
「コヨミ、お前そのハンドガンを使うのか?」
マジスターが僕に尋ねると、僕は首を縦に振った。
「ああ……現代兵器はやっぱりあんまり好きにはなれないけど、でもこの銃だけは特別だ。ジョンはライフルの弾が飛び交う中、コイツ一丁で戦火に飛び込んだんだ……その勇気を少しでも僕に分けて欲しい」
「お守りのつもりか?」
「兵器はお守りにはならないだろ? 自分の力にするんだ」
「なるほど、取り込むということだな」
「そうだ……それにこの銃は、どの銃よりも綺麗なはずなんだ」
「どうして?」
マジスターが首を傾げてみせる。
「ジョンが官給品だからって、毎日磨いていたんだ……これにはマグナブラの人々の血と汗が混じってるって。だからせめて、自分の手の内にある間はそれを常に輝かせていたいってね……」
「なるほど……どおりで他のハンドガンには無い威厳を感じたと思ったわ!」
「本当かよそれ?」
「カッカッカッ!」
マジスターが本当にそんなことを思っていたかは定かではないが、しかし本当によく磨かれている……スライドがまるで鏡のように磨かれており、月光を反射する。
でもこれから僕が管理するとなると、おそらくこの美しさは長くはもたないだろうな。僕はあいつと違って、大雑把なところがあるし……。
できる限りの努力はしようと思うけど。
「そうだルーナ、君確か射撃の腕が良いんだったよね?」
「えっ!?」
唐突に話を振られ、ルーナは一瞬困惑していたが、しかしいつものように強気な態度というか、腕を組んで、自慢げに鼻を高々と伸ばした。
「ま、まあね! 射撃だって、レジスタンスの中でわたし……(以上の人も結構いたけど)……上手い方だったわよ!!」
「えっ? 今小さい声でそれ以上の人も結構いたって……」
「だあああああああああああっ!! 細かいこと言わないっ! 少なくともアンタよりかは上手いからっ!!」
「なにムキになってるんだよ……」
「ムキになってない!!」
急にプンスコ怒り出して……忙しい子だなぁ。
「それで、腕が良いからなによ?」
「ああ……いやぁ、もしよかったら僕に射撃を教えてくれないかなって思ってさ。拳銃は持ってるだけじゃ力にはならないからね」
「えっ! でも……教えるならマジスターさんの方がいいんじゃないの?」
「マジスターはさっき手に入れた無線機について色々やることがありそうだし……ねっ? マジスター?」
「ああ、この無線機でマグナブラの無線を傍受できれば、わしらの今後の行動もとりやすくなる。しかし周波数を探し当てるのに少し手間取りそうだからな……」
「ということだ」
「そう……」
これで納得してくれるだろうと思っていたのだが、しかしルーナは腕を組んだまま、しかめっ面をしていた。
「……そんなに僕に射撃を教えるのが嫌なの?」
「えっ? いや……嫌ってわけじゃないけど……」
「けど?」
「教えるのが苦手なのよ……」
「ああ……」
「ああってなによ! そうだと思ったみたいな……」
「でも、そうなんだろ?」
「んん……まあ……」
ルーナは肩を落とす。突っぱねずに折れてくるあたり、どうやら本当にあまり自信が無いようだな。
「大丈夫、僕は現代兵器が好きじゃないからって、扱いをまったく知らないズブの素人ってわけでもない。そうだな……現に君のハーミットだって撃ってみせただろ?」
「なによそれ……あんなのただ引き金を引いただけじゃない。射撃とは言えないわ」
「だからその射撃とやらを僕に教えてくれよ」
「なによそれ……まあいいわ、わたしはどちらかと言えば、習うよりも慣れろって主義だから、細々と一々説明しないからそのつもりでね」
「ああ、僕も長々と同じ説明をされるのはあまり好きじゃない。一度でその技術を盗んでやるよ」
こうして僕は剣に固執することを捨て、絶対に握らないと僕の中で誓っていた銃を、その手に握ることを決意した。
この世界を本当に壊すつもりなら、一つの物に、一つのこだわりに縛られてはならない……あらゆる状況で、あらゆる手段を取れるような、そんな戦士にならなければならないのだ。
僕の手元には小剣しかない。しかし小剣だけでは、この現代の戦場において主力とされている飛び道具には到底対抗できない。
だったらもっと、戦略的に有効に使える拳銃を体得しておくべきだと、そう判断するキッカケをこの沈黙の戦場が……そしてジョンが、僕に与えてくれたのだ。
僕は今まで現実から目を背き、自分の中の妄想ばかりを見ていた。人の死も見ずに、戦うことの全てを理解しているフリをしていたんだ。
しかし今は違う……人の死に直に触れたことで、ハッキリ目を覚ますことができた。
これから僕の目に映るのは正真正銘、本物の現実だ。そしてその、現実が映る目をしっかりと見開いたまま、その波に抗っていかなければならない。波の飛沫で目を瞑ることさえも、許されない。
全てはこの世界に……僕達の思い描く理想を実現するために、僕達はこの現実を戦い抜くことを、この戦場に、ここで散っていった者達に、そしてジョンに、僕は心の底から……強く誓った。
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