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疑似恋愛の章
山下美桜の秘密
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「何度やっても無駄だって事ですね。わかりました。私と昌晃さんじゃ相性悪すぎるって事ですね。お兄さんには一度も見破られなかったって言うのに、昌晃さんってどんだけ凄いんですか」
そう言いながらもまんざらではないと言った様子の美桜ちゃんは嬉しそうに花を膨らませていたのだが、それを見ていた昌晃君はあまり興味のない様子でスマホの画面をじっと見ていた。
「それで、なんで僕がここに呼ばれたのか理由も聞かずに鬼ごっこをしてたんだけど、そろそろ説明してもらっても良いかな?」
昌晃君を呼んだ理由は璃々の方から簡単に説明していた。俺は璃々ほど説明が上手くないので丸ごと任せてしまったのだが、もともと美桜ちゃんが頼んだことなので俺よりも璃々たちで説明してもらった方が性格に意図も伝わると思っていた。
「あの時の様子を近くで美桜ちゃんが見てたって事なのか。それは全然気付かなかったよ」
「俺も全然気付かなかったよ。あとで思い返してみても全く記憶になかったんだけど、天樹透たちが撮ってたビデオの映像にはちゃんと映ってたみたいだよ。ハッキリと姿をとらえている映像はないんだけどさ、美桜ちゃんぽい人が結構な回数見きれてたって話だからね」
「そんな技術あるなら助けてくれても良かったのに」
「私的には助けても良かったと思ってるんですけど、さすがに高校生の喧嘩に中学生がでしゃばるのもどうかと思ったんですよ。それに、フランソワーズさん達がいたから問題ないだろうって思ってましたからね。さすがに普通の人にフランソワーズさん達が負けるとは思えないですし、負けてしまうような相手だったら私も潜り込めなかったとおもんですよ」
「中学生とか高校生とかあんまり気にしなくても良いと思うんだけどな。美桜ちゃんが戦ってくれてたら愛華も無理に加わらずに済んだと思うんだけどな」
昌晃君はあの時の事を思い出して少し申し訳なさそうな顔をしているように見えた。あの場面で愛華さんは戦いに加わる必要も無かったのだろうけど、昌晃君が参加してしまった以上仕方ないと言った感じで戦いに加わっていたのだ。その割には二人ともノリノリで戦っていたようにも思えたのだけれど、外から見るのと本人たちが思っていることは同じではないのだろうな。
「そうは言いますけど、私が参加してたとしてもお二人は戦いに興じてたと思いますよ。だって、あんなに嬉しそうに戦ってる人を見るのって初めてでしたもん。噂によると、昌晃さんと愛華さんってこっちの世界では一度も喧嘩すらしたことないそうじゃないですか。他の世界の事を思い出して楽しくなってたって事なんじゃないですか?」
その瞬間、全員の視線が昌晃君に向けられた。確かに、あの時の昌晃君と愛華さんはとても楽しそうにしていたように見えた。二人が少し離れて戦っていた時はそういう風には感じなかったのだが、手を伸ばせば届くような距離にいる時は戦闘中だろうが何だろうがお構いなしに笑顔で二年生集団と戦っていたのだ。フランソワーズさん達は不敵な笑みを浮かべることはあったとしても、昌晃君と愛華さんみたいに笑いながら人を殴ることは無かったと思う。昌晃君と愛華さんに敬意が感じられないというわけではなく、久しぶりの戦いを楽しんでいるようにも見えていたのだ。
「まあ、愛華がどう思ってるかは聞いて何で知らないけどさ、僕はあの瞬間は昔を思い出して楽しかったなって思ったよ。正直に言うけどさ、一番最初に天樹さんが教室に来た時からこんな日がいつか来るといいなって思ってたからね。僕の中でフラストレーションも溜まっていたし、戦いに身を置かないってのはこんなにもストレスを感じてしまうものなのかって思ってたよ。普通の生活にはとっくに慣れているはずなんだけど、僕と愛華は考え方も記憶も違っていて、僕は戦うという事に喜びを見いだしてしまっているのかもしれないね」
「昌晃さんは愛華さんを戦わせたくなかったって事ですよね。でも、フランソワーズさん達は別に戦っても構わないって思ってたんですか?」
「いや、出来ることなら女子に頼らずに男子達だけであの危機を乗り越えられたら良かったなって思ってたよ。でも、それってとても難しい事だったと思うんだよね。油断していたとはいえ、みんな始まる前に一回やられちゃってたからな。僕もそうなんだけどさ、話し合いで解決できればいいなって最初は思ってても、相手にその気が無いんじゃ無防備に殴られるだけで終わっちゃうもんね」
「でも、油断してなかったとしてもお兄さんたちは奇襲掛けられてアレよりも酷い状況になってたと思いますよ。刺青の劉さんがが抑えてくれてたから結果的には良かったと思いますけど、あの劉さんがもう少し遅く来てたら男子も女子もみんな酷い目に遭ってたと思いますからね。天樹さんが連れてきた人の中で本当に危険な人達って劉さん達で処理してたんですよ。誰にも気付かれないうちにそっと劉さんが片付けていたんですよ」
「美桜ちゃんって刺青の人にやたら詳しいみたいだけど、何か知ってたりするの?」
美桜ちゃんが刺青の劉さんを知っているのは意外だったが、美桜ちゃんが知っているという事を璃々が知らなかったという事はそれ以上に意外な事だった。璃々は頭が良いので何事も理解しているもんだと思っていたのだが、実際には調べもついていないという事もあるのだと知ることが出来た。ただ、あの時がイレギュラーな出来事だっただけで、普段であれば時間に余裕をもって行動しているように思えたのだ。
「何か知っているのかって言われても、知ってることの方が多いかも。知らない事って数えるくらいしかないかも」
「それって、どういう意味?」
「どういう意味って、劉さん達の事はよく知ってるよって事だけど。それがどうかしたんですか?」
この中で劉さんと面識があるのは俺だけだと思っていたのだが、意外なことに美桜ちゃんも知り合いではあるようだ。知り合いと呼ぶには細かいところまで知っているようなのだが、それも上辺だけの関係のようにも見えていた。
「お兄さんは気付いているかもしれないけどさ、私は特別な訓練を受けて成長した忍びなんだ。女の子だからくのいちって言うのかもしれないけど、あんまり性別で呼び名を変えるのって良くないと思ってるんだって。だから、私達は自分たちの事をくのいちって呼ぶことは無いだよ。呼んでも返事してあげないからね」
美桜ちゃんが忍びというのが本当なのかまだわからないのだが、俺からアレだけ素早く逃げ続けることが出来るという事だけでも本当に忍びだと言って問題ないようにも思える。だが、今のところ動きが早いという事と隠れるのが上手だという事しか知らない状況にある。
「結局のところ、私は昌晃さんに捕まることが無かったですね。途中で何度か捕まってもいいやっていう思いがあったんだけど、真剣に見ようとしているお兄さんの姿を見てしまっては手を抜くことなんて出来ないと思っていたんです。でも、私がいくら頑張ったところでお兄さんは私の事を見てはくれないんだろうなって思ってるんです。次に私が新聞なり雑誌に載るようなことがあったらちゃんと買ってね」
「買うのは良いけどさ、忍者ってどういうこと?」
「そのまんまの意味ですよ。今できることは限られていますけど、少しくらいだったら忍者らしいところを見せますけど。壁でも登ってみますか?」
美桜ちゃんが自分で言いだしたことなので誰も止めなかったのだが、美桜ちゃんは普通にその辺を歩いているような感覚で屋敷の壁を普通に歩いて行った。あまりにも信じられないような出来事だったので俺達は目を皿のように丸くしてしまったのだが、そんな事は構わずに美桜ちゃんは屋根まで上ってそのまま飛び降りてきたのだ。
結構な高さのある建物なので着地の際の衝撃は相当なものであると予想されるのだが、美桜ちゃんは着地とほぼ同時に体を上下に細かく揺らしているように見えた。聞いてみると、その動きをする事で着地の衝撃を逃がすことが出来るそうなのだ。もちろん、そんな事は俺にも昌晃君にも出来ないだろう。もしかしたら、メイドの三人は出来るのかもしれないが、俺達の周りで真似することが出来る人なんて一人もいないんだろうと思い始めていた。
「これで少しは信じてもらえましたかね。でも、安心してください。私一人でできる忍術は今みたいに普通に使えるんですけど、それ以外に物を使う忍術や犠牲を必要とする忍術は使うことが出来なくなってるんですよ。仮に、私と喧嘩をしたとしても私は隠れたり壁を上ったりするだけで相手にしたくないかもしれないですよ。ただし、普通の刃物を持って後ろからそっと。って事もあるかもしれないですね」
美桜ちゃんが忍者であることは間違いないと思うのだが、今の時代にそれをちゃんと活かすことが出来るのだろうか。俺は普段からこんな感じで目立つような事をしていなければいいなと願っていた。
「ところで、昌晃さんはこんな忍者な私でも好きになってもらえますか?」
「ごめんなさい。今はまだ付き合うとかは無理です。お互いの事をもっと知ってからでもいいんじゃないかなって思うんだけど、急ぐ理由でもあるのかな?」
「いえ、理由とかは無いですよ。私も抜け忍になったわけではないので自由もありますしね。これから少しずつでいいんで仲良くしてくださいね。私もその方がいいんじゃないかなって思ってますからね」
そう言いながらもまんざらではないと言った様子の美桜ちゃんは嬉しそうに花を膨らませていたのだが、それを見ていた昌晃君はあまり興味のない様子でスマホの画面をじっと見ていた。
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昌晃君を呼んだ理由は璃々の方から簡単に説明していた。俺は璃々ほど説明が上手くないので丸ごと任せてしまったのだが、もともと美桜ちゃんが頼んだことなので俺よりも璃々たちで説明してもらった方が性格に意図も伝わると思っていた。
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「俺も全然気付かなかったよ。あとで思い返してみても全く記憶になかったんだけど、天樹透たちが撮ってたビデオの映像にはちゃんと映ってたみたいだよ。ハッキリと姿をとらえている映像はないんだけどさ、美桜ちゃんぽい人が結構な回数見きれてたって話だからね」
「そんな技術あるなら助けてくれても良かったのに」
「私的には助けても良かったと思ってるんですけど、さすがに高校生の喧嘩に中学生がでしゃばるのもどうかと思ったんですよ。それに、フランソワーズさん達がいたから問題ないだろうって思ってましたからね。さすがに普通の人にフランソワーズさん達が負けるとは思えないですし、負けてしまうような相手だったら私も潜り込めなかったとおもんですよ」
「中学生とか高校生とかあんまり気にしなくても良いと思うんだけどな。美桜ちゃんが戦ってくれてたら愛華も無理に加わらずに済んだと思うんだけどな」
昌晃君はあの時の事を思い出して少し申し訳なさそうな顔をしているように見えた。あの場面で愛華さんは戦いに加わる必要も無かったのだろうけど、昌晃君が参加してしまった以上仕方ないと言った感じで戦いに加わっていたのだ。その割には二人ともノリノリで戦っていたようにも思えたのだけれど、外から見るのと本人たちが思っていることは同じではないのだろうな。
「そうは言いますけど、私が参加してたとしてもお二人は戦いに興じてたと思いますよ。だって、あんなに嬉しそうに戦ってる人を見るのって初めてでしたもん。噂によると、昌晃さんと愛華さんってこっちの世界では一度も喧嘩すらしたことないそうじゃないですか。他の世界の事を思い出して楽しくなってたって事なんじゃないですか?」
その瞬間、全員の視線が昌晃君に向けられた。確かに、あの時の昌晃君と愛華さんはとても楽しそうにしていたように見えた。二人が少し離れて戦っていた時はそういう風には感じなかったのだが、手を伸ばせば届くような距離にいる時は戦闘中だろうが何だろうがお構いなしに笑顔で二年生集団と戦っていたのだ。フランソワーズさん達は不敵な笑みを浮かべることはあったとしても、昌晃君と愛華さんみたいに笑いながら人を殴ることは無かったと思う。昌晃君と愛華さんに敬意が感じられないというわけではなく、久しぶりの戦いを楽しんでいるようにも見えていたのだ。
「まあ、愛華がどう思ってるかは聞いて何で知らないけどさ、僕はあの瞬間は昔を思い出して楽しかったなって思ったよ。正直に言うけどさ、一番最初に天樹さんが教室に来た時からこんな日がいつか来るといいなって思ってたからね。僕の中でフラストレーションも溜まっていたし、戦いに身を置かないってのはこんなにもストレスを感じてしまうものなのかって思ってたよ。普通の生活にはとっくに慣れているはずなんだけど、僕と愛華は考え方も記憶も違っていて、僕は戦うという事に喜びを見いだしてしまっているのかもしれないね」
「昌晃さんは愛華さんを戦わせたくなかったって事ですよね。でも、フランソワーズさん達は別に戦っても構わないって思ってたんですか?」
「いや、出来ることなら女子に頼らずに男子達だけであの危機を乗り越えられたら良かったなって思ってたよ。でも、それってとても難しい事だったと思うんだよね。油断していたとはいえ、みんな始まる前に一回やられちゃってたからな。僕もそうなんだけどさ、話し合いで解決できればいいなって最初は思ってても、相手にその気が無いんじゃ無防備に殴られるだけで終わっちゃうもんね」
「でも、油断してなかったとしてもお兄さんたちは奇襲掛けられてアレよりも酷い状況になってたと思いますよ。刺青の劉さんがが抑えてくれてたから結果的には良かったと思いますけど、あの劉さんがもう少し遅く来てたら男子も女子もみんな酷い目に遭ってたと思いますからね。天樹さんが連れてきた人の中で本当に危険な人達って劉さん達で処理してたんですよ。誰にも気付かれないうちにそっと劉さんが片付けていたんですよ」
「美桜ちゃんって刺青の人にやたら詳しいみたいだけど、何か知ってたりするの?」
美桜ちゃんが刺青の劉さんを知っているのは意外だったが、美桜ちゃんが知っているという事を璃々が知らなかったという事はそれ以上に意外な事だった。璃々は頭が良いので何事も理解しているもんだと思っていたのだが、実際には調べもついていないという事もあるのだと知ることが出来た。ただ、あの時がイレギュラーな出来事だっただけで、普段であれば時間に余裕をもって行動しているように思えたのだ。
「何か知っているのかって言われても、知ってることの方が多いかも。知らない事って数えるくらいしかないかも」
「それって、どういう意味?」
「どういう意味って、劉さん達の事はよく知ってるよって事だけど。それがどうかしたんですか?」
この中で劉さんと面識があるのは俺だけだと思っていたのだが、意外なことに美桜ちゃんも知り合いではあるようだ。知り合いと呼ぶには細かいところまで知っているようなのだが、それも上辺だけの関係のようにも見えていた。
「お兄さんは気付いているかもしれないけどさ、私は特別な訓練を受けて成長した忍びなんだ。女の子だからくのいちって言うのかもしれないけど、あんまり性別で呼び名を変えるのって良くないと思ってるんだって。だから、私達は自分たちの事をくのいちって呼ぶことは無いだよ。呼んでも返事してあげないからね」
美桜ちゃんが忍びというのが本当なのかまだわからないのだが、俺からアレだけ素早く逃げ続けることが出来るという事だけでも本当に忍びだと言って問題ないようにも思える。だが、今のところ動きが早いという事と隠れるのが上手だという事しか知らない状況にある。
「結局のところ、私は昌晃さんに捕まることが無かったですね。途中で何度か捕まってもいいやっていう思いがあったんだけど、真剣に見ようとしているお兄さんの姿を見てしまっては手を抜くことなんて出来ないと思っていたんです。でも、私がいくら頑張ったところでお兄さんは私の事を見てはくれないんだろうなって思ってるんです。次に私が新聞なり雑誌に載るようなことがあったらちゃんと買ってね」
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美桜ちゃんが自分で言いだしたことなので誰も止めなかったのだが、美桜ちゃんは普通にその辺を歩いているような感覚で屋敷の壁を普通に歩いて行った。あまりにも信じられないような出来事だったので俺達は目を皿のように丸くしてしまったのだが、そんな事は構わずに美桜ちゃんは屋根まで上ってそのまま飛び降りてきたのだ。
結構な高さのある建物なので着地の際の衝撃は相当なものであると予想されるのだが、美桜ちゃんは着地とほぼ同時に体を上下に細かく揺らしているように見えた。聞いてみると、その動きをする事で着地の衝撃を逃がすことが出来るそうなのだ。もちろん、そんな事は俺にも昌晃君にも出来ないだろう。もしかしたら、メイドの三人は出来るのかもしれないが、俺達の周りで真似することが出来る人なんて一人もいないんだろうと思い始めていた。
「これで少しは信じてもらえましたかね。でも、安心してください。私一人でできる忍術は今みたいに普通に使えるんですけど、それ以外に物を使う忍術や犠牲を必要とする忍術は使うことが出来なくなってるんですよ。仮に、私と喧嘩をしたとしても私は隠れたり壁を上ったりするだけで相手にしたくないかもしれないですよ。ただし、普通の刃物を持って後ろからそっと。って事もあるかもしれないですね」
美桜ちゃんが忍者であることは間違いないと思うのだが、今の時代にそれをちゃんと活かすことが出来るのだろうか。俺は普段からこんな感じで目立つような事をしていなければいいなと願っていた。
「ところで、昌晃さんはこんな忍者な私でも好きになってもらえますか?」
「ごめんなさい。今はまだ付き合うとかは無理です。お互いの事をもっと知ってからでもいいんじゃないかなって思うんだけど、急ぐ理由でもあるのかな?」
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