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第11話 勘違いは誰にでもある
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自習とは言え午前中に勉強を一切やらないのもばつが悪いと思ったのか、少しずつではあるが勉強をする生徒も増えていた。
やっていることはそれぞれ違うのだが、わからないことがあれば手の空いている教師や栗宮院うまなと栗鳥院柘榴が理解するまで根気よく教えていたのだ。工藤太郎も新一年生ながらに教える立場になっていたので驚いてしまった工藤珠希ではあったが、今までも何度か勉強を教えて貰ったことがあったのでその時の事を思い出すと工藤太郎が勉強を教えるのが上手だというのはわかっていたのだ。
人間と言うのは不思議なもので人がやっていることを真似してみたくなるものなのだが、それはサキュバスにとっても同様のようでSRクラスの生徒の大半が教師役をやりたいと言い出したのだった。
その中でも工藤珠希は黙ってその流れに乗らずにいたのだが、それについて何かを言う生徒は誰もいなかった。
「みんなが勉強熱心なのはよくわかったよ。その意欲を無駄にしないためにも午後からは一人ずつ先生をやってもらう事にしようね。じゃあ、最初に先生をやりたい人はいるかな?」
片岡瑠璃の言葉に反応する生徒は誰もいなかった。
あれだけ熱心に勉強を教えたいと言った生徒たちではあったが、これからの流れを決定づける最初の教師になりたいと思う者はいなかった。誰かが作った流れに沿って自分も勉強を教えたい、人間もサキュバスも基本的に考えることは同じなのか積極性のある生徒は誰もいないようだった。
このままでは時間が無駄に過ぎてしまうだけだと思った工藤太郎が空気を呼んで手を上げようとしたその瞬間、鈴木愛華が立ち上がって手を上げていた。
それに気付いた工藤太郎は上げようとした手をゆっくりと下ろしたのだった。
「何のとりえもない私ですが、一番最初に先生になりたいです。サキュバスには難しい話をしちゃうかもしれないですけど、最後までついてきてもらえると嬉しいです」
「最後までって、愛華さんは何を教えてくれる予定なのかな?」
「はい、私は学校の授業では細かく教えて貰えない戦国時代から幕末にかけての熱い男たちの話をしたいと思います」
少し前に戦国時代のゲームをやっていた工藤珠希には気になる題材ではあったが、戦国時代から幕末と言う長い期間を上手にまとめることが出来るのだろうか。何百人もいる侍達の話になると思うのだが、どんな感じになるのか楽しみであった。
「戦国時代から幕末と言うと、結構長い期間になっちゃうと思うんだけど、授業時間でまとめられそうかな?」
「それは大丈夫だと思います。私の計算では、何事もなく無事に進んだとしたら私の卒業の少し前に完結すると思います。毎日私が皆さんの時間を独占するのは良くないと思うので、お昼休み以降は他の方に譲ろうと思っていますけどね」
さらりと凄いことを言っているように思った工藤珠希ではあったが、他の生徒もそんなに長い話を延々と聞きたくないと思ったようで全員が鈴木愛華に対して文句を言っていた。彼女の仲間であるはずのレジスタンスの面々もブーイングをしているところを見ると、彼女の言っていることはめちゃくちゃだという事がわかる。
「君が好きなモノに熱中してしまうというのはよくわかっている事だ。君が卒業するころに終わる授業だと私たちは途中で強制的に終了することになるのだが、それについては何か考えがあったりするのかな?」
真剣な表情の栗鳥院柘榴に見つめられた鈴木愛華は色々と考えを張り巡らせていたようだが、誰もが納得するような答えをすぐに出すことが出来ずに謝っていた。
「謝ってもらう必要はないんだがね。私が聞きたいのは謝罪ではなくて、どういった形で私たちに授業をしてくれるのかという事なんだよ。私も戦国時代や幕末が好きなので君の考えを聞きたいと真剣に思っているんだよ。だからこそ、最後まで君の授業を受けることが出来ない私に対してどのような対応をしてくれるのかを聞いているんだがね。それについてはどう考えているのかな?」
最初のうちは責められている鈴木愛華の困っている顔を見てバカにしようとしていたサキュバスたちも栗鳥院柘榴の発するプレッシャーに気おされたのか少しずつ声が小さくなっていって、最終的には栗鳥院柘榴から視線を外して黙ってしまっていた。
「すいません。会長が私よりも先に卒業することをすっかり忘れていました。なので、会長が興味あるんでしたら個人的にお話しさせてください。私も会長がどのような解釈をしているのか気になるので、会長の話も聞いてみたいです」
「そうか、忘れていたのだとしたら仕方ないね。私の好きな坂本龍馬の話をたくさんしようじゃないか」
「あ、会長は坂本龍馬が好きなんですね。ちょっと意外でした。私はてっきり新選組が好きなのかと思ってましたよ。会長の待ち受けって新選組の隊旗だったような気がしたんで」
「もちろん、私は新選組も好きだよ。だが、一番好きなのは坂本龍馬と言うだけの話なのさ」
同じレジスタンスの二人が揉めるのではないかと思って見守っていたクラスメイト達は二人がすぐに笑顔になったのを見て安堵していた。
鈴木愛華の目が一瞬だけ全てを諦めてしまったように感じたのだが、それは工藤珠希の気のせいだったのかもしれない。
「じゃあ、私のおすすめの侍ではなく、私のおすすめの仏像について皆さんに解説しますね。好きな仏像を全て教えたいところではありますが、時間内に収まるように自重しますね」
仏像と聞いて誰もが驚いていたのだが、その中でも栗宮院うまなは前のめりになって食いついていた。
サキュバスなのに仏像が好きなのかと誰もが思ったのだが、そのようなことをあえて口に出すような者はいなかったのだ。
やっていることはそれぞれ違うのだが、わからないことがあれば手の空いている教師や栗宮院うまなと栗鳥院柘榴が理解するまで根気よく教えていたのだ。工藤太郎も新一年生ながらに教える立場になっていたので驚いてしまった工藤珠希ではあったが、今までも何度か勉強を教えて貰ったことがあったのでその時の事を思い出すと工藤太郎が勉強を教えるのが上手だというのはわかっていたのだ。
人間と言うのは不思議なもので人がやっていることを真似してみたくなるものなのだが、それはサキュバスにとっても同様のようでSRクラスの生徒の大半が教師役をやりたいと言い出したのだった。
その中でも工藤珠希は黙ってその流れに乗らずにいたのだが、それについて何かを言う生徒は誰もいなかった。
「みんなが勉強熱心なのはよくわかったよ。その意欲を無駄にしないためにも午後からは一人ずつ先生をやってもらう事にしようね。じゃあ、最初に先生をやりたい人はいるかな?」
片岡瑠璃の言葉に反応する生徒は誰もいなかった。
あれだけ熱心に勉強を教えたいと言った生徒たちではあったが、これからの流れを決定づける最初の教師になりたいと思う者はいなかった。誰かが作った流れに沿って自分も勉強を教えたい、人間もサキュバスも基本的に考えることは同じなのか積極性のある生徒は誰もいないようだった。
このままでは時間が無駄に過ぎてしまうだけだと思った工藤太郎が空気を呼んで手を上げようとしたその瞬間、鈴木愛華が立ち上がって手を上げていた。
それに気付いた工藤太郎は上げようとした手をゆっくりと下ろしたのだった。
「何のとりえもない私ですが、一番最初に先生になりたいです。サキュバスには難しい話をしちゃうかもしれないですけど、最後までついてきてもらえると嬉しいです」
「最後までって、愛華さんは何を教えてくれる予定なのかな?」
「はい、私は学校の授業では細かく教えて貰えない戦国時代から幕末にかけての熱い男たちの話をしたいと思います」
少し前に戦国時代のゲームをやっていた工藤珠希には気になる題材ではあったが、戦国時代から幕末と言う長い期間を上手にまとめることが出来るのだろうか。何百人もいる侍達の話になると思うのだが、どんな感じになるのか楽しみであった。
「戦国時代から幕末と言うと、結構長い期間になっちゃうと思うんだけど、授業時間でまとめられそうかな?」
「それは大丈夫だと思います。私の計算では、何事もなく無事に進んだとしたら私の卒業の少し前に完結すると思います。毎日私が皆さんの時間を独占するのは良くないと思うので、お昼休み以降は他の方に譲ろうと思っていますけどね」
さらりと凄いことを言っているように思った工藤珠希ではあったが、他の生徒もそんなに長い話を延々と聞きたくないと思ったようで全員が鈴木愛華に対して文句を言っていた。彼女の仲間であるはずのレジスタンスの面々もブーイングをしているところを見ると、彼女の言っていることはめちゃくちゃだという事がわかる。
「君が好きなモノに熱中してしまうというのはよくわかっている事だ。君が卒業するころに終わる授業だと私たちは途中で強制的に終了することになるのだが、それについては何か考えがあったりするのかな?」
真剣な表情の栗鳥院柘榴に見つめられた鈴木愛華は色々と考えを張り巡らせていたようだが、誰もが納得するような答えをすぐに出すことが出来ずに謝っていた。
「謝ってもらう必要はないんだがね。私が聞きたいのは謝罪ではなくて、どういった形で私たちに授業をしてくれるのかという事なんだよ。私も戦国時代や幕末が好きなので君の考えを聞きたいと真剣に思っているんだよ。だからこそ、最後まで君の授業を受けることが出来ない私に対してどのような対応をしてくれるのかを聞いているんだがね。それについてはどう考えているのかな?」
最初のうちは責められている鈴木愛華の困っている顔を見てバカにしようとしていたサキュバスたちも栗鳥院柘榴の発するプレッシャーに気おされたのか少しずつ声が小さくなっていって、最終的には栗鳥院柘榴から視線を外して黙ってしまっていた。
「すいません。会長が私よりも先に卒業することをすっかり忘れていました。なので、会長が興味あるんでしたら個人的にお話しさせてください。私も会長がどのような解釈をしているのか気になるので、会長の話も聞いてみたいです」
「そうか、忘れていたのだとしたら仕方ないね。私の好きな坂本龍馬の話をたくさんしようじゃないか」
「あ、会長は坂本龍馬が好きなんですね。ちょっと意外でした。私はてっきり新選組が好きなのかと思ってましたよ。会長の待ち受けって新選組の隊旗だったような気がしたんで」
「もちろん、私は新選組も好きだよ。だが、一番好きなのは坂本龍馬と言うだけの話なのさ」
同じレジスタンスの二人が揉めるのではないかと思って見守っていたクラスメイト達は二人がすぐに笑顔になったのを見て安堵していた。
鈴木愛華の目が一瞬だけ全てを諦めてしまったように感じたのだが、それは工藤珠希の気のせいだったのかもしれない。
「じゃあ、私のおすすめの侍ではなく、私のおすすめの仏像について皆さんに解説しますね。好きな仏像を全て教えたいところではありますが、時間内に収まるように自重しますね」
仏像と聞いて誰もが驚いていたのだが、その中でも栗宮院うまなは前のめりになって食いついていた。
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