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第22話 怪しい光の玉
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抗争の終わりはあっけないもので、新しい司令官二人が午前中に話し合ったことで終結していた。
栗宮院うまなと栗鳥院柘榴を交えた話し合いは五分ほどで終わったとのことで、どちらも決定機にかけたという事で今回は引き分けに終わったとのことだ。
どちらかが勝っていたとしても特に何かがあるわけではないのだが、お互いのプライドを守る戦いは始まったばかりなのだ。
SRクラスの生徒は予想外に早く終わってしまった事もあって抗争について話し合う事も出来ずに普通に自習をすることになっていたのだ。
工藤珠希は何をすればいいのかわからずに教科書を適当に開いていたのだが、窓の外に一瞬だけ目をやった時に何か不思議な発光体が浮いているのを目撃してしまった。
夜に見かける発光体に似ているような気もしているが、明るい時間帯にこれほどはっきりと見えるのは何かがおかしいと思っていた。
「外の様子が気になるのかな?」
「気になるというか、何か変なものが浮かんでるなって思って見てたよ」
「変なモノって、いったい何のこと?」
先ほどまで見えていた発光体はいつの間にか姿を消していた。
その後もしばらく鈴木愛華と一緒に発光体を探していた工藤珠希ではあったが、しばらく探しても見つからなかったのであきらめることにした。
「夜に見える光る玉には気を付けた方がいいって言われてるけど、こんな昼間に見えるのも気を付けた方がいいのかな?」
「夜は気を付けろってどういう事に気を付ければいいの?」
「私も実際に見たことないんで聞いた話になるんだけど、窓を開けたり手招きしたり呼び寄せたりしたら危険だって話だよ。何が危険なのかはわからないんだけど、妖怪か悪魔の類だって話だし、そんなのあからさまに怪しいのをわざわざ呼び込むなんて頭がおかしいって思うよね」
工藤珠希はそんな怪しいものを見ていて窓を開けようとしていたことがあるなんて言えなかった。今にして思えば、明らかに怪しい物体を見かけても関わらない方がいいとわかっているのだけれど、あの時は何故か窓を開けて直接見た方がいいと思ってしまっていたのだ。
その理由はわからないが、窓を開けようとしていたことは事実なのである。
「昨日の夜の話だけど、空に浮かんでる怪しい光の玉を見たんだよね。凄く遠くにあったような気もするんだけど、そこまで離れていなかったような気もしてるんだよね。夜だったのと空に浮かんでいるから距離感が全然つかめなかったんだ。もっとはっきり見た方がいいかなって思って窓を開けそうになったんだけど、その時は太郎が止めに来てくれたから開けずに済んだんだけどね。開けたらどうなるんだろう?」
「これも聞いた話で何の根拠もないんだけど、その光の種類によって変わるみたいだよ。その光が普通のサキュバスだったとしたら、珠希ちゃんは女の子なんで何事もなく済むだろうね」
「サキュバスってそんなに良くいるものなの?」
「よくいるも何も、このクラスの女子の半分以上はサキュバスだよ。この学校だけで考えても普通の人間よりもサキュバスの方が多いんだけど、それを考えてもサキュバスってよくいる存在だと思うよ」
自分だけがサキュバスの存在を受け入れていないと思っている工藤珠希はサキュバスの存在をちゃんと認めないといけないとは思っていた。
だが、実際にサキュバスが何かをしているという話は聞いたこともないし、終わったばかりの抗争に参加していたサキュバス達もサキュバスらしい行動をとっていたとは思えなかった。サキュバスらしい行動と言っても、夢の中に出て精気を奪うくらいしかわからないのだが、そんな事をどうやって他人が確認するのだろうか。
工藤珠希はちょっとしたことで悩んでしまうのであった。
「この学校のサキュバスはほとんど無害と言ってもいいんだけど、学校外にいるサキュバスは天然物も養殖物も危ないのよ。強いとか弱いとかじゃなくて、確実に寿命を奪っていくという恐ろしさがあるのよね。この学校みたいに守られている環境じゃないってのがあるけれど、外にいるサキュバスは隙を見せたら絞れるだけ搾り取ってくるって話よ」
「もしかしたら、私が窓を開けて呼び寄せてしまっていたら、太郎が酷い目に遭ってたかもしれないって事なのかな?」
「その可能性は高いだろうね。でも、太郎君なら問題なさそうだけどね。あの子は意志が異常に固いって話だし、そういう誘惑には負けなさそうだよね。何でも出来るって話だし、二年生のサキュバスの子も太郎君には何も効かなさそうだから相手なんてしないって言ってたくらいだし。そのサキュバスの子は普通の男子生徒にも何かをするつもりはないみたいんだけど、抗争が始まったら何の躊躇もなく命を奪いに行くって宣言してたかも」
「命を奪うなんて物騒ね。でも、普通のサキュバスがいるってのを考えると、この学校にいるサキュバスは普通じゃないって認識でいいのかな?」
「いいと思うよ。サキュバスの時点で普通じゃないって事にもなるけど、この学校にいるサキュバスは誰一人として男子生徒を襲ったっていう話を聞かないんだよ。夢の世界の話だから誰も覚えていないだけかもしれないんだ。でも、その割には誰も死にそうな人がいないんだよね。時間外の戦闘は禁止されているんだけど、夢の中に出るのはどうしようもないと思う。うまなちゃんとイザーちゃんが何か隠していたんだとしても、私たちにはソレを調べる方法が無いんだよね。どこの誰がサキュバスの被害に遭っているのか知ることも出来ないんだよ」
「そんな事を自己申告する人もいないだろうしね」
「そうなんだよね。そこが意外とネックになってるんだよ。誰も自分が夢の中で襲われていました。なんて恥ずかしくて言えないよな」
工藤太郎が夜中にサキュバスに襲われているとは思わないけれど、仮に襲われていたとしても工藤太郎なら相手なんて気にせずに返り討ちにしているような気がした、なぜそんな気持ちになったのかわからない工藤珠希であった。
栗宮院うまなと栗鳥院柘榴を交えた話し合いは五分ほどで終わったとのことで、どちらも決定機にかけたという事で今回は引き分けに終わったとのことだ。
どちらかが勝っていたとしても特に何かがあるわけではないのだが、お互いのプライドを守る戦いは始まったばかりなのだ。
SRクラスの生徒は予想外に早く終わってしまった事もあって抗争について話し合う事も出来ずに普通に自習をすることになっていたのだ。
工藤珠希は何をすればいいのかわからずに教科書を適当に開いていたのだが、窓の外に一瞬だけ目をやった時に何か不思議な発光体が浮いているのを目撃してしまった。
夜に見かける発光体に似ているような気もしているが、明るい時間帯にこれほどはっきりと見えるのは何かがおかしいと思っていた。
「外の様子が気になるのかな?」
「気になるというか、何か変なものが浮かんでるなって思って見てたよ」
「変なモノって、いったい何のこと?」
先ほどまで見えていた発光体はいつの間にか姿を消していた。
その後もしばらく鈴木愛華と一緒に発光体を探していた工藤珠希ではあったが、しばらく探しても見つからなかったのであきらめることにした。
「夜に見える光る玉には気を付けた方がいいって言われてるけど、こんな昼間に見えるのも気を付けた方がいいのかな?」
「夜は気を付けろってどういう事に気を付ければいいの?」
「私も実際に見たことないんで聞いた話になるんだけど、窓を開けたり手招きしたり呼び寄せたりしたら危険だって話だよ。何が危険なのかはわからないんだけど、妖怪か悪魔の類だって話だし、そんなのあからさまに怪しいのをわざわざ呼び込むなんて頭がおかしいって思うよね」
工藤珠希はそんな怪しいものを見ていて窓を開けようとしていたことがあるなんて言えなかった。今にして思えば、明らかに怪しい物体を見かけても関わらない方がいいとわかっているのだけれど、あの時は何故か窓を開けて直接見た方がいいと思ってしまっていたのだ。
その理由はわからないが、窓を開けようとしていたことは事実なのである。
「昨日の夜の話だけど、空に浮かんでる怪しい光の玉を見たんだよね。凄く遠くにあったような気もするんだけど、そこまで離れていなかったような気もしてるんだよね。夜だったのと空に浮かんでいるから距離感が全然つかめなかったんだ。もっとはっきり見た方がいいかなって思って窓を開けそうになったんだけど、その時は太郎が止めに来てくれたから開けずに済んだんだけどね。開けたらどうなるんだろう?」
「これも聞いた話で何の根拠もないんだけど、その光の種類によって変わるみたいだよ。その光が普通のサキュバスだったとしたら、珠希ちゃんは女の子なんで何事もなく済むだろうね」
「サキュバスってそんなに良くいるものなの?」
「よくいるも何も、このクラスの女子の半分以上はサキュバスだよ。この学校だけで考えても普通の人間よりもサキュバスの方が多いんだけど、それを考えてもサキュバスってよくいる存在だと思うよ」
自分だけがサキュバスの存在を受け入れていないと思っている工藤珠希はサキュバスの存在をちゃんと認めないといけないとは思っていた。
だが、実際にサキュバスが何かをしているという話は聞いたこともないし、終わったばかりの抗争に参加していたサキュバス達もサキュバスらしい行動をとっていたとは思えなかった。サキュバスらしい行動と言っても、夢の中に出て精気を奪うくらいしかわからないのだが、そんな事をどうやって他人が確認するのだろうか。
工藤珠希はちょっとしたことで悩んでしまうのであった。
「この学校のサキュバスはほとんど無害と言ってもいいんだけど、学校外にいるサキュバスは天然物も養殖物も危ないのよ。強いとか弱いとかじゃなくて、確実に寿命を奪っていくという恐ろしさがあるのよね。この学校みたいに守られている環境じゃないってのがあるけれど、外にいるサキュバスは隙を見せたら絞れるだけ搾り取ってくるって話よ」
「もしかしたら、私が窓を開けて呼び寄せてしまっていたら、太郎が酷い目に遭ってたかもしれないって事なのかな?」
「その可能性は高いだろうね。でも、太郎君なら問題なさそうだけどね。あの子は意志が異常に固いって話だし、そういう誘惑には負けなさそうだよね。何でも出来るって話だし、二年生のサキュバスの子も太郎君には何も効かなさそうだから相手なんてしないって言ってたくらいだし。そのサキュバスの子は普通の男子生徒にも何かをするつもりはないみたいんだけど、抗争が始まったら何の躊躇もなく命を奪いに行くって宣言してたかも」
「命を奪うなんて物騒ね。でも、普通のサキュバスがいるってのを考えると、この学校にいるサキュバスは普通じゃないって認識でいいのかな?」
「いいと思うよ。サキュバスの時点で普通じゃないって事にもなるけど、この学校にいるサキュバスは誰一人として男子生徒を襲ったっていう話を聞かないんだよ。夢の世界の話だから誰も覚えていないだけかもしれないんだ。でも、その割には誰も死にそうな人がいないんだよね。時間外の戦闘は禁止されているんだけど、夢の中に出るのはどうしようもないと思う。うまなちゃんとイザーちゃんが何か隠していたんだとしても、私たちにはソレを調べる方法が無いんだよね。どこの誰がサキュバスの被害に遭っているのか知ることも出来ないんだよ」
「そんな事を自己申告する人もいないだろうしね」
「そうなんだよね。そこが意外とネックになってるんだよ。誰も自分が夢の中で襲われていました。なんて恥ずかしくて言えないよな」
工藤太郎が夜中にサキュバスに襲われているとは思わないけれど、仮に襲われていたとしても工藤太郎なら相手なんて気にせずに返り討ちにしているような気がした、なぜそんな気持ちになったのかわからない工藤珠希であった。
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